目の前にいたのは、朝までいた母さんではない。
頭に『ハタ』を立てた
「わっ!」
俺はつい腰が抜けてしまった。
「か、母さん?どうして頭にハタを立ててるんだよ。」
「うふふ、かっこいいでしょ?さあ、あなたも立てるのよ。」
「そうだ。それがいい。」
奥から父さんが出てくる。勿論頭にハタを立ててだ。
「父さんまで?おかしな冗談はやめろよ!」
「聞き分けのない子だね。母さん悲しいわ。」
嘘だ。母さんはそんなこと言わない。
「そうだ、親の言うことを聞かないのはよくないことだぞ。家族皆でハタを立てて皆で幸せになろう。」
朝見たハタとほぼ同じだ。あのとき見た人は、どこかに集まっていたような…それにどこかおかしかった。もしかして、このハタのせい?だとしたら…立てるのはまずい!
俺は玄関に走り出した。すぐさま階段を下りて、どこかに逃げようとした。
ドスン!
「いって!」
「痛いでやんす…あ!良太郎君!」
なんとぶつかった相手はメガネだった。
「良太郎君、助けてくれでやんす!うちの家族が皆、おかしくなっちゃったでやんす!オイラの頭にハタを立てようとするのでやんす!」
「ええっ?そっちもか!」
すると後ろから声がする。
「さあ、ハタよお~。」
「ハタを立てなさい。」
俺の
「うわ、良太郎君のところもでやんすか?とっとと逃げるでやんす!」
そう言うとメガネは走り出してしまう。
「お、おい?!置いてかないでくれ!」
俺達は、そのまま学校へ来てしまった。
「「はぁはぁはぁ…。」」
家から学校まで休みなしで走ってきたので、俺もメガネもクタクタだ。
「夢中で学校まで逃げてきたけど、これからどうしよう?」
「とにかく深雪ちゃんに相談でやんす。」
「まあ深雪ちゃんも大人だから、何とかはなるか。よし、そうしよう。」
その時、声が聞こえてきた。
[何をするんですか?!や、やめてください!]
「先生の声じゃないか?っていうか声的にやばいんじゃないか?!」
「急ぐでやんす!」
ガラガラ!
「深雪ちゃん!」
「止めろー!でやんす!」
バキッ!
ドサッ
「た、助かりました…。」
「危なかったでやんす…。」
いや、メガネ。お前が殴ったの、一応校長先生だぞ?
「急にハタを立てた校長先生がやって来て、私を見つけた瞬間ハタを立てようと…」
その時、後ろからもう一人来た。
「深雪ちゃん!危ない!」
「え?」
深雪ちゃんは振り向いた。しかし、遅かった。
プスッ
「…あら、まだ学校にいたの?しょうがない子ねえ。」
ハタが立った深雪ちゃんが、俺達に聞いてくる。
「あの…深雪ちゃん?」
「…あら、よく見たらあなた達、ハタが立ってないじゃない。あなた達も立てなさい。頭にハタを立てるのは、人として当然のことですからね。」
そんな人として当然のことがあってたまるか。
「いや…その、結構でやんす。」
「まあ、しょうがない子ねえ。そういうダメな子にはお仕置きをしないといけないわ。ええと、たしかこの辺に痛そうな棒があったわね。」
そう言うと深雪ちゃんが教室内を探り出す。そして、一本の鉄パイプを持つと、それを俺達に向けた。
(ガチャリ)
「み…深雪ちゃん?」
「まさか、深雪ちゃんはオイラ達をその棒で叩いたりはしないでやんすよね?」
「あら、ハタの立ってない人間には何をしてもいいのよ♪」
深雪ちゃんは笑顔で恐ろしいことを言う。これは正気じゃない!
「ひいい、ダメでやんす!深雪ちゃんもなんだかおかしくなっちゃったでやんす!」
「逃げるぞ!メガネ!」
俺達はすぐに教室を出て、学校を出ることにした。
「こらっ、待ちなさい!」
後ろから深雪ちゃんの声と風切り音が聞こえる。だが今は無視。あそこにあのままいれば、あの棒で何されるか分からない。
そして俺達は無事に学校の正門前に着いた。
「はぁはぁ…。どうやら、あのハタを立てられるとおかしくなって、他の人にもハタを立てようとするみたいだな。」
「ハタを立てられるとどうなるでやんすかぁ?」
「大人しくて気弱な深雪ちゃんがああなっちゃうんだぞ。なにかに取り憑かれてる、としか思えないな。」
(ぐううぅ~)
俺達二人とも腹がなってしまった。無理もない。今日食べたものは、お互い朝飯だけなのだ。
「…お腹空いたでやんす。」
「よし、ショッピングモールまで行こう。あそこなら食べるものがあるだろう。」
家に帰れない以上、外で食べるしかない。俺達はショッピングモールへ行った。
~ショッピングモール~
それは、まさに地獄だった。モールにいる人間は皆ハタ人間。つまり、ここにまともな人間は存在しない。
「一体、この街はいつの間にこんなことになってしまったんだ?」
その時、モールの奥から声が響く。
(アラ?あの子達、ハタが立ってないわ。皆さ~ん、ハタの立ってない人間があそこにいますよ~!)
「まずい!」
モールからは捕まえろだのハタを立てろだの声が聞こえてくる。どう考えても友好的ではない。
「皆こっちにやって来るでやんす!」
「逃げろ!」
俺達は夢中でモールの中を駆け回った。
「はぁはぁはぁ…。ここは…おもちゃ売り場か。」
ここは棚が多いから隠れるのには最適だ。
「そうだ、武器は?何か武器はないのでやんすか?」
メガネが探しにいく。といってもここはモールだぞ。しかもよりによっておもちゃ売り場だ。武器になるものなんかあるわけが…。
ガシッ!
「「?!」」
「捕まえた♥」
後ろから何かに捕まった。間違いない。ハタ人間だ。
「あ!良太郎君!」
「うわーっ!?」
「うふふふ、君にもすぐにハタを立ててあげますよ~。」
「うわあ、やめろぉ!」
その時、何処かからか水が飛んできた。その水はハタ人間のハタに見事命中した。ハタ人間は気絶してしまった。
(ピシャッ!)
「大丈夫か!良太郎!メガネ!」
「え?!夏菜?!何でここに?!」
なんと水の正体は夏菜だった。
「その話は後だ。とりあえず、ハタ人間は水が弱点らしい!」
「そ、そうなのか。よし、水鉄砲を一つ持っていこう!」
俺は強力そうな水鉄砲を手に取る。
「あ、それとこの人のハタ、どうにか出来ないでやんすか?」
そういえばそうだな。引っこ抜けば元に戻るかもな。
「よし、引っこ抜いてみよう。」
「じゃあ私は足を持つぞ。」
「オイラもでやんす。」
「じゃあ俺がハタを持って、せーの…うわっ!?」
俺がハタを引っ張った瞬間、ハタ人間の目玉がぐるりと動いた。これは触らない方がよさそうだな。
「もしかしたら寄生されてるかもな。」
「怖いこと言うの止めてくれよ夏菜。」
「ん?この人、変なもの持ってるでやんす。」
メガネの言う通り、ハタ人間はゴミみたいなものをいくつか持っていた。とりあえずこの状況で、何か役に立ちそうなものは持っていこう。俺はそのガラクタを取って懐にしまう。
「で、これからどうするんだ?」
夏菜が聞いてくる。そう言えば何も考えてなかったな…。
「とりあえず何処かで休もう。そうだ!ずっと南西の方に使われてないビルがあったな。」
「ああ、先週クラスの皆で遊んだところでやんすね。」
俺達の街の南西には、もうずっと使われてないビルがある。取り壊すのにも、予算がかかるのでずっと先送りにされているのだ。俺のクラスメイトは、そこを遊び場にしている。
「よし、あそこを基地にしよう!」
こうして俺とメガネと夏菜は、南西の基地を目指して歩き始めた。
「そういえば食料は持ってるのか?」
「え?何で?」
このモールに来た理由をすっかり忘れてた。
「こんな異常事態、国が見逃す訳がないだろう?本州に逃げるにしても、恐らく本州四国連絡橋は全て通行止めだ。その場合、ここで助けが来るまで待つしかない。だとすると最低一週間分は食料が必要だ。」
夏菜の言うこともごもっともだな…。
「よし、ハタ人間に見つからないように食料を集めてから行こう。」
俺達はその後食料を無事集め終え、南西の基地に改めて向かった。
これが理想でした。冒頭で夏菜が仲間になる。最初にやってた頃で一番ハタ化させてしまったのは夏菜だったので、せめて最初くらいに仲間になって欲しいなーと思ってました。今は余裕で全員救助出来るんですけどね。
深雪ちゃんにハタを立てたハタ人間はハタを立てた後どっか行きました。中学生二人だったら深雪ちゃん一人でも出来ると思ったんでしょうね。
いらない豆知識
ハタ人間の頭に付いている『ハタ』は生物。水に弱いのはギャスビゴー星人が地底で過ごしているため、水が弱点だと気づかなかったから。因みにハタ人間からハタを無理に抜くと死ぬ。