「大したこと無いくせに人気者で羨ましいよ!なぁレプリカ!」
「えっアレがレプリカ!?狙うなんて聞いてないよ!」
「知名度だけだビビんな」
「そーそ。噂が一人歩きしてるってヤツ」
邪魔なので右手に持っていたボールを闇に収納し、私が立っている高架橋が壊されてボールが来ると面倒になるので真上に高く跳んだ。身動きの取れない空中に出たのを好機と見たのか、私を囲んでいた3桁以上の全員が一斉にボールを投げてくる。
ある者は個性でボールに羽を生やし、ある物は重力操作で上からボールを降らせる。またある者は怪力で下から勢いをつけて投げ、ある者は持っている全部のボールを。全方位から迫る数多くのボールから逃げる隙間など無い。
……が、逃げられないなら迎え撃てばいいだけだ。
魔手で出来たマントに付いているフードがフワリと頭を覆い、裾を持ってバサリと広げる。そのままマントを身体全体で大きく
私が着地する時には、全員のターゲットが赤く光っていた。それが表すもの、つまり脱落だ。
この第一次試験のルールは、ターゲットに当てるボールは自分が持っている物でなくてもいい。重要なのは「誰が当てたか」なので、奪ったボールを使って試験を合格することも可能。
配られたボールを1つも使う事なく終わってしまった…残念だ。ちょっと投げてみたいと思ってたのに。
『え、まだ始まったばかりなのに一人目の通過者が…うお!?だっ、脱落者100名以上!!雄英潰しを返り討ちで100名以上脱落させて通過した!!彼女はレプリ……いえ、大変優秀で結構。あ、情報が入り次第、私がこちらの放送席から
ピピッ『通過者は控室へ移動して下さい、早よ』
体に付けた3つのターゲットが、脱落者とは反対に青く点滅して音声が流れた。へえ、意外と高性能な造りなんだ。
冷静な者ならば私を狙うなんてしないだろう。現に、脱落した者の中にさっき説明された士傑の人や
「嘘………私たち、もう終わりなの!?」
「なん、だよぉ…こんなんで脱落かよぉ…!!」
「だから嫌だったのに!」
「大したこと無いって言ったの誰だよ…!」
「くそ、俺らここで仮免取っとかないといけねーのに…」
今頃泣いてももう遅い。だいぶ手遅れな…いやかなり間に合わない後悔だ。これで心が折れていないのならばまた会えるだろう。互いを活かす連携の年季は一年違えど、それこそ私の戦況判断の方が年季が違う。
ターゲットからの音声案内に従って控室へ行こうとして、前と後ろから人が来ているのに気付いた。後ろからは大人数が走り、前からは一人が悠々と歩いている。前方から来るのは、確か士傑高校の男の子だ。
背後から来ている団体と衝突するのは明白なので、通行の邪魔になっては悪いと避けようとして話しかけられた。
「今の実力を見ると本物のレプリカだと判断せざるを得ない。
「ありがとう、けれどレプリカはもう終わりなの。私は天魔 市………市と呼んで、先輩」
「…無礼を詫びよう。私の名は
「じゃあまずは一次試験を通過しないとね」
遠くの方で地面が盛り上がり、大きな揺れがこの高架橋にも届く。そろそろ行かないと不味いので控室へ向かった。しばらくして120名を脱落させた2人目の通過者のアナウンスが鳴り、私と合わせて220名以上の者が開始数分で脱落していく。仮免は狭き門だと聞いたし、次の機会にぜひとも頑張ってほしい。
**************
控室に入ってターゲットを磁気キーで外して返却棚に戻し、用意されている飲食物を無視して壁際のベンチに座った。
しばらくして会場前での円陣に割り込んできた夜嵐イナサが入ってきたので、2人目の通過者は彼か。雄英の推薦入試をトップで合格した子だ。
「あ!貴方が1人目の通過者ですか!!アナウンス聞いた時スゲーって思ったっス!!」
「こんにちは、そう言ってもらえて恐縮です」
「レプリカさんっスよね!俺、ファンです!握手してください!!!」
「元レプリカね…握手はもうしてるわ」
「貴方の動画、全部見てるっス!!熱かったっス!」
返事する前に握るなら聞く必要無いだろう。
分かってたけど、そう何回も「レプリカ」って言われるとウザい。また何処かの全国中継に乱入してヒーロー名を言って「今後レプリカって言うな」と言った方が良い気がする。
飲食物でも摘めばいいのに、夜嵐は私との会話に夢中だ。勢いが凄く声も大きいので人として得意では無いけれど、良い子なのは分かる。
分かった、レプリカに感動したのは分かったから。野次馬に怒鳴ったフェイクが好きなのね、ハイハイ。あの叫びは熱血だったね、うん。
それから続々と通過者ぎ控室に入ってきて、合格者数の半分が通過した。ようやく夜嵐も満足したのか、また別の人に話しかけている。
あ、轟も通過したようだ、やっと知り合いが来て安心した。私の隣に座った轟は、夜嵐を見て疑問符を浮かべている顔だった。
「…最初の通過者アナウンス、お前だろ。瞬殺だった」
「ふふ、運が良かっただけ。ねえ轟、君と話したいことがたくさんあるの」
「ああ、俺もだ。10年前のこと、感謝してる」
ヤオモモと響香、梅雨ちゃんと障子が来るまで話に花を咲かせた。
一緒に行動していたけれど傑物学園高校の生徒に分断されてしまい、今バラバラの状態らしい。心配しなくても、大丈夫だと思うよ。
ヤオモモは個性の関係上、この時間に食べ物を摂取することを重要視して離れていった。
爆豪、切島、上鳴、緑谷、瀬呂、お茶子が控室へと入ってくる。残席はあと18名、A組は残り9人。あ、8人一斉通過したから残り10人。控室へ入ってきたのは傑物学園高校の8人だ。
ヤオモモや響香が焦りはじめたので、どうなっているのかと控室に設置されたモニターに目をやる。すると、何処で空に向かって青いレーザーが放たれた所だった。空高く昇るソレは途切れる事がなく、あれでは注目を集めてしまう。……あれもしかして、青山の個性じゃないだろうか?
レーザーの発射地点に鳩が群がり、何が起こっているかはモニターでは確認出来ない。けれど、残ったA組が何かをしているのだけは分かった。
『2名通過!!残りは8名!!』
お、もう大丈夫かな。
『残り7名!6名!5名!続々と!この最終盤で一丸となった雄英が!コンボを決めて通っていく!そして0名!100人!!今埋まり!!終了!です!ッハーーーーー!!』
「っしゃああああ!!!」
「雄英全員、一次通っちゃったあ!!!」
「スゲェ!!こんなんスゲェよ!」
「ケッケロ〜!」
控室で雄英の歓声が上がる。飛び上がりる人、胸に手を当てる人とそれぞれの表現で安心していた。これで相澤先生に何か言われる心配も無い。本当に良かったと私も息を吐いた。
夜嵐が叫んでいるので、さっき話しかけられた
『えー1次選考を通過した100名の皆さん、これをご覧下さい』
モニターに映し出されたのは一次試験を行っていたフィールドだ。ビル街を中心に見えていたのだが……爆発した。
ああ…国の予算が…。
いやそこは心配する所じゃないけど、つい口から出てしまった。手を当てて抑えておこう。
なんて無茶をするんだ国家よ……。
仮免では梅雨ちゃんを抱っこする障子くんが本当にカッコよかったです。体育祭で一人戦車でダッシュした時と林間合宿で緑谷を背中に抱いた時とトガちゃんを弾いた時も思ってました。常闇くんと障子くんが紳士的で好きです。紳士枠。
【挿絵表示】
返り討ちのシーンです