林間合宿三日目、昼
続・“個性”を伸ばす訓練
「皆もダラダラやるな。何をするにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて、何の為にこうしてグチグチ言われるか常に頭に置いておけ」
原点。何の為にこうして汗をかいているのか。
市は……市の原点はいつだったか。
「ねこねこねこ…それより皆!今日の晩はねぇ…クラス対抗肝試しを決行するよ!しっかり訓練した後はしっかり楽しいことがある!ザ!アメとムチ!」
ああ…そういえば、しおりにそんなこと書いてあった気がする。「肝試し」はそんなに心踊るものなのだろうか。
個性伸ばし訓練では、昨日の事を省みて魔手で作った日陰に入って訓練をする。どうせ名目は「魔手の永久発現」なのだ。日陰にする為に使っても、ずっと発現させるためだと思えば何も言われまい。
今日の夕飯メニューは肉じゃがだ。相変わらず飯田はフルスロットル。B組が担当してるジャガイモの皮むきに参戦している。
すこし煮崩れしたり、人参が固かったりしたけれど初日のカレーと同じように男子組はハイテンションで食べていた。
……そんな、泣くほどのことか?
「…さて!腹もふくれた皿も洗った!お次は…」
「肝を試す時間だー!!」
夜遅くまで勉強していた補習組はつかの間の安らぎに心が踊っているが、ドS相澤先生によって補習授業に引きずられていった。「大変心苦しい」とは言ってるけど絶対嘘。
……むごいな。あれはもはや断末魔だ。
クラス対抗肝試しの脅かす側先攻はB組で、もうスタンバイしているらしい。二人一組で3分おきに出発し、森の道を一周してくるようだ。
一周にかかる時間は約15分。
折り返し地点で名前を書いた札を持って帰ればクリア。
脅かす側は直接接触禁止で、脅かしは“個性”アリ。
勝敗はより多くの人数を失禁させたクラスの勝ち。
1組目:常闇、障子
2組目:爆豪、轟
3組目:耳郎、葉隠
4組目:八百万、青山
5組目:麗日、蛙吹
6組目:尾白、峰田
7組目:飯田、口田
厳正なくじ引きの結果、8組目にて市とパートナーになったのは緑谷だった。組み合わせが不満なのか爆豪は尾白に、峰田は青山に迫っている。
断った方が身のためだ尾白。青山は分かっているから全力で首を振っている。
落ち着いたのか、1組目がスタートして森の中に消えていった。最初の2組は静かに驚く人が集まっているので、森の
5組目の麗日と蛙吹ペアが森へ入っていった。
そして数分後、恐怖が顔を覗かせる。
「…何この焦げ臭いの_____……」
「あれは…?」
「黒煙…」
「何か燃えているのか!」
「まさか山火事!?」
森から出る煙を確認してすぐ、青色さんが宙に浮いて森へ引き寄せられた。周りの反応から、誰も個性は使っていない。
引き寄せられた勢いのまま、大きな棒で頭を殴られた青色さんは血を流して気絶した。
「飼い猫ちゃんはジャマね」
「な…何で…!万全を期したハズじゃあ……!!何で敵がいるんだよォ!!!」
倒れた青色さんを踏みつけるのは、サングラスをかけた大柄の男にトカゲ男、一歩下がった所にズボンのポケットに手を入れるマスクをした白髪の青年
「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら敵連合
開闢…天と地がはじめて出来た時、または世界の始まりの時。
仰々しく名乗る割にはダサい名前だ。国語辞典でカッコいい言葉を見つけた子供が付けたようなネーミングセンス。
「敵連合…!?何でここに…!!」
「この子の頭潰しちゃおうかしら、どうかしら?ねえどう思う?」
「させぬわ このっ…」
「待て待て早まるなマグ姉!虎もだ落ち着け。
「どうでもいいけど、ステインはオールマイトだけじゃなくレプリカ様も認めてたの忘れんなよスピナー」
ヒーロー殺しステイン…彼の思想に感銘を受けたものか。
確かに、あの時会った彼の信念は人を惹きつけるに相応しいものだった。もしも会うタイミングが違えば、市はスピナーと呼ばれた男のようになっていたかもしれない。神や尊い者を信仰するのは自由意思だ。だか、それも度が過ぎると自我が確立せず、確固とした自分を持っていない事になる。
市が言えたことではないが。
スピナーが取り出したのは、あらゆる刃物をベルトで纏めた大剣。
「何でもいいがなあ貴様ら…!その倒れてる女…ピクシーボブは最近 婚期を気にし始めててなぁ。女の幸せ掴もうって…いい歳して頑張ってたんだよ。そんな女の顔キズモノにして男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ」
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」
「虎!!「指示」は出した!他の生徒の安否はラグドールに任せよう!私らは二人でここを押さえる!!皆行って!!良い!、決して戦闘はしない事!委員長引率!」
「承知致しました!行こう!!」
クラスメイトを連れて逃げようとする飯田を止めたのは緑谷だ。赤色さんに「知っている」と言った彼は、一人でどこかに行こうとしている。
「…緑谷」
「っなに天魔さん」
「困ったら叫んで………
「?わ、分かった!」
一刻でも早く行きたいのか、そう返事をして跳躍していった。
いや、絶対分かってないアレ。
「なに?俺にも教えてよ」
「…嫌な人」
「マズい!委員長早く!!」
市に向かって繰り出される
「天魔くん!!」
「はい、1人死んだ」
防いだハズの手は魔手をすり抜けて、市の胸を貫いていた。