ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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56話:re.白い髪の少年

燃える施設から少年を持ち帰った時、獅子那は呆れたように私を見たけれど、ため息を吐いてベッドのある部屋を指差す。

高校生になった少年少女の反応は様々だった。少年はチラリと一瞥してからチンピラ狩りに行き、興味を持った少女が覗くも「なんだ男か」と一瞬で興味を失った。美少女に育っても男に興味を示さないのでどうしようかと考えている。

幼い頃に成人男性に囲まれていたのがトラウマなのか、女性好きに寄っているのだが…それをとやかく言うことは出来ない。私に出来ることはせめて優良物件を紹介するだけだ。もう幼馴染と言っても過言ではない少年はどうなのだろう。美少年、美少女だからお似合いだとは思うけど。

 

救けた少年を押し付けられる事が分かっているのか、獅子那に「面倒見ておくから行っておいで」と促された。あれは騙されてはいけない、面倒を見るのは言った本人ではなく部下だ。

お言葉に甘えて街に繰り出した。毎日積み重ねたイライラが爆発するのか、抑制された個性を解放して暴れる輩が後を絶たない。人によって積み重ねた時間や感情の解放のタイミングは十人十色なので、1日1度は必ず遭遇する。

私は、その暴走で被害に遭う人を救けるだけだ。

 

 

 

 

 

 

いつものように警察やヒーロー、感謝したいらしい一般人を撒いて、獅子那の組織に入る。誰にも見られないようにしているが、もし見られてもこの組織には中々手が出ないと思う。あんな雰囲気の男だが、世間では大物(ヴィラン)なのだ。本当に信じられない。

 

「帰ってきた!レプリカさん帰ってきた!!」

「ナイス報告だ好美(よしみ)クン!レプリカ、ちょっ…早くこっち来て!」

「……はぁ…」

「なんでため息!?本当に深刻だから!」

「そっち抑えろ!レプリカさんも呆れてないで早く!」

「分かった」

「なんで(こう)クンの言うことは素直に聞くのカナ!?あっ痛ぃ!意外に力強いね!?皮剥がれたから個性おかわり!オジさんにはキツいよ!」

「んなポンポン使えないっての!」

 

ドタバタと扉の向こうで暴れる音がする。また獅子那(ししな)が度の過ぎたイタズラをして少年にキレられているのかと思ったが、そうじゃないらしい。オロオロと焦る少女に手を引かれて、救けた少年を寝かせた部屋に入る。

そこには目を覚ましたのかパニックで暴れる少年と、それを押さえつけようとする二人がいた。少年の個性で押さえつける手は通過し、その手が時々二人に当たる。皮を被っているのでダメージは無いが、それも時間の問題だろう。

暴れる少年に近付いて、その目元を機械の掌で覆う。

 

 

「おはよう…なんのお話しをする?」

 

 

そう言うと、途端に大人しくなった。

あの施設にいたなら仕方ない。ましてや、目の前で殺戮が行われていたのだ。目が覚めてもまだ信じられないのだろう。

 

「……ここ、は…」

「安全な所。もう、怖くないよ」

「…火が………熱い…」

「大丈夫。次は側にいるから、おやすみ。たくさん暴れて疲れたね。今まで頑張ったから、少し休憩しようか」

「……………」

 

寝息が聞こえたので、目元から手を離す。涙の跡があり、(すす)だらけの白い髪が汚れている。

 

 

「…レプリカ、雰囲気変わったね。何か良い事でもあった?」

「別に…。私がここにいる理由を、再認識しただけ」

「そうか、それは僥倖(ぎょうこう)。迷いが晴れたようでなにより」

「…完全に晴れた訳じゃない」

「それでいい。人間は迷いながら進む生き物だからネ!迷わないと、私のようにクールでダンディな素敵な大人になってしまうよ!」

「…そう」

「淡白だなァ…」

「レプリカさん、皮剥がれてないか?アンタが言ってくれれば、いつでも変えるから。声はまだそのままでいいのか?」

「うん、この声で満足」

「そうか、気に入ってもらえて嬉しいよ」

(こう)クン!?私への反抗期は!?」

「感謝はちゃんとしてる、けどレプリカさんとは別ベクトルだ。やめてほしいならイタズラを控えてくれ」

「ぶー!家事スキルばっかり育っちゃって!私の母親かね、男母(おかあ)さん!」

「表出ろ」

「男はほっといて、レプリカさん一緒に寝よう?」

「…いや…側にいると言ったから、また今度ね」

「むぅ……」

 

 

一夜明けて起きた少年は、側に私がいた事に安堵したのか暴れる事はなかった。食事も私があげないと口に入れず、後ろを付いてくるので出歩けない。もしかしなくても、依存されている。

 

 

「…名前は?」

「……否断(ひだん)(しゅん)、だった気がする」

「どうして私の後を?」

「…だって、救けてくれた。貴方しか救けてくれなかった。一緒にいたい」

「………」

「お願いします。強くなります、側にいたいです」

 

…どうやら、私は子供に弱いらしい。

というか、泣かれるのが嫌いだ。泣かれて無視するよりは、ある程度言うことを聞いた方が泣かれずに済む事はここ数年で理解した。

よって、否断の望みを聞こう。そうと決まれば、獅子那に預けるに限る。

襟をむんずと掴んで持ち上げ、獅子那の元へ連れて行く。ソファにくつろいでいる膝の上に乗せて、目を点にしている男に面倒事を丸投げした。

 

「……えっと…嫌な予感がするんだけど?」

「戦闘稽古、よろしく」

「なんで!?意思疎通が出来てないよ!私は言葉のキャッチボールがしたい!」

「した」

「してない!!ちゃんと私がキャッチ出来るようにしてよ!年上イジメよくない!虐待!!」

「…扮貌(ふんぼう)蜜芳(みつほう)、この子に戦闘技術教えてあげて。個性は選んだものしか触らない「拒絶」だから」

「お、レプリカさん自らのお願いなら任せてくれ」

「後で一緒にお出かけしてね!」

「…………………」

「最近は俺も警察に目ぇつけられてるから派手にチンピラ狩り出来ないし、ちょうどいいから叩き込んでやる」

「面白そうな個性だし、私の個性でどうなるか試したいし。レプリカさんもショッピングしてくれるし頑張っちゃおうかな」

「…………ぐぅ…私もやるぅ〜〜!」

「お、お願いします!」

 

 

こんな茶番しなくても引き受けてくれると確信してる。

変な言葉遊びしないで最初からそう言えばいいのに。

 

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