ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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クラウン:王冠、紋章学、道化師、頂部、植物の部位、通貨


59話:re.種明かしのクラウン

 

割れた仮面が音を立てて地面に落ちる。20年前よりも少し伸びた髪が風に流されて、報道ヘリコプターのカメラがこちらに向くのが分かる。

全国報道で、レプリカの正体が露わになってしまった。けれどもうレプリカとして活動するつもりは無いので、どうという事はない。もしクラスメイトがテレビを見ていたら、どうして私がレプリカなのかと驚いているのだろうか。

想像すると少し笑ってしまった。

 

 

「……市?なぜ、レプリカが…」

「…天魔…いや、レプリカ様……」

「どうして……レプリカが現れたのは、20年前の筈…!なのに、その正体が市なんて…いやお前か…1072(ヒトマルナナニ)!」

「そうらしいな…けど、これで全ての辻褄が合った。お前と天魔が兄妹ってこと、俺ら3人で戦ったこと。全て繋がってたんだ」

「さっきお前が、()()2()0()()()()()()()のか!」

 

 

今ならば分かる。

だからこそ………この戦いは、まず()()()()()()()()()()()()()

 

 

「そんな馬鹿な!僕と同じ、存在重複……一体いつから……まさか!?」

「お、想像ついたか完成品。お前言ったよな、「僕が生まれたときから重複存在を認められている」って!僕“は”じゃなくて、僕“が”って確かに言った!お前が生まれた瞬間から、この世界は同一人物が2人いてもおかしくなくなった…つーことは、お前以外の奴にも存在重複は認められてんじゃねーのか?」

 

 

 

戦いの最中に冷静さを失えば、それこそ死が確定してしまう。フェイクは冷静でいられたからこそ、言葉の違和感に気付く事が出来たのだ。

 

 

 

「そ、ん、な______事、が______!!

いや、理屈は正しい……っそんなニュアンスの違いに、全部賭けたっていうのか!?いつ跳ぶかなんて、操作できる訳ないのに…20年も前なんて…!

っ!?お前ェ!!!!」

「あっははははははは!!()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!お前が生まれるより前なら、いつでも良かったんだよ!レプリカ様がお前の妹なのは、変わるワケが無いんだからな!」

「っ絶対に殺す。お前は絶対に許さない…否断 峻!」

「ああそう、俺の名前は否断 峻なんだよ。やっと覚えたか完成品」

 

 

フェイクに向かって波動を放つも、彼の個性でダメージを与える事もなく消えていった。

 

 

「兄様、別人みたいね」

「…ハァー………ふぅ。そうだ、僕が市と一つになれれば目的は達成するんだ。そうすればいつでも殺せる。もしかしたら絶望する顔も見られるかもしれないね。

……市、褒めてあげる。20年もよく頑張ったね…素晴らしい精神力だよ。誤魔化しているみたいだけど、君の本質は変わっていないんだろう?悲哀、絶望、羨望、憧憬(しょうけい)嚇怒(かくど)…君ほど矛盾を孕んだ子はいない」

「いいえ、私は全てを呑み込んだもの。さっきまでの私とは違う」

「うん、そうかもしれない。それでも…美しく育ったね。その在り方を、少しだけ僕は羨ましく思う。そこまで育つ君を見守れなかった事が悔しくて仕方ないよ。一緒に成長していきたかった、けど恐れなくていい。僕と一つになれば、ずっと側にいてあげられる」

「ううん…それは違う」

「………どういうことかな?」

「兄様は、さっきの私に言ったでしょ?空っぽの頭で考えたの……これが私の生きる意味。兄様を深い場所に連れて行ってあげるの…もう戻れないくらい深く。私が一緒にいてあげる…………ね?兄様?」

「……あはは!レプリカならば、市に個性をあげて今は何も無いんでしょ?それでどうするつもり?」

「…………おいで」

 

 

幼子と手を繋ぐように腕を広げる。それに応えるように、地面から大魔の手が2本発現した。フェイクの個性では、私に宿る個性までは完全に拒絶出来なかった。それが、私が20年前に跳んだ違和感の正体だ。

この世界にレプリカとしての私がいる事を察知して、20年前に跳んだ私の個性の大半が、意志を持っているのか分裂して残ったのだ。だから、跳んだ私が宿していた個性は残滓(ざんし)のようなもの。跳んですぐに使いすぎてしまえば魔手は使えなくなっていただろう。

本能が理解していたのか、それっぽい理由をつけて私は魔手を使おうとはしなかった。20年前に跳んでからは上半身を隠すのに一回、無い両腕の義手代わりに一回使っただけだ。闇に潜るのはカウントされていない。

そして、この日が近づく度に力を増していったと考えられる。だから自分が雄英に入学したのと同時期くらいに、レプリカの私が闇に潜れるようになった。

 

 

久しぶりに使う魔の手は、とても手に馴染んだ。まるで、何百年も一緒にいたかのように。

 

 

「兄様、確かに私の個性は貴方の劣化版。神様からもらった個性に、名前をつけるなんて烏滸がましいと思ってた。けど今は違う。私はこの個性を、誇りを持ってこう呼ぶの。兄様と似てる闇の手を……もう名乗らない名前で」

「僕を影に押し戻すの?いいよ、返り討ちにしてあげる」

「私の個性の名前は……レプリカ

 

 

 

 

 

 

その手に(とが)を、魂に(あがな)いを。

それぞれの闇がぶつかった。

 




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