荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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前回の荒野の災厄。

・サンクチュアリを更地にして一大拠点化。




荒野の災厄の旅路・コモンウェルス その9

 サンクチュアリの最低限の拠点化を終えて、トールはMODにあるミニッツメン召集の電波塔を立てた。通常の募集ビーコンはウェイストランド人を集めるだけなので、これからのコモンウェルスの情勢を鑑みてサンクチュアリを半ば軍事拠点化する為である。

 

 尚、ガービーから熱視線を受けつつも断ったミニッツメンの将軍という名のなんでも屋については、ネイト・ノーラ夫妻に押し付けた。原作とは異なり緊急要請抑制MODを入れているが、どれだけ効果があるかは不明。

 

「なる程な、レイダーやガンナー達が肩身を狭くしていたのは君のおかげだったか。それでもクインシーを落とされた我々は、間抜けとしか言い様が無い」

「裏切り者が出てしまえばどうしようもないさ」

「所でトール、情報のアテとかって、流石に無い?」

「人の集まる場所となると、ダイヤモンドシティだな。中は知らんが。あと、近くに懇意にしているトレイダーのマーケットがあるから、声をかけるといい」

 

 トールは夫婦に対し、コモンウェルスにおけるレイダーやガンナー、そしてアボミネーションや人造人間に対してのレクチャーを施す。

 

「黙示録の後の世界か…」

「気楽に行きましょ。目的を忘れないで」

 

 二人はトールから提示された装備を好みの範囲でチョイスし、旅の準備を整えた。途中、MODの胸元がガバっと開いたVaultスーツをノーラが選んだが、ネイトの懇願で渋々普通の物にした。夫妻の道行きには、ドッグミートとコズワースも同行する。また、トールから渡された複雑な形状の割符を持つ。これは、トールと縁のある居留地に協力を頼む際にスムーズに行くようにとの配慮。

 

「見つかるといいな、息子さん」

 

 その探索、邂逅、そして結末も知るトールだが、コモンウェルスを旅して選択をするのは彼らだとして、口を噤んだ。

 

「所で、パワーアーマーはいいのか?」

「ガービー達ミニッツメンで使って貰ってくれ。まあ旅先で手に入るかもしれないし、余計な交戦はない方がいい」

 

 トールと夫妻とクインシー組が来てから少し経った時点で、隠れていたり去っていた元ミニッツメン達が集まってきていた。まだ追加でも10人に満たないが、新たな体制になった事に意欲を燃やしている。

 

「では将軍、彼らはチームで近隣の居留地へ支援に向かわせる」

「采配はお願いね、ガービー。トールは協力するの?」

「居留地に適した場所は少ない。入植者は少し選定するかもしれないが、そこは上手くやるさ」

 

 選定というのは、集まってきた入植者を人造人間判別スキャナで調査し、人造人間だけ集めた囮の居留地と普通の人間の居留地を分ける意味。トールの心中のみでの決定だが、ウェイストランド人を相手にする以上、居留地存続を脅かしかねない人間も居る訳で、ガービーや夫婦はその選り分けと受け取った。

 

 ゲーム的な制約で、主人公のカリスマ値等に居留地の人口は左右されたが、現実と化したこの世界ではその制限は表向き無い。トールが手を入れたスターライトドライブインは、既に2桁後半の人口だし、ゲーム中よりも明らかに広い。

 

 統制や満足度で問題が出るのではと危惧していたが、水、食料、寝床、防衛力が足りていれば、住民は代表含めて皆が協力的だ。襲撃があっても自ら撃退しているし、間に合わなくてもペナルティは無い。まあ、トールが敷いた防衛体制が万全なせいでもあるが。

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 旅立つ主人公夫妻を見送ってから、トールはサンクチュアリを軍事拠点化する作業がてら、ラジオを聞く日々を送っている。ダイヤモンドシティラジオやクラシックラジオではなく、恐らくは来ているであろうBOS偵察隊の軍用周波数だ。

 暫くはノイズが流れるだけで周波数に反応は無かったが、懐かしい男の声で放送が流れた後、半日もしない間にそれは無くなった。

 

「ダンス達が慢心せず、無事に邂逅できてればいいが…」

 

 パラディン・ダンス本人よりは、周囲の新兵(トール基準)の方がやらかしそうで頭が痛い。もし無事にダンスと再会したなら、活動内容や態度によっては新兵にブートキャンプも辞さない所存である。トール基準だとナイト・リースが危ない。ナイト・リース逃げて。

 

「おーいトール、キャラバンの取引品、倉庫に置いたぞ」

「ありがとうスタージェス。何か掘り出し物は?」

「今回は特に無いかな、いつも通りだ」

 

 スタージェスはトールの施工等を手伝う傍ら、渡された技術書を読んで大量生産のライン構築を構想中だ。Fallout4のアドオンの一つ、ワークショップにある製造機械を活用して、サンクチュアリに水以外の生産拠点を設ける積りである。

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 アドオン、ワークショップで追加される製造機械は少々気色が違った代物で、製造物に対して必要な材料を投入する事で、様々な製品を作り上げる事ができる。ただ、基本的に趣味的なアドオンであり、また効果的で滞りなく動くラインを構築するには慣れが必要だ。

 

「これでいいと思うんだが…どうだ?」

「お、上手く構築できてるな。最初の生産物はどうする?」

「まずは食料、次は弾だ。伝統的なレーザーマスケットもいいが、セルより銃弾の方が困らない」

 

 ゲーム本編では不可能だった、地下に生産拠点を構築して最初の生産ラインを稼働させる。MODの様々な食料品の中から、乾パンとビスケットを選ぶ。RADAWAYが材料に含まれている、放射能汚染の無い安全な食料品だ。缶に入って密閉されているので、保存性も良好である。ただ、ちょっと悪辣な点として、喉の乾きを覚えるので、量を食べる際は水分が必須だ。

 

 最初の食料品ラインが問題なく稼働するのを確認し、保守点検用にMrハンディやプロテクトロンを生産すると、弾薬生産のラインを設計図に沿って配置する。スタージェスは機器の調整をし、トールと共に丸一日かかって準備を終える。テストで稼働を確認した時点で、スタージェスは床にへたり込む。

 

「お疲れ。後はロボットたちに任せよう」

「そういやトール、なんで地下に生産拠点を? そこそこの広さを掘るのにコストもかかる」

「表立ってやると、インスティチュートが形振り構わず来そうだからな」

「信じてるのか? 確かに人造人間は居るとしても、どこが本拠地かわからないだろ」

 

 トールの確信を持った表情に困惑するスタージェス。ただ、トールとしては「スタージェスも少し白々しいな」と苦笑。ゲーム中では彼が死ぬと人造人間の部品を落とす。彼自身が人造人間かそうでないかは作中では謎だが、トールはこっそり調べ終えていた。

 

「どうせ、インテリ気取りの頭でっかちの引き籠りだ。そうでも無ければ、人造人間なんて哀れな存在を作ったりしない」

「ふむ。トールは人造人間について、どう思う?」

「レイルロードの奴らにも言ったが、人格と知性は人間と同格だと俺は考えるが、彼らは生物として人間と同等ではない。記憶を消して混ざらせるなとレイルロードには言っておいたよ」

「…そうか」

 

 キャピタルウェイストランドには、人造人間の集落だってあるとトール。外見は違うが、次世代を継げないところはグールと同じだとも。お互いの違いを理解し、尊重するなら共存はしていけると真剣に伝えた。

 

「コモンウェルスの混乱はインスティチュートにある。奴らをどうにかしない限り、人も人造人間も不幸なままだ」

「…トール、俺もインスティチュートを探す手伝いをしたい。可能な範囲でいいから、俺に技術を教えてくれないか?」

 

 ガレージを開いてジャンク相手にするより、一歩先の技術を覚えて役立ちたいと言うスタージェス。トールは快諾し、ロボット設計やパワーアーマーの作成、銃器の製造や改造について様々な技術を伝えることになった。

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 主人公夫妻が旅立って数週間後、サンクチュアリはその規模を拡大して近くのレッドロケット・トラックストップまでを開発範囲に収めている。ワークショップの開発範囲拡大MODを入れた覚えの無いトールだったが、大事を取ってこっそりコンソールを覗いてランダムイベント発生ポイントらしき座標をサンクチュアリの外に排除しておいた。

 

「…てか、スィートホームMOD、有効なんだな」

 

 MODの中には、新規に拠点となる場所を追加するものがあるのだが、レッドロケット・トラックストップ前に存在するそれは、トールも愛用していた。日付が本編開始前には影も形も無かったのに、他のMOD要素と同じく出現していた。

 

「扉は開いてないな」

 

 この拠点MODは内部施設はバンカー型で、必要な設備が全て揃っている。新規に設備を設置するには狭いことと、広い運動スペースが無い事を除けば、人員配置するだけで不足のない拠点として稼働できる。

 

「とはいえ、レッドロケット側は巡回以外では無人の積りだったからなぁ」

 

 配置人員の休憩場所にするにせよ、外部連絡などに少し問題がある。困ったトールはワークショップを起動し…眼の前のMOD生成拠点がインベントリに格納できる事に気付いた。

 

「まじか」

 

 重量は無く、分解はできない。トールはそそくさと格納し、気付いてないふりをしてレッドロケットの整備をする。コンコードはレイダーが少し厄介だが、そこさえ駆け抜ければ安全圏になるように、タレットタワーを建造した。警備用にロボットを配置し、人造人間スキャナを組み込んでデータを集めさせる。

 

「橋の向こうは殆どを2階建てアパートにしたが…」

 

 まだ周知が行き届いていないので集まりは悪いが、規模だけならスターライト・ドライブインの居留地に匹敵する。他の居留地で面接担当ロボットのテストと人造人間スキャナによるチェックをした上で、ミニッツメンの小隊に護衛させて入植者を受け入れている。

 

 コンコードは弱小レイダーのメッカというか隠れ家のままだが、下手にサンクチュアリ方面を襲えば、ライトアップされたレッドロケット・トラックストップと、その屋根の上に建てられたタレットタワーが、橋にたどり着く前に文字通り灰にするので、それを知る古株弱小レイダーは北には行かない。

 

 コンコードのレイダーが何をするかと言えば、野生動物を狩ったりジャンクを漁ったりスカベンジングをして、それをキャラバンに売って生計を立てている。商売できるならレイダーを辞めればいいのに。

 

 ちなみに、身体を灰にしたレイダーやガンナー、人造人間からは、破損はしているが防具類の他、少々の武器弾薬が取れる。配置したロボット達にそれらを収集するよう命令しておく。大規模な水生産と販売が噂となって武装勢力がサンクチュアリに目をつけ始めているが、斥候役が誰一人と戻ってこないのは一瞬で灰にされているからである。襲ってくるならお小遣いである。鬼か。

 

 そして上にサンクチュアリ、下は別組織の勢力圏、通りかかるのは他の過激な武装勢力(ただし戻ってこない)、装備の充実したキャラバンや、ミニッツメンの護衛する入植者だ。コンコードで細々と潜む弱小レイダー達は泣いていい。

 

「だが慈悲はない」

 

 大分後に、増大する入植者の居住スペースを求めてコンコードは制圧されるのだが、サンクチュアリ関係者はやばいと引き篭もって細々と生活していたレイダー達は反撃などはせずに降伏した。そして、いつの間にかほとんどの勢力がミニッツメンにより壊滅あるいは制圧され、自分達がレイダーらしい最後のレイダーだった事を知る。

 

「「「俺達は間違ってなかった!」」」

「…真面目に働きなさい?」

「「「はい、将軍!」」」




コモンウェルスにおいて、入植者とレイダーはほんの少し天秤が傾いただけの人間だと考えています。最初がどうだったかがとても重要で理不尽な世界です。流石は荒野のウェスタン(ぉ

振り切ってしまうと死体を玩具にする訳ですが。

新規の捏造設定で恐縮ですが、ゲーム中よりもコモンウェルスのマップは広いものとしてください。てか広い広いと言っても、あの狭さで人口ん十万人とかうせやろと。

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