荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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リスペクトの件、ご心配をおかけしました。
既に出演依頼を打診していましたが、返答を頂けるか不明だったため、
別種族のリスペクトキャラで想定していました。
うかつな記載で大変申し訳無い。

尚、混沌の魔法使い様からは快く出演を承諾頂きました!
メッセージでも伝えましたが、大変感謝しております。

エ・ランテル編での出演予定ですので、登場いたしましたら再度、その旨を記載します。


死の支配者と神の威光

 

 法国の陽光聖典に、六大神の一人とされるスルシャーナだと言われたアインズさん。

 

「…その名は、法国の死の神の名であったな。残念ながら違う。私もまた、死の支配者という同じ種族ではあるがね」

「わ、我々は新たに降臨された神に、楯突いたのか!? まさか彼らは従属神だったのか!?」

「彼らは私と共に並び立つ者だ、従属神などではない。力を制限していただけだ」

 

 ウルベルト達は、竜王国の戦線ではあまり派手な攻撃はしていなかった。冒険者登録も見送っていた為、アダマンタイト級ではあるとの評価のみである。

 だが元の異形種の姿に半人半異形の姿の外装を被せる外見装備を別途作っており、派手な攻撃が必要な際は専らそちらの格好で戦闘を行っていた。某ヒーローの変身アイテムみたいなそれについては、今は割愛する。

 

「この姿の通り、私は不死者だ。人類の守護の為に私の力が必要なのだろうが、私自身には人類の行く末なぞ、実際はどうでも良い。ただガゼフへの対応については、不愉快だと言っておこう」

 

 神に見放された。ニグンは命令だったとはいえ、王国の民草にとっては英雄であるガゼフの殺害を指揮した関係上、罪は逃れられぬと絶望の表情だ。

 

「もう、おしまいだ…」

「だがそうだな。王国の件については…よろしいか、皆よ」

 

 いつの間にか集まっていたギルメン達に声をかけるアインズさん。絵面的にはかっこいいのだが、実際はグループ間会話で示し合わせたのは秘密である。

 

「構わないぜ。ちまちま助けるのも限界だったんだ」

「一気に片を付けるならノるよ」

「ギルド長が来てくれたんだ、俺の堪忍袋も一杯でな」

「派手にやらせて貰う」

「いつやるか、ってだけの事だったからねー」

 

 トールは表に出ないスタンスだが、現地の勢力や各個の行動には強く干渉しなかった。後でまた相談だろうが、目下のところの懸念は払拭されたので、最初の会談時よりは協力できると回答を受けている。

 

「ふふ、我が友は皆、頼もしいな。

 そういう訳だ、早い内にこの国自体はひっくり返る。

 今の人類の生存圏が維持できる程度には、手を出すだろうがな」

 

 ウルベルトは複雑そうな表情だが、たっち・みーや、やまいこは笑顔であった。

 

「…そのお言葉があれば、我々は思い残す事はございません。

 竜王国の事もございますが、皆様がおられるなら、滅亡の危機は去ったと考えます」

 

 ニグンは大罪を犯したにも関わらず、法国の方針以上の成果を約束された事を受け、懐から毒薬を取り出した。動ける部隊員もそれに倣おうとし…、

 

「然らば、ごm」

「待てやこら」

 

 ウルベルトが重力系魔法でプレッシャーをかけて、毒薬を地面に叩き落とした。

 

「へぶっ!? な、何を…」

「死の支配者たる我らがギルド長の前で、さくっと死ねると思ったら大間違いだ」

 

 ご指名のアインズさんの顎がパカーンと開いている。

 

(え、死も弄ぶような感じで行くんですか俺?)

(ちゃうちゃう、竜王国って毎年、ビーストマンに襲撃されて国民食われてるから、陽光聖典ってこんなでも貴重な戦力なんだわ)

(法国に対するポーズだねぇ。直接の守護は無いけど、見守ってる的な)

(ナザリック周りはまあ助けるのも吝かではないけど、余計な真似すんなって言うメッセージを法国へ届けてもらいましょうか)

(それ採用したいです。どうでしょ?)

(成程、これから外で過ごすのに、余計なちょっかいとか出されるのも鬱陶しいですもんね)

(ただまあ、法国の上層部の過激派はワールドアイテムとか何か出して、こっちに干渉してくるだろうけどね)

(んげ、やっぱ元プレイヤーが建国した国だけに、あったりするんすか!?)

(配下の影の悪魔に探らせたんだが、見窄らしい槍とチャイナ服って事から、アレとアレって推察はついてるってぷにっと萌えさんが)

(最悪なの2つじゃないですかやだー!)

(でもアケミちゃんのチャイナ服姿は見てみたいかも)

(ドゴォ!)

(やまいこさんごめんなさい!)

(ボクだって着てみたい!)

(そっちかよ!? いや、今の姿なら似合うとは思いますけど!)

(…うちのに着てもらおうかな)

(デザインは似たのを用意するからそれで我慢して下さいよ…)

(おいたっち、まだシングルの俺らに対する宣戦布告と取るぞゴルァ!)

(他の面子の事はさておき、トールさんにも警戒網を厳にして貰って、奪取する方向で行こうかと。ナザリックに居る戦力も使って)

(おk、把握)

(それじゃ、法国には不干渉、王国にはお掃j…積極介入、彼ら陽光聖典にはお帰り願って、あとはガゼフ氏には口止めってことで)

(((賛成)))

 

 方針が決まった所で、沈黙していたアインズさんが厳かな口調で口を開く。

 

「確か、ニグンと言ったな? 連絡要員としてお前とあと二人を除き、法国へ戻せ。

 だが村を襲った奴等は駄目だ。ガゼフ殿達に任せる」

 

 緊張の面持ちで経緯を見守っていたガゼフは、相わかったと承諾。

 

「我々はただ穏やかにこの世界に在る事、ありのままの姿を愛でたいのだ。

 人間も亜人も、私にとっては等しく儚い生命に過ぎない。

 そのために必要な場所は守るかもしれん。降りかかる火の粉は払うだろう。

 王国の内情は気に食わんし、竜王国の惨状にも陰ながら手を差し伸べよう。

 法国は既に人の手による国なのだ、亜人殲滅の方針を変えれば、今更、我々が君臨せずとも存続できよう。

 だから、我らの行く道へ余計な干渉はするな…そう伝えよ」

「「「我ら陽光聖典、新たなる神の御慈悲に深き感謝を」」」

 

 承諾を受けた所で、怪我をしたままでは帰国もままならないだろうと、トールは周囲で隠れていたロボット達に隠蔽を解除させ、スティムパックを投与させる。

 

 周囲を固めていた数は100体近く。それが一斉に隠蔽を解除して近づいてきたのは軽くホラーである。

 

(探知系スキルでわかってたけど怖すぎワロタw)

(これで一部だもんなぁ)

 

 スティムパックで痙攣していた偽装兵とは異なり、結構痛いであろうにそこは法国の特殊部隊だけあって、脂汗を流しながら「神の慈悲に感謝を」と怪我の治る手足を見つめていた。

 

「では母国へ戻り、お言葉を伝えます」

「頼んだ。私達は神の下で罪を償う」

 

 ニグンは補佐と共に治療の終わった部隊員達を見送り、近くで跪いて頭を垂れる。

 

「すまないなガゼフ殿。勝手に彼らを戻してしまって」

「…私も、アインズ殿に跪いた方がいいのだろうか」

「ほう、殊勝な事ですね人間」

「やめておけアルベド。ガゼフ殿に余計な事をさせてはならない」

「だが、村の件といい法国の事といい、我々戦士団は一度では返しきれぬ恩を頂いた」

「気にしないで貰いたい。それなりの打算があっての事です」

「打算とは?」

「戦士団の他の面々は聞いていないでしょうが、私が法国で言われる神、それと同様の存在と言うこと、それを一切、他言しないで頂きたいのが一つ。

 王国内、これから我々は不退転の意思で民草を苦しめる者共、その一切合切を排除する。その際、助力とは言わないまでも敵対はしないで頂きたい」

「あのような隔絶した力を見せた貴殿らに、敵対なぞできるものか。そのような事でよろしいので?」

 

 アインズさんは、穏やかな風が頬を撫でる草原の上で、空を見上げた。美しい青、太陽の光、流れる雲。全てが初めてのものだ。

 

「…私は蹂躙でも玩弄でもなく、この世界のありのままを愛でたいのです。

 私が居たリアル…その世界は、陽の光も無く、大気は有害で、自然の欠片も残っていない。

 我々も、ただ日々生きるのが精一杯の、そんな世界だったのです。

 だがここには、自然を愛する我が友が泣いて喜んだであろう豊かな自然が残っているのですから」

 

 アルベドは息を呑んだ。至高の御方が暮らすリアルに幻想をいだいていたが、そんな過酷な世界だったとはついぞ知らなかった。

 

「まあ、神だのなんだの、報告してしまうとガゼフ殿に迷惑がかかるような気もしましてね」

「確かに。事実であっても正気を疑われる」

 

 見たもの、想像できるものしか信じない視野狭窄の貴族達。彼らの事を考えると報告内容に工夫が必要だが、実直なガゼフには困難な仕事である。

 

「文章の草案については此方で書くので、必要な部分だけ使って報告を纏めてはどうでしょう?」

 

 ぷにっと萌えがいつの間にか書いた草案の紙束を手渡す。かたじけないと受け取ったガゼフは、これではアインズ殿達の活躍が、と難色を示したがそこはそれ、アダマンタイト級の傭兵団と強力なマジックキャスターが居たと端に書いてある。

 

「目端の利く方ならこれでいいのですよ」

 

 これで反応が無いようなら、無能もいい所だと。これを気にするようなら、優秀か、または注意をした方がいいと。政治に疎いガゼフは目からウロコである。

 

 その後、フラットフットが村に居る戦士団の面々に伝えに行くと、派手な音や光でガゼフ達の心配をしていた彼らが我先にと出てきた。

 

「繰り返しで恐縮だが、アインズ・ウール・ゴウンの方々、本当にありがとう!」

 

 移動の支度を整え、捕縛した偽装兵を荷車に載せると、ガゼフ達は出立していった。

 


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