荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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お久しぶりです、種蒔きと収穫とトンネル張りと寒さで手首が腱鞘炎気味でして、長らくおまたせしました。

訂正:他のバンカー数を4から2に


死の支配者と機械人形と番外席次と帝国の騎士

 モモンガさん達は拠点経由でナザリックに戻ると緊急召集。まあ内容的には緊急事態でも無いのであるが、これまでの活動でもたまに問題点として挙げられていた内容である。

 

「えー、隠蔽措置について、完全隠蔽ではなく欺瞞情報を含めた偽装的な能力を保持した状態で人化したいという事で」

 

 現在の所、ギルメン達の能力隠蔽は完全に完璧だ。逆に気配も無い訳で、ワーカー達がモモンガさん一行の実力を測ろうとしたが全くわからず困惑していた件が新しい。

 

「許可が降り次第、ナザリックギアにレベル20から5刻みでセレクトする機能を追加できる。当然、今まで通り完全隠蔽もできる」

「あまのまひとつさん仕事早い」

「まあトールに提案されてたんだけどな。どうだろギルド長」

「ありがたい話です。皆も機能追加には賛成? …決定です。次は標準のセレクタ設定はどうするかという点です」

 

 これについては意見がわかれた。完全隠蔽とレベル20程度の切り替えでいいという意見が多かったが、護衛やモンスター退治などで他の同行者が襲われる危険性が高くなる。

 

 標準で20でもこの世界での英雄級まであと少しというレベルだ。60を超えた時点で人外の領域である。

 

 これについては少し会議は長引き、最終的にはレベル20を標準にして、個々人の判断で60まで使用できる事とした。それ以上については隠蔽の必要性が無いという理由もあるが。

 

「まあ選択式ではないから自由に設定して大丈夫って事だよな」

「魔法の位階についてはどうなんだろ?」

「試作機の段階で、7レベル刻みで取得位階があれば気配に出るみたい」

「…俺、標準で35レベルにしとく。爺様のペロペロは遠慮したい」

「美少女だったら大歓迎なんだけどなぁ」

「おーい」

 

 そして次の日、帝国内にあるという、不毛の大地への出発前日、トールが見せたいものがあるとモモンガさん達に伝えた。

 

「何を作ったんです?」

「パワーアーマーとは別の、ちょっと男のロマンをくすぐる奴だ」

 

 火力と耐久力はレイドボス並だが、弱点は多いしユグドラシルのプレイヤーPTが全力で戦うよりは弱い、と付け加える。

 

 店をやっていたり調査に出向いている面子を除き、首都ナザリックに建設されていた通称「記念運動場」(何の記念かは現在、守護者達が策定中である)に集まる。首都ナザリックと帝都アーウィンタールはかなり離れているが<転移門>が使えるので距離に意味は無い。

 

「…意外と集まったな」

「トールの言う男のロマンには、私達の心の琴線に触れる物が多いからな」

 

 うんうんと頷くのは、たっち・みーを筆頭とした、子供心を忘れないギルメン達。女性陣は苦笑し、ついでに付いてきた守護者達は少し困惑気味。

 

「今から見せるのは、ウェイストランドではちょいとオーバースペックだった有人兵器だ。パーツの組み合わせで自分用にカスタマイズできる」

 

 そう言ってPip-Boyを操作すると、運動場の中心に全高5mから30m程度の様々なロボットが出現した。10m前後の物が一番多いだろうか。歓声をあげるギルメン達と、ガイコツの口をパカーンと開けたモモンガさん。

 

「メインがバトルテックMODのメックだからそっちは機動性が少し残念なレベルなんだが…あ、バトルテックはわかるか?」

「米国で人気のロボットシミュレータやそれを題材にしたVRMMOでしたっけ?」

「…成程、リアルの未来だとそうなってるのか」

 

 詳細は省くがと前置きして、トールの時代にあったボードシミュレーションやTRPGの事を掻い摘んで話した。色々、そういった方面の知識を集積していたタブラが、思い出した範囲で補足する。

 

「…それでこれ、俺ら乗って良いとかいう話?」

「ああ、向こうじゃ一度も使ってなくてな」

 

 有名所のメックというかロボ作品の機体の他、操作がローグライクゲームなフリゲのメック類も多数、設計図は用意してあるものの、ウェイストランドではついぞ出番はなかった。

 一度、人気のない所でザクに試しで乗った時は、遠方を通るキャラバンがそれを見かけて「雨の中、ベヘモス(※スーパーミュータントの巨大変異)よりも巨大な人影が歩いていた」と大騒ぎになった。

 閑話休題。

 

「それと大森林地下の俺の拠点、改築ついでに上層の搬入エリアはそのまま、その直下に演習場を設ける。各ブロックは整理した上で地下にシフトさせるんだが、掘り下げも含めて場所によっては数百メートル単位で移動するから、内部の物が無事という訳にはいかんでな」

「成程、家族で首都ナザリック側に一時移動するのはそのせいか」

 

 トールの拠点こと各バンカーは、最初のゼロバンカーが逐次拡張の弊害でゴチャゴチャしてきているいるため、一度、組み換えをするという。其のため、ゼロバンカーに居室があるギルメン達に首都ナザリックに引越しを依頼したという訳だ。

 

「建物や部屋それ自体はそのままなんだが、安全を考えるとどうしてもな」

 

 トブの大森林地下にある他の2つのバンカーは最初から大規模拠点として運用できるよう設計しているため、掘り下げた後、丸ごと移動させればいいから楽なんだがなぁとため息。地下数キロが動く訳で、相変わらず規模がおかしい。

 

「工事自体は、アインズさん達が例の荒野から帰ってきた頃には終わる予定。…所でアルベド、ちょっといいか?」

「は、はあ…?」

 

 ちょいちょいと手招きして、ほしょほしょと耳打ちする。すると、困惑していたアルベドの表情がなんだか紅潮して目がキラキラというかギラギラして、アインズさんを見た。

 

「ど、どうしたのだアルベド?」

 

 とててっと移動したアルベドは、<伝言>の魔道具も使わずアインズさんに耳打ち。ぺかーっと精神安定化。

 

「…成程、そうだな、元は偽装とはいえ首都ナザリックは我が領土。となればトールの拠点に設けてもらう初の住居は、別荘と言っていいか」

「ええ、ええ。感謝するわねトール。大きな仕事が終われば…むふふふ」

「おーい、アルベドー、戻ってこーい」

 

 トール拠点内にマンションタイプを用意して貰っていたアインズさんだったが、大抵はギルメン達の住居も近く、守護者達も含め突如の訪問などもあって完全に気を抜けないのが実情だった。今回の工事でリゾート別荘型のタイプを用意して貰ったのである。

 

(…他の目やら突如の訪問とか無い所で、お互い気兼ねなくというのがお願いだったので)

(ええまあ、其の辺は俺もよくわかってます。でもなぁ、いいのかなぁ)

(働き詰めって訳でも無いですが、モモンガさんも無意識に働き過ぎですよ? 不毛地と外交の件が終わったら、遠征まではもっとのんびりしてくださいな)

(すいません…、むう、出歩いたり観光したり、俺としてはかなり遊んでるだけの気もするんですけど)

 

 ほぼ必ず一時間ほどはナザリック内に戻って執務はするし、視察と称して首都ナザリックを含めて散歩兼ねてアルベドとデートをする訳で、何もしない、というのが無いのがモモンガさんである。シモベ達には休暇を取らせようとあれやこれやする割には色々と動く訳で、未来におけるワーカーホリックはどうにも抜けきらないらしい。

 

「操作系は、弐式炎雷さんのやってたゲームのと、いくつか、別世界のメックの操作系を採用したのを用意してる。首都ナザリックにシミュレータを用意したゲームセンターを作ったから、試した上で本採用のを言ってくれれば製造する」

「完全思考操作とかを用意しない所が、わかってるな!」

「…すげぇ、伝説の丸ハンドル操作ロボがある」

「レバー2本とトリガーとスイッチだけのもあるのか」

「モーショントレースにマスタースレーブにセミマスタースレーブ…」

「このベアッガイさんとかプチッガイとか可愛いね。サンボル版ベースって何のことだろ?」

 

 最近作った<クリスタルモニター>とフォーカスのAR技術を活用した情報閲覧用ハイブリッド魔道具をわいわいと見るギルメン達。乗る面々の方が強い訳で、守護者達はなぜわざわざ乗る事に拘るのか困惑気味。

 

「これはまあ遊びの一貫だから、守護者の皆もギルメン達とやってくれると嬉しい。レクリエーションだ」

 

 そういうトールは、操作系は兎も角として、要望があれば外見と装備の傾向を登場者に真似た機体も作るぞと言う。サンプルとして、冒険者モモンの姿を模したメックを出すと、守護者達と…モモンガさんが「おおーっ!」と声を上げた。

 

「ただ、バランス調整で火力と戦闘能力は偏りはするが全体的には平均化するがね」

 

 好きな形の機体。そこで守護者達の目の色が変わった。許可を頂く必要があるが、敬愛する至高なる御方々の姿を模した機体を拝領できる可能性があるのだ。

 

 …最も、ほぼ人型なギルメン達は兎も角、ヘロヘロやぶくぶく茶釜や餡ころもっちもちのような不定形異形種の機体はどうすんだよというツッコミができる者は居なかった。

 

「もし仮に、私を模した機体を作ったとして…成程、見事に防御と攻撃手段で搭載量が取られるな」

「たっちさんモデルだとガチ近接オンリーかぁ」

「ペロさんがかなり強キャラに」

「俺だと動けない高火力砲台だな…」

「私だと攻撃手段だけはたくさんある玄人向けですよ…」

 

 そんな感じでわいわいやってる所に、首都ナザリックの大門から連絡が入る。それを受け取ったアルベドがそっとモモンガさんに耳打ちする。

 

「ご歓談中の所失礼いたします、法国より例の人物を護送してきた一団が」

「わかった。皆さん、わくわくしている所、一時中断して申し訳ないが、法国の一団を出迎えます。よろしいか?」

 

 法国からの一団、それは漆黒聖典の番外席次、絶死絶命の身柄を護送してきた連中である。

 一応、人となりについては武人武御雷が確認して問題ないとしているし、受け入れ人員も確保済みだ。

-

 んで、首都ナザリックの法国方面の外門を抜けた広場にその一団が居た。責任者は漆黒聖典第一席次である。

 

「任務ご苦労。先日ぶりだな」

「はっ、至高神アインズ様並び41皇の皆様もご機嫌麗しゅう!」

「お前は兎も角、他の面々の装備の習熟はどうか? なるべく癖のないよう用意したが、要望があれば多少は融通を利かそう」

「滅相もない! あの日以来、拝領いたしました神器の習熟に皆熱心に勤しんでおります!」

 

 一部、装備の露出具合でムチムチしてるのを是正しようと躍起になっている隊員が居るが、そこは言わなかった。

 

「さて、お前が番外席次か。私はモモンガ・アインズ・ウール・ゴウン・ナザリック、このナザリックを治める者だ。首都ナザリック内であれば、羽目を外さなければ自由にして構わない。世話役を付ける故、要望があればそちらに言うといい」

「ありがとうございます、アインズ様。…武人武御雷様に用事があるのですが、近くでお話をしても?」

「? 構わんぞ?」

 

 ちらとアインズさんが目を向けると、どうにも挙動不審になっている武人武御雷。

 

「お久しぶりです、武人武御雷サマ」

「あ、ああ、久しいな、番外席次」

 

 ジリジリとにじり寄る番外席次。にこにこと笑っており、敵意も一切ないのだが、武人武御雷が圧力に耐えかねて後ずさっている事に、コキュートスが困惑している。

 

「では早速ですが、子作りをしましょう! ええ、ええ、ロマンチックな雰囲気がない場所でも一向に構わないわ!」

 

 もうなんだか軟体のように、巌のような武人武御雷の体に巻き付く番外席次。体の真正面からだいしゅきホールドである。

 

「たっちさん!?」

「え、えーと、セーフ?」

「ちくせう!」(ドン!)

 

 地面を悔しげに叩いたエロゲバードマンはさておき、番外席次の年齢は数百歳である。いかにスットン岸壁に近いとはいえ、身体自体も子供が作れる年齢である。アインズさんはパカーンと口を開けている。

 

(て、手篭めにしたんですか!?)

(俺は無実だ! 強さならたっちさんの方が上って言ったよ!?)

(…私は既婚者ですよ?)

(後ろからるっくさんこと瞳さんのすげぇプレッシャーがある件について)

(((あ、察し)))

 

 ギルメン達の視線に晒されて、油汗が出る武人武御雷。

 

「…絶死絶命! 無礼だぞ!?」

「何よう、確実に私より強い男性だもの、孕めるなら肉奴隷だっていいわ」

「あ、あのな、番外席次、そういう扱いはしないと言っただろう」

「ふふ、本気だけど冗談よ。やっぱり紳士ね、全てを捧げても惜しくないわ」

 

 外見的には半ロリスレンダー体型な訳で、武人武御雷が人化しても犯罪臭がとても強い。ただ、武人武御雷の人となりは良く知っている訳で、ギルメン達はなんだか生暖かい目で見ている。守護者達は無礼な相手にちょっとお怒り気味だが。

 

「たっちさん…?」

「え、ええっと…セーフ?」

「ちくしょぉお!」(スドン!)

 

 再び地面を叩くエロゲマイスターはさておき、なんかぐだぐだになりつつあるのを、

 

「騒々しい、静かにせよ」

 

 と威厳ある声で言うと、皆黙った。

 

「…お前の希望は、武人武御雷さんの子か?」

「ええ、アインズ様! お姿を拝見した時にピンと来たの!」

 

 だいしゅきホールドを維持したまま、ぐるっと半ば逆さに顔をアインズさんに向けて目をキラッキラとさせて答える番外席次。首の角度がちょっとホラーである。

 

「…わかった。こればかりは武人武御雷さんの意志もあるが、私は当人達の意見を最大限尊重する。自由にして構わん」

「も…アインズさん!?」

 

 止めてくれるかと思ったらまさかの自由宣言である。大事にしてきた訳ではないが、リアルとこちらあわせて保ってきた貞操は風前の灯だ。一部、嫉妬マスク同盟者から「裏切りものー!」「俺は武人武御雷さんを信じる!」などとメッセが飛ぶ。

 

「ふっ、武人武御雷さんも悪くは思っていないのでしょう? 私は咎めたりはしませんので、じっくり話し合って下さい」

 

 ガイコツ顔なのになんだかニヤニヤしてそうである。

 

「あーうー…ううむ、まだ過ごした時間も少ない、これからお互いを良く知ってからでいいか?」

「構いません! ああ、夢のようです!」

「んでだ…とりあえず離れてくれないか? 重くは無いが歩き辛い」

「やです」

「お前なぁ…」

「エエト、オメデトウゴザイマス?」

「疑問形!?」

 

 なんだかバカップルを見ているようで、アインズさんは人化していたなら確実にチベットスナギツネ顔になっていたかもしれない。尚、日課になっている自分とアルベドのいちゃいちゃ視察ことデートについては棚に上げる。

 

「…では第一席次よ、彼女の身柄は確かに我々が預かった。お前に数体、連絡用の影の悪魔を付けておく。多少の相談程度は聞こう」

「はっ、ありがとうございます!」

 

 そんなこんなで第一席次達を送り出したアインズさん達。なんとか番外席次を引き剥がして、世話役の紹介と住居の案内を指示する。尚、住居については商業予定区近くにあるビジネスホテル街にする積りだったが、急遽、首都ナザリックにある武人武御雷の武家屋敷の隣に確保した。

 

(頑張って下さいね!)

(ギルド長の気遣いが辛い!)

 

 こんな感じの騒動があって、再び場所は帝都アーウィンタールの拠点に戻る。

 

 屋敷の残留は、不毛の大地へ行く面子全員だったりする。午後になって訪ねた帝国四騎士が一人レイナースは共連れと共にお茶を頂いてしまって困惑中だ。

 

 尚、既に帝都からゴーレム兵と馬形ゴーレムが引く馬車は出立済みだ。御者はグレータードッペルゲンガーが務めていて、道中に何かあればすぐさま<伝言>が飛んでくる。

 

「別段、何かに警戒している訳では無いのですよ。ただ、貴女がかかっている呪いについて、何か手段が無いか時間を取りたかったのです」

「わ、私の呪いですか!?」

「少し調べた限りでは…、貴女の強さの要因たるカースド・ナイトの能力とその代償だと推察しています」

 

 アインズさんことモガさんは優雅に紅茶を嗜みながら、アルベドやデミウルゴスに投げて戻ってきた調査結果を伝えている。

 他の面々はそれぞれ自室や近所におでかけ中だ。無論、帝国の隠密部隊は追跡と防護についていっている。

 

「呪いを受けた代わりに、貴女はその強さを得た…もし解除するなら、貴女は確実に弱くなる。そうすればジルの騎士としての務めに足る力を失うでしょう」

「…構いません。ジルクニフ陛下には、この呪いの解除の為に協力する代わりに力添えをしていたまで」

「ふむ…」

 

 「女性の顔は女の命!」と女性ギルメン達の強い要望もあって、職業を同レア度以下の別職に差し替えられる世界級アイテムの使用には特に障害は無い。

 しかしながら友誼を結んだジルクニフの戦力を低下させるというのは少し憚られた。

 

「貴女の異名<重爆>は、今の攻撃力を重視した戦い方によるものと思います。呪いの解除に伴い、攻撃力の低下はすれど、別のメリットのある職業…あるいは力を得られる形になります。戦闘のセオリーなどを丸ごと変える必要がありますが、構いませんか?」

「…どのような代償が必要なのでしょうか。呪いが解けるなら、この身を差し出せというなら差し出します。仕えよと言うのなら、どれほど役に立つかはわかりませんが全身全霊を以てお仕えいたします」

(重いわ!)

 

 軽く内心で突っ込むアインズさん。

 

「代償と言うよりは、要望ですね。新たな力に対して習熟する事と、これからもジルの為に力を尽くしてほしい事、これら2つを。私の友なのです、守ってあげてほしい」

 

 これからも良い関係でありたいから呪いの解除に協力するのであって、ジルことジルクニフ帝の役立つ人材を減らすのは本意では無いと伝える。

 

「わかりました。ありがとうございます、アインズ陛下」

「例を言うのはまだ早い。実際に解けてから受けよう」

 

 アインズ陛下と言われたせいで思わず学士モガの口調から代わってしまう。

 んで、結果的には差し替えは成功した。防御に関してはナザミが居るので、レア度的に速度重視の職業<ライトニング・ナイト>(※本作の捏造職です)になった。今まではカースド・ナイトによる強化された一撃を重視して標準的な剣を使っていたレイナースだったが、細身の剣による連続攻撃に転向する事となる。

 

「ありがとう…ござい…ます…!」

 

 無事、呪いが解けて今まで隠していた顔に触れたレイナースは、手渡された鏡を覗き込んで、ぼろぼろと大粒の涙を流した。

 

 側仕えの兵士達も、顔の呪いで苦しんでいるレイナースの事を内心痛ましい目で見ていたので、それが解けて喜ぶ尊敬する上官の事を自分の事のように喜んだ。

 

「…やっぱ美人だよな、レイナース様」

「ばっかお前、自分らで釣り合う訳ねぇだろ」

「俺以前、告白して断られた。もっかいチャレンジする」

「お前、四騎士次点って言われてるけど既に勇者!?」

(…慕われてるなー)

 

 小声で話す側仕え達の会話をばっちり聞いてたアインズさんは苦笑する。

 

 その後、ジルクニフとしては呪いが解けたために繋ぎ止める枷がなくなった事については内心、残念がったが、実質的な戦力の低下にはならずアインズさんの勧めでこれからも仕えるとの事で、胸を撫で下ろしたらしい。

 




「所で…「光速」の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士になったりするのか?」
「なんですそれ? 聞いたことがあるような…」
「ライトニングさんですよモモンガさん」
「あー確かそんなネタがありましたね」
「…え、元ネタってトールさんの時代だったんです!?」
「22世紀まで語り継がれたのか(戦慄)」

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