割れた仮面が音を立てて地面に落ちる。20年前よりも少し伸びた髪が風に流されて、報道ヘリコプターのカメラがこちらに向くのが分かる。
全国報道で、レプリカの正体が露わになってしまった。けれどもうレプリカとして活動するつもりは無いので、どうという事はない。もしクラスメイトがテレビを見ていたら、どうして私がレプリカなのかと驚いているのだろうか。
想像すると少し笑ってしまった。
「……市?なぜ、レプリカが…」
「…天魔…いや、レプリカ様……」
「どうして……レプリカが現れたのは、20年前の筈…!なのに、その正体が市なんて…いやお前か…
「そうらしいな…けど、これで全ての辻褄が合った。お前と天魔が兄妹ってこと、俺ら3人で戦ったこと。全て繋がってたんだ」
「さっきお前が、
今ならば分かる。
だからこそ………この戦いは、まず
「そんな馬鹿な!僕と同じ、存在重複……一体いつから……まさか!?」
「お、想像ついたか完成品。お前言ったよな、「僕が生まれたときから重複存在を認められている」って!僕“は”じゃなくて、僕“が”って確かに言った!お前が生まれた瞬間から、この世界は同一人物が2人いてもおかしくなくなった…つーことは、お前以外の奴にも存在重複は認められてんじゃねーのか?」
戦いの最中に冷静さを失えば、それこそ死が確定してしまう。フェイクは冷静でいられたからこそ、言葉の違和感に気付く事が出来たのだ。
「そ、ん、な______事、が______!!
いや、理屈は正しい……っそんなニュアンスの違いに、全部賭けたっていうのか!?いつ跳ぶかなんて、操作できる訳ないのに…20年も前なんて…!
っ!?お前ェ!!!!」
「あっははははははは!!
「っ絶対に殺す。お前は絶対に許さない…否断 峻!」
「ああそう、俺の名前は否断 峻なんだよ。やっと覚えたか完成品」
フェイクに向かって波動を放つも、彼の個性でダメージを与える事もなく消えていった。
「兄様、別人みたいね」
「…ハァー………ふぅ。そうだ、僕が市と一つになれれば目的は達成するんだ。そうすればいつでも殺せる。もしかしたら絶望する顔も見られるかもしれないね。
……市、褒めてあげる。20年もよく頑張ったね…素晴らしい精神力だよ。誤魔化しているみたいだけど、君の本質は変わっていないんだろう?悲哀、絶望、羨望、
「いいえ、私は全てを呑み込んだもの。さっきまでの私とは違う」
「うん、そうかもしれない。それでも…美しく育ったね。その在り方を、少しだけ僕は羨ましく思う。そこまで育つ君を見守れなかった事が悔しくて仕方ないよ。一緒に成長していきたかった、けど恐れなくていい。僕と一つになれば、ずっと側にいてあげられる」
「ううん…それは違う」
「………どういうことかな?」
「兄様は、さっきの私に言ったでしょ?空っぽの頭で考えたの……これが私の生きる意味。兄様を深い場所に連れて行ってあげるの…もう戻れないくらい深く。私が一緒にいてあげる…………ね?兄様?」
「……あはは!レプリカならば、市に個性をあげて今は何も無いんでしょ?それでどうするつもり?」
「…………おいで」
幼子と手を繋ぐように腕を広げる。それに応えるように、地面から大魔の手が2本発現した。フェイクの個性では、私に宿る個性までは完全に拒絶出来なかった。それが、私が20年前に跳んだ違和感の正体だ。
この世界にレプリカとしての私がいる事を察知して、20年前に跳んだ私の個性の大半が、意志を持っているのか分裂して残ったのだ。だから、跳んだ私が宿していた個性は
本能が理解していたのか、それっぽい理由をつけて私は魔手を使おうとはしなかった。20年前に跳んでからは上半身を隠すのに一回、無い両腕の義手代わりに一回使っただけだ。闇に潜るのはカウントされていない。
そして、この日が近づく度に力を増していったと考えられる。だから自分が雄英に入学したのと同時期くらいに、レプリカの私が闇に潜れるようになった。
久しぶりに使う魔の手は、とても手に馴染んだ。まるで、何百年も一緒にいたかのように。
「兄様、確かに私の個性は貴方の劣化版。神様からもらった個性に、名前をつけるなんて烏滸がましいと思ってた。けど今は違う。私はこの個性を、誇りを持ってこう呼ぶの。兄様と似てる闇の手を……もう名乗らない名前で」
「僕を影に押し戻すの?いいよ、返り討ちにしてあげる」
「私の個性の名前は……レプリカ」
その手に
それぞれの闇がぶつかった。
更新ペースはモチベーションの上下で決まります。感想お待ちしているぜ!