ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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18話:ダウナー系とトーナメント本選

「…ん、うぅ」

 

 

揺さぶられている感じがしたのでアクビをして目を擦る。顔を上げると良かったと安堵の溜息らしきものを吐いた八百万がいたので、彼女に起こされたようだ。

 

 

「起こして申し訳ありません。午後から女子全員で応援合戦するらしいので、一緒に着替えに行きましょう!」

「………」

 

 

そんな事言われていただろうか?

まあ人の話は聞いていても記憶はしていないのでそうだったのかもしれない。八百万が言うのだし、本当にあるのだろう。

控え室にて、「UA」と胸に書かれたオレンジ色のチアガールの衣装に着替えてポンポンを渡された。スタジアム向こうにもチアガールが応援をしているので、こちらも対抗して応援すべきなんだろうか。だがチアリーディングの振り付けなど練習していないから分からない。

 

 

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

 

 

昼休憩が終わり、選手出入り口から休憩上がりのクラスがゾロゾロと出てくる。B組の女子から「なんだあれ…」と言わんばかりの視線を感じた。

 

 

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ…ん?アリャ?』

『なーにやったんだ……?』

『どーしたA組!!?』

「峰田さん上鳴さん!!騙しましたわね!?」

 

 

 

察した。

人の良い八百万の事だ、疑問には思ったものの信じてしまったのだろう。衣装もわざわざ個性で創造したらしく、用意されていないのならその時点で気付いて然るべきだったのに。

 

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…」

「アホだろアイツら…」

「まァ本戦まで時間空くし、張りつめててもシンドイしさ…いいんじゃない!!?やったろ!!」

「透ちゃん好きね」

「………はあ」

 

 

着替える時間も無いので、チアガールの格好のまま成り行きを見守るとしよう。チアガールの露出はコスチュームと差異は無いし、違いは鎧の有無くらいだ。恥ずかしがるほどでもない。

 

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目、進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!』

 

 

トーナメントの組み合わせをくじで決めてから、レクリエーションを挟んでバトルを始めるようだ。レクリエーションは進出者16人の参加は個人の自由。1位になった心操のチームからくじを引こうとして、同じチームだった尾白が手を上げた。

 

 

「あの…!すみません、俺、辞退します」

「!!」

「尾白くん!何で…!?」

「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」

「騎馬戦の記憶…終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。たぶん奴の“個性”で…」

「………」

「チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かな事だってのも…!でもさ!皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな…こんなわけ分かんないままそこに並ぶなんて…俺は出来ない」

 

 

 

そんなに洗脳されていたのを気にしているのか。まあ心操の個性は初見殺しだから仕方ない、そう済ませられないのは彼の芯が通っているからだろう。

尾白の後ろに女子が集まって慰めるも、そういう問題ではないようだが女子のチア衣装にツッコむ余裕はあるので安心した。紳士だ。

 

 

「B組の庄田二連撃です。僕も同様の理由から棄権したい!実力如何以前に…()()()()()()()が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」

「なんだこいつら…!!男らしいな!」

『何か妙な事になってるが…』

『ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか…』

「そういう青臭い話はさァ…好み!!!庄田、尾白の棄権を認めます!」

 

 

 

いいのか、それで。

主審のミッドナイトの好みにより、2人の棄権が認められた。そうか、普通の人はそういう事も考えるのか。プライドだの理解出来ないけれど、世の中そんなものらしい。

2人抜けた穴を5位のチームにて埋めようとするが、そのB組のチームも違う者を推薦した。そういうの、よく分からないな。

抽選の結果、トーナメント表が出来たようだ。

 

 

第1試合、緑谷vs心操

第2試合、轟vs瀬呂

第3試合、塩崎vs天魔

第4試合、飯田vs発目

第5試合、芦戸vs上鳴

第6試合、常闇vs八百万

第7試合、鉄哲vs切島

第8試合、麗日vs爆豪

 

 

塩崎は確か繰り上ってきたB組の茨だ。彼女が障子の腕の隙間からハチマキを取っているのも騎馬戦の作戦に参考にしたから、個性の目安はついている。さて…どうしようか。

 

 

『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといて、イッツ束の間、楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

 

 

開催の時と同じく花火が上がり、大玉転がしや借り物競争が行われた。女子からチアの応援に誘われたが、そんな事をしたい訳じゃない。いつもの体操服に着替えて、一足先に控え室にいよう。

1-A控え室の扉を開けると、緑谷と尾白が話し込んでいた。緑谷の顔が険しい。

 

 

「あっ…天魔さん。どうしたの?」

「…別に。ここで待つだけよ」

「今、緑谷にあいつの対策教えてたんだ。そういえば、天魔さんは個性にかからなかったの?」

「……言わない。不平等よ、彼にも想いはあるのだから」

「ああ、そっか…そうだよね。ごめん天魔さん」

「でも俺が醒めた時に1000万持って跳んできてるからビックリしたよ」

「そうだ!天魔さん、あの数秒で轟くんの肩に着地してたよね!僕も目の前で見てて驚いたけど、何よりすごく速かったよ!」

「…あり、がとう」

「個性も強くて、きっと天魔さんは素敵なヒーローになるんだと思う。早く天魔さんの分析してみたいな」

 

 

 

 

 

そりゃあ【思考加速】の最中なのだから速く見えるのは当然だ、実際にいつもより100倍速くなっているのだから。

頑張れと一言告げてから、机に伏せて目を閉じる。今まで見ていた色が消えて、目の前には闇が広がるだけ。その先を見ようと見据えても、途中でどうしても目が動いてしまう。

 

 

『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』

 

 

いつの間にか緑谷と尾白はA組控え室から退出していた。控え室にいるモニターにて実況と共に試合が観られるようになっているが、その音すらも煩くて仕方がない。

寝ていられる環境でもないので、選手控え室へと向かおう。

 

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