響「大丈夫ですか翼さん?」
戦「タメシタイ・・・タメシタイ・・・」
ク「お、おいどうしたんだこの馬鹿は・・・なんでこんなゾンビみてえな顔でいるんだよ!?」
万「ああ、新しい発明品が出来たからそれを今すぐにでも試したいんだろ。いつもの事だ」
響「いつもの事なんですか!?」
了「流石にこれはないわね・・・・」
弦「何かあったら俺が対処しよう」
万「任せた」
戦「という訳で、この本によればごく普通の高校生の立花響は、シンフォギア『ガングニール』を纏い、ノイズと戦う運命にあ・・・おい待てこれ別の時空の台本じゃねえか!?」
友「あ、すみませんそれ私が書いた台本です」
戦「アンタかよ!?ていうかそんな時間あったのかよ!?」
友「実は私もちょっとやってみたくて・・・」
戦「本当の台本はどこだよ・・・」
響「あ、それならさっきしr・・・こ、工具ちゃんと農具ちゃんがシュレッダーにかけてたましたけど・・・」
戦「まだ根に持ってんのかよめんどくせえ・・・」
ク「はあ・・・今回は龍我の新フォーム登場回だ」
戦「待てクリス。まだ始めるには早い。なんかこう・・・インパクトというか・・・」
未「えーそれなら私が一発芸を・・・オッスわr」
一同『それは言わせねえよ!?』
未「(´・ω・`)」
響「で、では、第十四話をどうぞ!」
「―――《確かにこちらからの依頼ではあるけれど、仕事が
かつての豪邸にて、フィーネは電話越しの相手にそう言う。
「《足がつけばこちらの身動きが取れなくなるわ。まさか、それもあなたたちの思惑というのなら・・・》」
『《神ならざる者が全てに干渉るうなど不可能。お前自身が一番分かっているのではないか》」
電話越しに、そのような返事が返ってきた直後、大部屋の扉が勢いよく開く。
「アタシが用済みってなんだよ!?」
クリスだ。
「もういらないって事かよ!?あんたも物のように扱うのかよ!」
そんなクリスをフィーネは冷めた目で見ていた。
「頭の中ぐちゃぐちゃだ・・・何が正しくて何が間違ってるのか分かんねえんだよ!」
それとフィーネは、受話器を電話に置き、通話を切る。
「・・・どーして誰も、私の思い通りに動いてくれないのかしら?」
振り向き様に、フィーネはソロモンの杖を発動。ノイズを呼び出す。
その行為に、クリスは狼狽する。
「潮時かしら?」
「え・・・」
「そうね。貴方のやり方じゃ、争いを無くす事なんて出来やしないわ。せいぜい一つ潰して、新たな火種を二つにばら撒く事くらいかしら?」
「アンタが言ったんじゃないか・・・!」
クリスは、泣きそうな声でフィーネに言う。
「痛みもギアも、アンタがアタシにくれたものでだけが―――」
「私の与えたシンフォギアを纏いながらも、毛ほどの役に立たないなんて」
それは、クリスの全てを否定する言葉。
「そろそろ幕を引きましょっか」
次の瞬間――――扉のすぐ横の壁が吹き飛ぶ。
「テメェぇぇええ!!!」
蒼い装甲の仮面ライダー、クローズだ。
クローズが凄まじい勢いでノイズを消し飛ばし、フィーネに突っ込む。
「お前!?」
「ウオリャァァアア!!!」
クローズの渾身の拳の一撃がフィーネに叩きつけられる。
しかし、その一撃はフィーネに触れる寸前で止められる。
障壁だ。
「これが、どうしたぁあ!!」
もう一方の拳を振り上げて、その障壁を叩き割ろうとする。
「うるさいハエが紛れ込んでいたものね・・・まあどちらにしろ、私の敵ではないが」
「ッ!?」
次の瞬間、クローズの腹に、
「がっ―――!?」
上空に弾き飛ばされたクローズは、そのままクリスの元まで落ちる。
「おい・・・!」
「ぐ・・・今のは・・・」
気付いた時には、フィーネは、黄金の鎧を身に纏っていた。
「私も、この鎧も永遠に不滅・・・未来は永遠に続いていくのよ」
それはクリスが纏っていたものと細部は違うが、間違いなく『ネフシュタンの鎧』。
青銅の蛇の名を冠する、完全聖遺物。
「『カ・ディンギル』は完成しているも同然・・・もう貴方の力に固執する理由はないわ」
「カ・ディンギル・・・?そいつは・・・」
聞き慣れない言葉。
「カ・ディンギルだか、カードローンだか知らないが、どちらにしろテメエはぶっ倒す!」
クローズは懐から『クローズマグマナックル』を取り出し、すかさずドラゴンフルボトルを装填してドラゴニックイグナイターを長押しする。
だが、何も起きなかった。
「・・・あれ?」
もう二、三回バンバンと叩いてみるが、やはり何も起きない。
「あれ?あれ?なんでだ!?」
「おい!?どうした!?」
うんともすんとも言わないマグマナックル。
だが、何度かイグナイターを押した所で気付く。
「・・・壊れてたんだった」
「はあ!?」
「やっべえ!?」
完全に失念していたクローズ。
そういえば新世界創造の際に、多くの戦兎の発明品が修理しないと使い物にならない状態になっていたのをすっかり忘れていた。
「ふふ、何をするつもりだったのか知らないけど、貴方たちは知り過ぎてしまったわ・・・」
フィーネがソロモンを向ける。
「くそ!逃げるぞ!」
「え・・・!?」
クリスを抱えて走り出すクローズ。すかさずノイズが二人を攻撃する。
「うぉあぁあ!?」
粉塵が巻き起こり、壁が粉砕される。
どうにか外に転がり出る事は出来たが、クリスは、その最中で見たフィーネの嘲笑うような顔を見て、とうとう、自分は見捨てられたのだと悟った。
「ちくしょう・・・」
さらにノイズが襲い掛かる。
「うぉぉぉおお!?」
それをクリスを抱えたクローズが躱す。
夕焼けにそまる空、その空に、一人の少女の叫びが響く。
「ちくしょぉぉぉぉぉおおおお!!」
「あー、ダメだ・・・ブラストモービルに合うボトルの成分がねえ・・・」
一応、ジーニアスフルボトルで調べてみたが、六十本のボトルの成分のどれもが、ブラストモービルに使える成分じゃなかった。
補足しておくと、ジーニアスフルボトルは原因不明の故障でビルドアップスターターを押しても一切起動しなかった。
あの手この手でどうにかしようと考えたが、結局分からず仕舞いでお蔵入りとなっている。
一応、ジーニアスにある浄化能力は備わっているのだが、変身には使えないという状況だ。
「どうしたもんかねえ・・・ああ、最っ悪だ・・・」
彼がそうぼやく理由は、何もブラストモービルの事だけではなかった。
雨である。
「色々とジメジメするし、湿気は強いし、テンションは下がるし、嫌な事思い出すし、ああ、最っ悪だ」
一つ謎なのは、彼がどういう訳か街に出ているという事だ。
彼は二課の一室を貰い受けてそこで生活したり開発したりしている。
二課はリディアンの真下。教師である彼が街に出る必要はない。
が、それは教師という立場だけの話だ。
彼は、教師であると同時に物理学者であり、仮面ライダーだ。
だから、発明品に必要なアイテムを作るために、部品を買いに出ているのだ。
「目的の物は買ったし、今日はこのまま・・・ん?」
ふと、戦兎の視界に見覚えのある横顔が見えた。
「アイツは確か・・・」
思い立ったが吉日か、戦兎はその人物に声をかける。
「よっ、早いな」
「戦兎先生・・・」
その人物とは、小日向未来。先日、クリスと響、クローズの戦いに巻き込まれた少女だ。
だが、その表情は浮かなかった。
「小日向未来だったよな?どうした?何か悩みか?」
「いえ、大した事では・・・」
「そうは見えないんだけどな」
「・・・」
黙り込んでしまう未来。
「・・・もしかして、響の事か?」
「響の事を知ってるんですか!?」
「まあな」
戦兎は、ポケットから一本のボトルを取り出す。ラビットフルボトルだ。
「それは、龍我さんと同じ・・・もしかして・・・」
「ま、そういう事だ」
それをしまって、戦兎は改めて聞く。
「一応、響と職場を同じにする人間だ。ついで今は教師。教師なら、生徒の悩みを聞くことも役割の一つなんじゃないかと思うんだが?」
「・・・」
その言葉に、未来は少し考えて――――
突然、目の前で何かが倒れる。
「ッ!?」
「何!?」
思わず性分故か戦兎が未来を庇うように前に出てしまう。
倒れたのは、ごみ箱だ。そしてそれを倒したのは―――青い装甲を纏った仮面の男。
「万丈!?」
「戦兎か!?」
思わぬ形で再会を果たす二人。
「お前今までどこに・・・」
「そうだ戦兎!どこでも良いからコイツを匿ってくれ!ただし二課はダメな!」
そんなクローズの腕の中には、気絶してぐったりとしているクリスの姿があった―――
「ん・・・く・・・・はっ・・!?」
飛び起きるクリス。
そんな彼女の視界に最初に映ったのは、知らない部屋だった。
「ここは・・・」
「キュイー!」
「うわ!?」
目の前でドラゴンが鳴く。
「良かった。目が覚めたのね」
そして、呟く一人の少女。
「びしょ濡れだったから、着替えさせてもらったわ」
気付けば、今の自分の服は誰かの体操着だった。まあ、クリスが体操着というものを知っているかどうかは疑わしいが。
「か、勝手な事を!」
だが、一方のクリスは好き勝手された事に気が付いて声を挙げて立ち上がる。
が、問題は立ち上がった時にあった。
「あ・・・」
「キュイ?」
突如として目の前の少女が顔を赤くする。まあドラゴンは何のことだが分かっていないが。
そして、その反応に疑問を持ったクリスは、すぐに自分が着ているのが上半身のもの
「な、なんでだ!?」
「さ、流石に下着の替えまではもってなかったから・・・・」
すぐさま布団にくるまるクリス。
(あれ?そういやあいつは・・・)
「未来ちゃん」
そこで更なる人物の介入。中年の女性だ。
その後ろから、洗濯籠をもって着いてきている万丈の姿も。
「どう?お友達の具合は?」
「目が覚めた所です」
「キュイ!」
「ありがとうおばちゃん。布団まで貸してもらっちゃって」
「気にしないでいいんだよ。あ、お洋服、洗濯しておいたから」
「あ、私手伝います。龍我さんはこの子の面倒を」
「分かった」
「キューイ!」
「あ、クロも手伝ってくれるの?」
「悪いわね~」
「いえ」
なんだか一気に話が進んでしまった。
「よ、具合はどうだ?」
「どこなんだよここは・・・!?」
「未来の行きつけのお好み焼き屋のばあさんの家。いやー良かったぜ。こういう所があってさ」
「・・・」
クリスのすぐ傍に座り、万丈は改めて尋ねる。
「で?具合はどうなんだ?」
「それはお前の方だろ?お前の方がノイズからの攻撃喰らいまくってたし・・・」
「舐めるな。プロテインの貴公子万丈龍我様を舐めんな」
「なんだよそれ・・・」
そろそろ万丈の馬鹿さ加減に慣れてきたクリスは、ふっと笑ってしまう。
「そういや、アイツは・・・」
「ああ、小日向未来って言ってな。まあ、一般人だ」
「一般人・・・ね・・・」
知り合いと言えばいいのに。と思うクリス。
ふと、ベランダで服を干している未来と、その近くで洗濯ばさみを挟む事で手伝っているクローズドラゴンを見る。
「・・・随分と懐いてるんだな」
「ん?ああ、どういう訳か未来にはあんなに懐くんだよ。なんでか知らんけど」
「そうなのか・・・・」
不思議な事もあるものだ。
機械なのに、あんな普通の動物っぽく振舞えるとは。どんな技術なのか。
しばらくすると、服を干し終えたのか、未来たちが戻ってくる。
「それじゃあ、体を拭こうか」
「拭く?」
「体、汚いでしょ?だからね」
どこからともなく桶とタオルを持ってくる未来。
「ほらほら男の人は出てって出てって」
「分かった。分かってるから押すな!」
「クロも」
「キュイ!?」
一人と一匹まとめて追い出される、ふすまを閉められる。
「はあ・・・」
「キュイ・・・」
ドラゴンはかなり落ち込んでいる。未来と一緒にいられないのがそれほど悲しいのだろうか。
だが、そんな中で万丈の腹の虫が鳴る。
「げっ」
「アハハ、お腹が空いてるんだね」
そこでお好み焼き屋のおばさんがやってくる。
「ついてきなさい。今からご飯、作ってあげるから」
「本当か!?悪いな!」
「いいよ。食べなきゃいざって時に力が出ないからね」
そう言っておばさんは階段を下りていき、万丈は嬉々としてその後をついていく。
だが万丈は知る由もない。
おばさんには、クリスが万丈の女だと思われている事に――――
「あー、どーにか間に合ってよかった」
「何かあったの?」
珍しく疲れた様子で脇に教材を抱えて歩く戦兎とその隣を歩く翼。
「見て、戦兎先生よ」
「それと・・・え!?風鳴翼!?」
「どうして二人が一緒に・・・」
「もしかして、教師と生徒で禁断の・・・」
「待って待って!翼さんは日本が誇るトップアーティストよ!もしそんな事になったら・・・」
「そうよ。それを戦兎先生が弁えていない筈はないわ!」
「でも、距離が近い・・・」
「やめて!そんな事実は知りたくない!」
「「・・・」」
今回は会話が入り込んで二人ともいたたまれなくなってしまう。
「なんか・・・悪いな」
「いや、どっちかっていうとそっちの方だと思うのだが・・・」
「え?」
「え?」
無自覚と無知。
「とりあえず、響でも探すか・・・」
「そうだな」
それについては同意する二人。
そんな訳でやってきた屋上にて、響はいた。
「よ、響」
「戦兎先生・・・翼さん・・・」
響の顔は、やはり暗かった。
朝の未来の事もあり、もしかしたらと思ったのだが、どうやら予想は的中しているようだ。
「・・・私、自分なりに覚悟を決めたつもりでした」
ベンチに座り、響はそう話し出す。
ちなみに戦兎はベンチの腰掛に座っている。
「守りたいものを守るため、シンフォギアの戦士になるんだって。でもダメですね・・・小さな事に気持ちが乱されて、何も手につきません。私、もっと強くならなきゃいけないのに・・・変わりたいのに・・・」
先日、未来は響の秘密を知ってしまった。
二課から、絶対に話してはならない機密情報として、シンフォギア装者となってノイズと戦っている事を隠し続けていた。
だけど、それがバレてしまい、そして、そのせいで関係が拗れてしまったのだ。
それも、かなり深刻な形で。
「その小さなものが、立花の本当に守りたいものなのだとしたら、今のままでもいいんじゃないかな」
ふと、翼がそう答えた。
「立花は、きっと立花のままで強くなれる」
「翼さん・・・」
そして、今度は戦兎からも声をかけられる。
「ま、誰かと喧嘩したっていうんなら、俺も万丈とよく当たってたりしてたな。意見の食い違いだとかで、よくぶつかったりしてた」
空を見上げる戦兎。
「だけど、その度に俺たちは一歩ずつ分かりあえた。お前たちの在り方とは違うけど、それでも、何度もぶつかったから、俺はアイツの事を最高の相棒だって思えるんだ。だからま、何かのすれ違い程度なら、大丈夫だろ?もしダメなら、互いの意見をぶつけ合えばいい」
「戦兎先生・・・」
そう笑って言って見せる戦兎。
「戦兎や奏のように、人を元気づけるのは、難しいな」
ふと、翼がそんな事を言う。
「いえ、そんな事ありません」
その言葉に、響は首を横に振る。
「前にもここで、同じような言葉で親友に励まされたんです。それでも私は、また落ち込んじゃいました。ダメですよね」
なんて言って空を見上げる響。
その様子に、翼と戦兎は、その頬を綻ばせる。
「翼さん、まだ痛むんですか?」
「大事をとっているだけ。気にする程ではない」
「そっか。良かったです」
翼は、未だ杖を使って生活している。まだ、この間の怪我が響いているのだろう。
「絶唱による肉体への負荷は、極大・・・」
自らの全てを燃やし、自分も他者も、それ以外の全てを滅ぼす事の出来る、まさしく滅びの歌と呼ぶに相応しい、心中技。
「その代償と思えば、これくらい安いもの」
ふと、翼は戦兎の方を見た。戦兎は見られた事できょとんとしているが、翼にとっては、思う所があるのだ。
「絶唱・・・滅びの歌・・・でも、でもですね、翼さん!」
響は、立ち上がって翼に言った。
「二年前、私が辛いリハビリを乗り越えられたのは、翼さんの歌に励まされたからです!翼さんの歌が、滅びの歌だけじゃないって事、聞く人に、元気をくれる歌だって事、私は知っています」
「ああ、実際、お前の歌を聞いてると修理や発明がすっげえ捗る。お前の歌は、戦うだけのものじゃないって」
「立花・・・桐生・・・」
「だから早く元気になってください。私、翼さんの歌が大好きです」
そう、自信満々に言ってのける響に、翼は、ふっと笑ってしまう。
「私が励まされてるみたいだな」
「え?あれ?」
「確かにそうだな」
小さな笑い声が、その場に響いた。
一方、お好み焼き屋ふらわー―――の上の階のおばさんの家にて。
「喧嘩かぁ・・・」
万丈が部屋の隅でパッケージに入れられたお好み焼きを食っているのを他所に、いつもの赤いドレス姿に着替えたクリスはそう呟く。
「アタシにはよくわからない事だな」
「俺は色々あったな」
「キュル・・・」
食いながらそう答える万丈と感慨に浸るドラゴン。
「そうなのか?」
「まあな。そういうお前は無かったのかよ。喧嘩する友達とかよ」
「・・・・友達いないんだ」
「え・・・?」
未来が、茫然とそう呟く。
「地球の裏側でパパとママを殺されたアタシは、ずっと一人で生きてきたからな。友達どころじゃなかった」
忘れもしない、あの日の事を。
「そんな・・・」
「たった一人、理解してくれると思った人も、アタシを道具のように扱うばかりだった。誰もまともに相手にしてくれなかったのさ」
憎々し気に、クリスはあの頃の事を思い出す。
「大人は、どいつもこいつもクズ揃いだ。痛いと言っても聞いてくれなかった。やめてと言っても聞いてくれなかった。アタシの話なんて、これっぽっちも聞いてくれなかった・・・!」
泣き喚けば叩かれた。泣くことすら許されなかった。
それは、まだ幼かったクリスにとっては、地獄以外の何者でもなかった。
クリスにとっては、そのころの記憶が全てだった。
「・・・・戦争、か・・・」
「なんだ?まさかお前の気持ち分かるぜ?なんていうつもりか?」
「まあ、俺もそういうのに巻き込まれて、いろんな奴死んでいくのを見たからな」
この腕の中で、大切な人が消えていくのを、見た事があるから。
そして、そんな様子の万丈に、クリスはただ舌打ちする事しか出来ず、その空気に、未来はいたたまれない様子になる。
「・・・なあ」
ふと、クリスが口を開ける。
「お前、その喧嘩の相手ぶっ飛ばしちまいな」
「え?」
「どっちが強ぇのかはっきりさせたらそこで終了。とっとと仲直り。それでいいだろ?」
「大雑把だな」
「うるせえ」
万丈に突っ込まれて口を尖らせるクリス。
「・・・出来ないよ。そんな事・・・」
一方の未来は、顔を曇らせてうつむく。
「ふん、わっかんねーな」
「でも、ありがとう」
「ああ?アタシは何もしてねーぞ?」
未来の言葉が、いささか理解出来ないクリス。
それに、未来は首を振る。
「ううん。本当に、ありがとう。気遣ってくれて」
「キュル!」
「あ、えーっと・・・」
ふと、未来はそこで戸惑う。
未来は、クリスの名前を知らないからだ。
「・・・クリス。雪音クリスだ」
「優しいんだね。クリスは」
未来の言葉が予想外だったのか、クリスは驚き、やがて未来に背中を向ける。
「・・・そうか」
「お前照れてんのか?」
「うるせえ!」
万丈からの茶々が入り、クリスがそれに怒鳴るも、未来は笑う。
「私は小日向未来。もしもクリスがいいのなら・・・」
未来は、クリスの手を取る。
「私は、クリスの友達になりたい」
「・・・・」
その言葉に、クリスは思わず未来を見返してしまう。
だが、クリスはその手を振り切って、部屋を出ていこうとする。だが、ふと立ち止まり、口を開く。
「アタシは・・・お前たちに酷い事をしたんだぞ・・・?」
「え?」
その意味が理解出来ていないのか、首を傾げる未来。
だが、その時、けたたましく警報が鳴り響いた。
―――ノイズだ。
「翼です。立花も桐生も一緒にいます」
『ノイズを検知した。相当な数だ。おそらくは、未明に検知されていたノイズと関連がある筈だ』
「了解しました。現場に急行します!」
『ダメだ』
弦十郎から、何故か止められる。
『メディカルチェックの結果が出ていない者を、出す訳にはいかない』
「ですが・・・」
「大丈夫だ。この天才の手にかかれば、ノイズなんてちょちょいと片付けてやりますって」
戦兎が、翼の肩に手を置いてそういう。
「翼さんは皆を守ってください。だったら私、前だけを向いていられます」
響は、翼に自信満々にそう言ってのけた。
街はまさしく混乱の最中にあった。
「おい、なんの騒ぎだ・・・」
「何って、ノイズが現れたのよ」
「ッ!?」
「警戒警報しらないの?」
今までフィーネと行動を共にしていたからか、クリスにはそんな事知る由もない。
「行くぞドラゴン!」
「キュル!」
「あ、龍我さん・・・!」
当然、万丈はドラゴンを伴って、人が逃げていく方向とは逆方向に走り出す。
「ッ・・・!」
「クリス!?」
さらにはクリスまでもが追いかけるように走り出す。
(馬鹿な・・・アタシってば、何やらかしてんだ・・・!)
視界の隅、小さなぬいぐるみが踏みつけられるのを見た。
(くそったれ・・・・!)
万丈を追いかけて走っていると、すっかり人のいなくなった場所に辿り着く。
「どこにいやがるんだ!」
「ハア・・・ハア・・・」
ノイズを探す万丈と膝に手をついて、呼吸を整えるクリス。
「アタシの所為で関係の無い奴らまで・・・」
それが、無性に申し訳なくて、悔しくて、クリスは空に向かって叫ぶ。
その様子に、万丈は何も言わない。
やがて、クリスは膝をついて、残酷なまでに青い空を見上げた。
「アタシのしたかった事はこんな事じゃない・・・いつだってアタシのやる事は・・・いつもいつもいつも・・・・!う・・うわあ・・ぁぁあ・・・・!!」
「クリス・・・」
泣いて蹲るクリス。
「キュル!」
「ッ!?」
ドラゴンの叫び声で、万丈はノイズが現れた事に気付く。
「クリス!」
万丈が叫ぶ。
「上手くいかない時もある!失敗する時もある!だけど、お前のやってる事全部が間違いな訳じゃねえ!」
ノイズが迫る中、万丈は蹲るクリスを庇うように立つ。
「昨日だって、迷子になってたガキ二人の親探してやってたじゃねえか!それが間違いな訳がない!お前の想っている事も、間違いなんかじゃねえ!」
「お前・・・」
ドラゴンフルボトルを振り、成分を活性化させる。
「これから償っていけばいい。生きてなきゃ、償いなんて絶対に出来ねえんだからよ!」
そのフルボトルを、クローズドラゴンに差し込む。
『Wake Up!』
「戦争を止めるって想いも間違いじゃねえ。それで悔しがるのも悪い事じゃねえ!だけど、戦争を止めようと今まで必死に頑張ってきたんだろ!そう思って戦ってきたのは、他の誰でもねえ!」
『CROSS-Z DRAGON!』
「雪音クリスただ一人だろうが!」
「・・・アタシ・・・だけ・・・」
その言葉は、クリスの心に強く響く。
やがて、クリスは涙を拭い、決心のついた表情で立ち上がる。
「アタシはここだ・・・だから、関係ないの奴らの所になんて行くんじゃねえ!」
それと同時に、ノイズが襲い掛かる。
「Killter Ichiva・・・げほっ、ごほっ・・・!?」
「うおあ!?」
聖詠を唱えようとした途端、まだ呼吸が整ってないからかむせるクリス。一方の万丈は意外にもノイズの攻撃が激しく、レバーを回す事が出来ない。
その最中で、上空からノイズが強襲してくる。
「・・・!?」
「あぶねえ!」
上空から襲い掛かるノイズに、万丈はクリスを庇うように抱える。
「あ・・・」
上空から槍のように襲い掛かるノイズ。それに背を向け、万丈は胸にクリスを抱えて、そのノイズの攻撃から庇おうとする。
「りゅ――――」
「ふんっ!」
次の瞬間、突如としてアスファルトがせり上がり、それが盾となってノイズの攻撃を阻止。
「はっ!」
すかさずそのアスファルトが砕け散り、散弾の如くノイズに浴びせられる。
それをやった者の正体は―――
「風鳴のおっさん・・・!?」
風鳴弦十郎だ。
アスファルトは震脚でめくり取り、砕くのはただの拳打。
それだけでも、彼が人間離れしているのは窺い知れる。
「あいっ変わらずの化け物ぶりだな・・・」
なんてぼやく万丈を他所に、ノイズが再度三人に向かって攻撃をしかける。
それを震脚でめくり上がらせたアスファルトで防ぎ、弦十郎は万丈とクリスの二人を抱えて建物の屋上へ向かう。
「大丈夫か?」
「ああ、一応な」
「・・・・」
弦十郎の人間離れした所業に未だ茫然としているクリス。
「それと・・・いつまで抱き合ってるつもりだ?」
「「は・・・?」」
何やら言いにくい様子でそう言ってくる現状に指摘されて、二人は改めて、互いに抱き合っている事に気付く。
「な――離れろ馬鹿!?」
「ぐべ!?」
何故か鉄拳が万丈の顔面に炸裂した。
「何すんだ!?」
「うっさい!」
何故殴られたのか分からない万丈と顔を真っ赤にしてそっぽを向くクリス。
そこで、飛行型のノイズが三人を追いかけるように飛び上がってきた。
それを見て、万丈はボルテックレバーを回す。
『Are You Ready?』
「―――
「変身!」
『Wake UP Burning!』
『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』
万丈はクローズへと変身し、クリスはイチイバルを纏う。
赤と青。奇しくも戦兎の基本フォームと同じ色合いだ。
「でやぁ!」
『ヒッパレー!ヒッパレー!』
「ウオリヤ!」
『ミリオンヒット!』
クリスのボウガンからは何本もの矢が放たれ、万丈のビートクローザーからは波形状のエネルギー刃が飛び、視界に映るノイズを一掃する。
「御覧の通りさ!」
クリスは弦十郎に向かって言う。
「アタシ・・・らの事はいいから、他の奴らの救助に向かいな」
「だが・・・」
「ノイズを倒せんのは俺たちだけだ。だから安心して行っとけ!」
クローズとクリスは屋上から踊り出る。
「ついて来いクズども!」
『BILLION MAIDEN』
ガトリングガンの乱射が、ノイズを一掃する。
その最中で、クローズがビートクローザーで全てを叩き切っていく。
(そういや・・・)
ふとクローズは、あの時戦兎から渡されたものの事を思い出す。
それは、戦兎が作ったブラストモービル。
赤黒いカラーリングに、何かのケースのようにコンパクトなデザイン。
試しに、グリップ部分のトリガーを引いてみるが、何も起きない。
(確か、ドラゴンともう一つ・・・だったか・・・)
二つの成分。ドラゴンはまだ良いとして、問題なのはそのもう一つ。
六十本のボトルのどれでもないのだというのなら、一体何が・・・
だが、クローズは考えても分からないという結論に至り、思考を放棄。今はただ目の前のノイズを一掃する事に集中する。
近付いてきた敵も遠くの敵も、全てクリスが打ち抜く中で、クローズは自ら赴いて敵を薙ぎ払い続ける。
だが、数があまりにも多すぎる。
「チッ!なんかのバーゲンセールかよ!」
そう悪態を吐くクローズの傍らで、クリスは歌を唄い、ノイズを片付けていく。
そしてやはりと思う。
(やっぱコイツが歌を唄っている間は、力が漲る!)
これは一体どういう事なのか、万丈には分からない。
だが、実際に強くなっているのだから、その勢いに乗った方が得策だろうというのは本能で理解していた。
「オラオラオラァ!」
人のいない街中で、銃声が轟き続ける。
しかし、その数は着実に増えていっていた。
その度に倒していくも、やはり、ノイズは増える一方だ。
正直、どちらか片方だけだったのなら、その勢いに飲み込まれていた事だろう。
「くそ!どんだけいるんだこいつら・・・!」
「アタシが知るかよ・・・!」
クリスの歌が響く中で、背中合わせて二人は自分たちを囲むノイズを睨む。
(一か八か、必殺技で・・・!)
そう思い、ボルテックレバーに手を伸ばしかける。
その時だった。
「ん?・・・なんだ!?」
「なッ!?」
突如として、ボトルホルダーにセットしてあった、黒くなったグレートドラゴンエボルボトルが赤く輝き出す。
クローズは、それを恐る恐るホルダーから取り外してみると、その光は収束していき、そこにあったのは、エボルボトルではない、真っ赤なボトルが握られていた。
弓を携える何者かの柄が入ったそのボトル。
「なんだこれ・・・?」
そう呟いた直後、クローズドラゴンが勝手にドライバーから飛び出す。
「うお!?なんだよいきなり!?」
「キュールールルッルルッ!」
まるで急かすように、ドラゴンは自らに装填されていたドラゴンフルボトルを輩出した。
「これを入れろってことか・・・?」
「おい!なんでもいいからさっさとしてくれ!」
じりじりと近付いてくるノイズの群れ。
「だーもう!やりゃあいいんだろやりゃあ!」
そう叫んで、クローズはその赤いボトルをクローズドラゴンへと装填した。すると、クローズドラゴンが、烈火の如く真っ赤に染まる。
そして、起動ボタンを押す。
『激唱ゥ!』
そして、すぐさまビルドドライバーに装填した。
『クロォーズイチイバルッ!!!』
「え?イチイバル?」
その音声に、クリスは思わず驚く。しかし、その間にもクローズはボルテックレバーを回していた。
やがて、クローズの周りに、四方向に展開されるスナップライドビルダーが形成されたかと思うと、前後には装甲、右にはライザーと何かの防具、左には同じく防具のみで展開される。
『Are You Ready!?』
覚悟は良いか。
もう何度も聞いた言葉だ。
この、未知の変身を前にして、果たして準備は出来ているのか。それを、聞いているのだろう。
だが、クローズは――――万丈は不思議と悪い気はしていなかった。
だから、叫ぶ。
「いくぜ!」
四方のスナップライドビルダーがクローズを挟み込む。
『激唱戦場!クロォーズイチイバルッ!!!』
『イェェエイッ!!ドッカァァァァアンッ!!!』
真っ赤な装甲を纏いし龍―――赤い装甲を纏ったクローズ。
その名も、『クローズイチイバル』
新たなクローズが、この新世界に誕生した瞬間である。
「負ける気がしねえ・・・!」
次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!
ついにその姿を見せるクローズイチイバル!
「これでも喰らってろ!」
その圧倒的強さと共に戦うクリス!
「やっさいもっさい!」
その一方で現場へ向かう戦兎と響は、最大の危機に陥っている未来と再会する。
「私、響に酷い事をした」
その最中で、未来が取った行動とは――――
「未来を・・・私の大切な人をお願いします!」
次回『私という音響き・ラビットの足は疾風の如く』
「準主役なりに意地張らせてもらうぜ!」
ちょっとやってみたかった奴(注意/本編全く関係ないです。ただやってみたかったというだけです。ですのであまり期待しないでください。それとオリジナルライダーがいたりします。嫌だって人はここでブラウザバック!いい人はこのままビルドアップ!)
いくつも存在する可能性の世界『並行世界』―――
ギャラルホルンという聖遺物が示す並行世界の異常―――
異常が起こる事で繋がった二つの世界―――
それの解決の為、装者と仮面ライダーたちは、その平行世界へと旅立つ。
その先で出会った者は―――
「―――ここが、シンフォギア・ビルドの世界か」
『KAMENRIDE!
突如として装者と仮面ライダーの前に現れる謎の『仮面ライダー』。
「何故桐生の力を・・・!?」
「お前は一体、誰なんだ・・・!?」
「俺か?―――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」
その名を、
「やあ、君の持つ聖遺物というお宝を頂きに来たよ」
『KAMENRIDE!
トレジャーハンターと名乗る『仮面ライダー』の登場。
「それを返せ!」
「お願い、大切なものなんです!」
「それは無理な相談だな」
その名は、『
次々と繋がっていく世界―――様々な世界が一つになり、また新たな混沌が生まれる時―――
「―――祝え!」
魔王が降臨する。
「全てのライダーの力を持つ、魔王だってさ」
『RIDER TIME!KAMEN RIDER!
仮面ライダージオウ―――常盤ソウゴ。
今、様々な世界が錯綜し、そして―――全てを混沌に陥れようとする者に、仮面ライダーが立ち向かう。
「さあ、終焉を始めよう」
『殺戮・絶滅・壊滅!崩壊ノ道ヲ辿レ!ワールドブレイク・イン・スルト!』
今、全ての世界が交錯し、全ての世界を守る戦いが始まる。
「翼に手を出すなぁああ!!」
「歌うのを諦めないで!」
「響は私が助ける!」
「私に構わないで」
「今のアタシたちは負ける気がしねぇ!!」
「マリア姉さん?」
「私の計画の達成の為に・・・」
「俺の刃をその身に刻め」
「ここでお前を喰らい尽くす・・・ッ!」
「心火を燃やして」「ぶっ潰すデース!」
「大義の為の犠牲となれ・・・!」
「オォォオオ!」
「この世界を破壊する・・・その前にお前を破壊してやる」
「流石にお宝の横取りは黙っておけないね」
「もう二度と失ってなるものかよ!」
「遅い!でも間に合ったから許す!」
「貴様如きにあの男が倒せるかよ。チャオ」
「あの男は俺の友達だ・・・だからお前を倒す!」
「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、過去と未来をしろしめす時の王者――――」
「なんか、いける気がする!」
「だとしても!」
「何故そこまでして俺に歯向かう?」
「俺たちが仮面ライダーだから」
愛和創造シンフォギア・ビルド―――ギャラルホルン編
『創造の果てに』
「さあ―――最後の実験を始めようか」
「今の俺たちは―――誰にも負けねえ」
「戦兎ぉぉぉぉおお!!!」
「龍我ぁぁぁぁああ!!!」
連載はしない!(今だけで精一杯!そしてなんかおかしいと思っても無理にツッコまないでください!)
では次回も楽しみに!