愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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農具「天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、響センパイの頼みで決死の思いで未来さんを助けに向かい、見事に響センパイに手柄をかっさわれたのデース!」
戦「何楽し気にそんな事言ってんだああ!?」
農具「い、痛い痛い!痛いデスよ!頬を引っ張らないでくださいデス!」
黒グニール「あれ?そういえばいつものメンバーは?」
戦「なんか知らんが用事があるとかで全員欠席だよ」
黒グニール「とすると私たち三人だけなのね!」
戦「言っておくが、お前さっき高級な牛タン食ってイキってる事知ってるんだからな」
黒グニール「な、何故それを・・・!?」
農具「〇〇〇のメンタルはいつも食事で決まるんデス!」
黒グニール「はいそこの農具すこし口をチャックしましょうね~?」
農具「あぁぁあ!?だからって針と糸を本当に出さないでほしいデス!」
戦「しかもチャックじゃねえし・・・まあいい」
未「はあ・・・はあ・・・お、遅くなりました・・・・」
黒グニール「あら?あの子はどうしたの?」
未「ああ、さっきクロのいたずらの餌食になってしまいその所為で伸びてます」
一同『一体何があったし』
未「ゴルフボールが一杯入ったバケツをひっくり返してしまいまして・・・」
翼「な、なんでここにゴルフボールアーッ!」
黒グニール「今の翼の声よね!?」
農具「急いで片付けないと―――」
工具「え?ま、まって、どうしてここにゴルフボールキャァァア!!」
弦「ぬお!?何故ここにゴルフボールぐあー!」
無性「へぶし」拳が当たった
ク「あべし」拳に吹っ飛ばされる
万「ふむぐ!?」クリスの胸が直撃
黒グニール「もう既に大惨事!?」
戦「だーもう!どうしてこうなるんだ!?もういいから本編第十六話をどうぞ!」
黒グニール「あ、待って私もゴルフボールヘアッ!?」前方に向かって空中回転
農具「ごふっ!?」思わぬ逆サマーソルトキックを喰らう
未「ああ、さっきよりも大惨事n・・・」
クロ「キュル!」未来の足裏にゴルフボールを仕掛ける
未「えっ、なんでここにもゴルフボールいやぁぁあ!!」
戦「ああもういい加減にしろよお前r」
クロ「キュル!」戦兎の足裏にゴルフボールを仕掛ける
戦「クロてめぇぇぇぇええ!」スッテーン


変わり果てたニューワールド

―――彼女は、バイクを弄るのが趣味だ。暇な時は、いつも自分の愛車をいじくってる。

 

その様子を遠目でみつつ、こっそりと近付いてみる。

すると、彼女からささやかな鼻歌が聞こえてくる。

それも自分とのデュエット曲だ。それが無性に嬉しくて、思わず自分も重ねて歌ってしまう。

肩越しにその様子を覗いてみると、彼女は恥ずかしがるように驚いた。

「か、奏!?」

その反応が面白く、思わず笑ってしまう。

「ご機嫌ですな」

「今日は非番だから、バイクで少し遠出に・・・」

「特別に免許貰ったばかりだもんな。それにしても、任務以外でも翼が歌を唄ってるのは初めてだ」

「っ・・・奏・・・」

恥ずかしいのか俯く翼。

「そういうの、なんか良いよな」

そう言って、その額を小突く。

「また鼻歌聞かせてくれよな~」

「~~~っ!奏!鼻歌は、誰かに聞かせるものじゃないから!」

それは彼女の精一杯の抗議なのだろう。

不器用な彼女らしい、反論だ。

「分かってるって、じゃ、行ってきな」

そう言い残して、自分は立ち去る――――

 

 

 

 

「・・・なんだ、今のは・・・」

自室のベッドにて、戦兎は目を覚ます。

時計を見れば、丁度いい時間であった。

「ふ、あぁあ・・・」

軽くあくびをしつつ、戦兎はベッドから立ち上がり、作業机の方へ向かう。

ふと、自分の手の中に、ある物が握られている事に気が付く。

「ん?・・・フェニックスフルボトル?」

何故かラビットと同じくらい赤いフェニックスフルボトルが握られていた。

「なんでこれが・・・」

 

―――アンタも行って来たらどうだい?

 

「・・・・!?」

どこからか、聞き覚えの無い声が聞こえてきた。

思わず振り返って、目に入ったのはビルドフォンだった。

「・・・・」

それを手に取って、何を思ったのか写真アプリを開いて、そこにある写真を見た。

 

それは、旧世界での思い出。

 

仲間たちと取った、一年間の戦いと日常の記録。

 

自分が、旧世界で生きてきた証。

 

「・・・そうだな」

ビルドフォンを一旦切り、戦兎はつぶやく。

「行った方がいいかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

リディアンの地下深く。そこに存在する特異災害対策機動部二課の施設にて、先日組織の外部協力者として登録された未来を伴い、響は二課にやってきていた。

「わあ・・・学校の真下にこんなシェルターや地下基地が・・・」

「あ!翼さーん!」

ふと、響は目の前に翼がいる事に気付く。さらに緒川や藤尭、それと戦兎もそこにいた。

「立花か。そちらは確か、協力者の・・・」

「こんにちは、小日向未来です」

「えっへん、私の一番の親友です」

未来がお辞儀をする傍らで、胸を張って自慢する響。

「立花はこういう性格故、色々面倒を掛けるだろうが、支えてやってほしい」

「見ていて危なっかしい所あるからな」

「あ、先生酷い」

「いえ、響は残念な子ですので、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「お前も何気に酷いな・・・」

「ええ!?何!?どういう事ぉ?」

「響さんを介して、お二人が意気投合しているという事ですよ」

「んーはぐらかされた気がする・・・」

ふくれっ面になる響。

その様子に、未来と戦兎、そして翼が笑う。

その翼の様子に気付いて、戦兎は微笑む。

(ちゃんと変わったな・・・)

その事に一安心しつつ、響が口を開く。

「でも未来と一緒にここにいるのは、なんかこそばゆいですよ」

「小日向を外部協力者として、二課に移植登録させたのは、司令が手を回してくれた結果だ。それでも、不都合を強いるかもしれないが・・・」

「説明は聞きました。自分でも理解しているつもりです。不都合だなんて、そんな」

「あー、そういえば師匠は・・・」

「ああ、私たちも探しているのだが・・・」

「どこに行ったんやら」

何やら外出中らしい。

万丈もクリスと同行している為いないが、流石に司令官がいなくなるのはまずいだろう。

「あ~ら良いわね」

そこへ、了子がやってくる。

「ガールズトーク?」

「どこから突っ込むべきか迷いますが、とりあえず僕を無視しないでください」

「おい俺も忘れんな。この天才物理学者を忘れるなコラ」

溜息を吐く緒川と青筋を浮かべる戦兎。

しかしそんな二人を他所に、響どころか未来が了子に対して興味津々だった。

「了子さんもそういうの興味あるんですか?」

「もちのろん!私の恋バナ百物語聞いたら、夜眠れなくなるわよ」

「まるで怪談みたいですね・・・」

「了子さんの恋バナ!?きっとうっとりメロメロ乙女で大人な銀座の恋の物語ぃ~!」

響、やはり女子か。そういう話には腹をすかした犬の如く食いついてきた。

その一方で翼は頭を抑えるばかり。

了子の眼鏡がきらりと光る。

「そうね・・・遠い昔の話になるわね。こう見えても呆れちゃうくらい一途なんだから・・・」

何やら本格的な話が出てきそうである。

「「おぉぉおおー!」」

その感覚で未来と響が目を光らせる。

「意外でした・・・櫻井女史は、恋というより研究一筋であると・・・」

翼は意外と言った風な口ぶりだった。

「命短し恋せよ乙女と言うじゃない。それに女の子の恋するパワーってすごいんだから」

「女の子?その年で?」

戦兎の心無い言葉が吐き出される。その直後、了子の鉄拳が顔面に炸裂する。

「ぐべあ・・・」

「戦兎さん!?」

倒れる戦兎。しかしそんな事知った事かという風に話を続ける了子。

「私が聖遺物の研究を始めたのも、そもそも・・・」

そこで、了子は止まる。

「「うんうん、それで・・・!?」」

完全にガールズトークにのめり込む女子と化した響と未来。

その仕草は何やら餌を前にした子犬のように可愛い。

「あ・・・ま、まあ!私も忙しいから、ここで油売ってられないわ」

「自分から割り込んだんだろテメェ・・・そげぶ!?」

「戦兎さぁぁん!?」

「桐生ぅぅうう!?」

今度は了子の蹴りが炸裂する。

「ヒールが、ヒールがぁぁああ・・・!!」

「とにもかくにも、出来る女の条件は、どれだけ良い恋してるかに尽きるのよ」

「大丈夫ですか?」

「うわっ、ヒールが完全に突き刺さってましたねこれは・・・」

「だ、大丈夫か桐生!?しっかり、しっかりしてぇ!」

「ガールズ達も、いつかどこかで良い恋なさいね」

そう言って、了子は手を振ってさっていく。

「それじゃ、ばっはは~い」

「聞きそびれちゃったね~」

「ん~、ガードは硬いかぁ・・・でもいつか、了子さんのロマンスを聞き出してみせる!」

戦兎が沈み、それを看病する翼を他所に、響はそうガッツポーズをとるのであった。

 

 

 

 

 

 

「司令、まだ戻ってきませんね」

「メディカルチェックの結果を報告しなければならないのに・・・」

この間のメディカルチェックにて、もう以前のように動けるという診断を受けた報告をしたいのだが、生憎とその司令は留守。

さらには通信機も置いていっているらしく、連絡も取れない。

これでは、報告なんて不可能だろう。

「次のスケジュールが迫ってきましたね」

「もうお仕事入れてるんですか!?」

「少しずつよ。今はまだ、慣らし運転のつもり」

「じゃあ、以前のような、過密スケジュールじゃないんですよね?」

「ん?」

「だったら翼さん!デートしましょう!」

「ぶおっふぉ!?」

戦兎は、思わずむせてしまった。

「大丈夫ですか?」

「げほっ、ごほっ・・・いや、なんか想像も及ばない言葉が出てきて驚いただけだ。気にすんな・・・」

激しく咳込みつつ、戦兎は気を取り直す。

「それで、デートってどういう・・・」

「そのままの意味ですよ?お出かけです」

「だよな・・・あー、びっくりした・・・」

安心して肩を落としつつ、戦兎はコーヒーを飲む。

「良かったら、戦兎先生も行きませんか?」

ふと、未来がそのように提案する。

だが、戦兎は首を横に振る。

「悪い。少し予定があってな」

「そうなのか・・・うむ、そうなのか・・・」

((あ、意外と落ち込んでる))

翼が沈んでるのをなんとなく察してしまう女子二人。

ただし緒川と戦兎にはバレていないようだ。

「何か予定があるんですか?」

「ああ、バイクでちょっと遠出にな」

「バイク・・・」

その言葉に、翼は僅かに反応する。

「どこに出かけるんですか?」

「ああ、ちょっと里帰り的なことをな」

(里帰り・・・?)

その言葉に、翼は首をかしげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の降る中――――

「んじゃ、ちょいと食いもん買ってくるからドラゴンと待ってろ」

「いいのかよ。こいつを置いて行って」

「なんか知らねえがノイズが出たらすぐに飛んできてくれるから大丈夫だって。それに、何か起きたときの為の合図にもなるだろ」

「キュル!」

まるで任せろと言わんばかりに首を持ち上げるドラゴン。

「そうか・・・」

「安心しろ。いざって時はぶん殴ってどうにかするからよ」

「頼むから出来るだけ暴力沙汰は避けてくれよ・・・あとノイズに触れたらただじゃすまないんだからな?」

ハハハとなぜか洒落にならないことで笑う万丈にあきれつつ、クリスは万丈を見送る。

「あ・・・」

「ん?」

「その・・・気を付けて・・・」

「おう?わかってるよ」

傘を片手に、万丈は出ていく。

それでもって家に一人となるクリス。否、一人と一匹になるクリスとドラゴン。

(しばらくは待つしかないか・・・)

クリスは、これから退屈になりそうな気がした。

 

 

 

 

 

 

雨の降る中、万丈はコンビニから出る。

「ありがとうございました」

店員の挨拶を背中に、万丈はコンビニから出た所で、見覚えのある人物に気付く。

「風鳴のおっさん・・・」

「よう。少しいいか?」

近場で雨宿りしつつ、万丈と弦十郎は並び立つ。

「雪音クリスの様子はどうだ?」

「すこぶる元気だよ」

「そうか・・・なら良かった」

弦十郎は、心底安心した様子でそう呟く。

「それで、何しに来たんだよ?」

「・・・大人の務めを果たしにな」

「大人・・・ね・・・」

短く呟く万丈。

「ヴァイオリン奏者、雪音雅律(まさのり)と、その妻、声楽家、ソネット・M・ユキネが、難民救済のNGO活動中に、戦火に巻き込まれて死亡したのが八年前。残った一人娘も行方不明となった」

「それがクリスか・・・」

「そうだ。その後、国連軍のバルベルデ介入によって、事態は急転する。現地の組織に囚われていた娘は、発見され保護。日本に移送される事となった。当時の俺たちは、適合者を探すために、音楽会のサラブレットに注目していてね」

「イチイバルの適合の事か・・・」

「ああ。だが日本への帰国途中に突然、行方不明となり、俺たちは慌てた。二課からも相当数の捜査員が駆り出されたが、この件に関わった者の多くが死亡・・・あるいは、行方不明という最悪の結末で幕を引くことになった」

「マジかよ・・・」

その事実に、万丈はただただ驚く。

そこで万丈は気付く。

「そうか・・・全部フィーネって野郎の仕業か・・・!?」

「その線が濃いだろうな。だが、だとしても我々が彼女の正体を掴めていないのは事実だ。居場所も分からない以上、下手に動くことは出来ない」

「くそっ・・・」

雨の中、悔しがる万丈。

「そこでだ、龍我君」

「ん?」

「彼女をこちらで保護したい。この間の一件から、彼女がフィーネに狙われているのは明白。であるならば、二課で保護した方が安全だと思うのだがどうだろうか?」

確かに、その方が安全だろう。二課なら、響や翼というシンフォギア装者がいるだけでなく、戦兎―――仮面ライダービルドという心強い味方がいる。

このような布陣がいる場でなら、クリスも安全だろう。

しかし―――万丈は首を横に振った。

「いや、ダメだ」

「それは何故だ?」

「アイツには、アイツの戦いがあるからだ」

万丈は、真っ直ぐ弦十郎を見る。

「さっきの話聞いて、アイツが戦争を止めたいって気持ちは分かった。あんたらが、クリスを保護したいってのも分かる・・・でもダメなんだ。アイツには、アイツの戦いがある。それを、邪魔させる訳にはいかねえ」

拳を握りしめる。

「俺はそれを支えてやりてえ。アイツが、途中でくじけないように傍にいてやりてえ。俺は馬鹿だから、上手く言えねえし、なんかの気遣いなんて出来ねえけどよ。それでもアイツを支えてやる事ぐらいは出来る気がするんだ。まだ、アイツの事なんにも知らねえし、なんか怒らせちまう事もあるかもしれねえけど、それでも、俺はアイツの傍にいてやりたい」

そう、はっきりと口にする万丈。

「・・・そうか」

その言葉に、弦十郎はふっと笑う。

その時だった。

「キュールルールルールルールルッ!」

「うわ!?おい、やめろ!」

ふと、物陰から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「クリスか?」

「う・・・」

万丈が呼びかけると、物陰から、気まずそうな顔をしたクリスと、陽気に鳴くクローズドラゴンが出てくる。

「いたのかよ」

「いや・・・ちょっと、気になってな・・・」

「気にするって何をだよ?」

「な、なんでもいいだろ!」

顔を真っ赤にして怒鳴るクリス。

そんな中で、弦十郎の笑い声が響く。

「おっさん?」

「いや、すまない。やはり戦兎君の言った通りだったな」

「戦兎が?」

「ああ。君は、理屈じゃなく誰かの為にで動くような男だと聞かされていたからな。その分なら、彼女を保護する必要はなさそうだ」

「そうか?」

「ああ」

弦十郎がうなずく。だが、そこでクリスは口を挟んだ。

「待てよ」

その言葉で、二人の視線がクリスに向く。

「なんで、そんな簡単に敵だったアタシの為にそこまで出来るんだよ・・・」

「なんでって・・・なんでだ?」

「アタシに聞くな!いいか!?アタシは『大人』が嫌いだ!大っ嫌いだ!死んだパパとママも大っ嫌いだ!とんだ夢想家で臆病者!アタシはあいつらとは違う!被戦地で難民救済?歌で世界を救う?愛と平和?良い大人が夢なんか見てんじゃねえよ!」

「大人が夢を、ね・・・」

クリスはなおも言葉を続ける。

「本当に戦争を無くしたいのなら、戦う意志と力を持つ奴らを片っ端からぶっ潰していけばいい!それが一番合理的で現実的だ!」

必至に、自分の想いを()()()()()とするクリス。

「・・・お前が、一体どんな気持ちでこの人生、どうしてきたのか知らねえけどよ・・・俺の知る限り、その方法じゃ戦争はなくならないと思うぞ?」

「なんだと・・・」

「だってそうだろ?もし、ソイツに家族とかいたら、そいつらがお前に恨みをもって、力を手に入れようとする。それでまた潰してもまた別の奴がお前を倒そうとする。それじゃあ終わりが見えねえじゃねえか。そんな方法で、お前は本当に争いを無くせると思ってんのか?」

「そ、それは・・・」

反論できず、言葉が詰まるクリス。

「・・・良い大人は、夢を見ないと言ったな」

ふと、弦十郎が口を挟む。

「そうじゃない。大人だからこそ、夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし力も強くなる。財布の中の小遣いもちっとは増える。子供の頃は、ただ見るだけだった夢も、大人になったら叶えるチャンスも大きくなる。夢を見る意味も大きくなる。お前の親は、ただ夢を見に戦場に行ったのか?」

「・・・・」

何も言い返せず、黙り込む。

「違うな・・・『歌で世界を平和にする』って夢を叶えるため、自ら望んで、この世の地獄に踏み込んだんじゃないのか?」

弦十郎の言葉が、雨音に交じってクリスに伝わる。

「なんで・・・そんな事・・・」

「夢は必ず叶うって事をお前に見せたかったんだろ?」

万丈が、答える。答えて見せた。

「歌で世界を平和にする、か・・・戦兎と変わらねえぐらいの大馬鹿野郎だな。でも、そんな夢を抱けるなんてすげえじゃねえか。お前は、そんな親を嫌いだなんて言ったけどさ、世界を平和にしたいって願うお前の親がお前の事が嫌いな訳がねえ。誰よりも、お前の事を大切に思ってただろうな」

「ッ・・・」

クリスに目尻に涙を浮かぶ。必死に、溢れ出るものを抑えている。

そんなクリスの頭に、万丈は手を置いた。

「・・・!」

「上手く言えねえけどさ・・・頑張ったな」

「―――ッ!」

 

そこが限界だった。

 

クリスは、万丈に抱き着くと、声を挙げて泣いた。

雨の降る中、雪色の少女の泣き声が雨音の中響き渡る。

万丈は、突然抱き着かれた事に動揺し、どうしようかと迷うが、無理に引き剥がすなんて事は出来ず、

(すまん、香澄・・・!)

なんて事を言って、胸に顔をうずめて泣くクリスを抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日――――

まだ日が昇ったばかりの頃、戦兎はリディアンの前の道路に姿を現していた。

 

『Build Change!』

 

ビルドフォンにライオンフルボトルを差し、マシンビルダーに変形させる。

「さて・・・」

「こんな朝早くからお出かけとは、随分と今日の事を楽しみにしてたいたようで」

ふと聞こえた声に振り向けば、そこには緒川が立っていた。

「緒川か・・・」

「すみません。尾行するような真似をしてしまい」

「いや、いいよ。これから昔馴染みの所に行くんだからよ」

「昔馴染み・・・ですか・・・」

「分かってんだろ」

戦兎の顔は、言葉とは裏腹に、どこか憂鬱そうだった。

「・・・新世界。それは、一体どういう意味なのでしょうか?」

「・・・ここだけの話、お前、並行世界って信じるか?」

戦兎は、マシンビルダーに腰掛けて、そう尋ねる。

「可能性の世界・・・今ある世界とは違う道を辿った世界が他にも存在し、それが無数に存在するという話ですね」

「ああ。それで、その中に世界Aと世界Bがあるとする。その二つを合体にさせて、新たな世界Cを創る・・・それが、新世界創造の方法だ」

その言葉に緒川の表情は驚愕に染まる。

「では、この世界は、その世界Cだとでもいうんですか?」

「ああ。だけど、誰もその事を覚えていない。世界が融合しただなんて事は、誰の記憶にもない。ただ、俺と万丈を除いては、な」

創造主である戦兎と、エボルトの遺伝子を持つ万丈。

その二人だけが、旧世界の記憶を保持したまま、この世界に取り残されてしまった。

「しかし、そんな事が可能とは・・・一体、何の目的でそんな事を・・・」

「詳しくは、時間がないから言えねえけど・・・ただ言える事は、世界を救う為にやった・・・て事だけだな」

マシンビルダーに跨り、ヘルメットを被る。

「新世界を創るための力はもうない。この世界は、平和であるのが一番だ」

朝焼けの空を見て、戦兎はつぶやく。

「・・・ノイズさえいなければ、最高だったんだけどな」

「・・・・」

その言葉に、緒川は、何も言えなかった。

やがて、戦兎は誤魔化すように笑い、エンジンをかける。

「それじゃあ、行ってくるわ。もし風鳴さんが帰ってきたら言っといてくれ」

「分かりました。お気をつけて」

「ああ」

バイザーを降ろし、戦兎は走り出す。

その彼を見送りつつ、緒川は考察する。

(新世界を創造する・・・それは並大抵の力では絶対に不可能な所業・・・この世に現存するどの聖遺物を率いても、既存の物理法則を超越しない限りは、そもそも出来ない事だ・・・それを、彼はやってのけた。彼のいた世界に、それを成しえる聖遺物があったとしたならば・・・それは、決して見過ごせるものじゃない)

一人、その危険性を感じつつ、緒川は戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦兎が最初に向かったのは、『nascita』と呼ばれる喫茶店だった。

記憶とナビを頼りに、移動し、そうして辿り着いた場所がそこだった。

「・・・」

かつての旧世界で、自らの拠点とした喫茶店『nascita』。

この新世界では、一体どうなっているのか。

戦兎は、一度深呼吸をしてから、扉を開ける。

「いらっしゃいませー」

聞き覚えのある声が、聞こえた。

扉を開けて、入った先に、彼女は、いた。

「・・・美空」

石動美空。かつて、旧世界にて、戦兎たち仮面ライダーをサポートしてくれていた少女。

そんな彼女が、目の前に立っていた。

「お一人様ですか?」

「あ、ああ・・・」

だけど、彼女は彼の事を覚えていない。

この新世界で、仮面ライダー・・・旧世界に関わる全ての事は、この世界に生きる人々の記憶から消えているのだから。

「では、こちらへ・・・」

「あ、あの・・・」

戦兎は、美空を呼び止めた。

「何か?」

「いや・・・なんでもない」

「そうですか・・・ああ、では、こちらに」

カウンター席に案内される。そこで戦兎は、コーヒーを一つ頼んだ。

ふと、目の前を見れば、そこには美空の父親、石動惣一が、手慣れた手つきでコーヒーを作っている。

ふと気付けば、いつも誰もいなかった時とは違い、店は、それなりに繁盛していた。

壁には、風鳴翼・・・ではなくどこかのかなり綺麗な外国人の女性のポスターが飾られていた。

(マリア・カデンツァヴナ・イヴ・・・)

どこかの有名人だろうか。

「・・・」

「はい。お待ちどう」

「あ、ありがとう・・・ございます」

危うくため口で返事する所を寸での所で誤魔化し、戦兎はコーヒーを飲んだ。

「・・・美味い・・・」

かつてはまさしく泥水と形容出来る程まずかったマスターのコーヒーが、美味かった。

(そうか。あの時はエボルトに乗っ取られてたから・・・)

異星人と地球人の味覚は違うという事なのだろう。

「いいだろう?」

「へ?」

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ、君がさっき見ていたポスターの人だよ」

「ああ」

それで合点がいく。それほどまでに有名なのか。

「デビューから僅か二ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に上り詰めた気鋭の歌姫!ミステリアスにして力強い歌声は国境を越え、世界中に熱狂的なファンまで多数獲得する程の世界の歌姫!彼女のCDが出た時はすぐさま買いに行ってるんだよ~」

「買いに行ってるのは私だけどね」

そこで美空が戻ってくる。

「注文だよ」

「あいよ」

そう言って惣一は美空から受け取った表を見てすぐさま作業に取り掛かる。

「ごめんなさい。お父さん、マリアさんの事になると興奮しちゃって」

「ああ、別に・・・」

「ちなみに私も大ファンだったりするんです」

あの父にしてこの娘ありか、何やら興奮気味だ。

 

旧世界とは、違う。

 

ふと、惣一が美空から注文を受けた時に、店にある冷蔵庫を開ける。

「あ・・・」

思わず声を挙げ、目を見張るも、冷蔵庫に手を突っ込んだ惣一が取り出したのは何の変哲もない食材だ。

(ああ、秘密基地もないのか・・・)

よくよく考えてみれば、エボルトがいなければあの秘密基地は創られなかったし、そもそもスカイウォールがなくなっている時点で、エボルトがいないのは明白。

であるならば、石動惣一がエボルトに憑依されていない道理も通る。

(あーくっそ、改めて実感するときついなぁ・・・)

コーヒーを飲んで、戦兎は、そう心の中で呟いた。

その視界の中で、美空が楽しく接客している様子を眺めた。

 

 

 

 

 

nascitaを出て、次に向かったのは、猿渡ファームと呼ばれる農場だった。

何人もの農家が、畑を耕し、実った作物を採集していた。

その様子を、戦兎は遠くから眺めていた。

「おうおう」

ふと、見覚えのある顔に声をかけられる。

何やら、カツアゲみたいな感じで。

「ん?」

「お前、ここに一体何の用だぁ?」

見覚えのある赤いバンダナを頭に巻いている男だ。

かつて、北都と呼ばれる街の軍隊の筆頭を務めていたとある男の部下。

三羽ガラスの赤羽と呼ばれていた大山勝だ。

そして、旧世界では、自分の目の前で死んだ男。

「いや、この辺りを通った時にこの農場があるって事を思い出してな。だから、ちょいと見に来ただけだ」

「本当かぁ?なんか別の農場で商売敵に畑荒らされたっていう話持ちあがってるからお前もその手の奴なんじゃねえのかぁ?」

「なんで俺がそんな事しなくちゃいけないんだよ・・・」

短気なのは相変わらずか。

「その辺にしておけ」

ふと、そんな赤羽を止める者がいた。

「あ、カシラ」

「・・・」

(一海・・・)

猿渡一海―――仮面ライダーグリス。

北都唯一の仮面ライダーにして、この農場の主。

誰よりも農場の事を大切に思い、そこに生きる農家たちの為に戦っていた戦士。

そして、自分の忠告を無視して禁断のアイテムを使い、そして死んだ男。

「悪かったな。うちのもんが」

「いや、大丈夫だ」

「ていうかお前、その話はもうずっと前の話だろうが。いつまで引きずってんだ」

「す、すんません・・・」

「まあいい。さっさと戻れ」

一海に言われて、自分の仕事に戻る赤羽。

「ま、好きに見ていってくれや」

「いや、もう充分に見させてもらった。良い場所だな」

「ああ、そうだろ?」

笑って自慢してみせる一海。

その様子を見て、戦兎は、心底安心するのであった。

 

 

 

 

 

それからも、戦兎はバイクを走らせ、自分の知る限りの場所を走り回った。

難波重工の工場『難波機械製作所』では、内海成彰が難波スティックと呼ばれる鉄の棒を折ろうとしていたりして、それに周りの無反応さにドン引きしてしまったり、続く政府官邸では氷室幻徳が父親の仕事をしっかりサポートしていたり、街中で見かけた滝川紗羽はジャーナリストとして奔走していたりと、自分の知る彼らとは、全く違う人生を歩んでいた。

 

スカイウォールの存在しない世界―――パンドラボックスが発見されなかった世界。

 

それだけで、こうも変わるものなのだろうか。

いや、おそらくノイズがいるというだけでも、大きく変わっている筈だ。

ただ、自分たちの知る十年―――否、歴史そのものが違うのがこの世界だ。

シンフォギア、ノイズ、特異災害対策機動部二課、聖遺物――――

あの世界では、絶対にありえなかったものばかりだ。

だけど、ライダーシステムとシンフォギアは、似て非なるものではあるが、誰かを守るために作られたという事には変わりはない。

だけど―――

「・・・・」

夕焼けに染まる空を見上げて、戦兎は、思う。

(この世界に、果たして『俺』は必要なのだろうか・・・)

なんて、思ってしまう戦兎。

自分の掌を見て、この世界における自分の異物感を改めて実感してしまう。

だが、すぐに頭を振ってその考えを振り払う。

(何考えてんだ。ノイズがいるんだ。俺が生きるのを諦めてどうすんだっての)

「はあ・・・」

思わずため息をついてしまう戦兎。

「ああー、だめだ。色々と考えちまう・・・」

なんて、呟いた時。

 

―――あんまり難しく考えてると、そのうちぽっきりいっちゃうぞ。

 

「・・・ッ!?」

また、知らない声が頭の中で響く。

その瞬間、視界が真っ白に染まる。その真っ白な視界に、戦兎は覚えがあった。

「ここは・・・」

そこは、もう一人の自分である葛城巧との対話の場である、白い世界。

いくつもの数式が上空を通り過ぎ、いくつもの扉から、これまでの記憶が流れる、真っ白な世界。

「どういう事だ・・・巧はもういない筈なのに・・・」

 

《―――へえ、ここがアンタの心の中かぁ・・・なんというか、数字がいっぱいだな》

 

「誰だ・・・?」

振り返れば、そこにはまるで羽毛のような赤毛の長髪を持つ少女がいた。

その少女を、戦兎は思わず警戒してしまう。

《警戒しても無駄だと思うよ。なんだか知らないけど、アタシも気付いたらここにいたからさ》

「気付いたら?ってか、お前は誰だよ」

《アタシ?アタシは・・・っと、なんか知らないけど時間切れみたいだぞ》

「時間切れ・・・あ」

少女の体が、消えかけている。

いや、それだけじゃない。視界が暗くなってきている―――というよりは、別の景色が―――自分が本来見ているべき景色が見えてきた。

《まあ、アタシが誰かだって事はまた今度という事で》

「おい!とりあえず名前だけは―――」

戦兎は、少女に手を伸ばす。

その少女は、ふっと笑みを浮かべると、言葉を紡いだ。

 

 

 

《―――生きるのを諦めるな》

 

 

 

「―――ッ!?」

気付けば、戦兎は、先ほどまでいた公園に立っていた。

あの白い世界には、もう入れない。

「なんだったんだ・・・」

訳が分からない。あの世界には、本来なら自分と巧しか存在しない筈だ。

そして巧は、この世界の巧の元へ戻っていった。きっと、スカイウォールの事も忘れているだろうけども。

だから、もうあの白い世界は創られないはずだった。

だというのに、あの少女が、白い世界に突然―――

「訳分かんねえ・・・」

流石にこればかりは戦兎には分からなかった。

あの少女が一体誰なのか。一体どうやってあの白い世界にやってきたのか。

分からない事は多い。だけど、彼女が最後に残した言葉は、不思議と胸の中に残っていた。

 

―――生きるのを諦めるな

 

「・・・そうだな」

戦兎は、ふっと笑う。

「正義のヒーローが諦めたら、まずいもんな」

すっかり日の沈んだ空を見上げて、戦兎は、そう呟いた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「実は、これを渡したくてな」

翼からライブに招待される戦兎。

「もう大丈夫なのか?」

そのステージは、かつてのツヴァイウィングの最後の舞台。

「そんで、これからどうるすんだ?」

一方、クリスと行動を共にする万丈たち。

「運が悪かったな」

そこへ現れるものとは―――

次回『歌女のナイトフェスティバル』

「負ける気がしねえ!」
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