ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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43話:僕のヒーロー

洸汰くんを庇って背中に一撃を食らい、ポケットに入れていたケータイが壊された。ヒーロー殺しの時みたいに増援は望めない。

 

僕一人の力で、この(ヴィラン)をなんとかしないといけないんだ。

 

 

 

 

 

ガードしたにも関わらず、左腕の骨がボロボロになった。圧倒的な力だ。

 

 

「あ、いけね。そうそう知ってたら教えてくれよ。爆豪と天魔ってガキはどこにいる?」

「!?」

 

天魔さん、かっちゃん_________!?

 

「一応仕事はしなくちゃあ…よ!」

 

 

折れた左腕を庇いながら攻撃をいなすけれど、(ヴィラン)の方が経験値と場数のせいか強い。ワン・フォー・オールフルカウルで攻撃してもビクともしない。

 

 

「必ず救ける!?どうやって?実現不可のキレイ事のたまってんじゃねぇよ!自分に正直に生きようぜ!!」

 

地面に蹲る僕に振り下ろされようとしていた左腕は、洸汰くんが投げた石によって止められた。

 

 

「ウォーターホース……パパ…ママ…も、そんな風にいたぶったのか…!」

「_________!!」

「ああ?マジかよヒーローの子供かよ?運命的じゃねぇの、ウォーターホース。この俺の左眼()を義眼にしたあの二人だ。殺したかったのによぉ…レプリカだか訳の分からん奴に止められて消化不良だったんだよ。しかもその時いたガキが一緒に行動してるなんてよ…殺したくて仕方ねえ!」

「おまえのせいで…おまえみたいな奴のせいで、いつもいつもこうなるんだ!!」

「………ガキはそうやってすぐ責任転嫁する、よくないぜ。俺だって別にこの眼のこと恨んでねえぞ?俺は人を殺したかっただけで、あの二人はそれを止めたがった。悪いのは出来もしねえことをやりたがってた…てめェのパパとママさ!!!っとなったらそうくるよな!?ボロ雑巾!」

「悪いの、おまえだろ!!」

 

 

何も考えるな。

たとえ目的が友達でも、(ヴィラン)がレプリカの連れを仲間にしていても、一瞬でも揺らげばやられる。そうしたら、洸汰くんを救けられないじゃないか!!

 

 

スピードも劣る!

ダメージも与えられない!

こいつは強い!!

なら_______

 

 

「捕まえた!これで速さは関係ない!」

「(折れて使えねえ腕を筋繊維に絡めて……!!)で何だ!?力不足のその腕で殴るのか!?」

「できるできないじゃないんだっ…ヒーローは!!命を賭してキレイ事 実践するお仕事だ!」

「(何だ!?さっきまでと様子が…)」

「あああ!!」

 

 

轟音と共に土煙が上がり、久しぶりに使った100%の力で足場が崩壊する。勢いに負けて軽い身体が吹き飛ばされて崖下に落ちていく洸汰くんの悲鳴を聞いて、両腕が動かないながらも声の場所に向かった。

 

「(駄目だ、間に合わな……!!)」

 

口で服の襟を噛もうと土煙から顔を出して崖下を見る。

 

「ぁ……また、なんで…!」

「……天魔さんの、個性…」

 

落ちそうになった洸汰くんを崖から生えた黒い手が掴んでいた。

どうして天魔さんの個性がこの場所に…?

掴んでいた手は、洸汰くんを引き上げてから消えていく。

 

 

「ハァ…ハァ…施設に行こう…こっからは近………」

 

 

背後で石が崩れる音がした。

嫌な予感がする。振り返ると、先ほどの(ヴィラン)が大量の筋繊維に包まれて起き上がっている所だ。

 

「ウソだ…ウソだろ……100%だぞ…!?」

 

 

オールマイトの力だぞ!!?

 

 

「テレフォンパンチだ。しかしやるなあ!緑谷…!!」

 

 

気合いと勢いをつける為に拳を耳まで引いたから、その威力に気付いた(ヴィラン)が軌道を読んでガードしたっていうのか!?

「テレフォンパンチ」なんてボクシングでもやってないと分からない言葉だ。ただがむしゃらに殴るのではなく、総合格闘技等で計算された動きの経験値があることも察してしまった。

洸汰くんを背中におぶらせて攻撃を避ける。さっきまでとは比べものにならない速さと力だ。背中を庇いながら地面に擦られ、色んな考えが脳内を巡る。やめろ考えるな、深みにハマる。

 

今!ここで!戦って!!勝つしか!!!!

おまえに道はないんだ緑谷出久!

救けるんだろ!!おまえの原点を思い出せ!!

 

 

「下がってて洸汰くん…で、ぶつかったら全力で施設へ走るんだ」

「ぶつかったらって…おまえまさか!ムリだ逃げよう!おまえの攻撃効かなかったじゃん!!黒い手じゃ駄目なのか!?両腕折れて…」

「大丈夫!」

 

天魔さんの個性じゃ時間稼ぎにしかならない。USJで見た大きい手ならまだしも、さっきの手だけなら数も足りないし耐久力も分からない。それにまた出てきてくれるかすらも賭けだ。

 

反動で骨が粉々になった右腕を(ヴィラン)にぶつける。握った拳は振り抜けずに均衡する。

痛い。

痛い。

痛くて痛くて涙が出るけど、そんなこと言っていられる場合じゃないんだ。

 

 

「____…じょうぶ…大丈ぶ!!()()()()後ろには絶対行かせない!!からっ…走れ!!走れ!!

「んのガキが!てめェエ最っ高じゃねえか!!!」

「ゔゔ…っるせぇええええええ」

 

 

相手の方が強い。どんどん仰け反って、地面に押し付けられても絶対に諦めない。

ごめんお母さん。お母さん、ごめん。

オールマイト!!

オールマイト!!!

オール、マイ…

 

「潰れちまえぇ!!!」

 

地面と(ヴィラン)の筋繊維が近付き、意識を失いかける。目の前が暗くて、とても眠い。

 

「!?なんだ、水!?」

「やっやめろオオオ!!」

「後でな!な!?後で殺してやっから待っ____」

 

 

________洸汰くん

…そうだ、僕は。

あの子を救ける為にここに来たんだ。

 

 

洸汰くんの個性の水をかけられて一瞬だけ力が抜けた。視界が元に戻り、眠気が消えていく。冷静になった頭で見ると、暗かっただけで僕の周りには沢山の黒い手が僕を守るように地面から筋繊維を押し返していた。

その僅かな隙間と時間に、勝機を見出す。

 

 

「ころっさせてえええ」

「待て!パワー上がってねえか…っ」

「たまるかあああああ!!!!!」

 

 

ワン・フォー・オール1000000(百万)%

デラウエア・デトロイトスマッシュ!!!

 

 

 

_________捉えた!

防御に回そうとした(ヴィラン)の筋繊維が、黒い手によって阻まれる。その力強さに数秒で掻き消えてしまったけれど、その数秒で充分。

最高の一撃を顔に思いっきり叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腕はもうボロボロで、全身が痛い。息が苦しい。

…けど、(ヴィラン)は起き上がってこない。

フラついた身体を無事な足で支えて、皆の所へ行こう。洸汰くんを、守らなければ。

洸汰くんが飛ばされた時や最後の一撃は、天魔さんのおかげだった。だからこそ、狙われている彼女とかっちゃんを守ってお礼を言わなければ。

 

「ひとまずこの(ヴィラン)は放置しとく。ボロボロの腕で威力は落ちてたろうけど、それでも相当なダメージのハズ…すぐには起きないと思うし、起きてもまともに動けないと思う」

「……けど、……あ」

 

 

(ヴィラン)の方を向いて声をあげた洸汰くんを見て、まさかまた起き上がったのかと全身に鳥肌が立つ。振り返ると、天魔さんの個性である黒い手が(ヴィラン)を拘束していた。倒れている地面が黒く変色し、手が出てくる空間へ(ヴィラン)が沈んでいく。

 

 

「な、なんだあれ…どうなってんだ!?」

「…分からない。けど、天魔さんだからきっと大丈夫だよ」

 

黒い地面に完全に沈んで、(ヴィラン)がいた所はなにも無くなった。彼がどうなるか不安だけど、これでもう対峙しない事に確信が持てた。天魔さんは「任せろ」と言ってくれたのだろうか。

……そういえば、この場所に来る時、天魔さんが言っていたような気がする。

『困ったら叫んで……付けておくから…』

きっと、黒い手のことを言っていたんだ。今更だけど、思い返せば僕が叫んだ時にあの手が救けてくれていた。

 

 

「…あいつ、天魔って名前だったのか」

「うん。正確にはあの手じゃなくて本体の人の名前だけど…」

「知ってる」

「そっか…。これから、僕は君を守って施設に向かうよ」

「え?」

「君にしか出来ないことがある。森に火をつけられて、あれじゃどの道閉じ込められちゃう。わかるかい?君のその“個性”が必要だ。僕らを救けて。…さっきみたいに」

 

 

洸汰くんを背中につかまらせて、残した足で跳躍する。脳裏をよぎるのはさっきの言葉だ。

 

 

『爆豪と天魔ってガキはどこにいる?』

 

 

天魔さんは、さっき肝試しをする森の入り口にいた。マンダレイに引率を頼まれた飯田くんなら、彼女を施設に送り届けているだろう。

だけどなんでだろう。嫌な予感がする……!

 

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