ダウナー系が本当のヒーローになるまで   作:鶴クレイン

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イラストにてお目汚し失礼します。


66話:元ダウナー系と二次試験※

『次の試験でラストになります!皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

 

バイスタンダー(bystander)…救急現場に居合わせた人のことだった筈。雄英では戦闘面の方が比率が多いので救助系の経験が積めていないのが現状だ。応急処置や傷病診断の分類は習っているが、いざ実際に行うことを考えると不安が残る。

 

 

『一次選考を通過した皆さんは仮免許を取得していると仮定し、どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』

 

 

崩れたフィールドに向かう老人や子供がモニターに映し出される。危ないと思うが、解説によるとどうやら「要救助者のプロ」としてビジネスが成立している会社の人のようだ。ちゃんとボトルに入った血のりをカメラに向けて見せてくれてるが………ノリノリの笑顔。ちゃんと1人1人の顔を確かめればパワークが交じっているのではと勘違いしてしまうほど。

傷病者に扮した「HUC(フック)」がフィールド全域にスタンバイ、二次選考はそんな彼らを救出し、それをポイント採点で合否を決めるらしい。演習終了時に基準値を超えていれば合格なのだが…この広いフィールドでの行動が審査員のいる観覧席から見えるのか?まあ通過者は100人だし、各自一名を採点すれば100人で足りる数だ、その為のふるいだったのだろう。

 

 

『10分後には始めますので、トイレなど済ましといてくださいねー…』

 

 

今から与えられた猶予は10分。私の「レプリカ」は汎用性が高く、要救助者を団体で救助するのに向いている。けれど雄英生で纏まって行動するなら彼らの役割を奪ってしまうし、それではポイント採点で不利になってしまう。

私は一次選考と同じで別行動をさせてもらおう。きっと演習が始まれば近場にヒーロー候補生が集中するのは簡単に想像出来るので、スタート地点から一番遠い所に向かう必要がある。

 

 

「ねえヤオモモ、少しいい?」

「お市さん…どうしました?」

「悪いんだけど、個性使う余裕ってあるかな?」

「それは……ええ。今ならば脂質を蓄えることが出来るので大きな物でなければ構いませんわ」

「ありがとう」

「いえ、それくらいならば。何を創造しますか?」

「メモ帳2つとペンを……5本欲しいの」

「それだけですの?でしたらすぐ創りますわ」

「ごめん、もうすぐ二次選考なのに」

「お市さんなら何か考えがお有りでしょう?はい、出来ましたわ。私は脂質を摂取していますので、お互いに頑張りましょう」

「うん、いっぱい食べておいで」

「そ、そんな(いや)しん坊みたいに言わないで下さい!」

 

 

本当にありがとうヤオモモ、これで心置きなく別行動が出来る。

もらった物を闇に入れて開始を待っていると、士傑が爆豪に絡みに行っていた。撤収時には轟と夜嵐がバチっているけれど、私が止める必要も無い。言いたいこと言って去っていったし、轟には緑谷がフォローしに行ったから大丈夫でしょ。

 

そんな事を思っていると、控室に非常ベルの音が響いた。

 

 

 

(ヴィラン)による大規模テロが発生!規模は〇〇市全域、建物倒壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着する迄の救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う。一人でも多くの命を救い出すこと!!!』

 

またもや今度は控室が展開図のように開き始めた。このパターン好きなんだな仮免試験。確かに後からもう一度組み合わせれば済むし、折り畳みが出来るから持ち運びにも便利だ。

 

『それでは……START!』

 

 

ブザーと共に「掴め()の月」で空を駆ける。私の他にも夜嵐が風によっていたり翼を生やして空中を移動している者は少数だがいないわけではない。意外にも爆豪が走って移動しているが、彼は爆破し過ぎると掌が痛くなるんだったか。どのくらい時間がかかるか分からない以上、消耗は避けたいらしい。

予想通り一番近くの都市部ゾーンに雄英生が行くのを見てから、私は一番遠い範囲に着地した。私の所に他のヒーロー候補生が来るのは時間の問題だけど、それまでに出来る事はやっておきたい。

 

 

目の前で崩れている建物に、広範囲で複数の魔手を出現させて規模と要救助者の把握を行う。瓦礫で塞がれた中に数人閉じ込められている。他の場所にも近すぎず遠すぎずの距離を保ってバラけているので、これでは人手不足が露骨に響いてしまう。

まず把握した範囲にいる要救助者の近くに魔手を各自4本ずつ出して触診をさせた。まず呼吸と脈の確認、出血状況、そして意識と歩行行動の有無。林間合宿での大量調理の時にも分かっていたが、私が今までやってきた経験が反映された「レプリカ」ならば余裕だ。

比較的救助優先度の低い軽傷者達は魔手での搬送。

歩行が出来ない者や意識の無い者は動かさないように魔手での搬送。

崩れそうな壁や鉄骨は支えてから救出、搬送。

【並列演算】を使わなくても自立行動をしてくれているので楽だ。

トリアージは一応、ABCDEアプローチに基づいたスタート法の図を書いたが救護所の人は分かってくれるだろうか?

 

 

 

「(ほう…まずは要救助者の位置を把握、そして個性による容態確認。初動ですら素晴らしい速度……相当な経験だ)」

「(一人一人のトリアージに合わせて運び方を分けている…現に優先度が高い頭部の怪我、大出血をしている私は運ばれているにも関わらず少しも振動が来ない)」

「(怖がっている者には個性の手遊びで精神的余裕を取り戻そうとしている。その被災地での局面で大切なのは心のケア…よく分かっているじゃないか)」

「(……いや、それだけではない!?この手が持っている物はメモ用紙?なっ…私の怪我の詳細が書かれている!減点だと考えていた救護所へ受け渡す時の円滑さを考慮している……応急処置の心得がある者ならばこれを見れば状態と処置を瞬時に把握出来るほどの正確な傷病診断……あの少女は一体……!?)」

「(このメモ用紙…その正確さだけではない。何より最後に書かれた「もう大丈夫」の一行がこんなにも頼もしい。私が赤ん坊設定だからかポップな猫と犬まで描いてある……なんて気配り。それにこの手…手遊び上手いな、なんだその影は!キツツキか!?)」

 

 

 

瓦礫に埋まった要救助者の場所へ向かう。要救助者のプロとはいえ、よくこんな場所に入る隙間を見つけてしかも中に入ろうとするなんて。暗い場所にいるのなら、精神的負担は相当なものだろう。

周りも見えない空間で救けが来るのを泣いて待つだけ。ヒーローは、そんな(トラウマ)を少しでも和らげる為にあるものだ。

崩れないように善処はするが、万が一の時に備えて内側を魔手で抑えておく。瓦礫を1つ1つ退かして中が見える頃、膝を抱えて泣き叫んでいる要救助者を見つけて手を伸ばした。

 

 

「もう大丈夫」

 

 

ヒーローは笑顔で

そういう教えですよね、オールマイト

 




「HUC」目線です。

【挿絵表示】

ふと脳内で考えてしまったのですが、否断くんは約束された勝利の顔面なので将来のビジュアル分岐はアレン(Dグレ)かベディ(FGO)かななんて馬鹿な想像してしまいました。深夜テンションですすみません。
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