ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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1話:ダウナー系の全ての始まり


「……あ、出来た」

 

 

白衣を着た痩せぎすの女が、信じられないとでも言うように呟いた。

無駄な細菌が空気中に舞わないようにマスクをして、持っていた試験管を軽く振る。怪しい緑の光を発するLED電球が、チカチカと瞬いた。

 

 

「何度やっても出来なかったのに、どうして今更…?

ま、いいか。偶然にせよ、あの子と似た遺伝子が出来たし。良いスペアになって欲しいわ」

 

 

 

高いヒールが音を鳴らした。無音の部屋に響く音を気にもせずに女は歩き続ける。個性によって壁に生えた人間の手はドアノブを回して開け放った。扉を開けた先は暗闇だ。一歩踏み出すと同時に、その姿が搔き消える。

 

 

 

 

それは未来で起こる「神野区の悪夢」と同時展開し、それに匹敵するであろう戦いの始まりだった。

 

 

___________________________________

 

雄英高校ヒーロー科。そこはプロに必須の資格取得を目的とする養成校。全国同科中、最も人気で最も難しく、その倍率は例年300を超える。

平和の象徴「オールマイト」、燃焼系ヒーロー「エンデヴァー」、ベストジーニスト8年連続受賞「ベストジーニスト」

偉大なヒーローには雄英卒業が絶対条件である。

 

 

シャギー掛かった水色の短髪と赤い瞳。透き通るような白い肌を外見的特徴とする少女がセーラー服でその門を叩く。伏せがちの瞳に加え、病気のように左右に頭を揺らしてゆっくりと歩く少女は、今にも倒れそうだ。

しかし、彼女を心配して声をかけるものはいない。

 

 

 

少女の名前は天魔(てんま) (いち)

 

 

 

雄英高校のヒーロー科を受験する、15歳で()()()()()()()()()()少女だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』

 

 

Yokoso(ヨーコソ)ー…」とコール&レスポンスを期待したプレゼント・マイクは、返ってきた沈黙に傷つきながらも口を開いた。

 

 

『こいつぁシヴィーーー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHH!!!!』

 

 

プレゼント・マイクがどれだけ呼びかけても、レスポンスは一切返ってこない。会場にいる者はラジオを聞きに来たのではないので当然の反応だが、少々可哀想に思ってしまう。

雄英高校ヒーロー科の受験は、筆記と実技の二つをこなさなくてはならない。

その内の一つである実技試験は、演習会場にてポイントが振り分けられている仮想(ヴィラン)を行動不能にしてポイントを稼ぐ方法になっている。

一見すると簡単だが、前提として機械を行動不能にする手段を持っていなくては話にならない。逆説的に、そのような個性を持っていない者は自分の身体だけでなんとかしなくてはいけないのだ。

 

 

『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校"校訓"をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!"Plus Ultra(更に 向こうへ)"。それでは皆、良い受難を!!』

 

 

最後までレスポンスは返ってこなかったが、それでも笑顔を崩さず圧をかけてくるのはさすがプロと言えよう。




pixivからやってきました、ましゅです
初見の方は初めまして、ご存知の方は再び読んでいただきありがとうございます。
ハーメルンに染まっていないので、拙いですがよろしくお願いします。
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