双頭の鷲の下に   作:スツーカ

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遅くなりましたが11話です。どうぞ


第11話

 もう少しゆっくりしていけばいいのに、昼食を終えてすぐ執務室へとトンボ返りとなった。カフェを出た時に「お姫様抱っこで送っていこうか?」と聞いたら顔真っ赤にして怒られた。解せぬ。

 執務室に戻れば仕事の見直しから始まる。指揮官の負担を減らすため哨戒部隊への細かい指示を私が代行し、単純な書類作業は手の空いてる者に任せることで仕事量を半減させることに成功した。指揮官は自分でなんでもやろうとし、周りも心配しつつもそれに甘えてした。そんな体制を直し分業化、効率化を行った結果、今日の仕事は定時から30分ほど過ぎた時間に終わらせることが出来た。いつもなら更に数時間仕事に追われてると言うのだから、どれほど自分ひとりで仕事をやっていたかよくわかる。

 仕事が終わったところで片付けに入ると今日はもう休んでいいと言い出した。浮いた時間で戦術の勉強をするつもりだなと勘づいたので、まずは夕飯にしようと指揮官の手を引く。朝昼とお世話になったカフェに入れば相変わらずハルが笑顔で出迎えてくれる。テーブル席に座りメニュー表を眺めてからステーキを注文する。指揮官は軽めにサンドイッチとサラダの盛り合わせを頼んだようだ。料理が来るまでの間に指揮官に問う。

 

「指揮官よ、この後は何をするつもりだ?」

 

「へ? と、特になにもしないよ?」

 

「嘘つけ、夜遅くまで戦術の勉強をしていると他の者から聞いたぞ。仕事が早く終わった分長く勉強するつもりではないかね?」

 

「うっ……あ、あはは……」

 

 図星だったようで指揮官は言葉に詰まったあと苦笑いしながら肯定した。

 

「まったく……勉強するのもいいが1人では限度があるだる。余が戦術のノウハウを享受してしんぜよう」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「一人で本や記録を見て勉強するよりよっぽど効率がいい。それに余が作られた目的を忘れた訳ではあるまいな? 余は指揮を執るための人形だ、戦術のイロハを教えるのに造作もない」

 

 という事で指揮官に戦術を教えることにした。だがその話は後に回すとしよう。今は出されたステーキに集中せねばなるまい。合成肉のステーキと野菜の付け合わせ、そして焼きたてのパンとコンソメスープがテーブルに並ぶ。鉄板に乗せられた合成肉がジュウジュウと油を跳ね、焦げ目のついたポテトとブロッコリーが彩を添える。ナイフを持ちステーキを切れば肉汁が溢れ食欲は限界まで向上した。熱々の合成肉ステーキを一口頬張ると少々固いが噛むたびに肉汁が溢れ、肉の旨味をソースが更に引き立てる。

 続いてパンを頬張れば焼きたての小麦とバターの甘い香りが口いっぱいに広がり、朝食のトーストとは違ったパンの美味しさを感じる。

 次にコンソメスープだ。琥珀を思わせる澄んだスープを啜ると風味豊かで少々熱いコンソメの味が口の中の脂っこさを洗い流してくれる。

 

「うむ、美味である!」

 

「マンリヒャーさん美味しそうに食べますね」

 

「そうか? だが美味いのは事実だ。美味いものを美味いと言わずして何と言うか」

 

「うふふっ、ありがとうございます。腕によりをかけて作った甲斐がありました」

 

 振り返ってみると皿を持ったエプロン姿のハルがいた。

 

「初めての方にこんなに美味しいと言っていただけたのは初めてなので、今日だけサービスしちゃいます」

 

 そう言ってバターと蜂蜜がかかった小ぶりなパンケーキをテーブルに置いた。

 

「余ばかり優遇しては他の娘が嫉妬してしまうではないかね? 同じものを2つ頂こう」

 

「2つ……ですか?」

 

「指揮官とハルの分だ。少しばかり付き合ってくれてもバチは当たらんさ」

 

 

 

 3人で食後のデザートを楽しんだ後、今日ぐらい勉強せずしっかり寝るようにと念を押して宿舎に戻る。手早くシャワーを済ませ髪をタオルで拭きながら宿舎に入ると、G17が既にベッドで横になっていた。ごろごろ寝っ転がっていると思い近づいてみると可愛らしく寝息を立てていたではないか。まだ22時にもなっていなんだが、いくらなんでも早すぎやしないか? まぁ、猫のように丸まって寝ている姿は非常に可愛らしいのでズレた布団をかけ直してやる。

 しばらくG17のモチモチほっぺをツンツンして遊んでいたら以外に時間が経っていた。今日は若干冷えるのでG17を抱き枕に寝るとしよう。G17の布団にお邪魔して抱きしめる。子供体温でちょうどいい抱き枕だと思いつつ、次第に意識が沈んでいった。

 

 

 

 翌朝、「なんで私のベッドにいるんですか!?」の抗議をあしらいつつ朝食を食べていると指揮官に呼ばれたので執務室へ。中に入るといくつかの段ボール箱と弾薬箱、ガンケースに囲まれた指揮官がいた。

 

「あっ、マンリヒャーさんおはようございます」

 

「おはよう指揮官、してこの段ボールの山はなんだ?」

 

「マンリヒャーさんの服と銃です。今さっき届いたんですよ」

 

 昨日申請してもう届いたとは、Am○zonのお急ぎ便でももっとかかるぞ? ガンケースの中身は我が半身たるマンリヒャーM95/30、弾薬箱はその弾だとして段ボールは服装か。いつまでも指揮官の服を借りっぱなしという訳にもいかないので早速お着換えタイム。昨日指揮官の目の前で着替えさせられたんだ。もう羞恥心など無いと心の中で言い聞かせつつ段ボールを開け服を取り出す。

 

「……おい」

 

「? どうしました?」

 

「下が……」

 

「下……?」

 

「下が……ズボンじゃなくてスカートになっているではないか!」

 

 なんと言う事だ! ズボンで辛うじて男の尊厳を保っていたというのに! え? もうそんなの無いって? ……言うな、悲しくなる。

 ここでウジウジしていても時間が過ぎるだけなので着替えるとしよう。指揮官の服を脱ぎ、色合いだけは以前穿いていたズボンと同じのスカートを穿いていく。しかしなぜズボンからスカートに変わったのかと聞けば「スカートの方が女の子らしいくて可愛いじゃないですか?」と返された。これ指揮官の指定だったのか……

 もう女性ものの服に羞恥心が湧かなくなってくるあたり、心は女性になりつつあることを嫌でも自覚しつつもスースーするのは嫌なのでタイツを穿いて下半身を守ろうとする。最後にジャケットを羽織りボタンを留めて完成だ。

 

「どうかな指揮官」

 

「おぉ! スカートに変わったから可愛くなったよ!」

 

「あまり可愛いとかは好みでは無いんだが、感謝するぞ」

 

 コートもあったが部屋なので外に出たら着るとしよう。さて、早速今日の仕事に取り掛かる前に新しく届いた銃の試し撃ちをしたい。銃が新しくなったのだから、弾道や重量バランスなどその銃特有の"癖"を理解しておく必要がある。ちょっと試し撃ちにと言ったら指揮官は見てみたいと言い出した。仕事はいいのかと思ったが、部下の練度を確認するのも仕事の内だと言う。実際その通りであるし、溜まっていた仕事も昨日のうちに順調に片付けていたので問題はなかろうと考え一緒に射撃場へ。

 辿り着いたのは奥行きある射撃場。相変わらず真っ黒に焦げている床の一部を横目に弾を並べ、新たな我が半身となったマンリヒャーM95/30のハンドルを引く。クリップにまとめられた5発の弾を弾倉に押し込みハンドルを戻す。

 

カシャンッ

 

 静かな射撃場に装填した音だけが響く。イヤーマフラーを付けボタンを押し射撃訓練プログラムを起動させる。射撃場の奥からターゲットドローンが5機ほど登場し、開始を今か今かと待っている。イヤーマフラーを付けた指揮官が私の耳元にブザー付きタイマーを近づけた。

 

「よーい……スタート!」

 

ピーッ!

 

 ブザーと共にドローンが動き出す。

 

BAM!

 

 まずは一番近いドローンに1発、これはやや上に逸れた。ボルトハンドルを引き、そして押す。

 

BAM!

 

 続いて右のドローンへ。ゲームではただ立ってるだけだったが本物は意外に早い動きで咄嗟の照準が非常に難しい。特に光学照準器も無く連射も出来ないライフルでは厳しいものがある。

 

BAM!

 

 次は左のドローン。この弾はほんの僅かに右にズレた。この銃の癖がだんだんわかってきたかもしれない。

 

BAM!

 

 次は3体倒す間に接近していたドローンへ。3発で癖を掴み4発目はターゲットのド真ん中へホールインワンだ。ボルトハンドルを引くと弾をまとめていたクリップが弾倉の下から排出され、まるでガーランドのようにピーンと甲高い金属音を奏でる。

 

BAM!

 

 最後のドローンに命中させタイマーストップ。ふぅ、っと息を吐きイヤーマフラーを外して弾倉に弾が残ってないか確認し、ハンドルを押して安全装置をかける。記録は6.68秒、まあまあ上出来な部類だろう。たぶん。

 

「すごいですねマンリヒャーさん! 他の子の射撃訓練は何度か見たことあるんですが、外したりすぐ撃てなかったりがあって時間かかる子が多いんです」

 

「なに、最初は皆そういうものだ。大切なのは基礎基本を抑えることだ。今度、皆の腕前を見て稽古をつけるとしようか」

 

 と言いつつもう一度訓練をしようとした矢先にP38が駆け込んできた。

 

「大変ですよ! センサーに鉄血の大部隊確認です。すぐブリーフィングルームへ!」

 

 我が半身を手にすぐさまブリーフィングルームに走った。既にガリル、すこっぴ、ステン、M1911、G17が集まっており、ブリーフィングルームの壁にプロジェクターで大量の情報が映し出されていた。

 

「状況はどうなっている?」

 

「おぉ指揮官にマンリヒャーか、やっと来たな。状況はえらいこっちゃ。ついさっき地区外周に設置してあるセンサーとカメラに鉄血の大部隊を確認したんや。こっちには向かっとらんけど、このまま真っ直ぐ行けば基地の補給路が荒らされる可能性があるっちゅ―訳や」

 

「なるほどな」

 

 改めて映し出された映像と鉄血人形の情報を見る。Scout、Ripper、Vespid、Jaeger、Guard、Jaguar、そして

 

「Manticore、か」

 

 途切れる寸前に映っていたのは4本足で動き回り、胴体に巨大な砲身を吊り下げ、装甲で覆われた機械の獣、Manticoreであった。

 

「この基地の部隊規模と練度的に戦える対手ではありません。ましてやマンリヒャーさんと言えどManticoreが相手ではあまりにも厳しいです。ですがこのまま放置すればここも危険に晒されます」

 

 普段の様子とは打って変わり真剣な眼差しを画面に向ける指揮官。

 

「マンリヒャーさん、現場の指揮、お願いできますか」

 

「うむ、任せるがよい。諸君、出撃準備だ!」

 

 全員が返事して自分の銃と装備を取りに駆け出す。この時、意外な出会いがある事など、誰も予想していなかったのであった。

 




コラボフラグを蒔いていくスタイル

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2020/08/27 抜けがあったので改訂
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