神世界からの来訪者   作:禅 

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星王の要求

 力が入らない。スキルも自由に使えない。

 『魔力感知』によって情報は入ってくるが、こちらからは意思が全く伝えられない。

 

「ど、どうしたのだ!リムル!しっかりするのだ!」

 

 わたわたと騒ぎ立てるミリムの声が聞こえる。

 "星王竜"ヴェルダナーヴァ……ミリムの父親にして、ヴェルドラの兄。

 そして何より、この世界を創造した存在である。

 そいつが実は俺の前世だったらしい。

 ……オイオイオイオイちょっと待ってくれよ。

 待て、時間をくれ、落ち着くから。……あ、素数は数えないよ?俺が素数を数えられないことは転生したての頃に判明しているからな!

 えーと……なんか色々と頭が追い付いていかないんだが……要するに……。

 

(俺の前世の娘がミリムで、その前世と俺が何故か同じ魂に同居してる状態だった、ってことか?)

 

『そういうことになるね。まずはボクの今の状態について説明しても良いかい?』

 

 展開が早すぎてついていけない、というのが俺の本音だ。

 この人(というか竜)少しせっかちすぎると思う。

 こういうイベントが起こったときは、落ち着くまで待ってあげるのがテンプレだろ。

 とても悠久の時を生きてきたとは到底思えない。

 ミリムもこいつに似たんだろうか。……いや、あいつはせっかちって言うよりお子様なだけか。

 

(ああ。出来るだけ簡単にな。生憎俺の思考力はもう限界にきてるんだ)

 

 俺はヴェルダナーヴァに要点を絞れという意味を含めて言った。

 これで分かってくれよ、頼む。俺には生憎理解力がないんだ……!

 

『君の思考力が限界でも、君には頼れる相棒がいるじゃないか。心配は要らない。魂から君の心核(ココロ)を切り離した時に、神智核(マナス)君も同時に切り離して接合しておいたからね』

 

 そう言うと、ヴェルダナーヴァは今の状態についてだらだらと説明を始めた。

 ……俺の言葉の含みにも気づけないなんて……本当に至高の存在なのか?

 

《はい。"星王竜"ヴェルダナーヴァは、正しくこの世界を創造した存在であることが確認されています》

 

 し、シエルさん、居たんですね。そういえば。

 突然で悪いんだが、ヴェルダナーヴァの言ってることをまとめてくれるか?無駄に話が長いんだ。

 

《分かりました。できるだけ短く要約を行います。》

 

 そして、シエルさんにまとめてもらった情報がこちら。

 

 まず、自分の意思が芽生えたのは俺がこの世界に生まれたのと同時であるということ。

 その時点ではまだヴェルダナーヴァの頃の記憶もない状態だったが、本能のままに記憶を求めて活動することはできたらしい。

 曰く、俺の深層意識の中で、魂に残された微かな転生前の記憶を延々と遡り、ヴェルダナーヴァの記憶を元に、心核(ココロ)を再構成することに成功したのがなんとヴェルドラと出会う三日前。

 原理としてはヴェルダの創った記憶の宝珠(メモリーオーブ)と似ているが、元となった心核(ココロ)が本人のものだったが故に、完全なヴェルダナーヴァの心核(ココロ)を造り出すことに成功している。

 まあ、この手法が成功したのは『竜種は不滅である』というこの世界のシステムの影響もあるのだろう。

 

『そういうわけだから、ボクは今まで君の魂の奥底に暮らしていたんだ。時空の果てで君が眠っている間に、やっと深層意識から抜け出すことができて、君の心核(ココロ)にも何度か話しかけたんだけど……気付いたかい?』

 

 ……あ。そういえば。

 最近、俺の幻聴がひどくなってると思ったら……そうか。ヴェルダナーヴァが話しかけてきてたのか。

 いやあ、もう俺のスライムボディーの寿命を疑い始めてたんだよな。不老不死の筈なのに幻聴なんて、道理でおかしいと思った。

 

(まさか自分の前世が語りかけてきてるなんて、分かるわけがないな。はっはっは)

 

『アハハ……さて。積もる話は後にして、本題に移ろう。まず、この体の主導権は君に返す。その代わり、一つ頼みを聞いてくれないか?』

 

(頼み?)

 

 まさか地上を滅ぼせとか言わないよな?

 俺のせいで発展しすぎてるとか、そんなこと言われても責任はとれない。

 どうか易しいお願いであってほしいものだ。

 俺が祈りながら返答を待っていると、ヴェルダナーヴァは要点を手短に伝えてきた。

 

『君の発明品の一つに、宝珠(ギジコン)というものがあっただろう?あれをボクの心核(ココロ)の投影先として譲ってほしい。あとは肉体だが……そうだ!ユウキとかいう人間がボクの墓を荒らして創った剣。あれを元に魔法人形を作ってくれ。そこからはボクのチカラで何とかするから』

 

 つまりは、星皇竜角剣(ヴェルダナーヴァ)宝珠(ギジコン)をはめて作り替えてやればいいわけだ。

 なんとかならないことも無さそう……か?

 どうでしょうシエルさん?

 

《二、三日ほどかかっても?》

 

 べ、別に良いですが……。

 

《でしたらお任せください!最高の出来にしてみせますよ!》

 

 声高に宣言するシエルさんの声は、今までで一番わくわくしているように聞こえた。

 ……あれ……シエルさんにとっての『最高』って……。

 ゼギオンとか、ゼギオンとか、ゼギオンとかの前科があるシエルさんに頼んで大丈夫だろうか……。  

 いや、あまり深く考えるのはよしておこう。話が前に進まない上に、もうこんなに張り切ってるシエルさんに今更『やっぱいい』だなんて言えない。

 

『結論は出たかい?』

 

 シエルさんに『ほどほどに』するよう忠告をしようかと思案していると、ヴェルダナーヴァから、返答の催促が来た。

 ま、いいか。ヴェルダナーヴァに限って性能が良すぎてもて余すなんてことは流石にないだろう。

 というわけで、俺はヴェルダナーヴァに条件を承諾することを伝え、体の主導権を譲り受けた。

 徐々に体の感覚が戻り、身体中に自分の意思が行き届いていくのが感じられる。

 

「あ、あ、よし。喋れる」

 

「リムル!良かったのだ!ずっとだんまりだったから心配してたのだ~!」

 

 俺が久し振りに口を開いたからか、泣いて喜ぶミリム。

 その腕は例のごとく、俺の体をしっかりと掴んでいた。

 やめて!揺らさないで!ちぎれる!リムルンの二の舞になっちゃう!

 

「それにしても、急に黙りこんでどうしたのだ?誰かと思念伝達でもしていたのか?」

 

「……秘密」

 

「ええ!なんで!ワタシは親友(マブダチ)だろう?隠し事はせぬのだろう?それとも、あれか!ワタシが知ったらマズイことなのか?」

 

「いや、そういうことじゃなくて……」

 

 誰が『お前のお父さんと話してたんだよ』なんていえるか。

 しかも、それを話すにはもれなく俺の前世がヴェルダナーヴァであることもカミングアウトしなければならないわけで……。

 とにかく、本当のことを話せばほぼ確実にミリムのテンションがハイになってしまう。

 迷宮とかならともかく、こんなところでミリムにハイになられたら俺でも手に終えない。

 

「……分かった。じゃあ、こうしよう。ミリムに大事な話がある。だから、三日後の昼、迷宮に来てくれ。今日のことも、そこで話す」

 

「どうしても、か?」

 

「そうだ」

 

 俺がきっぱりと言うと、ミリムは少しガッカリしたように肩を落とすと、低いトーンで返答を返した。

 

「分かったのだ」

 

 よし。あとは、三日後までに皆に連絡をとって……なんか凄いデジャヴなんだけど。

 ルナの件でも皆を集めたからなあ……今回は竜種達だけで良いか。

 どうせ二週間後には終末の混世宴(ラグナロク)だ。魔王達には、その時にでも紹介すれば良いだろう。

 

「……もう、良いかな」

 

 不意に後ろから声が聞こえた。

 見ると、バケツ一杯分を川魚で満たしたルナが、釣りの用具をしまい始めたところだった。

 ちょ、ちょっとルナ?俺ほとんどやってないんだけど……。

 

「だって、姉さんは黙ってるし、ミリムは姉さんにずっとくっついてるし、ゴブタは寝てるし、魚はもういっぱい釣った。そろそろ連絡をいれてもいいよね」

 

 連絡……?って、まさか!

 

「おいルナ!待っ……!」

 

「リムル様。お迎えに上がりました」

 

 そう、クールに言い放った鬼。

 俺の目の前に突如として現れたソウエイの表情は、まるで氷のように冷たく、真剣だった。

 

「リムル様。申し訳ありませんが、ディアブロ不在の今、勝手な行動はご遠慮いただきたく」

 

「わ、悪い……」

 

 俺が謝ると、ソウエイはルナに向き直り、一言。

 

「ルナ様。ご協力、感謝します」

 

「う、うん。その代わり、約束はちゃんと守ってね」

 

「御意」

 

 ソウエイの言葉を聞いて、僅かに頬を赤らめるルナ。いやいや、おかしいよね?

 ルナ……お前ってやつは……。

 恋する乙女の前では、どんなものも無力なのだろうか。

 

 こうして、俺達は魔物の国(テンペスト)への帰宅を余儀無くされたのだった。

 




さて。前回のpartより、1ヶ月以上空いての投稿となりました。
決して時間が無いわけではなかったんですよ。
確かに怒濤のテストラッシュと修学旅行のコンボはキツかったですが。
それを抜きにして、今回の投稿の遅れに関しては、主に二つの理由(言い訳)があります。
一つは、今回の話の重要さ。
もう一つは、自分史上最大のスランプ。
この二つが重なって、メチャクチャ遅筆になってたわけなんですね。
このシリーズを読んでくださってる皆様。大ッッッ変申し訳ございません。
これからも投稿は続けていくつもりですので、どうか温かく見守っていただけると幸いです。
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