楽しんだ女子会から日々は流れ、その日がきた。
雄英バスで向かった先は試験会場は国立
「この試験に合格し仮免許を取得出来れば、おまえら
「っしゃあなってやろうぜヒヨッこによォ!!」
「いつもの一発決めて行こーぜ!せーのっ“Plus…」
「Ultra!!”」
あれ、切島の声じゃない。ガタイのいい迷子だ、何処の子だろうか?
「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」
「飯田と切島を足して二乗したような…!」
「待って、あの制服…!」
「アレか!西の有名な!」
………?
皆の解説によると東日本は雄英、西日本には士傑と呼ばれるヒーロー科難関校があるらしく、先ほど“Plus Ultra”に交ざったのはその学生のようだった。円陣に交ざった謝罪でのお辞儀で思いっきり地面に額を打ち付けた少年は血を流している。あの勢いでいったなら当然だ。
相澤先生は彼を知っているらしく、名前は「夜嵐イナサ」。雄英の推薦入試をトップの成績で合格するも入学を辞退、実力は本物とのこと。
雄英を受験したのに西日本の士傑も受験するなんて、移動からして大変なのに随分とフットワークが軽いんだな。
「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!」
「!」
「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久し振りだな!!」
試験会場着のバスが並ぶ通路の先から、緑を基調とした女性が相澤先生へと話しかけた。あの嫌そうな顔を見て考えるに、一方的なベクトルで仲が良いようだ。ヒーローが教師になるというのも少ないのに知り合いが教師として会うなんて珍しい。
緑谷の解説によると、彼女はスマイルヒーローの「
彼女が所属しているのは
「俺は
「えっあ」
「しかし君たちはこうしてヒーローを志続けているんだね!素晴らしいよ!!不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」
こちらへ歩いてきた
「その中でも神野事件を中心で経験した爆豪くん、天魔さん」
「あ?」
「?」
「君らは特別に強い心を持っている。今日は君たちの胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」
「フかしてんじゃねえ。
「とても綺麗な余所行きの顔ね」
「………」
伸ばされた手を爆豪が払い、私はニコリと対応する。比べるべくもないが、パワークはただの
相澤先生に急かされて、試験会場へと足を踏み入れた。
雄英という事もあって当然ながら注目されるけど、私に対する目が違うことを知っている。
「あれがレプリカ?」
「神野の中継見た…」
「雄英生って本当だったんだ」
「なんで今更?空気読めよ」
「へえ…ちょっと戦いたいかも」
「バカお前、返り討ちにされるのがオチだぞ」
「そんなの分かんないじゃん」
私はそんな好奇の視線を気にするほど子供でもない。そういう時は堂々としていればいいのだ。間違えた事はしていないのだから胸を張って歩けばいい。レプリカの私を恥じる必要は無い。話している子達に向かって笑えば、気まずそうに目を逸らされた。
更衣室でコスチュームに着替えて、説明会場に入る。
一応雄英でまとまっているけれど、狭い部屋に何校も押し込められているから人口密度が高い。新コスチュームの空いた背中に視線を感じるけれど、無視した。黙って見ているだけならアクションを起こす必要もないからだ。
壇上では疲れ切った隈の濃い顔に掠れた声。なるほど、社畜さんが説明してくれるらしい。お仕事お疲れ様です。
「えー…ではアレ、仮免のヤツをやります。あー…僕、ヒーロー公安委員会の
そんな信条の
本当に大丈夫なのだろうか?睡眠不足は思考低下やストレス増加、免疫低下など2次被害が凄まじいものだ。発狂する前に働き方改革を是非ともしてほしい。けれど仕事だと割り切って説明を続ける姿勢はさすが社会人だ、褒められたものではないけれど。
「仮免のヤツの内容ですが…ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に、勝ち抜けの演習を行ってもらいます。現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を
簡単に説明すれば、これまで多くの
「よって試されるはスピード!条件達成者
後ろでお飾りと思われていた巨大モニターが「一次試験通過者100名」と映した。予測していなかったふるいの狭さに会場が騒つき、女性陣もショックを受けている。受験者1540人中、一次通過出来るのは全体の1割未満。そう思うのも無理はない。
大人の事情をチラつかせて曖昧に説明を切り上げた
「で、その条件というのがコレです。
受験者はこのターゲットを3つ、体の好きな場所…ただし常に晒されている場所に取りつけて下さい。足裏や脇などはダメです。そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落とします。3つ目のターゲットにボールを当てた人が“倒した”こととします。そして二人倒した者から勝ち抜きです。
ルールは以上。えー…じゃ
床が揺れるのと同時に天井が割れて、まさに部屋がサイコロの展開図のように広がった。急に入ってきた太陽光の眩しさに顔に手を
「皆!あまり離れず一かたまりで動こう!」
「フザけろ遠足じゃねぇんだよ」
「バッカ待て待て!!」
「俺も抜けさせてもらう。大所帯じゃ却って力が発揮出来ねぇ」
「私も。出し惜しみはしないつもりだから、皆も早く通過してきてね」
呼び止める声を無視して「掴め
空を飛ぶ私についてくる人が多数。ならばと着地しやすい高架橋に降りた。追いついた人達に四方を囲まれて、絶好のカモだと思われたのか笑い声がする。
『第一次試験スタート』
「……“
サイレンと共に放送が流れた瞬間、圧縮訓練にて考案した防御の必殺技を展開した。
首に下げてるファーを起点に魔手が姿形を変える。身体を包んだ魔手は段々と質感を持ち、黒いマントへと
マントなので空いた背中も隠れて一石二鳥。
これが完成した時は嬉しかったのでたくさん撫でて頬ずりをしたものだ。魔手はプルプルと震えていて可愛かった。
……………さて、と。
私がレプリカと知っていて付いてきたのか、知らずに周りに合わせてここにいるのか。どちらにしろ、私と彼らの実力差は明確。
いつの時代も相手の実力を見抜けない
ならば、私が彼らを脱落させてしまっても構わないのだろう?
その慧眼を鍛えてから出直しておいで。