〜オールドキングside〜
あの日、俺とオッツダルヴァは月に一度だけ街への外出が許される日に行きつけの飲食店で昼食を取っていた。
そこで話している内容はいつも通り。
この腐り切ったイルンエバを乗っ取る為の武装蜂起の計画だ。
計画は第3労働区のごく僅かの囚人にしか知らされていない。
スパイの危険性もあるからだ。
そして計画を実行するに当たって、ここから近い所にいる空賊団とも連携を取る事になっている。
空賊の協力への対価はイルンエバの所有する最新鋭航空機の設計図。
俺達が出した対価はそれだけじゃ無かった。
ここにある例の最新鋭重爆撃機、『Me-264』の実物まで持ってくるという大盤振る舞いだ。
Me-264とは四発型の重爆撃機であり、凄まじい爆弾の搭載量と高い対空火力、圧倒的航続距離が特徴だ。
ここでは非常に高価で製造数もまだそこまで無い為、手に入りにくく、求める者は多い。
それを渡す代わりに空賊団が協力してくれて尚且つ俺達を迎え入れてくれるんだ、悪い話ではない。
蜂起に使用する武器もその空賊団から地下の下水道を通して密輸してもらっている。
計画が上手くいくかは分からないが、ベストは尽くすべきだろう。
俺達の行きつけであるこの飲食店はただ飯を食うだけじゃなく、作戦会議にも使われる。
実は中にいる他の客や店員は全員会議の間、警察などが来ないか見張っているのだ。
そんな中で作戦の最終確認をオッツダルヴァと行っていると、俺の隣の席に見ない顔の男が座った。
奴の顔を見て思ったことと言えば、策士を思わせるような知的な顔付きをしていた。
奴は時折こちらをチラチラと見ては正面に向き直る。
……妙な奴だな。
不審に思いながらも相手に悟られない様に話を続けていると、奴の方から話し掛けてきた。
「そこの二人、話がある」
落ち着きがあり、それと同時に威圧感を感じさせる口調で、俺達も流石に話を中断し、奴の方を見た。
「……なんだ、お前?」
何故だか分からないが、奴と目を合わせた瞬間、途轍もない悪寒を感じた。
俺とて元は空賊の陸戦隊に所属しており、実戦経験もある身だ。
俺でさえも無意識に恐怖を感じる奴は一体何者なのか……。
「お前、見ない顔だがもしや新入りか?」
今度はオッツダルヴァも問い掛け、奴はそれに肯定するように小さく頷いた。
コイツは新入りなのか。
不運な物だな。
「それで、新入りが俺達に何の用だ?」
「なに、俺はここについてあまり知らない。 それを聞くついでに世間話でもしようと思っただけだ」
そう言いながら奴は口角を上げ、不敵な笑みをその顔に浮かべた。
コイツはやはり怪しい。
この風格からしてただの囚人という訳でもなさそうだ。
「最近、調子はどうだ? "上手く行っているか"?」
上手く行っているかだと?
何の事を言っているんだコイツは?
まさか……武装蜂起計画の事を……。
いや、それは……無いだろう。
「あぁ、上々だ」
憶測を自分に言い聞かせるように否定しながら平静を装いつつ答える。
「そうか、なら良かった」
相変わらず奴は不敵な笑みを浮かべながら台に頬杖を突いている。
まるで……俺達の全てを見透かしているかのような表情だ。
……クソっ……気味が悪いな……。
内心悪態を付きながら表情だけは変えずに奴を睨むと奴は更に口角を上げその笑みを深くした。
……っ!?
その途端、先程とは比べ物にならない程の悪寒を感じた。
後ろをチラ見してみればオッツダルヴァも悪寒を感じたのか目を見開いて冷や汗を流していた。
恐怖を紛らわせる為に話題をこちらから振ることにした。
「お前、俺達と同じ第3労働区のようだが、なんて名前だ?」
名前を問うと奴は数秒考える素振りを見せると自分の名を言った。
「…………私の名はメルツェルだ」
その瞬間、飲食店の中が凍りついたかのように静まり返った。
〜オッツダルヴァside〜
コイツ……コイツは今なんと言った!?
店内の全ての客が驚愕の表情で奴を見る中、私でさえも驚愕を隠す事が出来なかった。
『メルツェル』
この世界におけるメルツェルとは、嘗て世界最強のエースパイロットと呼ばれた空賊の男だ。
彼の単独撃墜数は公式に記録されているだけでも700を超えている。
それに空賊になる前は傭兵として活動していた為、実際は更に多いと考えられている。
それに加えて被撃墜数はたったの2。
その原因もエンジンの整備不良による故障と対空砲の流れ弾と、少なくとも戦闘機に撃墜された記録は存在しない。
しかし彼は、5年前の史上最大の大規模戦闘と言われたルベンリ防衛戦という空賊団と企業連との戦いにて6回の出撃で敵戦闘機、『F6F ヘルキャット』を14機、『Yak-9U』を9機、『スピットファイアMk.IX』を18機、『P-51Cマスタング』を10機、その他爆撃機等を21機撃墜した後、消息を絶っている。
彼の強さは最早伝説を通り越して神話級であり、戦闘機乗りで彼を知らない者はいない。
二つ名は『ルベンリの守護者』と呼ばれたりもするが、一番呼ばれている二つ名は『ダークレイヴン』だ。
理由は彼の機体、『XP-55』のノーズアートがワタリガラスだからである。(ノーズアートがワタリガラスとは本人が公言している)
彼の特徴と言えば、見た目や言動に反して学力は余り無く、戦闘機も殆ど直感で動かしていたそうだ。
あとサブカルチャー等も好んでおり、それらのギャップからファンも多くいる。
そんな彼が消息を絶ってから彼の姿どころか痕跡すら見た者はいないという。
という事は目の前にいるあの男はメルツェル本人だと言うのか……?
今まで見つからなかったのは辺境の地で身を隠していたからなのか?
だとすれば強制収容所に収監されるのも納得出来る。
強制収容所ならば本名を名乗る必要も無く、素性が知られる事も無い。
今、ここにいる全ての者が彼の風格から悟った。
彼が…………本物のメルツェルだ…………。
コトブキ飛行隊との絡みはまだ後になります。
因みに言うとここはそもそもイジツですらありません。
海の水位は穴によって僅かに下がってはいますが、海は普通に残っているし荒野なんて何処にもありません。
メルツェルがイジツに行くまで頑張りたい所です。
これから荒野のコトブキ飛行隊のキャラと関わっていく予定なのですが、主人公と登場人物との関係はどんな感じがいいですか?(尚、それが本編に反映されるかは不明)
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