双頭の鷲の下に   作:スツーカ

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第4話

G17の記憶と端末に入っていた古い地図を照合し、今までの道のりをプロットしてG17の所属する基地の方位と距離を割り出す。更に鉄血の目撃情報とこれまでのパターンから基地までの安全なルートをいくつか出した。

 

「これくらいでよかろう。よし、寝る」

 

「すごい…って、えぇ!?ここを出るんじゃなかったの?!」

 

「出るとは言ったが今すぐとは言っておらん。こんな時間に出ても暗視装置を持たない我々は鉄血やELIDに容易く殺されるだけだ。わかったらさっさと寝ろ」

 

地下室入り口から死角になるところで壁に寄りかかりマントを布団代わりにして目を閉じる。

だがG17は寝れないのか、はたまた納得がいかないのか体育座りで不貞腐れている。

 

「ほれ、こっちに来い」

 

見かねてG17の手を引き膝の上に座らせマントを一緒に被るとモジモジと恥ずかしがる。そこにいたらすぐ見つかるだろうと言い聞かせ頭を撫でてやると安心したのか体を預けて眠ってしまった。

 

「可愛い奴め」

 

もしやこれはおねロリなのでは、いやロリと言うほど幼くないから百合だ、精神的にはロリコンでは、ちくわ大明神などと脳内で論争を繰り広げいつの間にか眠ってしまった。

 

誰だ今の

 

 

 

翌朝、東の空が明るくなり始めた頃に目が覚める。寝る直前までは真っ暗だった地下室もなんとか部屋の端まで見える程度まで明るくなってきた。

G17はまだ眠っているようだ。少し揺すって起こす。

 

「おい、朝だぞ。起きよ」

 

「んー……」

 

目を擦ってまだ眠いと言わんばかりにマントを被り再び寝ようとするG17。起きたら足の疲れがドッと来たんだ、早く起きてくれ。軽くデコピンして起こしてやった。

最低限の水分補給と食事を済ませて銃の点検をする。半身たるMannlicher M95/30は数発撃ち1/3が切り落とされた事を除けば状態は良く最小限の手入れで済んだ。Steyr M1912は1発も撃っておらず同様に簡単な手入れを済ませる。

G17は先日の戦闘で弾を消耗したらしく、残りの弾は弾倉に入っている分だけだった。幸いにもSteyr M1912は9mm パラベラム弾仕様のものだったので弾を分けてやる。

出発の準備は整った。

 

「本当に出るんですか?」

 

「ここにいてもバッテリーも食糧もじきに尽きる。それとも機能停止するまで残っているかね?」

 

「……行きます。生きて、基地に帰りたい」

 

「よしその意気だ」

 

ワシャワシャと頭を乱雑に撫でてやってから地下室から出る。ギギギ…っと固く閉ざしたドアを少し開けて周りを確認。よし誰も居ないな。

Steyr M1912を構えて地下室から出る。家の中をクリアリングし安全を確保、出てこいとG17を呼び家を出る。

 

薄暗いが東の空は明るく、枯れ木の林と平原は霧に包まれている。目標は今日中に基地への到達。最低でも通信が届く範囲まで進むことだ。

北西に向けて歩み始める。基地までは直線距離でおよそ40kmだが地形や鉄血、ELIDのことも考えると更に長くなるだろう。

崩壊液流出事件以降更新が止まった端末の地形図を確認すると、ここら一帯は窪地になっており電波が入り辛くの送受信が難しい。さらに崩壊液や放射線のホットスポットが電波を容易に遮断する。

 

第1の目標として救難信号が届く地点まで向かうことにした。地形図と照らし合わせ方角と距離を伝えてから出発する。

それから2人で無言のまま、ただひたすら周囲を警戒しながら歩き続ける。この空気が気まずいのか、もしくは沈黙が嫌なのか、G17はおもむろに口を開いた。

 

「…一つだけ、質問いいです?」

 

「なんだ?」

 

「あなたは、一体何者なんですか?」

 

その言葉に思わず足が止まり振り返る。吸い込まれそうなG17の真っ赤な瞳が見つめる。

事実を言うべきか誤魔化すか。事実を言っても電脳の異常を疑われるような反応しか返ってこず、基地に着いたらI.O.Pに送り返されるかもしれない。

だが誤魔化したところで納得はしないし、信用も得られないだろう。もし鉄血に囲まれ致命的な状態になっても信用が無ければ乗り切れない。

 

ほんの数秒の思考の後、再び歩み始める。

 

「一つだけ約束してくれ、余が良いと言うまで口外しないことを」

 

「…わかりました」

 

「そうだな…簡単に言えば、余は人間だったのだ」

 

周囲を警戒しながら、自分の過去を語り始める。


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