荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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コミケ、単なる売り子参加ですがもう歳だなぁと体の疲れに辟易。


至高なる御方々と少女の邂逅

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 屋台食べ歩きや人の入れ替わった露天市で冷やかしたり色々買ったりするモモンガさん一行はさておき、ナーベラル達の騒動が収まった後の、帝国拠点の屋敷である。

 トールと餡ころもっちもち、やまいこ達は、クーデリカとウレイリカという二人の突発的なお客様を迎えての小さなお茶会中。

 

「へぇ、お姉さんは大変な仕事をしてるんだね」

「かならず帰ってきてくれるけど」「いつも疲れて大変そう」

 

 二人の小さな淑女は、この隣の屋敷の元貴族家の娘だと言うが、一人居る姉がいつも大変そうだと言うので聞ける範囲で状況を聞く女性二人。やまいこがトールに目配せすると、アイボットの収集データから検索して、該当の「ワーカー」の少女について情報をPip-boy経由で提示する。

 尚、餡ころもっちもちは「眼と眼で通じ合う!?」とか内心で動揺してたりする。

 

(アルシェ・イーブ・リイル・フルト。元貴族家であるフルト家の長女で、双子の妹が居る。優秀な魔法士であり、ワーカーとしては比較的評価の高いチームに所属して…、ええと、うわ、散財を止めない親の借金をどうにかしようと奔走する…)

(没落したのを認められない両親と、現実を見て妹達の為に奔走する姉ですか)

 

 収集情報によれば、少女アルシェは帝国の学院でも成績優秀であったにも関わらず、家の借金の為に自主退学したという。

 親が教育費が支払えずに泣く泣く学校を辞める子供達をリアルで何人も見てきたやまいこは、現実を見ないフルト家の現にして元当主とその奥方に、少し苛ついた気分を覚えた。

 

(…鮮血帝より前の貴族文化が、よくわかる構図だねぇ。本来なら、コストがかけられるからこそ貴族は平民とスタートラインを異にできるのに)

 

 誰もが生きる事に必死なリアル。教育=生存手段の確保という点では、上流も下流も差異は無かった。みかけは盤石な上流家庭のいくらかは、学歴だけはご立派ではあったが意識の面で夢見がちで想像力が足りなくて、会話に苦労したとは餡ころもっちもちの談である。

 閑話休題。

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 その後は、件の姉の話を双子から聞き、太陽が中天に差し掛かる前に返す。

 

「「ほんじつはおちゃかいにお招きいただき、ありがとうございました」」

「今度からは、正面からお願いね」

「ごめんなさいアンさま」「気をつけますモッチさま」

「ボクらが居るかは、門前で控えている彼女らに聞けば判るから」

「「ありがとうございますマイコさま」」

 

 隣のフルト家から慌てた様子で家令…、この屋敷の案内人だった老人が来たと知り、ユリに出迎えを任せる。

 

「この度は大変申し訳ございませんでした…」

「いえいえ、丁度時間もありましたから、お気になさらず。今度からは正面から訪ねて頂ければと」

 

 平謝りの老人。フルト家ではすでに殆どの使用人は暇を出されているので、かつての忠義からほぼ手弁当で家を預かる彼に心労はかけられないと、やまいこはまたどうぞと伝えた。

 ただ、くれぐれも両親には内密にと言うと、老人は真剣な表情で頷いた。おいたをしてしまった事は事実なので、双子の少女も了承する。

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 元気に手をふる双子と老人を見送った後、考え込む仕草のトール。

 

「問題としてはシンプルだ。ただ、姉の方がどれだけドライに考えられるかがネックかな」

「やっぱり、姉妹と親とは引き離した方がいい?」

「反省する環境があればいいが、屋敷だけは残ってるのが問題かな」

 

 トールの生前にもあった、毒親の一種である。

 かつての栄光に縋り、現実を直視できない両親。金策とは聞こえはいいが、実情は借金であり、すでにまともな所は貸さない段階だ。下手をすれば、平気で厄介な所に借金を申し込み、子供達がそのカタに取られるなんて事もあるだろう。その後の子供達がどんな目に遭わされるかは想像もしたくない。

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 原作では、Web版において借金のカタに売られ、邪教集団の生贄にされたし、小説版では作者様曰く「数カ月後には死んでる」と言われてしまっている双子である。今のままでは同じような末路をたどるだろう。

 

 優秀な役人や兵士が居て法整備されているとはいえ、帝国に蔓延る闇は決して浅くは無い。

 

「…孤児院で預かっていいかな」

「いいでしょ。何を悩んでるんだ?」

 

 あっさりと言うトールに悩み顔のやまいこ。

 

「何でもかんでも子供を救うのには限界があると思うから…」

「別に、浮浪児から孤児まで、限界と思うまで手を伸ばしてから考えればいい。何でもかんでも救って限界迎えてから考えるのもアリだ」

「え、でも…」

「俺を見誤って貰っちゃ困るな」

 

 一回につき200人まで、一週間に一度は大丈夫とトールが笑う。人数が200人なのは、収容スペースではなく建築と教育ロボットの確保の問題だと。

 

「そうだよやまいこさん、カルネ村だってまだまだ余裕があるからさ」

 

 元陽光聖典のニグン達に命じて、王国の孤児の保護事業を行っている。彼は強面であるが、孤児達には慕われている。

 ニグレドが院長を務める村の孤児院では、貴族ですら受けたことの無い、高度な教育すら施されていた。将来、ナザリックの利益と友好的な考えを持つ人材の確保という名目だ。

 後にカルネ村の孤児院から輩出される子供達の殆どが、ナザリックに厚い忠義を有するだけでなく、優秀さで大魔導師やら賢人やら英雄やらになってしまう訳だが、それは今は誰も知らない。

 

「じゃあ…そうだね、アルシェちゃんの面接をしてからで」

「オーケー。後はその両親が、余計なところから借金をしないか監視かな。家令も常に子供達についているのは不可能だし」

 

 アルシェという少女も、調査上ではワーカーとして仕事をするに足る能力を持つ人物だ。組合の保護がある冒険者と比較しても、他のメンバーが優秀である可能性も含めると、渡りをつけておいて損は無いだろう。

 

「学院出って話だから、多少はいいビルドになるよう職業レベルを取得させて、かのご老人の防波堤になってもらお」

「あー、うん、それでいいかなぁ?」

「可能なのか?」

「もも…アインズさん含めて、世界級アイテムの使用許可が必要だけど、職業レベルの差し替えができるのがあるんだ」

「同じレア度設定の職業にしか移せないけどね。もっと上位の世界級アイテムは、えげつない感じでレアや上級職業を他の役に立たないのに差し替えたりできるみたいだけど」

 

 クールタイムはリアル時間で3日。序盤に取得していた職業の整理などに使われたが、大抵は趣味ビルドであったし、戦闘メインのメンバーもほぼビルドが完成する頃には無用の長物となった微妙なアイテムである。

 

「この世界では破格の性能になるって事か」

 

 この後、早熟の天才であるアルシェは、後に許可が降りた世界級アイテムの力で、複合的な中位から上位の職が生やされ、さらにトールにより経験点追加薬を摂取してレベル40超えを達成。第六位階の魔法を手にする。

 閑話休題。

 

「いいのかな、他者の人生を左右するような事をこんな簡単に」

「結局は何をしようと、俺らのエゴなんだ。なら、できる限り気分がノる事をすべきだ。悪い明日には少なくともならない、させない。それでいいじゃないか?」

 

 救い方と救う相手の見極めが重要で、少なくともアルシェという少女は救うに値するとトール。

 

「行動一つ一つを縛らないよう折角モモンガさんが許可しているんだ、貴女の願いに沿った行動なら喜んで協力してくれるさ」

 

 ナザリックの益になるか害となるかを基準に皆は考えがちだが、国家間に関わるようなよほどの大事やナザリックに大きな被害が出る事態で無い限り、モモンガさんはギルメン達の行動については自由でいいと決めた。維持費用の面も含めて奔走する必要も無い訳で、アレは駄目これは駄目というのは、息が詰まるからと。

 アルベドと過ごす以外は、結構な頻度で王国内でソロ活動をし始めているモモンことモモンガさんである。一応、アルベドが傭兵モンスターを護衛につけているが。

 

「ま、ギルド長が息が詰まるような状態がやだっていう理由もあると思うけどね」

「「それな」」

-

 

*

観光中、思いっ切りくしゃみをしたモモンガさん。

 

「えっくし!?」

「風邪…な訳ないし、誰か噂してるのかな?」

 

 そんな呑気な会話をする面子の脇を、酷い顔の少女がトボトボとすれ違う。

 混雑する道で、軽く肩が触れてしまい、少女は「ご、ごめんなさい…」と告げる。

 

「大丈夫、問題ない。…どうしたんだ、酷い顔だぞ?」

 

 ちゃらけた態度はどこへやら、キリっとした顔で聞くペロロンチーノ。

 

「何でも…無いです、すいませんでした」

 

 ペコリと頭を下げて去る少女を見送る一行。

 

(エロゲマスター、気になる点でも?)

(リアルじゃ見慣れてる表情です。絶望の一歩手前。明日から仕事が無い人の…ってエロゲマスターてww)

(ならエロゲバードマンで。時間はありますし、片手間程度の労力でよければ)

(エロゲの冠位は不動かい! …いいんですか? ぬーぼーさんもフラットフットさんも)

(構わないよぉ)(大まかなところは巡ったし)

 

 リアルでの状況からすれば、ペロロンチーノはアーコロジー住まいの中流、他は下層だった。職を失う事は緩慢な死のカウントダウンと同義だった面子がほとんどであり、すれ違っただけの少女ではあったが、明日に希望を見いだせず死を待つだけの人々と同じ顔をしていたとすれば、気になってしまった。

 

「幸いというか、ワーカーの集まる酒場の方面に行くようです」

 

 そちらまでは方向が一緒である。モモンガさん達はワーカーに軽めの仕事を依頼して、人となりと実力を図ってみる予定だった。

 状況確認をすべくシャドウデーモンの一体に少女を追跡するよう命じる。

 

「件の土地への移動までには数日あるし、ま、時間の使い方が有意義になればいいかな」

 

 ワーカーの集まる酒場にて、チーム・フォーサイトとそこに所属する少女アルシェと一悶着あるが、それは後に語る。




今年最後の更新、短めで申し訳無い。皆様、よいお年を
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