ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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前回、神野の悪夢編にてこの小説の山場を越えられました。あそこまでのシナリオは相当読者様を選んだと思います。それでも続ける事が出来たのは皆様のコメントやメッセージ、評価、アクセス数、お気に入り数のおかげです。何を言われても、何を思われても私のやりたい事をやろうと再認識しました。本当にありがとうございます!
綾波レイは良いぞ!!!!!(クソデカボイス)
市ちゃんが成長したので、話し方が綾波→灰原に進化しました。
けれどイラストでは気怠げっぽく描けたらなと思います。


データ:プロヒーロー仮免試験をロードしますか?→はい
63話:元ダウナー系と必殺技考案※


私によって騒がれていた教室は、相澤先生が入ってきたことによって静まった。この空気も懐かしい。

峻はB組で上手くやれているだろうか?

 

 

「昨日話したと思うが、ヒーロー科1年A組は仮免取得を当面の目的とする」

「「「はい!」」」

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然、取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」

「仮免でそんなキツイのかよ…」

「そこで今日から君らには一人最低でも二つ……」

 

相澤先生が扉に向けてクイと指で合図を送る。もう何度も見ているのでどうなるのか想像つく、やはりガラリと扉を開けたのは他教科の教師だった。ミッドナイト先生にセメントス先生、エクトプラズム先生の3人がポーズをつけたり格好良くして入ってきた。マイク先生はハブられているようだ、可哀想に。

 

「必殺技を作ってもらう」

「必殺技!!!」

「「学校っぽくてそれでいて…」」

「「ヒーローっぽいのでキタァア!!!」」

 

盛り上がるのは良いけれど、席から立たない方がいい。主に相澤先生の眼力的な意味で。

 

「必殺!コレ スナワチ必勝ノ型・技ノ コトナリ!」

「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

「技は己を象徴する!今日日(きょうび)必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γ(ガンマ)へ集合だ」

 

 

壁に内蔵されたスーツケースを各自受け取って、更衣室へ向かう。私はコスチュームの変更届けを学校に出してまだ完成していないので体操着での参加だ。

体育館γ(ガンマ)は通称「トレーニングの台所ランド」、略してTDL。ちょこちょこと他のアトラクションの名前が出てくるのだけど、ディ◯ニーを英語だけでも名乗るのは許可を得ているのだろうか?そのうち訴訟されたら勝てないと思う。ほら、緑谷も「マズい」って顔してる。

セメントス先生の個性で生徒に合わせた地形や物を用意出来るので「台所」らしい。どうして示し合わせたように「D」の「台所」にしてしまったのか…。

 

これからのヒーローに必要なのは情報力、判断力、機動力、戦闘力、他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など多くの適正を毎年違う試験内容で試される。特に「戦闘力」は平和の象徴オールマイトがいなくなった事で(ヴィラン)の増加が予測され、これからは極めて重視される項目になるだろう。

 

 

「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ…飯田クンノ“レシプロバースト”、一時的ナ超速移動。ソレ自体ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブニ値スル」

「アレ必殺技で良いのか…!!」

「成る程…自分の中に「これさえやれば有利・勝てる」って型をつくろうって話か」

 

 

うーん……確かにレプリカとして人救けをしていた頃、魔手が使えなかったので一般人を庇いながら戦うのは骨が折れた記憶がある。今までは義手があったから相手の攻撃に耐えられていたけれど、腕を治した今ではそれが出来ない。腕で受ける悪いクセになってしまいそうなので、防御力を上げる技や型を考えないとこれから苦労するだろう。

 

「これから後期始業まで…残り十日余りの夏休みは“個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出す圧縮訓練となる!尚“個性”の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ、準備はいいか?」

『ハイ!!』

「ワクワクしてきたぁ!!」

 

セメントス先生によって盛り上がったコンクリートが棚田のように一つずつ足場を作っていく。そこにエクトプラズム先生の分身で複製された先生自身が生徒の戦闘を担当、アドバイスを行う方式のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必殺技ノ方向性ハ決マッテイルノカ?」

「はい……「状況に左右されることの無い安定行動をとる」という点で、防御力の向上を考えています」

「ソウカ。戦闘力ヤ捕縛ハ申シ分ナイ…“レプリカ”トシテ感ジテイタ事カ」

「個性を使っていなかったとはいえ、民間人への被害を抑える事が苦手だと自覚しています」

 

という事で、私の訓練内容は大人数のエクトプラズム先生から攻撃をひたすら受けること。【思考加速】は使わないと決めている。戦闘中いつも使う訳にはいかないからだ。多方向から飛んでくる義足の蹴りを魔手で防ぎ、時にはいなして考える。

 

 

 

 

 

私に必要なのは魔手が全て補ってくれている……そうやって何度も攻撃をいなしていると、「レプリカ」と名付けた魔手が以前と違うのを感じた。操作していなくても、勝手にやりたい事を汲んでくれる。私の想いに応えてくれる。今までの感触と全然違うので逆に戸惑ってしまった。【並列演算】を使っていないのに私ではない2人で戦っているような、そんな感触。

空中へ逃げてもエクトプラズム先生は追いかけてくるので、どこまで付いてくるのか気になって体育館中を逃げ回った。

あ、オールマイトだ、手を振っておこう。

 

 

 

「……やはりというか、天魔少女はレベルが違うね」

「当然でしょう。レプリカとして20年生きてきたんです、あの位になっていないと困ります」

「厳しいなぁ相澤くんは」

「天魔が独走している道を追いかけて緑谷と爆豪が争い、その二人の熱がクラスに伝播(でんぱ)しています。奴らの存在がクラスの底上げをしてくれるのを期待しているんです」

「愛のムチってやつか……」

「違います」

 

 

闇に潜る事も制御出来ているのでそのうち怪我人を闇に入れて他の場所に出す、なんて事もしたい。闇なので暗闇が怖い人には向かないが……過去に跳ぶ前なら入れた後に出せるか不安だったけれど、経験を積んだ今なら問題なく出来る。

ひたすらエクトプラズム先生の攻撃を避けて避けて、時々反撃に新技をねじ込みつつも避け続けて四日経った。

四日目は新コスチュームも届いて着心地のチェックだ。

 

 

「お市ちゃん、コスチューム変えたのね。似合ってるわ」

「そう、かな?ありがとう梅雨ちゃん」

「ちょっと攻めすぎじゃない?脚長いから似合ってるけど」

「そんな高いヒールで大丈夫なの…!?」

「本当だオシャレ〜!」

「私が言うのもあれですが…少しだけ過剰な露出ですわ…。なんだか分かりませんが、心にきていますの…」

「ヤオモモそれ開けちゃアカン扉や!」

 

新しいコスチュームは今までとは一新、全て変えた。

フェイスマスクもいらないし、鎧もいらない。

衝撃吸収素材を編み込んだ体に張り付くライダースーツ。轟のように包帯などを入れる小さな容れ物が引っ掛けられる白いベルト。走りやすくクッションのついたヒール。白いファーを首から下げ、地面に手を突いた際に石での怪我を防ぐグローブ。

なぜか背中と左脚がバッカリと空いているが、コスチューム担当者はどういう趣味の持ち主なのか?

 

旧コスチュームでは、蹴りやパンチの破壊力の加算で鎧をつけていた。鎧は防具でもあり、それを外した新コスチュームでは防御力の低下が心配される。けれど考えたのだ。

()()()()()()()()()()()

部分的でしかなかった鎧を()()()()()()()と。

その為に他人からは無意味にも思えるファーを付けた。

お披露目は仮免のお楽しみだ。少しは空いた背中も気にならなくなるだろう。

 

 

 

「そこまでだA組!!!今日は午後からB組がTDL(ここ)を使わせてもらう予定だ!イレイザー、さっさと退くがいい」

「まだ10分弱ある。時間の使い方がなってないなヴラド」

「ねえ知ってる!?仮免試験って半数が落ちるんだって!A組(キミら)全員落ちてよ!!」

「市、会いたかったです!」

「……峻」

「なんとかB組でも上手くやれています…あとコスチューム過激過ぎないですか!?御御足(おみあし)が!」

「片脚だけね。もう慣れたもの……ホラ」

「ぶっふぅ!?せ、せせっ背中まで…!!まさかそれで活動を……!?」

「おぉ!何だよ天魔そのコスチュームは!!もっとオイラに見せろ!」

「あ”?なんだてめぇ心臓抜かれたいのか?」

「ひぃ!?」

「反射行動すぎる」

「峻、ステイ」

「はい!」

 

 

 

私が止めた峻を、B組の拳藤が回収していった。本当に馴染めているようで安心した。我が子(違う)の成長に感涙だ。

私の精神年齢はアレだが、この輪に入っている今はあの頃に戻ったような気持ちになれる。肉体年齢は同じだから後悔しないように皆と接していたい。

峻のコスチュームはただのスーツだ。近くで高笑いしている捻くれ者と被っているが、あちらは燕尾服でこちらはメンズスーツ。黒いスーツにベストを身につけ、顔の良さも相まって紳士的。

峻の個性の前では障害物という概念が存在しない。瓦礫を退かす手間も、炎に怯むことも無く駆けつけることが出来るし、戦闘においても攻守共に高水準でその身を死角に不意打ちも取れる。

私がやったように攻撃を峻の身体に通過させれば(ヴィラン)の動揺を誘うことも出来る。

 

 

……うん、良いヒーローになれるんじゃないか?

相棒(サイドキック)としても各所で引っ張りだこになるだろう。誰の個性でも合わせられるから余計に。

仮免試験はA組とB組が別会場で申し込んだのを残念がっていたが「頑張って」と応援すれば尻尾を振る幻覚が見えた。

 

 

「1年の時点で仮免取るのは全国でも少数派だ。つまり…君たちより訓練期間の長い者。未知の“個性”を持ち洗練してきた者達が集うワケだ。試験内容は不明だが、明確な逆境であることは間違いない。意識しすぎるのも良くないが忘れないようにな」

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

寮に帰り、疲れたのかグッタリしたまま夕食を食べた一同は風呂へと消えていく。女子会に誘われたので風呂上がりにロビーへ集合し、仮免試験への心境を話し合った。初めての女子会に内心ワクワクしてしまった。いい大人が恥ずかしい。

 

 

「フヘエエエ…毎日毎日大変だァ…!」

「圧縮訓練の名は伊達じゃないね」

「とはいえ、仮免試験まで一週間もないですわ」

「ヤオモモは必殺技どう?」

「うーん…やりたいことはあるのですが、まだ体が追いつかないので少しでも個性を伸ばしておく必要がありますわ」

「梅雨ちゃんは?」

「私はカエルらしい技が完成しつつあるわ。きっと透ちゃんもびっくりよ」

「お市ちゃんは?」

「私は完成かな。やりたい事は出来たし、他にも2、3個考えたから通用するのか楽しみなの」

「お茶子ちゃんは?」

「……」

 

ジュースのストローに口を付けてボーッとしているお茶子は反応が無い。梅雨ちゃんに突かれて飛び上がっているので、具合が悪いワケではないようだ。

 

「お疲れの様ね」

「いやいやいや!!疲れてなんかいられへん、まだまだこっから!……のハズなんだけど、何だろうねぇ。最近ムダに心がザワつくんが多くてねえ」

「恋だ」

「ギョ」

 

 

ギョって言った。形容詞でも何でもなく、口で「ギョ」ってそのまま言った。図星なのか……それは気になる。赤くなって否定しつつ浮くお茶子に追撃がかけられ、私も気になるので参戦した。

 

 

「誰ー!?どっち!?誰なのー!?」

「ゲロッちまいな?自白した方が罪軽くなるんだよ」

「お茶子、誰が好きなの?少し気になる」

「違うよ本当に!私そういうの本当…わからんし…」

 

 

赤く否定するお茶子を可愛いを微笑ましい気持ちになる中、梅雨ちゃんからストップがかかりヤオモモに睡眠を促された。

なるほど、自分から話し出すのを待つのが女子会か…勉強になった。

 

明日からも頑張ろう。

 




新コスチューム

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