ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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イラストにてお目汚し失礼します。


29話:ダウナー系と職場体験〔決着〕※

待ちくたびれたよ。

どうせパワークが勝っても負けてもプランが変わるだけで作戦に支障は無いのだから手早く済ませて欲しかった。

VIPルームから出てきた対戦相手をパワークが拘束している。後ろに控えていたスーツのマフィアはボスが捕らえられている事で降参しているのか大人しく付いてきていた。

拘束したマフィア達を閉じ込める為に、パワークが使用していた客室を使うようだ。あと数時間で港に到着するし、その位の短時間ならば同じ部屋で監視するだけで良いみたいだ。船の施設や着船までの時間で拘束方法が変わるらしい。なるほど、勉強になる。

夜空が広がるバルコニーを移動していると、どこからか羽ばたく音が聞こえた。港も近いし、鳥だろうか。何気なくその羽ばたきを見上げると、

 

 

 

 

「(……鳥)」

 

 

 

 

羽毛の生えていない翼が音を立てて近づいて来ている。大きな鳥だ。

 

 

 

 

 

 

………いや違う。

あれは鳥ではない。

 

 

 

 

 

 

 

星の光で照らされた鳥の影に、身体があった。鳥ではない人間の四肢だ。

羽の個性持ちが飛んでいるのかと見ても、様子がおかしい。どうやら背中に人を乗せて飛んでいるようで、ライフルを構えているのか赤いスコープが反射してパワークの後頭部を捉えている。

 

 

 

____________さすがパワーク。

事務所に着いた頃の会話を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ギャンブルで勝っても、相手はきっとボスではない。裏組織のボスは総じて表には顔を出さないからね…これまでの情報でも、組織に関わった者は銃殺されている。…腕の良いスナイパーがいるよ。それも狙撃と相性のいい個性だ)

(私は戦闘向きではないし、メタモルは近接戦闘しか出来ないわよ?)

(誰が戦闘向きじゃないって…?俺は遠距離も出来なくはないが、確実じゃないからオススメしねーですよ)

(うん、それは充分理解しているよ。そうだね…お市ちゃん、どうかな?君に狙撃手の拘束をお願いしたいんだけど)

(………)

(なーに、もしもの保険はかけておくから、焦らなくていい)

 

 

 

 

 

 

……焦らなくていい、か。らしくない。

狙撃に相性の良い個性。スコープを気にせず観察すると、銃口の先に穴が出来ていた。あれは市も使っているからよく分かる、空間同士を繋げる為の穴だ。銃弾の出口が、パワークの顳顬(こめかみ)の横数ミリにある。スコープの赤い光は陽動、本命はターゲットの急所。

 

_______銃声が反響もなく空に消えて、パワークの顳顬を狙った銃弾は市が伸ばした手の中に握られていた。

 

 

 

 

 

「……フム、素晴らしい」

「いってらっしゃいな♡」

「わぁーってる、跳ぶぞ!!」

「…ぁ」

 

 

 

メタモルの右肩に座るよう担がれて跳躍する。細身だけどしっかりと筋肉が付いていて、なるほどこれは近接戦闘向きだと思った。

 

 

 

「空、飛べるか!?」

「…無理、だけど行く」

「じゃあ投げる、捕まえてこい市!」

 

 

 

メタモルに手を握られ、跳躍の勢いのまま投げられた。

メタモルの個性「化けの皮」は、身につけている時に一度だけダメージを無効化する能力がある。先程パワークを狙っていた銃弾を掌で受け止めたのがダメージ換算されたのか、効力を失った皮が怪しく光って空中で剥がれていくのが分かった。

黒かった髪が見慣れた水色に変わり、ディーラーの服も剥がれヒーローコスチュームが現れる。口元を隠すフェイスマスクに触りながら空中で邪魔なローブを脱ぎ捨てると、受け取ろうとして失敗したのか「ぶっ」とメタモルの声がした。

きっと顔面キャッチしたのだろう。

 

 

狙撃手に近づくと、羽を持った人間は平均よりも大きな身体で、脳が剥き出しになっていた。

死柄木が使っていた脳無だ。

なぜ脳無がここに…ニュースでは保須市でヒーロー殺しが逮捕された記事に敵連合が報道されていたが、なぜこのタイミングなのだろうか。

 

 

 

 

「(……届かない)」

 

 

 

メタモルに投げられ手を伸ばしていても、あと数メートルで届かなさそうだ。それは困る、任された仕事は全うしなくては。

 

 

 

 

「掴め()の月」

 

 

 

 

背中に2本の魔手を掌だけ出して、翼のように動かして空中を移動する。

本来は目の前の敵を魔手で挟むものなのだが、短時間だけ空中移動する事が判明したので使わせてもらおう。

空中を飛んで追いかけてくるとは思わなかったのか、ライフルの充填が遅い。すぐに発砲できる拳銃を出して個性を使っても、顳顬から来るのを分かっているので魔手で防ぐ。脳無の羽を切り落として、狙撃手を気絶させる。2人以上の重さを持って船へと戻った。

 

 

 

 

「お市ちゃんお帰り〜!ヒーローコスチュームは露出が多いから駄目って言ったのに!パパは許しませんよ!」

「すごいわお市ちゃん!貴女の個性、そんな風にも使えるのね!空も飛べるなんてビックリしちゃった」

「ああ、よくやった。が…その露出は俺もどうかと思うぞ。まだ学生なんだからな」

 

 

 

 

こうして、ボスではないがマフィアの稼ぎ頭を捕らえる事に成功した。後は警察が尋問やらで自白するのを待つだけだ。

 

 

 

 

 

こうして、少しのイザコザがあったものの職場体験は無事終わったのであった。




以前描いたもので…お恥ずかしい。
化けの皮が剥がれている所になります。

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