双頭の鷲の下に   作:スツーカ

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投稿ペースを上げたいと思ってる今日この頃


第10話

 ここの基地にやってきて2日目の朝は実にゆったりとしていた。

 

ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!

 

「ぬお……朝か……」

 

 ベッドの横の目覚ましを止めて体を起こしぐいーっと背伸び、柔らかな日が窓から差し込み部屋と外のコントラストを際立たせている。窓の外を見やると地面を這うような霧がかかっており神秘的な風景が広がっている。隣のベッドに視線を移せばG17が小さく丸まって可愛らしく寝ており、しばらく起きる様子は無い。

 こんな朝はクラシックでも聴きながらコーヒーをいただきたい所だ。そういえばここにはカフェがあったなと思い出し、未だ洗っていない薄汚れた服を着て部屋を出た。

 

 Openの看板がかかったドアを開けカランコロンと心地よいベルの音が鳴ればコーヒーと木の香りが鼻腔をくすぐる。そのままカフェに入ればカウンターの奥から顔を出す女性が1人。

 

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」

 

 茶色のエプロンに三角巾姿のカフェ店員、どう見てもスプリングフィールドである。着席を促され店員の前のカウンター席へ。メニュー表を見やりコーヒーとトースト、ベーコンとスクランブルエッグの朝食セットAを注文し、しばし待つと食欲を煽るなんとも形容し難い良い香りが奥から漂ってくる。

 

「お待たせしました。朝食セットAです」

 

「ふむ、実に良い香りだ。ではいただこう」

 

 まずはコーヒー、砂糖とミルクを入れスプーンでかき混ぜれば真っ黒な液体が優しいベージュ色に変化していく。スプーンを置き口に運ぶとコーヒーの豊かな香りと苦味、ミルクと砂糖の甘みが口いっぱいに広がって朝の微睡みから抜けきっていない頭を完全に覚ましてくれる。

 

「良いコーヒーだ、なんの豆を使っている?」

 

「豆、ですか? 残念ですが豆は手に入らなくて……代わりに代用コーヒーを出来る限り本物に近づけています」

 

 なんと、店員によればコーヒーも食料も全て合成品と代用品であり、それを限りなく本物に近づけているそうだ。とても素晴らしい腕前である。

 

「ここには素晴らしい店員がいるようだ。名は何と言う」

 

「特に名前はありませんが……皆さんからはハルさんと呼ばれています」

 

「ハルか、覚えておこう」

 

 続いてトーストにバターを塗り一口齧ればバターの甘さと焼きたての食パンの香ばしい香りが広がり二口目、三口目と進んでしまう。半分ほど食べてからスクランブルエッグとベーコンに移る。卵の風味と若干の塩味が絶妙にマッチしている。ベーコンも程よく焦げ付く程度の焼き加減で噛むたびに肉汁が溢れて口が舌が多幸感に包まれる。

 はっ!? このスクランブルエッグとベーコンをトーストに挟んだらパーフェクトフードになるのでは……?(※なりません)この悪魔的諸行、やらずにはいられない! トーストを半分に折り残りのスクランブルエッグとベーコンを乗せてサンドウィッチに仕立て上げ、恐る恐る口へと運ぶ。

 

「!?」

 

 美味い……美味すぎる……っ! 食パンのほのかな甘みと卵の風味をベーコンの肉汁が包み込み、さながら食材のフィルハーモニーだ。あまりの美味しさにすっかり平らげてしまい、後に残ったのはパン粉で多少汚れた皿だけとなった。まだ湯気がほんの少し立つコーヒーを飲み干し口の中を洗い流す。パンと卵の甘さとベーコンの脂っぽさがほろ苦いコーヒーで中和され、口の中の幸せな余韻はもう残っていない。手を合わせ「ごちそうさま」と言うとハルが笑った。

 

「何を笑っておる」

 

「ふふふっ、ごめんなさい。あまりにも目を輝かせて美味しそうに食べるものですから」

 

「なっ……! ……忘れてくれ……」

 

 顔が熱くなるのを感じた。傍から見れば顔や耳が紅くなっていることだろう。

 

「二人だけの秘密にしますね」

 

「……そうしといてくれ」

 

 いたずらっぽく笑うハルはとても子供っぽくて、それでいてとても可愛らしかった。なぜか小学生の頃の初恋を思い出しつつ、そういえば自己紹介していなかったと思い立つ。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。余はマンリヒャーM95/30、昨日ここに来たライフルの戦術人形よ」

 

「あら、昨日指揮官さんに歓迎会のお手伝いをお願いされたんですが、マンリヒャーさんの歓迎会だったんですね」

 

「もしや昨日のケーキはハルが作ったものか? あれは美味しかったぞ、ハルの料理の腕前は世界一だな」

 

「うふふっ、ありがとうございます。腕によりをかけて作った甲斐がありました」

 

 その後コーヒーをお代わりしつつハルと談笑していると、ドアのベルがカランコロンと鳴った。

 

「やーハルさん、いつもの頼むわー」

 

「はい、お好み焼きですね」

 

 朝からそんなものを食うのかと思いながら、お好み焼きのソースの香りをかき消すようにコーヒーを飲み干した。

 

 

 

 朝食も終わり眠そうなすこっぴを膝に乗せてモチモチほっぺを堪能していると指揮官がやって来た。私の席に座り朝食を頼むと目が合う。

 

「おはようございますマンリヒャーさん」

 

「おはよう指揮官、昨日の歓迎会はとても良かったぞ。礼を言う」

 

 なお昨日の女たらしムーヴは触れないでおく。指揮官が隣に座ったのには訳があった。どうやら昨日の夜に私の事をG&K本社に問い合わせたららしい。本社の担当によれば生産も採用もしていないが型番はあったマンリヒャーM95/30の服と新しい銃を明日中には送ってくれるそうだ。そしてそれらが届くまでの間は副官に任命すると言われた。銃も服も無くこの基地に来たばかりなので、基地と仕事に慣れてもらおうという魂胆らしい。

 

 指揮官が朝食を食べ終わり共に執務室に行くと今着ているシワだらけで汚れた服を洗濯に出し、指揮官の予備の服を押し付けられ渋々着替えることに。若干サイズが小さくてボディラインがくっきりぴっちり出て恥ずかしい。こら指揮官、照れるから可愛いとか言うな!

 調子が狂うがやる仕事は書類の整理に哨戒に出ている部隊の指揮の補助、ワーカーホリック気味な指揮官を適宜休ませるなど、おおよそ想像する副官の仕事であった。だがこの指揮官、重度のワーカーホリックであった。

 

「なあ指揮官、もう昼すぎだぞ? 昼食を取らねばならぬぞ」

 

 

「私はいいからマンリヒャーさん食べてきて。これ終わらせたら食べるから」

 

 

「わかった、早く休憩に入るようにな」

 

 そう言って執務室を出てカフェに向かい、昼食を楽しんで30分後に執務室に戻ると指揮官はまだ書類とにらめっこしてペンを走らせていた。そんなに時間かかる書類ではなかったはずだと思いつつ覗き込むと昼食前とは違う新しい書類、横に目をやれば栄養バーの殻が2つ転がっている。

 

「こら! 終わったら休憩せいと言ったであろう!」

 

「わわっ! マンリヒャーさん!?」

 

「わわっ! じゃない! 昼休憩取れと言ったではないか」

 

「ちゃ、ちゃんと休憩したよ? 5分ぐらい」

 

「それを! 昼休憩とは! 呼ばん! 昼食もカロリーバーで済ませよって、体壊すぞ! いっから休む!」

 

 どうせ口で言っても休憩しないことは明白なので書類を取り上げ無理やりカフェへ連行する。まだ仕事終わってないと抵抗するのでお姫様抱っこで強制連行だ。適度な休息と栄養補給が無ければできる仕事も出来まい。途中でガリルとすれ違い「面白いことしてるなーウチも混ぜてや」と言って一緒にカフェに到着する。

 

「いらっしゃいませ。あら、マンリヒャーさんに指揮官さんじゃないですか。この時間は珍しいですね」

 

「ハル、すまないが指揮官に良いもの食わせてやってくれ」

 

 お姫様抱っこで連行された指揮官を見て状況を察したのかとんんでもないニッコニコの笑顔で対応してきた。指揮官が逃げないよう私とガリルで挟むようにテーブル席に座らせる。昼間に指揮官がカフェにいるのが珍しいのかすこっぴとG17もやってきてちょっとした女子会のように指揮官との会話に花が咲いた。心なしか、指揮官の仕事の緊張が少しほぐれたような顔をしていた。

 




朝飯だけで半分も書いてしまった…

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