荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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前回のあらすじ

クインシーからの難民、プレストン・ガービー、スタージェス、ママ・マーフィーを連れたトールは、コンコードでネイト、ノーラ夫婦と再会した。

ゆっくり話せる場所として、サンクチュアリに戻ることを提案。一行は一路、サンクチュアリへ戻る。

トールのサンクチュアリ魔改造です。更地にしてから開発。


荒野の災厄の旅路・コモンウェルス その8

 サンクチュアリに出戻ったトール一行。トールを筆頭に、ネイト・ノーラ夫妻、ガービー、スタージェス、ママ・マーフィーが続く。

 

「お帰りなさいませ旦那様。おや、トール様もご一緒で。他の方々はお客様ですね」

「只今、コズワース。あの子の様子は?」

 

 あの子とは、サンクチュアリ近くのレッドロケット・トラックストップに居た犬の事である。彼はネイト達が現れたのを知ると、走って近づいてきた。

 

「うん、元気そうね。お腹空いてないかしら」

「二百年ものだがドッグフードがある。食べさせておくから、ガービー達を案内してやってくれ」

「こっちだ。歓迎するよ」

 

 トールが居ない間にある程度は片付けたのか、放浪者夫婦の家はガラクタ等は片付けられていた。ガービー達は促されるまま古びたソファーに座る。ネイトとノーラはカウンター席だ。

 

「改めて自己紹介しよう。俺はネイト、こちらは妻のノーラ。二百年程冷凍保存されていて、つい先日、起きたばかりだ」

「なんてこった、古株のグールと同じか。Vault居住者…という感じでは無いな」

「居住どころか、ホッキョクグマもびっくりの冷凍保存だからな。このスーツも着慣れない」

「俺はミニッツメンのプレストン・ガービー、こちらはスタージェスに、ママ・マーフィー。クインシーからの難民で、ここ…ええと、サンクチュアリへの移住希望者って事になる」

 

 今の世界の事情について、ミニッツメンの事やクインシーの件も併せて聞くネイト。ノーラはキッチンに何か使えるものや食料が無いか探すが、一切残ってない事に落胆して、Pip-boyのインベントリからトールから提供を受けている食料ときれいな水の入った紙ボトルを取り出す。

 

「成程な、それは災難だった。もうサンクチュアリも俺達だけだし、他の住民も居ないから、住むなら自由にして貰って構わない。ただ、この家も俺達が寝る位しかできないし、寝床を作ろうにも今は資材が殆ど無いから、正面の家を片付けて住んでもらう事になると思う」

「息子の件もあるけど、貴方達はまずゆっくり休める所が必要ね。かき集めて用意するわ」

「ありがとう。感謝してもしきれない」

 

 外で犬が軽く鳴いた。ふと気付くと、日が傾きかけていたサンクチュアリの中央通りが何故か明るい。

 

「ん? 街灯が光ってる?」

 

 ネイトが外に出ると、廃墟と化していたサンクチュアリの姿が一変していた。薄汚れた感じは以前と同じながら、見ただけで違和感をというか、様変わりしている。

 無論、やらかしたのはトールである。犬にドッグフードを与える傍ら、手持ちの資材をワークショップに放り込むと、事前に用意していた図面に従って建設を行ったのだ。

 道路は瓦礫や割れ、堆積した土等があったが綺麗に除去され、定間隔で街灯が設置されている。電線が伸びているのは仕方ないにせよ、気にする所はそこではない。

 

「発電機を設置したのか」

「さっきまであった廃屋や瓦礫が殆ど無いぞ」

 

 いつの間にか出てきた面々が、外に出てきて驚きに固まっていた。廃墟のサンクチュアリで無事に建っているのは、ネイトとノーラの家と、正面のMsローザの家だけだった。

 

「なんだ、話し合いは終わったのか?」

「君が手を入れたのか、トール?」

「戦前の郷愁に浸りたいのもわかるが、ここで生きていく以上は割り切って貰わないとな」

「理解してるわ。でもそういう事じゃないの…」

 

 会話の最中にも、新たに家が立ち、街灯が伸び、電線が繋がれて電気が光る。夫婦の家にも電線が伸びた。

 

「とりあえずは二人の家が最後だ。屋根と天井を綺麗にしたら、次はライトだ。取り付けたい電球はどんなのがいい? 場所を教えてくれ」

 

 促されるまま、ライトの設置位置を指定すると屋根が音もなく消えて、木製の屋根が設置された。ライトもすぐに取り付けられ、文明の明かりを灯す。

 

「ベッドルームはとりあえず板を置いて見えないようにする。ベッドはそうだな…これか」

 

 壊れたベッドが無くなり、真新しいダブルベッドが置かれた。ライトは部屋を普通に照らす物と、サイドチェスト上のムーディーなものが置かれる。

 

「…息子さんの部屋はどうする?」

 

 遠慮がちに聞かれて、ノーラが「ライト一つと、あとはそのままで」と伝える。

 

「クインシーの三人は、正面の家に色々揃えた。不足は無いとは思うが、とりあえず確認してくれ。俺は農作業用のロボットを用意する」

 

 まるで既定路線だったかのように矢継ぎ早に建築や準備が進む。ガービー達はおっかなびっくり、元Msローザの家に入ると、食事をする為のダイニングキッチン、奥の寝室を確認する。

 

「…なあガービー、俺達、何かに化かされてたりしないか?」

「そう思って頬を抓った。現実のようだ」

「ふふ、まさに力の渦さね。面白い男だよまったく」

 

 寝床は寝袋やマットレスではなく、寝るのに手足を伸ばせる広さの寝台が用意されていた。寝室の窓も鋼線の入ったガラスだ。

 

 ダイニングキッチンには、調理台と保管用のボックスが置かれており、また、ダイニング側には食事用の元飲食店用のテーブルセットが2つ置かれ、他に、寛ぐためのベンチなどもある。

 

「はは、クインシーに居た頃より綺麗なもんだぜ」

「広いな。それに便利そうだ」

 

 ガレージ側には、パワーアーマーステーションと自由博物館でノーラが装着していたT-45aパワーアーマー、各種の作業台が置かれている。

 

 また、ガービー達クインシー組の家の隣にはガラス張りの農場がいつの間にか用意されていた。隣で何か、ロボットを組み立てるトールの姿があり、その隣に完成済みのロボットが既に3体、用意されている。

 

「そのロボット達は?」

「夜間の警備と、農場の世話をする。まあ、警備と言ってもあれを用意したから、出番は少ないだろうがね」

 

 ネイトが顔を向けた先には、ハリネズミのようにタレットが生えたタワーが3つほど立っていた。セットされているレーザー銃のコンデンサの大きさから、恐らく重レーザーを使う防御用タレットだろう。

 

「夜中もぐっすり眠れるじゃないか、いたれりつくせりとはこの事かな?」

「一応、スタージェスにはスカベンジング、ママ・マーフィーには農場、ガービーには巡回をして貰うのがいいかな」

「あらトール、私達は?」

「重要な捜し物があるんだろ。拠点に役割を持つのはやめとけ」

 

 捜し物とは、ノーラを撃ち瀕死にさせ、息子のショーンを奪った男達の行方と、ショーン自身の消息だ。

 

「是非俺達に、留守の間は任せて貰いたい。こんな充実した場所は数少ないからな」

「頼めるか、ミスターガービー?」

「ガービーでいい、ネイト」

 

 二人は握手を交わした。息子を探すという夫婦の為に、この拠点を維持して支援する。また夫婦もミニッツメンの活動に助力する。後に夫婦は、ミニッツメンの将軍に祭り上げられる。

 

「所で、まだ何かやってるんだが?」

「随分大きいわね。2階建てだけど、何の建物かしら」

 

 スタージェスが指差した先、ロータリーがある場所の元家があった場所に、少々大きな建物が立っていた。トールが出てきて一仕事終わったとばかりに手を払っている。

 

「トール、その建物は?」

「夜中、フュージョンコア発電機だとしても音がするのは騒がしいだろ? 折角タレットを寝床から離したんだから。2階に発電機、一階に弾薬その他を生産するプラントを作っておいた。レシピをターミナルにセットして材料を放り込めば作ってくれる」

 

 さらっと言うトール。ワークショップにトールが資材を持って現れれば、たちまち人が安心して暮らせる居留地が完成するのも同義だ。

 

「…何でもありだな。こんな施設諸々、資材はどうしたんだ?」

「伊達にウェイストランドをワシントンからモハビまで旅してないよ。意外と金持ちなのさ。それに、資金もツテもこっちで繋いだものもある。ほら丁度、キャラバンの第一号が来たぞ」

 

 パックバラモンを連れた、バンカーヒルキャラバンのトラシュカン・カーラが現れた。サンクチュアリに人が集まり始めたとスターライト・ドライブインの居留地で聞いてきたのだろうか。

 

 以前は廃墟だったと聞いていたのに、橋は直されている上に重武装のタレットタワーが立ち、街灯が明るく照らして綺麗になっている事に困惑気味。

 だがこれなら商機は多分にある。これ以上無い儲けの気配に、カーラは上機嫌だ。

 

「やあカーラ、新たにここを開発する事になった。他の彼らは住人達だ、今後ともよろしくな」

 

 ああやっぱりとカーラは笑う。結構な頻度で買い物をする上客だ。本人も交渉が上手いのでかなり値引きはさせられるが、取引が終わった頃には手持ちに価値だけは高いものが放り込まれて身軽になっているのはザラである。

 

「何だ、トールじゃないか。なら納得だ。私は雑貨を主に扱っているカーラだ、宜しく頼むよ」

「こちらこそ、カーラ。早速だけど見せて貰っていい?」

「ああ、何か買っていくかい?」

 

 ノーラが興味津々で取り扱い商品を見ている。事前にキャップは持たされているが、それがどの程度の価値かを図るため必要そうな物資を重点に品定めをしている。

 

「そうだスタージェス、キャラバンが来たらできるだけ雑貨や弾薬、薬類は買っておいてくれ。代金はあっちに浄水器を用意したから、飲む分以外の余剰を売却で」

 

 ゲーム中は必要な水は住人が勝手に消費するのだが、余剰分はただ上限まで溜め込まれるだけだ。ここは現実な訳で、頼んでおけば勝手に売却してくれるのは正直ありがたい。

 

「井戸だけじゃなくて浄水器も用意してたのか。いつでも綺麗な水が飲めるってのは素晴らしいな!

 …というかトール、川が浄水器で埋め尽くされているんだが」

 

 視線の先、穏やかな流れの川があるはずの所に、景観も何もあったものじゃない数の無数の機械が設置されていた。思わずガービーもネイトも二度見して顔を見合わせた。

 

「折角、比較的まともな水質の川が近くにあるんだ、水を求める人も多い以上は最大限利用しないと」

「「「違う、そうじゃない…」」」

 

 放射能汚染の無い水はウェイストランドでは貴重だ。NCRやモハビ、またはワシントンDCの人の多く居る居住エリアであればほぼタダといえるが、他の場所は殆どが汚染された水だけであり、綺麗な水はそれだけでキャップを生む。

 

 浄水器を大量に用意できるエンジニアは限られているし、それを制作、メンテナンスする資材も限られている訳で、浄水器がもたらす莫大な利益を狙ってレイダーやガンナーから襲撃が繰り返されたが、住人達が襲撃に気づく前にタレットタワーがその全てを灰にする体制が既に整ってしまった。コモンウェルスのキャップをかき集める通称「水商売」体制の完成だが、後の祭りである。

 

 トールが設置したのはMODで追加された浄水器だ。大きさと能力はバニラの大型浄水器と同じ程度だが、本体に凹凸が少なく、固定用の足が縦に伸びているので併設しやすい。それを、サンクチュアリ近くを流れる川、そのワークショップの範囲に所狭しと設置してある。

 

 尚、現実化した影響で水を集めるには個別に蛇口を捻って汲む必要があるが、トールは殺菌済みのパイプを繋いで2階建ての生産施設に繋いだ。中にあるパッケージングラインで1本ずつボトリングできるようにしてある。担当のロボットが箱詰めしてくれるので、スタージェス達が行うのはキャラバンとの交渉だけだ。

 

 後に、コモンウェルス中の殆どの所へキャラバン経由で供給される事になるサンクチュアリ産の水は、トールのみならずネイトとノーラの夫婦と、ミニッツメンの資金源として活用される。溜め込むだけではなくガンガンと使われるので、コモンウェルス中の経済が活性化したそうな。

 閑話休題。

 

「俺が3、ネイト達が3、実際働く君等が4、取り分はそれでいいか?」

「…いいのか? 用意して貰って作業するだけとはいえ、貰い過ぎな気もするが」

「財布に余裕があるってのは心の余裕になるもんさ。いいよな、ネイト?」

「ああ、不労所得万歳だ。ノーラには怒られそうだが」

 

 おどけて言うネイトに、トールもスタージェス達も思わず笑う。ママ・マーフィーといえば、疲れたのかコズワースが用意した椅子で休んでいる。

 

「目的地を決めるにせよ、食事を終えて今日は寝た方がいい。二百年ものになるが、ソールズベリーステーキがある」

「ご馳走じゃないか!」「あれなら私も食べられるねぇ」「…以前食べたのは何ヶ月前だったろう?」

「苦労してるな元クインシー住民…よし、お代わりアリにするからな!」

 

 更にテンション爆上がりのクインシー組とは別に、ネイトは微妙な表情だ。

 

「…戦前の備蓄って、大丈夫なのか?」

 

 ネイトの大好物とはいえ、戦前の保存食である。いかにグレードAといっても、とっくに消費期限切れだ。ただ、トールはこの保存食の優秀さを良く知っている。BOSの人気ナンバーワンは伊達ではない。肉の安定供給ができるなら、後で大量生産もいいなと皮算用。

 

「他の戦前保存食と違って、これに費やされた保存技術は大したもんさ。お湯で温めて食うとしよう」

 

 食事はガービー達の住居で摂る事になった。

 クッキングステーションに水を入れた大鍋と小鍋を置き、横に人数分とちょっと加算した数のソールズベリーステーキのパッケージを取り出す。中袋を取り出して並べた。前菜として、用意済みだった人参とトウモロコシのバター炒めを用意する。備蓄として大量に持っている「新鮮な」無汚染のものだ。

 小鍋に固形スープを溶かしただけのスープを用意。コズワースに頼んで配膳して貰う。

 

「…飲まずに持ってきたウィスキーがある。飲める奴は一緒にどうだ?」

「いいわねミスターガービー。トールも何か持ってない?」

「ノーラ、君は魚のように飲むんだから、程々に…」

 

 いつの間にか買い物を終えたノーラが会話に参加。トールは苦笑しながら、無汚染の干し肉と、備蓄していた無数の酒の中からバーボンとビールを取り出した。

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 準備を終え、用意されたソールズベリーステーキが皿の上で湯気を出している。

 

「今日という日に乾杯しようか。理由はそれぞれでいい」

 

 強い酒が苦手な面子向けに、ヌカ・コーラも用意。それぞれ、ボトル丸ごとやショットグラスに酒を入れて掲げる。

 

「俺はこの出会いに感謝して」

「俺とノーラは、ショーンが見つかることを願って」

「俺はこの素晴らしい居留地の住人となれた事を祝って」

「私はサイトの導きが、よりよい明日に繋がると祈って」

「俺は…、ミニッツメンの復活を誓って」

「「「乾杯!」」」

 

 その晩の食事は、この荒廃したコモンウェルスの中であって、とても豊かで楽しげなものになったという。

 




ママ・マーフィーにはサイトをガンガン使って貰いますが、トールはコンソールを駆使して死なせません(鬼か)
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