ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

45 / 68
イラストにてお目汚し失礼します。


45話:ダウナー系と転転転※

「ハイそこ!」

「___っ!?」

 

 

魔手の支える力も加えて防御(ガード)したのにとんでもない膂力(りょりょく)だ。猛スピードで建物に突っ込み、壁を破壊して机にもたれかかる。

 

「天魔ちゃん!」

「っ天魔…狙われてる生徒か!」

 

偶然にも施設の一部屋、皆が集合してる所へ突っ込んだらしく赤色さんから言われた目的は達成した。けど、相澤先生がいない。緑谷が救けにいったコウタがいるので、無事に保護されたみたいで安心だ。

 

「おまえまで…ボロボロじゃんかよ…」

「洸汰くんは生徒の所に!」

 

何か言っているが、加速された世界ではゆっくり過ぎて何言ってるか分からない。すぐに起き上がって、外で眺めているフェイクの元へ跳ぶ。超速戦闘の再開だ。

 

「は、速え…」

「くっ、イレイザーめ、あと数十秒だったのに!」

「どういうことですかブラド先生!」

「さっき相澤先生が戦線に出てしまったからここを離れられないんだ!天魔くんと戦ってるあの(ヴィラン)の相手をすれば、僕たちが無防備になるから!」

「天魔ちゃん待って!天魔ちゃん!!」

「…体育祭の、化け物個性なのに、……なんであいつが押されてるわけ…?」

 

 

穴が空いてると大変だろうから、市が突っ込んで破壊された建物の穴は魔手で埋めておいた。やはり誰も巻き込まないという点においても、フェイクとは空中戦を繰り広げた方が合理的。

さっきは気付かなかったが、よく見れば森に蒼い炎が広がって黒煙が空に昇っている。相当温度が高い炎か、炎色反応でバリウムが燃えているか。

エンデヴァーならともかく、轟はまだ青い炎を出せるレベルになっていただろうか。違うならば炎の個性か、芦戸の強酸のようにバリウム()を噴出する個性を持つ敵がいるということだ。

 

 

「お、爆豪くん回収完了だってさ。なら俺もそろそろ連れてかないとな」

「……抵抗は?」

「もちろんアリだ」

 

 

【思考加速】同士で戦うことは、スピードでとれるアドバンテージがなくなった状態を示す。自分の素の身体能力の高さが求められ、対フェイクに関しては個性が使えないと考えていい。

均衡していた筈の戦いが崩れた。先程よりも速くなったフェイクのパンチが迫る。しかしこちらもタダで殴られるわけにはいかない。

地面と垂直に直立して空気抵抗を減らす事で急降下しそれを避ける。

それを確認し仰向けになり上昇気流に背中を押され近付き、右ストレートを打って伸びた腕に足を絡ませて上体を起こす事で地面に勢いよく放る。仰け反った身体を起こすと同時に相手を叩きつける技だ。

今までそんな事されなかったのか、投げる瞬間に「嘘だろぉ!?」とフェイクは驚いていた。

 

フェイクが森に消えて数秒後、煙が上がった所に着地する。

 

「つぅ……マジかよ」

 

運良く下敷きになった脳無のおかげでフェイクは無傷だったのが納得出来ない。運のいい奴。

脳無は背中から何本も生えた腕にチェーンソーやドリル、トンカチなどの凶器が、本来の腕には黄色い何かを持っている。本人はいないが、アレは黄色さんの頭につけているものだ。半分に割れて血に染まっている。この脳無が黄色さんを襲ったのか。

 

「な、…なんだ?」

「……っ、天魔、さん…?なぜ……」

「八百万?大丈夫か!?」

「すみません…泡瀬さん…!!大…丈夫です」

 

八百万とB組男子を視界に捉える。けどそれだけだ。すぐに態勢を立て直したフェイクのせいで巻き込んではならないとまた空中に跳んだ。二人には目もくれずに市へ向かってくるのが救いだ。脳無はそちらでどうにかしてほしい。あの凶器を防ぐくらいの魔手は出しておくから。

 

「そろそろ限界だろ。ただでさえ【思考加速】は精神摩耗が激しい上、体力も消費する。こんなに長時間使った事ないんじゃないか?」

「……っ」

 

図星。

けれどまだフラついているだけで、戦闘に支障はない。

そして、近くで大きな音がした。フラついた頭はその音に意識を持っていってしまう。その隙をついて顔を鷲掴みにされてしまった。

 

 

「…ほらな」

 

 

凄い力だ。頭蓋骨を握りつぶされてしまいそうな握力。さっきのお返しと言うように高所から勢いのまま後頭部を地面に押し付けられた。

 

「ぁ…がっ」

「悪ぃ遅れた、けど…取り込み中?」

「見りゃ分かんだろ」

 

フェイクの掌の隙間から、緑谷と轟、障子が見えた。ツギハギの男に同年代らしき女子、ラバースーツを着たマスクマン。彼らが今回の襲撃犯か。

 

 

「っ天魔さん危ない!!!!」

 

「________、」

 

 

 

緑谷の呼びかけに反応してフェイクの手を退かそうとした途端、目の前が真っ暗になる。

 

気付いた時には、障子が複製腕で作った長い手を市に向かって伸ばしていた。後ろから首を誰かに掴まれ、隣には爆豪がいる。少しでも動けば折るとでも言うように力が込められた。

 

 

「かっちゃん!!」

「天魔ぁ!!」

「来んな…デク」

「…いってきます」

 

 

市の声は聞こえていただろうか。

一度潜った事のある霧に呑まれ、なぜか急に眠気が襲ってきた。

逆らうのも面倒くさくて身を任せる。それに、きっと大丈夫だ。

 

 

やっと「あの人」に会える。

そんな予感がした。

 





【挿絵表示】

フェイクの着地地点は、八百万を殺そうと武器を振り上げた脳無です。
アニメだとヤオモモの頭抱いて庇ってる泡瀬くんカッコ良かったです。

ちなみにとても今更ですが
赤色さん→マンダレイ
青色さん→ピクシーボブ
黄色さん→ラグドール
橙さん(言ってないけど)→虎
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。