双頭の鷲の下に   作:スツーカ

10 / 13
第9話

「……て……さい。マ…リヒ……さ…、起き…く…さい。歓迎会始まりますよ」

 

 

「うーん……あと4年……」

 

「オリンピックですか! 早く起きてください!?」

 

 まどろみの中で強く揺すられ仕方なく体を起こす。まだ疲れが抜けていない気がするが、こうも煩くては起きる他ない。

 

「いま何時だ」

 

「もう18時55分です。19時から歓迎会ですから早く準備してください。あとそこは私のベッドでマンリヒャーさんのは隣です! ロッカーも適当に放り込んでグチャグチャじゃないですか、次はちゃんとしてください」

 

「わかったわかった、次はちゃんとやる……ふわぁ……」

 

 欠伸しながら早口で捲くし立てプリプリ怒るG17を横目に愛しきベッドから出て、ロッカーの中でグチャグチャになった服を着る。多少シワになっているが大丈夫だろう。まだ眠気が残り目を擦りながらG17に引っ張られてブリーフィングルームへ。ちゃっかり手を繋いでいるが本人は気にしていない様子。もしや無意識では? 女の子のベッドで寝て女の子に起こされ女の子と手を繋ぐ、前世じゃ無縁だった世界だ。人形最高、神様ありがとう!

 そんなキモオタ的発想は地の果てに追いやりブリーフィングルームに到着。G17がドアを開け入室を促し部屋に入ると軽い破裂音が数発響き、カラフルな紙が宙を舞った。

 

「ようこそAH4地区へ!」

 

 指揮官の元気な歓迎に思わ口元が緩む。そういえば名前がまだ言ってなかったな、彼女の名前はマリアと言う。続いて指揮官より元気なすこっぴが「わーいお菓子だー!」とテーブルに置かれたお菓子の山に突撃、いやそっちかい。

 

「「これは運命の出会いですよ(ですね)!」」

 

 仲良くハモったのはM1911とP38、2人は先の戦闘でメインフレームがやられてバックアップデータを新しい素体に移し替えていたが、歓迎会にまにあったようだ。

 

「むむっ」

 

「どうしたP38」

 

「このルックスと声……ライバルアイドルですね! 負けませんよ!」

 

「いや、そんな気は無いのだが……」

 

 一体何を見出したのかはわからないがライバルアイドル認定されてしまった、アイドルなんぞやる気はないぞ? アイドルは兎も角P38とM1911とは仲良くできそうだ。基本明るい性格だしなにより小さくて可愛い。具体的に顔1つ分背が低いので自然と上目遣いだ。すこぴっぴと一緒に飛び跳ねる姿はいとをかし。さて歓迎会だが壁に入隊おめでとうの横断幕が垂れかかり、カラフルな飾り付けがあちらこちらにかかっている。中央に置かれたテーブルにはお菓子とジュースが人数分⁺α程度置かれており、このご時世としてはよほど気合の入った歓迎会であることは想像に難くない。

 M1911とP38の歓迎も程々に部屋の中央に立たされ改めて自己紹介をする事に。

 

「では改めて、余はマンリヒャーM95/30、Österreich(エスターライヒ)生まれのライフルよ。よろしく頼むぞ?」

 

 わーっと歓声が上がり拍手で持って受け入れられた。その後は自由時間としてお菓子とジュースを片手に談笑する。

 

「えすたーらいひってどこ?」

 

「オーストリアのドイツ語読みだ、当時のヨーロッパの中心地イタリアから見てOst(オスト)、東の国だからÖsterreichと言われるようになったのだ」

 

 真っ先に手を挙げたのはすこっぴ。君なんでも聞きたがるね、可愛いからなんでも答えちゃうよ。ちょうどいい所にいたG17の頭を撫でつつ色々と答えていく。

 

「ちょ、マンリヒャーさん!?」

 

「こらこら暴れるでない♪」

 

 逃げ出せないようしっかり左腕でホールドし右手で頭を撫でる。一番撫でやすい背丈と口は反抗的なのに体は素直なのがいけないのだよG17。ここではクールなキャラで通ってるのか、中々見られないG17の姿にガリルがニヤニヤしている。わかるぞガリル、これぞ優越感ってやつだ。アイコンタクトでガリルも伝わったのか親指を立てて頷く。

 

「そういえば試作って言ってましたけど、なにか新しい機能とかあるんですか?」

 

「ほう、いい質問だな指揮官。余は戦闘における指揮官の負担軽減のために開発された指揮人形よ」

 

 ドローンの空撮や人形の視界同期と無線の音声という限られた情報の中で、細かく具体的な指示を迅速に大量に行わなければならない戦闘指揮は指揮官にとって大きな負担だ。人形が自分で考え行動すればよいことだが、通常の戦術人形に戦闘指揮という複雑な思考は難しい。自律作戦に多くの戦力値が要求されるのは複雑な戦闘指揮が無い故に過剰戦力で圧倒しなければならないのである。弱兵でも卓越した指揮があれば何倍もの敵を退けることが出来るが、指揮が無ければただの烏合の衆に過ぎないのだ。

 そこで指揮官の負担軽減のために開発されたのが私、マンリヒャーM95/30である。なぜマンリヒャーM95/30なのかは知らん、私を作った天才科学者に聞いてくれ。同じ部隊の人形同士で情報を共有し、指揮官の大雑把で曖昧な指示でもその状況に合わせて適格な指揮を執ることが出来る。当然、自分の身を守れるよう高度な戦闘モジュールも搭載している。

 

「マンリヒャーさんすごいですね! 私、指揮が下手で皆さんに迷惑かけてばかりで……で、でも、マンリヒャーさんがいれば皆さんが傷つくことはないですね!」

 

 

「それは違うぞ指揮官」

 

「へ?」

 

「いくら余が高性能な指揮モジュールを搭載していても指揮官の指示が無ければ皆を指揮することは出来ない。指揮官あってこその余なのだ、だから自信を持つがよい」

 

 壁ドン顎クイが決まり自信を持てとの甘い声に指揮官がメスの顔で堕ちかける。って何をやっているんだ私は!

 

「す、すまない、その気は無かったんだ」

 

 慌てて離れて頭を下げて謝罪する。まさかこの人形(からだ)は女たらしだったのか? 無自覚でやってのけるあたり実際そうなのかもしれん。トリップしたままの指揮官の肩を掴みガタガタ揺らして現実に呼び戻す。ヒューヒューキャーキャー言うガリルやM1911、ステンを黙らすかのように大きく咳払いして歓迎会を続けよと言いこの場を収めた。はぁ、これから難儀になるやもしれんな……

 

 

 

 色々あった歓迎会が終わり片付けをしようとしたが、「私たちが片付けますからゆっくり休んでください」と言われ部屋から追い出されてしまった。仕方ないのでシャワーでも浴びて宿舎でゆっくりしていようと宿舎に向かう。というかシャワーあったかな? 流石にあるはずだと思うが……あったあった、宿舎の隅にあるシャワー室の蛇口を捻り温度を確かめる。うむ、温度は大丈夫そうだ。冷たい水しか出ないなんてことはなくちょっと熱めのお湯が継続して流れる。早速服を脱いで久しぶりに体の汚れを流そう。

 熱めのシャワーが肌に当たり砂埃や汗を洗い流してくれる。風呂は命の洗濯と言うがシャワーも十分心と体を癒してくれる。歓迎会の前にシャワー浴びるべきだったなと思いつつ蛇口を捻ってシャワーを止める。ちょうどいい所にタオルがあり体を拭きながら自室へ。下着は着回しだが新しいのが無い以上仕方ない。今度は間違えずに自分のベッドにダイブしそのまま布団を被る。G17を待っても良かったがやはり睡魔には勝てずそのまま目を閉じて眠ってしまった。

 




若干微妙な感じですが基地初日と歓迎会は終了です。なぜか女たらし属性まで付いてしまいましたが当初の予定には全くありません。どうしてこうなった
GW使ってほとんど進まないとか筆の進み遅すぎやしませんかね…

感想などお待ちしております!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。