切島vs爆豪の対決は爆豪が制したようだ。轟、天魔、常闇、爆豪のベスト4が出揃って白熱の三回戦が始まろうとしていた。
『準決!サクサク行くぜ!天魔市 対 轟焦凍!!
START!!』
開幕で終わらせようと、轟が氷結を放つ。みんな短期決戦を狙いすぎではないだろうか。
迫り来る氷河を眺めながら、2本の大魔の手で身体を包んだ。
『開始早々お約束の氷結ー!!だがおめェら知ってんだろ!天魔はここでやられる奴じゃないって事をよお!!』
吐く息が白い。市を包んでいる魔手の外はきっと瀬呂を行動不能にしたような巨大な氷で覆われているのだろう。
はて、どうしようか。
『…ありゃ、出てこないぞ?天魔、氷結に為すすべ無しかあ!?』
『んな訳あるか』
よくご存知で、相澤先生。
無理やり魔手を開かせて氷を割った。連鎖的に割れて散る大きめの氷を魔手に掴ませて轟へと投げる。ハンドボール投げにて好記録を出した魔手の投擲威力は銃よりも重い。
轟は足から氷を発生させ、飛んでくる
土煙で見えにくいが、予め把握していた轟の背後に魔手を出して掴み上げる。掴んだ魔手を凍らせても自分の身動きが取れない事を察したのか、轟はなんとか抜けようと抵抗していた。
「…ジーンリッチじゃなかったのね。おめでとう」
「……お前、俺がデザインベビーだって言いたいのか…?いい加減にしろよ…!」
「あなたは愛されて生まれてきた。それに気付いたのは、とても幸せなこと…」
怒りに染まった目が市を捉えた瞬間、感情の炎が消えて凪いだ目に変わる。あの激情からこの速さでのクールダウンは珍しい。自身の怒りで狭まった視野に一体何を見たのだろうか。
「お前、」
「…あなたの目に、何が映っているの…」
「…破滅を畏れるお前と…もう一人のお前、か?」
「……とても静かに…私の心を見透かすのね…」
「見えただけだ。今の俺じゃ、お前を救えるわけじゃねえ」
「それでいいわ…あなたじゃ私を救えないもの」
「そうか。お前も…そうなんだな」
「人を傷付けない人間はいなく、間違いを犯さない生物もない。それでいいのよ。希望を見ろなんて言わないわ……ただ卑屈にだけはならないで」
緑谷との戦いで何かを説かれたのか、以前よりも理性が見える。縛っていた自身の左を解放する事の意味を考えているのだろうか。
自分だけが進んではダメだと、相手を残していくのは嫌だと。
「…誰かを救えないかも。何も残らないかも。
それを“何とかしたい”と考えるのは、とても疲れるわ。枷に思うそれも、きっと未来の糧になる」
「……天魔、」
「貴方はまだ生きている。自分を信じて、戦えばいい。…貴方にはそれに耐えられる
「お前も、緑谷も…フザけんなよ…」
長時間出し過ぎたらしく、轟を掴み上げていた大魔の手は消えてしまった。着地するやいなや、足元を凍らせようとしたので空中に逃げる。市を見上げて次の攻撃を仕掛けようとしているのが見えたので、地面から大魔の手を市に向けて出し、それに捕まって勢いよく轟へ迫る。着地と相手への叩きつけを同時に行う技なので、たまらず轟は市から距離を取った。
互いの距離が空き、相手の出方を窺うためジリジリと回る。
何か少しのキッカケで勝敗がついてしまうような緊張感に包まれた。