足跡を追って来たのか鉄血の反応は真っ直ぐこちらに向かってくる。木を隠すなら森の中とは言うが、鬱蒼としたジャングルならまだしも木の間隔が疎らなこの林では人型のものを隠せる遮蔽物は殆どない。
「どうしたものか……ん? よし、あれに隠れよう」
「あれですか?」
G17が懐疑的に指差した方向を見つめるはほんの少しの窪地。そんな目で見るな。ちょっとの穴でも死傷率はだいぶ下がるんだぞ。なぜか頭の中にある第一次世界大戦の塹壕戦の記憶がそう言ってるから間違いない。少しの窪地に飛び込み出来る限り頭を低くする。我が半身たるMannlicher M95は昨日の戦闘で銃身が真っ二つに切り裂かれており、よほど接近して撃たないとまず当たらない。よってセカンダリのSteyr M1912ピストルと手榴弾で戦うことになる。
ほんの少し頭を出して双眼鏡で敵を確認する。Scoutが6体にDinergateが6体、おそらくプログラム通りの順かいだろう。そこに足跡を発見してそれを辿ってきた訳だ。動きが単調なら御しやすい。
「敵を十分引きつけてから手榴弾を投擲、その後撃ちまくる。よいな?」
「
返事に頷き再び敵を見やる。相変わらず単調に真っ直ぐ足跡を辿ってこちらにやって来る。3……2……1……今だ!
底部の蓋を外し紐を引っ張って柄付き手榴弾を投げ込む。空中で爆発するように投げ込むタイミングを調節した手榴弾は綺麗な放物線を描き、Scoutの集団のど真ん中で炸裂した。170グラムの炸薬が炸裂し火炎と金属片がScoutを襲う。Scoutは6体中2体を落とし残る4体を損傷させた。
「撃ちまくれ!」
G17のグロック17と自分のSteyr M1912が火を噴き9mmパラベラム弾が次々と吐き出される。ライフル弾に比べ威力は天と地の差があるが、ほとんど装甲が無いScoutやDinergateなら通用する。とは言えやはり拳銃では合計10体の鉄血を倒すことは用意ではない。空を飛ぶ厄介なScoutは全部叩き落としたが、すばしっこいDinergateは中々倒せない。あっという間に8発撃ち切り、G17に「リロード!」と叫び窪みに身を隠して装填する。通常の拳銃と違いクリップ装填で素早い装填が出来ない。
慣れぬクリップ装填に四苦八苦しているとG17が叫んだ。
「1匹すり抜けました! 来ます!」
振り向いた瞬間には時すでに遅し、Dinergateが目前に迫っていた。そのまま体当たりされゴロゴロと転がり装填途中だった拳銃は宙高く舞い上がりどこかへ行ってしまう。馬乗りされDinergateの背中に搭載された銃に撃たれないよう必死に抵抗する。傍からみればじゃれあってるように見えるだろうがこっちは命がかかってるんだ。チラッとG17を見るがあちらは他の鉄血の足止めで手一杯のようだ。つまり自分で何とかしないといけない。
「こいつ……!」
可愛い見た目してかなり力が強い。左手で抑えてる間に最大限の出力で右手を振り上げ殴りつけた。効いたのかDinergateは怯んで離れる。右手がとんでもなく痛いがそんなことは言ってられない。背中に回してた半身たるMannlicher M95を構えて銃口をピッタリと押し付け引き金を引いた。発砲音と共にDinergateは機能停止、ちょうどG17も全ての鉄血を倒したようだ。
「大丈夫でしたか!」
「あぁ、なんとかな」
殴りつけてから未だに痛みが引かない右手をさすりつつSteyr M1912を拾って装填しホルスターに戻す。鉄血の残骸を解体しバッテリーを抜き取ってから通信機器を破壊し、元居た窪地に放り込み土を被せて雑だが隠蔽しておいた。これで暫くは気付かれないだろう。増援が来る前にこの場を脱出しようと言い、やや早歩きでG17がいた基地に向かう。
どれほど歩いただろうか。と言っても経過時間と歩幅と歩数は正確に数えているので、現在は3時間ほど歩いて7kmほど進んだ。既に日は頭上高く上がっており穏やかな日差しが疎らな林に降り注いでる。陽気なピクニックを楽しみたいところだがここは鉄血支配地域だ。残り30kmほどの道のりを一刻も早く進めたいが戦術人形にも疲労というものがある。おそらく連続稼働でオーバーヒートしない対策だろう。自分はまだ大丈夫だがG17はそうでもないようで、15分ほど木陰で休憩することとなった。
「残り30kmほどだ。道のりはまだ長いが、このまま行けば明日には到着するだろう」
「まだ30kmも……でもなんだか安心しました。あなたと出会うまではあのまま地下室で朽ち果てるか出ていって鉄血と戦って死ぬかの二択でしたから」
お前にそんな顔は似合わんぞと哀愁の表情を見せるG17をワッシャワッシャと撫でてやる。「なにするんですか!」の抗議も聞こえないフリだ。
さて休憩も終わり歩み始める。心なしか足取りが軽く予定より早く着きそうだ。だが夜までかかるのは確実だろう。G17のセンサーで夜間は進めないことは無いが、暗視装置が無いので視界が無いに等しいことに変わりはない。
それからしばらく行軍と休憩と繰り返し、とうとう陽が地平線に隠れ始める。木々の影が辺りを覆いつくし夜中の如く暗くなっている。夜間行軍は道を見失う可能性が非常に高い。やはりどこかで夜を明かすべきか、しかし身を隠せる場所は無い。どうしたものかと考えていると足音に交じり微かに銃声が聞こえた。G17も気が付いたようで一気に警戒レベルを引き上げる。
「少し先で向こうの方角からみたいです」
「銃声から考えるに撃ち合っているようだな。行くぞ」
「まさか銃撃戦の真ん中に行こうと思ってるわけじゃないですよね?」
「流石にそこまでやらんわ。たぶん」
「今多分って言いませんでした?」
「よし行くぞ」
「ちょっと!?」
(∩゚д゚)アーアーきこえなーいなんてジェスチャーしながら暗い森を駆け抜ける。しばらく走ると案の定グリフィンと鉄血が銃撃戦を繰り広げており、状勢はグリフィンがやや劣勢といったところであった。G17が見覚えがありますと言うとグリフィン部隊に向けて人形専用無線で呼びかけた。
「ステン! スコーピオン! G17戻りました!」
『うそ!? グロッグ生きてたー!』
『もー、みんな心配してたんだよ~?』
『今の声グロッグか? 救難信号なかったからもう死んだかと思ってたで』
「ガリル! 勝手に殺さない!」
初めからステン、スコーピオン、ガリルだな。ゲーム序盤でよくお世話になった馴染みのある声が人形専用無線から聞こえてくる。だが戦況は逼迫しているようだ。
『いま感動の再会を祝ってる暇はないんや! P38とM1911がやられてまともに視界が確保できんまま押されとる!』
『暗視装置も無いから盲撃ちだよ! G17! データリンクで視界確保して!』
なるほど、視界役のハンドガンが倒され暗視装置も無いから命中率が極端に下がっていると。夜戦マップが解放されて夜戦の仕様を理解しないまま通常部隊で突っ込んだ感じだな。まるでドルフロやり始めた頃の自分のようだ
G17のセンサーが捕らえる鉄血の数はそう多くない。相手がグリフィン側しか見ていないことも考慮すれば数時間前の戦闘より遥かに御しやすい。私は人形専用無線に割り込み指示を飛ばした。
「今からG17のセンサー情報をリンクさせるから頃合いを見て撤退せよ。後は余に任せておけ。あぁ、くれぐれも余に弾を当てるなよ?」
『いきなり無線に割り込みよって誰や?!』
『ちょっ、すっごい速いのが来るよ!』
そうだスコーピオン、その凄い速いのが私だ。手始めに1番近くにいたJaegerに対し我が半身でフルウィングをお見舞いし顔面を凹ませ機能停止を確認、続いて異音を検知したVespidが振り向こうとしたところに銃剣を投げつけ、見事首筋に命中し私を視界に捉える事なく倒れる。ようやく私の存在に気付いたRipperが銃口を向けるがもう遅い。狙いを付けさせぬよう姿勢を低く左右に避けながら駆け抜け、体当たりと同時に切断された半身を押し当て引き金を引いた。体当たりの運動エネルギーと相まってRipperは弾き飛ばされついでに手榴弾を投げ入れてGuardも巻き添えに爆散させた。
撤退しろと言ったはずだがステン、スコーピオン、ガリルの3人はG17のデータリンクの情報から残った鉄血を次々と倒していく。私が引っ掻き回したおかげで鉄血は総崩れとなり残った敵は速やかに倒された。
「ふぅ、終わったな」
「すごいすごい! あんなにアクロバティックに動く戦術人形初めて見た! あなた名前はなんて言うの!? どうやったらあんなに動けるの!? あたしにも出来る?! ねぇねぇ教えて!」
スコーピオンが興奮気味に駆け寄って質問攻めしてくる。こいつ可愛いな。
「まぁそう慌てるでない。余の名はMannlicher M95/30、プロトタイプの戦術人形よ」
これがこれから世話になるAH4地区部隊との初めての出会いであった。
話が浮かばなかったのでやや強引に終わりましたがこれで次回から放浪の身から基地所属となります。
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