そういえば、最初はどのくらい前だったっけ?
市の母親は場所を選ばずに手を生やす個性で、人体に手を生やして関節を極める
そこまでは覚えてないから分からない。
市は、どこにでもいる普通の少女
それがキッカケだったと思う。正直、自信は無い。
今までの友達も存在せず、携帯電話も繋がった先で「誰だ」と言われる始末。市が14年間で築いてきたものが全て無くなったショックが大きかったのか、夜に公園のベンチで膝を抱えている市を見たのが
そんな市を利用しようと14歳の少女を嘘で丸め込んで、個性実験のマウスにした。血を抜かれ、あらゆる個性を身体に入れられて、戦闘向き個性のサンドバッグにされた。そのせいでいつも身体はボロボロ。
ある日研究所に火が回り、ゆっくりと這いながら出口に向かう市を
そして、とある部屋で見つけたのが市のクローン。
自分が救からないと思った市は、
複数ある自我が一つずつ分かれて市と共に過去へ跳び、それを何十回と繰り返して、
市のやりたいこと、求めることは手に取るように分かる。
前回は過去に跳んだクローンが仮面を付けて「レプリカ」と名乗って人救けをしていた。過去に跳ぶ際に
__________けれど、
『…………おいで』
そうやって
個性でしかない
_______________ああ、この子は個性に過ぎないはずの
『私の個性の名前は……レプリカ』
………………ああ、ああ。
この子の為に生きよう。望むのならばなんでもする。期待するならば100%以上で応える。
だから、そんな兄と共に眠るなど許せない。
けれど、20年で精神が成熟した市にそれは必要ない。市はとても強くて、きっと一人で前を向いていくんだ。
それならばいい。寂しいけれどそれでいい。
………だけど、もし。
もしも涙が溢れてしまう時が来るならば。
市の痛みを、辛さを、弱さを抱くその心を、
黒い手で市の敵を倒すことしか出来ない
……
無力な
救いたいけど。
__________これだけは出来る。
市、闇の中で眠らないで。
兄と共に眠りたいと願う市にとって、
20年で綺麗に伸びた髪が元の長さに戻り、生まれたままの姿で眠っていた市が薄く目を開けた。そう、それで良い。
だから、市。
_______________おはよう
……
ほら、市の兄も「いってらっしゃい」って言ってる。「妹と一緒でないと眠れないのかなんて思われたくない」って送り出してる。この闇にいる限り側にいるからと微笑んでいる。
だから、一緒に行こう。
個性に幾つも宿っている、とある自我のお話。
**************
黒い点から吐き出された市の服を掻き抱いて、否断 峻は涙を流し、カメラマンが泣いている彼をカメラで抜く。
その少し遠くで魔手に身体を包まれた市が、まるで水中から浮かんできたかのように地面から出てきた。裸体の市を「見せてたまるか」と際どい所を隠した魔手以外が消えて、それにまずオールマイトが気付いた。
「………なんて、ことだ」
「え?あれって……」
「ッレプリカ様ぁ!!!!」
オールマイトの声に顔を上げた否断の視界が、市を写した。その視線の先をカメラが追い、それと同時に叫んだ否断が走る。誰よりも先に市の元へ辿り着いた否断は市を抱きしめて、今度は違う意味の涙を流す。遅れてオールマイトや警察が到着し、オマケに中継映像を見ていたパワーク3人組が警察署で暴れて取り押さえられた。
否断の泣き声がうるさかったのだろう、眠そうに目を開けた市を確認して更に否断が泣いた。
「……っ、レプリカ、様ぁ…!」
「…もう、違う。次レプリカって呼んだら…無視するから…」
「はい…!はい、天魔様!」
「…………そうじゃない」
「ふぁい!」
不満そうに否断の頬を抓り、限界だったのかまた眠る。
頬を抓られてなお笑いながら嬉しそうに泣く否断を、オールマイトは個性継承者の少年を思い浮かべながら見守った。
『ご覧になられたでしょうか!レプリカと思わしき女性は無事です!たった今、どこからか現れて気を失ってしまいました!警察の手によって毛布がかけられています!神野で起こった戦いの内、一つの鍵を握るレプリカの正体が判明し、世間は混乱に包まれています。ネットでは「体育祭で見た雄英生では」との声もあがっており、これまでのレプリカの無免許による人命救助に賛否両論ありますが、どのような処分が下されるのでしょうか!?』
病院に運ばれたラグドールと虎、元々いたピクシーボブの容態を見ながら、マンダレイは神野の中継を見る。もうすぐ個性「テレパス」を持つ彼女は救助活動に呼ばれるだろう。彼女と共に中継映像を病室で見ていた少年が、手を強く握る。そことは別の病室で、植物状態になっていたヒーローの夫婦が目を覚ました。
宛名不明のスヴァスティカまで、あと________
タイトル「re.ユダの声」
【挿絵表示】
一人称が「市」ではないということは、今までの語り部は個性の魔手さん目線でしたよ、というだけのお話。
Q.一人称が「私」になったのはいつでしょう?
曲はメガテラ・ゼロさん派。
51話で書いたMADで、轟くん目線なのに途中から緑谷目線になる所が本当に好きです。
分からない方に(私の中で)分かりやすく説明すると、
魔手の中に複数の自我がある→59話にて「個性の大半が、意志を持っているかのように分裂して」→52話にて「気のせいかとも思える小さな違和感」は今まで複数あった自我が切り離されて一つになっている事を無意識に感じたから→譲渡された個性は月日を追うごとに自我が成長し、複数宿る事になる→また過去に跳ぶ時に一つが分かれる。
今回はこの小説の世界にて切り離された一つの自我のお話になります。違う世界に行けばこの自我ではないかもしれないし、この結末に辿り着かないかもしれないし、市は個性に「レプリカ」と名付けないかもしれない。雄英に入学していないのかもしれないし、敵になっていたかもしれない。
絶対に通る道は1:兄と戦って負けそうになり2:誰かの個性によって過去に跳び3:自分のクローンが作られ4:クローンに個性を譲渡すること。
それ以外は市の自由意志によって決まるので、ほんの少しでも違ったのならばヴィジランテとしてのレプリカは存在しなかったかもしれない。市はレプリカに神を見出さずに日々を過ごしていたかもしれない。個性をクローンに譲渡した後に自殺したかもしれない。兄と20年の時を経て再び戦わなかったかもしれない。
そんな数ある可能性、たくさんのIFの中で「レプリカを神とし、兄と戦い、否断 峻によって過去に跳び、意志を継ぐようにレプリカとして活動し、見覚えのある白髪の少年を救け、兄と共に眠る選択」をした市を書いたのがこの小説になります。
貴方の考える世界ではどうなっているのでしょうか?
原作のように市がいない世界?それとも士傑高校に入学している世界?否断 峻ではなく時間操作系の個性の持ち主で時間跳躍?…など、人によって様々でしょう。
長い解説にお付き合いいただき、ありがとうございます。(ちゃんとまだ続くよ!ヒロアカ完結まで書くつもりだよ!)