筆が乗ってる内に書きたいと思います。願わくば神野まで。
32話:ダウナー系と救助訓練レース
職場体験が終わった翌日。
それぞれが体験先で得た刺激は良いものだったようで、一皮向けたような雰囲気がある。爆豪に関してはその限りではないが。
「天魔ちゃんは職場体験どうだった?」
「…別に。豪華客船のカジノに潜入してディーラーしてた」
「なんかレベル違くない!?」
キチンと学べた者がいれば、プロ世界の闇を見た人もいる。そして職場体験中に緑谷から送られてきたアドレスは、ヒーロー殺しと遭遇した時の住所だと判明した。
……ああ、あの時の人か。
そういえば、死柄木に「また会おう」と言われたんだっけ。タイミングまでは教えてくれなかったけれど、まぁどこかで会えるのだから放っておこう。
「ハイ私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね。はいヒーロー基礎学ね!久し振りだ少年少女!元気か!?」
「ヌルっと入ったな」
「久々なのにな」
「パターンが尽きたのかしら」
「職場体験直後ってことで今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!!」
生徒の失礼なツッコミにもちゃんと対応してくれるから、人間が出来ている。パターンが無尽蔵である事を告げ、今日の訓練方法を教わった。
クラスの人数の都合上、5人3組と6人1組に分かれて1組ずつの訓練。使う場所は複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集地帯の運動場
オールマイトが救難信号を出したら街外から一斉スタートし、誰が一番早くオールマイトを救けるか競争する。建物への被害は最小限に。
前歴のある爆豪を指して注意をする。誰がとは言わないが、指で思いっきり差されたので苦い顔で「指さすな」と言っていた。
1組目は緑谷、尾白、飯田、芦田、瀬呂と機動力が高いメンバーが固まった組だ。モニター前で見学するが、緑谷の評価がイマイチ高くない。飯田も怪我をして万全の状態ではないものの参加している。
スタートと同時に瀬呂が個性のテープを伸ばして空中に躍り出る。そうやってオールマイトを探す瀬呂を、緑谷が追い抜いた。
緑の光を全身に纏い、以前とは格段に向上した動きになっている。あらゆるパイプや突起物を足場にして跳ねている。職場体験先で相当な経験を積んだようだ。緑谷本人も、柔軟な思考や予測シュミレーター能力の高さはクラス1位を争うレベルだ。頭が良い事と賢い事は違う。
……と思っていたのだが、濡れたパイプへの着地時に足を滑らせて落ちた。着地先をよく見ていなかったのか。その配慮が無いから、ああいった移動方法は現在習得中のようだ。
滑り落ちたタイムロスで、オールマイトを最初に救けたのは瀬呂だった。子供の運動会のように「助けてくれてありがとう」のタスキが肩からかけられているが、あれは少し恥ずかしいと思う。
市は2組目なので準備を始める。
メンバーは常闇、青山、耳郎、切島の5人。
索敵に秀でた耳郎、能力の高い常闇、冷静な判断力を持つ青山、正面突破の切島。
スタートの合図で動いたのは耳郎だ。その場にしゃがんでプラグを使って索敵を行う。
常闇は
青山はレーザーの時間に注意しつつ、緑谷のように跳ね、切島は硬化した指を鉤爪のように使ってビルを登っている。
「………おいで」
右手を胸に当て、左手でローブを持って
魔手で包まれている時が1番穏やかでいられる。ゆりかごのように、ここにいる限り自分は永遠に侵されないという絶対領域。精神安定の薬。このまま永遠に
それを打ち破ったのは、誰でもない大魔の手だ。
起きろとばかりに手を開いて顔に光が差し込み、目が焼き尽くされてしまいそうな光量に思わず顔を覆った。
市を包んだまま上へ下へと移動し、入り組んだ所では投げられ空中でオールマイトを探す。
「(…………いた)」
何処かの屋上で、救援者らしからぬ態度で待ち受けているオールマイトが笑っている。流石にいつもの様に大声で笑ったりはしていないが、存在感が違う。
そちらに向かって速度を速め、オールマイトの所まであと数秒。
だったのだが、僅差で常闇に抜かれてしまった。
常闇は空中で
「ふむ、1番は常闇少年か!まずはありがとう!
天魔少女も惜しかった!君はスタートで自分の時間を作るから、そこをどう活かしていくかが課題だね」
遠回しに「早く行動しろ」と言われたがそのくらいは市も理解している。順位にはこだわっていないので残念という気持ちはないが、あのタスキを付けなくていいと思うと1位にならなくて良かったと思ってしまう。
切島、耳郎、青山の順でオールマイトの所へ集合した。案の定というか予想通りというか、青山は腹を押さえていた。
………痛めたのか。
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ヒーロー基礎学が終わり、ヒーローコスチュームから制服に着替えるので更衣室へと入った。
「いや〜今日の授業は楽しかったね!」
「私はまだまだですわ…もっと臨機応変に必要な物を創造しなければ」
「それにしても緑谷が早かったよー」
「三奈ちゃん同じ組だったものね、ケロ」
「デクくん凄かったよね!」
「ウチも機動力どうにかしないとだよ。救助してて間に合わないのが1番最悪だし」
「…ふ、あぁ」
着替えながらヒーロー基礎学の感想を言い合う女性陣を尻目に、眠気が襲ってくる。しっかり睡眠はとった筈なのだけど、まだ足りないようだ。
「おい緑谷!!やべェ事が発覚した!!こっちゃ来い!!見ろよこの穴、ショーシャンク!!恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!!隣はそうさ!わかるだろう!?女子更衣室!!」
隠しもしない大声が更衣室の何処かから聞こえた。耳郎が舌打ちをして空いてるであろう穴の前に立つ。
全身の鎧とフェイスマスクを外し、ストラップレスのブラジャーを外したまま
「峰田くんやめたまえ!ノゾキは立派なハンザイ行為だ!」
「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為なんだよォォ!!」
『(最低)』
女子の心が1つになった。
A組の
「八百万のヤオヨロッパイ!!
芦田の腰つき!!
葉隠の浮かぶ下着!!
天魔のしなやかな脚!!
麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア「ドックン」あああ!!!!」
「ありがと響香ちゃん」
「何て卑劣…!!すぐにふさいでしまいましょう!!」
「(ウチだけ何も言われてなかったな)」
自業自得、因果応報。
同情の余地はない。