ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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イラストにてお目汚し失礼します。


20話:ダウナー系と飯田 天哉※

飯田vs発目は飯田の勝利

芦戸vs上鳴は芦戸の勝利

常闇vs八百万は常闇の勝利

切島vs鉄哲は切島の勝利

麗日vs爆豪は爆豪の勝利

 

……らしい。1-A控え室でボーっとしていたので人伝に聞いた話だが。このままでは相澤先生に怒られると思うので、次の試合はきちんと見よう。最初の16名の勝敗が全て決まり、半分の8人になった。

 

 

次の試合は緑谷と轟だ。

開始から轟が氷を生成し、緑谷が個性で打ち消す。何度かそれを繰り返してた後に両者は何か言い合っているのがモニター越しに分かる。緑谷が叫び、呆然とした轟の左目から炎が噴き出した。観覧席にいたNo.2のエンデヴァーが轟に言葉をかけるも本人は無視している。

 

 

浮かべている笑顔の頬を伝うのは汗か涙か、髪で隠れているのでこの角度からじゃ分からなかった。

 

 

轟はエンデヴァーの息子だったらしい。父の個性を半分、母の氷結の個性を半分受け継いで出来たのが轟のようだ。いや、むしろ彼はその為に作られたのかもしれない。

今まで左の炎を頑なに使わなかったのは、あの親子間で何か確執があったのかもしれないな。それを自力で破ったのか、緑谷が壊したのかは分からない。

けれども轟の目は、以前とは違って生きていた。

彼はようやく歩き出せたのかもしれない。

 

 

熱膨張によって起きた大爆発で、緑谷が場外負け。

轟が三回戦進出となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

『続いて第2試合!速さで比べると真逆な男女がぶつかり合う!!飯田(バーサス)天魔!!』

 

 

飯田はふくらはぎに付いたエンジンから空気を射出する個性の為、空中でも少しなら移動が出来る。先程の塩崎のように魔手で掴んで場外に投げるのも考えたが、手の内を見せた以上対策はしてくるだろう。

 

『START!!』

 

開始の合図と同時に飯田が個性を使って市の背後を取り、そのまま肩に手を置いて押し出そうと場外に向かって加速していく。凄まじい風圧だ、目を開けていられない。

市が一回戦で負け、塩崎が勝ち進んでいたならば飯田の狙い通り場外だっただろう。彼女は周りを知覚してから個性を発動するので、そのタイムラグが飯田の勝機になる。

 

 

 

場外直前で市の前方に大魔の手を2本、左右から合わせて壁を作る。受け止める為に出したが、飯田には牽制に見えたようで市から手を離して距離を置いた。

 

 

 

「天魔くん、君の個性は強力だ。きっとあのまま進んでも場外はしないだろう。だが、俺は負ける訳にはいかないんだ!」

「…どうしたの、怖い顔…」

「俺自身の為、兄の為!勝たせてもらうぞ!」

「そう…。裁け背の罪」

 

 

正面から走ってくる飯田を迎え撃つ為に市もゆっくり走り、接触する瞬間に足元から大魔の手が出現して引っ掻く。接触寸前だった事、足元からの出現だった事が要因となり飯田は気付くのが遅れたのか魔手が当たって飛んだ。

 

 

 

「砕け悲の夢」

 

 

 

飯田の着地と同時に、足元から大魔の手が出て彼を掴む。掴んだまま飯田を何度も地面に叩きつけ、市の前に来るように投げつけた。

叩きつけられたことで痛んだ身体は、思うようには動かなくなる。身動きが取れないまま市の前に飛んできた飯田は、魔手を呼び出し踊っているかの如く攻撃する市にされるがままだった。

 

 

右手を軽く上げ、左手を上げる。

右手を振り上げ、左手と同時に地面に下ろす。

下ろして蹲ったままの両手を振り上げ、右に回りながら右手を、左に回りながら左手を交互に振り払い、最後に自分を抱きしめる。

 

 

その8連の動きに魔手が拡大的に追随し、隙なく飯田を襲った。

 

 

 

『天魔、個性を存分に使って飯田を攻撃ー!!反撃の隙もないぜ、飯田これは厳しいかぁ!!』

『天魔自体は隙の多い乱撃だが、直前に飯田の体力を消耗させて動きを鈍くしてんな。天魔自身と個性の手は独立してるから、どんな体勢でも…下手したらノーモーションで攻撃出来るぞアレ』

『なるほど、個性に攻撃させときながら自分でも殴れるってことか!』

『その解釈でいい』

 

 

 

市の個性を詳しく知らないからと実況席で解説するのはやめてほしい。対戦相手や観客、ブラウン管を伝って全国に届くから余計に。

 

「がはっ……ク、ソ…!!」

 

魔手を飯田に絡ませ、動きを制限する。その拘束から逃れようと飯田が空中に跳んだが、それは市との戦いにおいて悪手でしかない。

飯田、そろそろ終わりにしよう。

 

 

「廻れ()の檻」

 

 

 

空中で飯田を中心にし、無規則に規則性を持って魔手が彼を取り巻いた。魔手で出来た輪が幾重にも重なり、あるものは斜めに、あるものは平行に交わり僅かながらもそれぞれが円を描くように回る。

渾天儀(こんてんぎ)のように美しく、アンティークな芸術だった。禍々しく、魔手の闇に引き摺られそうなほど恐ろしい。だからこそ、洗練された恐怖心がそれに美しさを見出すのかもしれない。

 

 

 

『オイオイオイオイ!!そんなのアリかぁ!?天魔、黒い手で作った大量の輪っかを組み合わせて飯田を閉じ込めたーーー!!飯田、これじゃ身動きが取れない!!まるで地球儀!!!』

『阿保、地球儀じゃなくて天球儀だ』

 

 

 

 

もっと大掛かりに輪を増やす事も出来るが、学生相手な事、観客が楽しむ範囲ならばこの規模で充分だろう。飯田の自慢の足も身体を拘束されていては活かせない。たとえ拘束を解いても、その先に待ち受けるのはいくらでも補充出来て、全ての輪に拘束する為の魔手が全方位から伸ばせる檻だ。

 

 

「ぐううっ…!」

「天魔さん三回戦進出!」

「うわあ、メガネくんドンマイ」

「あの檻はどうしようもないだろ…プロだって破れるのは限られるぞ」

「今年の一年はエンデヴァーの息子以外も粒揃いだな…」

「敵捕縛にも役に立つな…何より本人が独立して動けるのがデカい」

「そりゃそうだ。敵拘束しながら戦えんだもんな」

 

「なに呑気な事言ってんだよ…あんなん、洒落になんねぇって…」

 

 

 

ミッドナイトがそう判断するのも無理は無い。「廻れ憂の檻」を解除して丁寧に飯田を地面に降ろす。悔しそうに顔を歪めて空を仰ぐ彼を言葉をかけるなんて事もせず、背を向けて歩いた。

 

 

 

 

「(ふふ…「廻れ憂の檻(アレ)」の危なさに何人が気付けたんだろう)」




「廻れ憂の檻」はオリジナル技です。

【挿絵表示】

要素盛り込みすぎて自分でも訳が分からなくなったのでアップします。色々切り貼りして描きました。背景入れてからおかしくなった(当社比)
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