曰く、遥か大昔に我々の元へ『第二の太陽』が降り立ち、人間を含む全てを焼き尽くしたという。
曰く、その日の記憶は第二の太陽によって焼き払われ、それを知る人も今やおらず、人々は何も知らぬまま今という世界を生きているという。
曰く、我々は再生を果たし、そして『第三の太陽』を呼び寄せるという。
曰く、我々は滅亡の因子であるという。
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草木一本生えることのない果てしなく続く荒野。
その荒野の中には大きな街が一つ、存在した。
街はこんな荒野の只中でありながら活気に溢れ、目を凝らしてみれば商業が盛んである事が伺える。
市場で店を開いている店主が喧しい声で客を呼び寄せ、街中の飲食店では様々な料理の匂いが混じり合い、行き交う人々の嗅覚を刺激する。
この街、『マサイタ』に住む人々、外の街から来た客など、それぞれの目的でやってきた人混みの中に紛れ込んでいる二人の男こそ新たに生まれた空賊団、『ORCA飛行隊』のメンバーである『メルツェル』と、空間上に開いた穴よりやってきたカリスマと空戦技能全振りの男、『イサオ』である。
「今頃、オッツダルヴァ達も上手くやってるだろうか」
「さぁね、まあ取り敢えずはこの街をまんき……調査しよう!」
完全に遊ぶ気マンマンなイサオに半ば呆れつつもメルツェル自身もこの街に来てから娯楽に対する欲が強まってきているのを感じていた。
「おっあそこにカジノがあるよ!あそこ行こう!」
イサオが指さす先には如何にもVIPな連中が集まりそうな大きなカジノの建物がその存在感をこれでもかと主張している。
中身が一般人であるメルツェルには当然、カジノでの遊び方など知っている訳が無い。
故にここはイサオに行ってもらうしかない。
そう思い、イサオ一人に行ってもらうように話しておく。
「そっか〜じゃあ分かった!暫く待っててね!ちょっとばかし大儲けしてくるー!!」
自信満々に叫びながら建物の中へと飛び込んでいくイサオの後ろ姿を見て、メルツェルは溜息を一つ、静かに吐く。
マサイタに来る前、メルツェルはイサオに対してある事を警戒していた。
イサオを拾った日から考えてみると、荒野のコトブキ飛行隊の方での『イケスカ動乱』からまだそこまで日にちが経っていない。
つまり、イサオの顔を知る者がまだ多くいるかもしれないという事を警戒していたのだ。
その事を考えて、イサオにはあの赤っぽいやたら目立つスーツは脱がせてズボンはそのままで白のワイシャツの上から紺色の上着を着せて普通の民間人のように装って貰っている。
これでそこまで目立ちはしないと思うが、それでもまだ心配は少しだけ残っている。
有り得ない……絶対に有り得ないとは思うのだが、もしここにあのコトブキ飛行隊が来ていて、尚且つイサオの顔を見られたら一発アウトだ。
抵抗しなければ自由博愛連合に与したとしてドナドナされてしまうかもしれない。
だからといって抵抗すればイジツのありとあらゆる勢力を敵に回し、下手すれば全面戦争待った無しだ。
人類種の天敵は首輪付きだけで充分だ。
「……にしてもおそいなアイツ……」
建物の前で待ち続けるがイサオが出てくる気配は微塵も感じられない。
折角の散策を待ち時間だけで使い潰すのは何なのでその場を離れようとした時、ある方向を向いた瞬間にメルツェルの体は硬直した。
身体中から冷や汗が流れ、その目は見開かれ、有り得るはずの無かった光景を開いた口も塞げぬまま見続けていた。
「この街って思ってたより大きいじゃん!」
「こら、あまり走り回るなよ。 人にぶつかる」
「マサイタは世界有数の大都市。 主に商業が盛ん」
信じなかった。
いや、信じたくなかった。
目の前にある光景を。
「神のいたずらとは正にこういう事か……」
「ここってパンケーキ美味しい所あるの!?」
メルツェルの絶望に満ちたか細い声は、一人の少女の大声によってかき消されたのだった……。
やっべ、投稿遅れすぎたやっべ。
更新遅れてすみません許して下さい!何でもしますから!!(大嘘)
やっとコトブキ飛行隊メンバーと主人公を会わせる事が出来ました!
今後も多分かなり更新が遅れると思われます。
本当に申し訳ない(MTLMN)