最終日
VIPルームの個室でくつろいでいるマフィアへ交渉を持ちかければ、彼等マフィアのルールに
意外にも、賭けはルーレットでは無くチェスで行うようだ。てっきりある程度予測地点を操作できる市のルーレットで交渉が行われるのだと思っていたが、出番はなさそうなので外で待機していよう。
「なんだオッサン、俺と勝負して勝てる見込みあんの?」
「だって君達は
「…はっ。女侍らせて良い身分だな。負けても慰めてもらえるもんな?」
マフィアのボスは統計的な刺青の入った中年男性……ではなく、そこそこ顔が整っている男だった。目元に小さな星の刺青が入っていて泣き黒子のよう。賭け事に強い強運持ちで、ギャンブルで組織の金を稼いでいるらしい。軟派な男らしく、ロベレットに笑顔で手を振っている。
……本当にこの男がボスなのだろうか?
「はー、やれやれ。この豪華客船のカジノにいるにも関わらずチェスとはね。ウチの事よく調べてんだな。遊戯で育ってきた俺らはどんなイカサマを吹っかけられても余裕で勝つし、勝負を受けないなんて事はしない。チェスはあまり馴染みの無いゲーム………おまけに
ヒーロー:パワーク
個性「感覚強奪」
相手の五感を一時的に奪う事が出来る。奪った箇所は黒く変色してしまう。
言葉通り、マフィアのボスは何も見えていない。相手の視界を奪ったのならば、今のパワークは目が黒くなっている事だろう。それを隠す為に、ヒーローコスチュームにて顔を隠す仮面を付けているようだ。仮面の色が黒いのもそれを誤魔化すため。しかしなぜ狐の面かは詳細不明。
「はは、対ギャンブルにおいては相性の良い個性だが………なめられたものだな。見えないというアドバンテージは、俺にとって不利でも何でもない」
対戦相手:
個性「
運が良い。ひたすら運が良い。ギャンブルやゲームで重宝する。
「幸運はいつだって俺の物だ。俺の個性は勝利の女神そのもの。オッサンじゃ俺に勝てないって」
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??
???
………ん??
ん!?
仮面で顔を隠したオッサンの個性で暗かった視界が戻る。元通りになった視力は今まで駒を動かしていたチェス盤を映し、理解に数秒使ってしまった。駒が、全て取られている。
俺の負けだ。
どうして負けた?視界が無くとも絶対に優勢だった。絶対にだ。
「(どうして手を抜いた!?)」
まるでワザと負けたみたいに…!!
オッサンの個性は視界を奪うんじゃなかったのか!?
敗北を知覚し、無敗に傷がついて手が震えている。確かにオッサンも強かった。だが、俺もギャンブラーとして全てのゲームに精通している。不得意でも、それなりのレベルにはなっている筈だ。オッサンと互角の…それ以上の戦いをしていた。
……いや違う。
オッサンが何もしていないなら、必然的に消去法で残る人物…………まさか。
「(女か!!!)」
オッサンが座るソファの後ろで立つ女を睨む。俺の殺気など感じていないのか無視しているのか、女としての魅力が溢れる官能的な笑顔を浮かべて手を振ってきた。そして無意識に手を振り返している自分に気付いた。
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ヒーロー:ロベレット
個性「好感度」
どんな者でも彼女に好感を持ち、彼女に有利に動く。密室や距離など制限はあるものの、匂いを嗅がせてしまえば無敵だ。
「…嗅覚。視界だけでなく密かに臭いも奪われていた…ってことか」
「ソ!彼女の香りを受けた君はこちらに有利に動き…私達に
「……お前は………
「はて、私はただのアラフィフだから難しい事は分からないヨ」
つまりマフィアのボスと言える人物を相手に、警察からの依頼だったとしてもパワークが本気を出すまでも無かったという事になる。
「随分と強運をお持ちで天狗のようだが、その手の輩ほど弱点が共通している。度し難い慢心、いつもありがとネ!」
敗者にウインクをしている場面なんてただの好々爺にしか見えないのだから不思議だ。