愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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戦「人々を脅かす特異災害『ノイズ』の存在する新世界にて、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、通称『特機部二』と呼ばれる組織と協力し、ノイズと戦う日々を送っていた」
万「おお、なんか今日は真面目だな」
戦「最近カオスな内容が多かったからな。たまにま真面目にやってもばちは当たらないだろ」
ク「普通にネタがなくなったって言えばいいだろ」
響「ああだめだよクリスちゃんネタバレは」
未「そうだよ。そんな傷ごと抉るようなこと」
作「ぐふっ・・・」
翼「ああ、作者が倒れた・・・だが問題はないか」ムジヒ
戦「はいはいディスんのはそこまでにして、さてどうなるd―――」
黒グニール「ちょぉっと待ったぁ!」
戦「うお!?なんだよ黒グニーr」
黒グニール「私は黒グニールなどでない!」
万「まだ引きずってんのかよ・・・」
黒グニール「せっかく、折角本編で名前が出てきたのに、どうしてまだ私の名前が黒グニールなの!?おかしいでしょ!?」半泣き
戦「あーもううるさいな。だったら『タヤマ』に改名してやるから、それでいいだろ?」
タヤマ「何よタヤマって!?・・・ってもう名前が変わってる・・・?」
戦「ちなみにこれは『ただの やらしい マ〇〇』の略だ」
タヤマ「何気に酷くない!?ていうか私のどこにやらしい要素があるのよ!?」
響「うーん、何気に装者の中で一番スタイルいいからじゃないですか?」
ク「ついでにあの訓練服や水着はかなりの色気抜群だったよなぁ?」
タヤマ「うわぁぁん!皆がいじめるぅぅぅう!」逃走
翼「と、いう訳で、第十八話をどうぞ!・・・あれ?あらすじ紹介、今回も出来てなくないか?」


リンクした手だけが紡ぐもの

「じゃあ、またあとで」

そう言って、翼は走り去っていく。仕事に行くようで、その前に一度こちらに声をかけておきたかったらしい。

「・・・・有名人と仲良くなるとは、俺も随分と俗世に染められたもので」

あの頃は、仮面ライダーとして、あまり多くと関わっていく時間は無かった。

しかし、それでも多くの人々と関われたとは思っている。

敵でも味方でも、はたまた関係ない人間でも。

「・・・」

ふと、思った。

 

人は、誰かと関わらずには生きていけない。

 

誰かと関わり合う事でしか、相手の事を理解出来ず、ただ自分を認識する事も出来ずに生きていく事になる。

 

例え、争い憎み合う事になっても。

 

 

「・・・・それでも」

戦兎の本質は変わらない。

「俺の『愛と平和』は、絶対に揺らがない」

ただ、それだけを信じて、戦兎は今日も生きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異変を感じたのは、フィーネの館の扉をくぐった時だった。

「「ッ!?」」

二人は思わず鼻の奥を突いた匂いに気付いた。

その匂いに、二人は覚えがあった。

それを認識した途端、二人は走り出し、あの日フィーネが待ち構えていた場所へと駆け込む。

そこには―――

「なんだよ・・・これ・・・」

何人もの武装した男たちが、急所から血を流して倒れ、絶命していた。

クリスや万丈にとっては、見慣れた光景だ。

「何が、どうなって・・・」

部屋に入り込み、探索しようとすると、もう一人の気配を感じ、二人は思わずそちらを向く。

そこには、弦十郎がいた。

「ち、ちが―――」

「クリスは何もやってねえ!」

万丈がクリスを庇うように二人の間に割って入る。

「龍我・・・」

次の瞬間、扉から武装した黒スーツの男達が入ってきて、思わず身構える万丈だったが、黒スーツの男たちは二人を素通り、遺体の確認を始める。

「誰もお前たちがやったなどと、疑ってはいない。全ては、君や俺たちの傍にいた、()()の仕業だ」

「彼女・・・誰だよソイツは―――」

「風鳴司令」

ふと、黒スーツの一人が弦十郎を呼ぶ。

弦十郎がそちらに向かえば、そこには一人の遺体と、その上には一枚のメッセージが掛かれた紙が置いてあった。

それは、赤い―――おそらく口紅などで書いた―――文字でこう書かれていた。

 

『―――I LoVE YoU SAYoNARA―――』

 

「これは・・・」

「・・・なんて書いてあるんだ?」

その場にいる者たちがずっこける。

「おま、これも読めねえのかよ!?」

「仕方ないだろ分かんないだから!」

勝手に言い争うクリスと万丈に呆れる弦十郎含む黒スーツ一同。

そんな中で、その死体を見ていた黒スーツの男がその紙を拾い上げた、その瞬間、

「キュルー!」

ドラゴンが叫び、突如として部屋が爆発する。

「ッ―――!!」

その爆発をいち早く勘で察知した万丈をクリスを抱き寄せると、ポケットのドラゴンフルボトルを取り出す。

爆炎が舞う中、天井が崩れ、これまた巨大な瓦礫が降ってくる。

これに踏み潰されれば、確実に死ぬ。

であるならば迎撃あるのみだが、仮面ライダーに変身する時間が惜しいのも事実。

かと言ってドラゴンフルボトルを使って殴っても振り足りなさから質量に負けて圧し潰される。さらに、今万丈の腕の中にはクリスがいる。

だから、一歩間違えれば、即死―――

だが、万丈は―――

(今の俺なら―――!!)

 

ハザードレベル7――――ボトルの進化が可能な数値

 

握りしめたドラゴンフルボトルに、自分の力が収束するようにイメージする。

念じた瞬間、手の中のドラゴンフルボトルが銀色に輝き出す。

そして、その輝きを、一気に振ってきた瓦礫に叩きつけて―――粉砕した。

「ウォリヤァァアア!!」

振り上げられた拳は岩を穿ち、破壊する。

やがて爆炎が収まり、弦十郎はともかく、他の黒スーツも無事だった。

「二人とも、無事か!?」

「ああ、どうにかな」

「・・・」

万丈は本能的に銀色に輝くドラゴンフルボトルを隠すようにポケットに入れて、そう返事を返す。

だが、クリスは呆然としたままだった。

「・・・・ん?どうしたクリス」

「・・・え、あ、ああ・・・アタシも大丈夫だ」

「それなら良かった」

弦十郎は周囲を見る。

「中々、味な真似をしてくれる」

「何がどうなってるんだよ・・・」

「なんとも言えん・・・が、今はとにかく、急いだ方が良さそうだ」

「そうか・・・」

「うむ・・・それで、いつまでくっついているつもりだ?」

「え?」

「は?」

そこで二人は、爆発が起こった際にぴったりくっついたままの状態である事に今更気付く。

「「ッ!?」」

思わずバッと離れる二人。

正確には、クリスが万丈の腕から逃れるように暴れたのだが。

「とにかく、俺たちはこれから本部に戻る・・・が、お前たちはまだ」

「ああ、一緒にはいけない」

やや赤くなった顔を向けつつ、クリスはそう答える。

「そうか。ただ、お前は、お前が思っている程独りぼっちじゃない。実際に龍我君が傍にいるし、お前が一人道を行くとしても、その道は遠からず、俺たちの道と交わる」

「今まで戦ってきた者同士が、一緒になれるというのか?世慣れた大人が、そんな綺麗事言えるのかよ?」

「言ってるな。アイツは」

万丈がなんの悪びれもせずに断言する。

そのすまし顔が無性に気に入らないクリス。

「アイツって誰だよ・・・」

「戦兎だよ。ほら、あの赤と青の仮面ライダーの」

「ああアイツ・・・あんま関わった事ねえから良く分かんねえな」

「会ってみれば分かる。彼は筋金入りの平和主義者だ」

「はっ、筋金入りねぇ・・・だったら会いたくなってくるな。いつまでそんな世迷言言ってんだって言ってやりたくなるぜ」

「お前も筋金入りのひねくれ者だな・・・」

クリスの物言いにがっくりとする万丈。

「ふっ、その分なら問題はないだろう。ノイズが出たら追って連絡する」

「分かった。そん時は任せとけ」

「やるとは言ってねーよ勝手に決めんな!」

怒鳴るクリスだが万丈はものともしない。

「それじゃあ俺たちは撤収する。何か分かったら教えて―――」

「―――カ・ディンギル」

「・・・何?」

クリスの言葉に、弦十郎が止まる。

「フィーネが言ってたんだ。カ・ディンギルって。それが何なのか分かんないけど、そいつは、もう完成しているみたいな事を・・・」

「ああ、そういやそんな事も言っていたな」

あの時、フィーネは確かにカ・ディンギルは完成していると言っていた。

それが一体何を意味するものなのかは分からないが、とにかく、ろくでもないものであることは確かだ。

「カ・ディンギル・・・」

弦十郎が、咀嚼するようにその言葉を口にする。

「後手に回るのは仕舞いだ。こちらから打って出てやる・・・!」

弦十郎はそう呟き、そして立ち去って行った。

その後ろ姿を、万丈とクリスは、ただ見送った。

 

 

 

 

 

 

二課本部から連絡が入り、戦兎と翼は通話を繋いだ。

『はい、翼です』

『響です』

「戦兎でーす」

おそらく、検討のついた敵についての調査の報告だろう。

『収穫があった』

どうやら、何かしらの情報を手に入れたようだ。

『了子君は?』

『まだ出勤してません。朝から連絡不通でして・・・』

(連絡不通だぁ?)

顎に手を当てる戦兎。

『そうか・・・』

『了子さんならきっと大丈夫です。何が来たって、私を守ってくれた時のように、ドカーンとやってくれます』

そんな事を言う響に、すぐさま翼が否定を入れる。

『いや、戦闘訓練をろくに受講していない櫻井女史に、そのような事は・・・』

「ありゃ俺と違って根っからの研究者だからな」

(ただの、で済めばいいんだが)

そう思う戦兎。

『ほえ?師匠とか了子さんって、人間離れした特技とか、持ってるんじゃないんですか?』

「んだそりゃ・・・」

弦十郎は分かる。何せ拳一つで翼の一撃を粉砕する程だ。

だが、了子もは、とは一体どういう事なのか。

戦兎は、了子のあの力を目の当たりにはしていないから当然なのではあるが。

ふと、そこで新たに通信が入る。

『ん?』

『お?』

「おう?」

『やぁっと繋がったぁ』

了子だ。

『ごめんね、寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良く無くて』

(通信機の調子が・・・?)

この間壊れていたと言っていたが、修理した影響なのだろうか。

だが、どうにもそれが真実とは思えなかった。

『無事か了子君、そっちに何も問題は?』

『寝坊してゴミは出せなかったけど、何かあったの?』

『良かったぁ』

響は安心している。だが戦兎は、どうにも拭いきれない疑心のまま、その会話に耳を傾ける。

『ならば良い。それより、聞きたい事がある』

『せっかちね。何かしら?』

『・・・・カ・ディンギル』

(カ・ディンギル?それって確か・・・・)

『この言葉が意味する事は?』

弦十郎が了子に尋ねる。

『・・・カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で『高みの存在』。転じて、天を仰ぐ程の塔を意味しているわね』

『何者かがそんな塔を建造していたとして、何故俺たちは見過ごしてきたのだ?』

「いや、カ・ディンギルは別名『バ―――」

戦兎は、それを言おうとして、途端に口を紡ぐ。

『確かに、そう言われちゃうと・・・』

幸い、響が口を挟んでくれたおかげで気にはされなかった。

『だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば、勝利も同然。相手の隙に、こちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな』

『了解です!』

『了解』

「分かった」

そして、通話を終える。

「・・・・」

通話を切った後で、戦兎は思考する。

(カ・ディンギル・・・別名『バベルの塔』。人が天に向かって建てた文字通りの巨大な塔・・・敵は、それを使って何をする気なんだ・・・?)

あの場では言わなかった。

戦兎の持つ『葛城巧の記憶』から、一時期オカルトに興味を持った時の記憶が役に立つとは思わなかったが、しかし相手は、そのバベルの塔で一体何をしようと言うのか。

そして、あの場で言わなかった理由は、二課の中にスパイがいると踏んだからだ。

雪音クリス、ネフシュタンの鎧、イチイバル・・・どれも二課に関わりのあるものばかりであり、先のデュランダル輸送の件では情報が洩れているかのように狙われた。

であるならば、その一連の事件に関わっているのは――――

 

 

 

 

その一方で、

「些末な事でも構わん、カ・ディンギルに関する情報を搔き集めろ」

二課では『カ・ディンギル』なる塔の事について、職員全員が全力で情報を搔き集めていた。

だが、突如として警報が鳴り響く。

「どうした!?」

「飛行タイプのノイズが超大型ノイズが一度に三体・・・いえ、もう一体出現!」

 

 

 

 

 

 

 

街中では、まさしく大パニックが起きていた。

人々は上空に現れたノイズに逃げ惑い、我武者羅に走っていた。

「現れやがったか・・・!」

その様子を、万丈とクリスは見上げていた。

 

 

 

「合計四体・・・すぐに向かいます」

通信機片手にジャケットを着込み、そう返事を返しつつ走り出し、緒川からヘルメットを貰って走り出す翼。

 

 

「今は人を襲うというよりも、ただ移動していると」

そして響もまた、連絡を貰っていた。

「はい・・・はい」

「響・・・」

響が通話を終え、未来と向き合う。

「平気、私と翼さんと戦兎先生でなんとかするから。だから未来は学校に戻って」

「リディアンに?」

「いざとなったら、地下のシェルターを開放してこの辺の人たちを避難させないといけない。未来にはそれを手伝ってもらいたいんだ」

「う、うん・・・分かった・・・」

未来は、心配そうに答える。

「ごめんね。未来を巻き込んじゃって」

「ううん。巻き込まれたなんて思っていないよ。私がリディアンに戻るのは、響がどんなに遠くに行ったとしても、ちゃんと戻ってこられるように、響の居場所、帰る場所を守ってあげる事でもあるんだから」

「私の、帰る場所・・・」

響は意表を突かれたかのように呆気にとられる。

「そう、だから行って。私も響のように、大切なものを守れるくらいに強くなるから」

そう微笑む未来。そんな未来をしばし見つめて、響はふと、歩み寄ってその手を取った。

「あ」

「小日向未来は、私にとっての『ひだまり』なの。未来が一番あったかい所で、私が絶対帰ってくる所。これまでもそうだし、これからもそう!」

そう、自信満々で言いきって見せる響。

そこへ、

「おい響!何してんだ・・・って未来もいたのか」

戦兎が走ってきた。

「戦兎先生!」

「すぐに行くぞ。まだ被害が出ていないとはいえ、そんな悠長にしていられないからな」

「分かりました・・・未来、私は絶対に帰ってくる」

「響・・・」

「それに、一緒に流れ星を見る約束、まだだしね」

まだ果たしていない、約束があるから。

「・・・・うん!」

それに、未来がうなずくと同時に、

 

『Build change!』

 

戦兎がビルドフォンをマシンビルダーに変えていた。

「乗れ!」

「はい!それじゃ未来、行ってくるよ」

戦兎からヘルメットを受け取り、その後ろに乗る響。

バイクはそのまま走り出し、その後ろ姿は、途端に遠ざかっていった。

 

 

 

 

 

戦兎がバイクを走らせている中で、本部から連絡が入る。

「おう」

『ノイズ進行経路に関する、最新情報だ』

道行く車の間を掻い潜りながら、戦兎と響は耳を傾ける。

『第四一区域に発生したノイズは、第三三区域を経由しつつ、第二八区域方面へ進行中。同様に、第一八区域と第一七区域のノイズも、第二四区域方面へと移動している。そして・・・』

『司令、これは・・・』

『それぞれのノイズの進行経路の先に、東京スカイタワーがあります!』

「東京スカイタワー・・・?」

「あれです!」

響が指差す先、そこにそびえ立つ一本の塔。あれが東京スカイタワーなのか。

だが―――

(低い・・・あんなものがバベルの塔な訳があるか!?)

神話級のものであるならば、あれはあまりにも低すぎる。

であるならば、おそらく別の―――

『カ・ディンギルが塔を意味するのであれば、スカイタワーはまさに、そのものじゃないでしょうか?』

『スカイタワーには、俺たち二課が活動時に使用している映像や交信と言った電波情報を統括・制御する役割も備わっている・・・』

「それをなんで狙うんだっての!カ・ディンギル完成してんならなんでそれを狙うんだっての!ていうかまた二課が関わってんのか!?ネフシュタンといいイチイバルといい、どれもこれも二課関係のものばっかじゃねえか!?」

『お前の疑問も最もだ。だが向かってくれ!頼む』

「ああもう分かった分かりましたよ!ノイズは放っておけないからな・・・!」

通話を切る。

「ですが、ここからじゃスカイタワーは・・・!」

「ああ、遠い!」

ここから急いで間に合うだろうか。なんて思っていると、ふと上空からけたたましい風切り音が聞こえてきた。

見上げれ見れば、そこには―――

「ヘリ!?」

『なんともならない事をなんとかするのが、俺たちの仕事だ』

もはやこれからする事は明白だった。

 

 

 

 

 

 

超大型の飛行ノイズが、そのジェット機構のような部分からノイズをばらまき始める。

さらには小型の飛行型すらも吐き出してくるしまつ。その数は、数えるのも億劫な程多かった。

その様子を、戦兎と響はヘリから見下ろしていた。

「行くぞ!」

「はい!」

丁度、大型の一体が眼下になった所で、二人は、空中へその身を投げ出した。

 

タカ!』『ガトリング!』

 

ベストマッチ!』

 

落下しながら、戦兎はボルテックレバーを全力で回し、響は、空を仰ぎ見ながら聖詠を唄う。

 

『Are You Ready?』

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)―――」

 

「変身!」

 

天空の暴れん坊ホークガトリング!イェイ・・・!』

 

ビルドへと変身し、響もガングニールを身に纏う。

そのまま響は落下、ビルドはソレスタルウィングを折りたたみ、一気に落下していく。

さらに響は右腕のガジェットを肩まで引き上げて、スタンバイし、ビルドは左足のスカイクローシューズから鍵爪を展開、一気に落下していき、そのまま眼下のノイズに叩きつけた。

叩き込まれた一撃はそのノイズに風穴を開け、一気に粉砕する。

その一方で、現場の目下に到着した翼はすぐさま天羽々斬を纏い、直後に『蒼ノ一閃』をぶっ放す。

しかし、蒼ノ一閃は上空の巨大ノイズに直撃する前に、他のノイズによって威力を削がれ、やがて消滅する。

「くっ・・・相手に頭上を取られる事が、こうも立ち回りにくいとは・・・!」

見上げれば、ビルドがソレスタルウィングで飛び回りつつホークガトリンガーで狙い撃とうとしているが、他のノイズが邪魔で攻撃を叩き込めないでいる。

そこへ、無事に着地してきた響がやってくる。

「ヘリを使って、私たちも空から・・・!?」

だが、その前にヘリがノイズに群がられ、落とされる。

「そんな・・・」

「よくも!」

すぐさま他のノイズが槍の如く落ちてくる。

それを躱し、続く敵を拳で粉砕し、刀で切り払うも、上空のノイズがさらに小型ノイズを吐き出す。

それをビルドが撃ち落とすも、やはり数が多すぎて叩き切れない。

「空飛ぶノイズ・・・どうすれば・・・」

「臆するな立花。防人が後ずされば、それだけ戦線が後退するという事だ」

しかし、数の多さに加えて、上空の敵への攻撃は出来ないのが現状だ。

大量のノイズが二人に向かって落下していく。その大群をビルドが打ち下ろそうとするも、やはり数が多く仕留めきれない。

落ちてくるノイズに身構えていると、どこからともなく銃弾の嵐が吹き荒れ、一瞬にして上空のノイズが消し飛ぶ。

その銃弾が飛んできた方向を見れば、見慣れた少女と赤い仮面の戦士がそこにいた。

「待たせたな!」

「わあ!」

それに響は思わず嬉しさがこみ上げ、対して翼は身構えてしまう。

「チッ、こいつがピーチクパーチクうるさいからちょっと出張ってきただけ。それに勘違いするなよ。お前たちの助っ人になったつもりはねえ!」

「助っ人だから安心しろ」

「うぐ・・・」

すぐさまクローズに否定されて赤くなるクリス。

「助っ人?」

『そういう事だ』

翼が首を傾げるが、弦十郎がフォローを入れる。

『第二号聖遺物『イチイバル』を纏う戦士、雪音クリスだ』

そう弦十郎が告げると同時に、響はクリスに抱き着く。

「クリスちゃーん!ありがとー!」

「こ、この馬鹿!アタシの話を聞いてねえのかよ!?」

抱き着かれて驚くクリスを他所に、飛んでいたビルドはクローズの元へ。

「万丈!」

「おう戦兎!」

「お前なんだよその姿は。俺の知らねえ姿に見事に変身しやがって」

「知らねえよ俺でも良くわかってねえんだから」

「でもま、無事にそれは使いこなせてるみたいだな」

ビルドは、クローズの手の中にあるマグナムに変形したブラストモービルを見やる。

「おう」

「よし、ここからは連携して・・・」

「ッ!勝手にやらせてもらう!邪魔だけはすんなよな!」

ふと響の腕から逃れたクリスはそう言うなり、アームドギアを展開する。

ボウガンから放たれた必殺の矢は上空のノイズを一気に撃ち落としていく。

「戦兎、空の敵は俺とクリスでやる。お前らは地上のノイズを!」

「分かった!」

 

ラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

ビルドはすぐさまラビットタンクスパークリングに変身し、地上に降り立ったノイズに向かう。

それに翼と響も続く。

ビルドが泡の破裂による高速移動で道を切り開き、討ち漏らした個体は翼と響が各個撃破。

その一方で、ガトリングガンで上空の敵を薙ぎ払うクリスとスケート走行で突っ走りながらブラストシューターで撃ち抜いていくクローズ。

クリスとクローズが上空の敵の相手をしてくれるからか、瞬く間にノイズはその数を減らしていく。

だがしかし―――

「うわ!?」

「あ!?」

一旦退いて態勢を立て直そうとした翼の背中に、同じく敵をより多く捕捉するために下がっていたクリスの背中が当たる。

「何しやがる!すっこんでな!」

「貴方こそいい加減にして。一人で戦ってるつもり?」

「アタシはいつだって一人だ」

「万丈がいるのに?」

「あ、アイツは別だ!とにかく、これまで仲間と慣れ合った事はこれっぽっちもねえよ!」

顔を赤くして否定するも、クリスは言葉を続ける。

「確かにアタシたちが争う理由なんてないのかもな。だからって、争わない理由もあるものかよ」

「それ昨日も言ってなかったかー!?」

「うるさい!お前はお前でノイズやってろ!」

(なんだろう。言われてる事は癪に障るのだけれど、意外に可愛い・・・)

万丈の割り込みに怒鳴るクリスの様子に、ついつい毒気を抜かれる翼。

「なんだよ・・・」

「いや、なんか、イメージと違うなと思って・・・」

「ハア!?何言ってんだ!?」

そろそろ限界値を超えそうなクリスの怒り。

が、とにかく落ち着いて自分の言いたい事を言おうとする。

「アタシらはこの間までやりあってたんだぞ。そう簡単に、人と人が・・・」

だが、そこでやはり割り込むのは響だった。

「出来るよ。きっと」

「またお前かよ・・・」

「残念俺もいる」

そこへビルドまでやってくる。

「確かに、そう簡単に人は仲良くなれねえよ。だけど、仲良くなれない道理はないだろ?実際、ぎくしゃくしていた響と翼だって、今じゃこんなに仲良くなってる」

「それはそっちの理屈だろ・・・」

「万丈と一緒に行動しといてよく言うぜ」

「あ、あれはあっちが勝手に・・・」

「そうだよ。クリスちゃんだって龍我さんと仲良くなれたんだもん。私たちとだって、きっと仲良くなれる!」

そう言って、響はクリスの手を取り、そして、翼の手も取る。

「私にはアームドギアはない。だけどそれはきっと、こうして誰かと手を繋ぎ合う為にあるんだって、今は思う。だって今、こうして二人と手を繋ぎ合えてるんだから」

「立花・・・」

そう笑顔で言う響を、翼はしばし見つめ、やがてその手の剣を地面に突き立てる。

そして、突き立てる事で空いた手を、クリスに伸ばす。

それに、クリスは戸惑う。

しかし、翼は頑固なのか、せがむように手を伸ばす。

その頑固さに、クリスも諦めたのか、恐る恐る手を伸ばす。が、どうにもじれったいのかばっと掴んでしまい、クリスはそれに驚いて手を引っ込めてしまう。

「こ、この馬鹿に当てられたのか!?」

「そうだと思う」

あっさり肯定。

「そして、貴方もきっと」

それでもって指摘。

「・・・冗談だろ・・・」

「ハハッ」

白い頬を赤くしながら、消え入るような声で悪態を吐き、そんな様子にビルドは笑い声を上げる。

「おい!そんな事より、さっさと上の敵どうにかしてくれ!」

その一方で、形状を弓にしたブラストモービルを振り回しているクローズが叫ぶ。

「おい万丈今良い所・・・なんだその形態!?一体全体どうやった!?」

「知らねえよ!?なんか念じたらこうなってた!」

「そのフォームって武器にも何かしらの作用及ぼすのかよ・・・」

もはや呆れかえっているビルド。

「とにかく!俺の攻撃じゃあ当てる前に威力が殺されて届かねえ!クリス、お前がどうにかしてくれ!」

「ああ。分かってる」

クリスがうなずく。

「でもどうやるの?」

「アタシのイチイバルの特性は超射程広域攻撃。派手にぶっ放してやる!」

「まさか、絶唱を・・・」

「馬鹿、アタシの命は安物じゃねえ」

「ならば、どうやって・・・」

「そんなの簡単だろ。ようは溜め攻撃だろ?」

ビルドの指摘に、クリスは胸を張って肯定する。

「ああ、ギアの出力を引き上げつつも、放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込み一気に解き放ってやる!」

「だが充電(チャージ)中は、丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では危険過ぎる」

「そうですね。だけど、私たちがクリスちゃんを守ればいいだけの事!」

ノイズが群がる。

「ん?なんだこれ?」

「これは・・・数式?」

ふと気付けば、彼女たちの周りに、まるで立体化した計算式やら法則やらが出現していた。

「これが、俺たちの勝利の法則だ」

ビルドが、彼女たちに言う。

「さあ、実験を始めようか!」

「ああ!」

「はい!」

三人が、群がるノイズに向かって飛び上がる。

(頼まれてもいない事を・・・)

そんな彼らに、クリスは思わず笑ってしまう。

(アタシも引き下がれないじゃねえか!)

 

 

「―――なんでだろう心が、ぐしゃぐしゃだったのに」

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 

ドクンッ!

 

 

 

強く、はっきりと感じた。

クリスが歌い始めた瞬間、クローズの体の中で、何かが大きく鼓動する。

そして、それを境に、力が漲ってくる。

(やっぱりだ・・・クリスの歌を聞いてると、心がめっちゃ震えて、力が漲ってくる・・・!)

ホイールを加速させて、道路上にはびこるノイズを一気に蹴散らす。

「力が漲る、魂が震える・・・アイツの歌が、迸るッ!!」

 

『Set Up!Blast double Jamadhar!』

 

ブラストモービルがさらに変形する。ブレードモードの状態から変形し、銃身の半分のそのまた半分が割れ、さらに太くなるかのようになり、その割れた部分から新たな光の小さな刃が飛び出す。

それは、カタールと呼ばれる武器だが、見た目は完全なメリケンサックである。

だが、格闘家の万丈にとってはこれほどありがたい武器は無い。

ホイールの作り出す加速に合わせて、クローズは拳を突き出し、目の前のノイズを粉砕、そのまま次々をノイズを蹂躙していく。

「もう誰にも止められねェ!!」

クローズの快進撃は止まらない。

「ハアッ!」

その一方で、ビルドもすさまじい戦いぶりを見せる。

スパークリングの『泡』の力は移動にも攻撃にも使える。

(かつて敵だった男がいた。だけど、気付いたら仲間になっていた)

腕のブレードで竜巻のように回転して群がるノイズを巻き上げ粉砕する。

(国の為に、悪を貫いた男がいた。だけど、いつかは正義の為に一緒に戦ってくれた)

着地して、クリスに向かおうとするノイズを捕捉し、一瞬でその距離を詰めてまとめて粉砕する。

(そうだ。敵だからって、全員が悪い奴な訳じゃない。ちゃんと分かりあえる事が出来る。アイツの言うように、人は繋がる事が出来る)

ビルドは、飛ぶ。

「それが俺の目指す、『愛と平和』・・・ラブ&ピースだ!」

そう叫び、ライダーキックが炸裂した。

(誰もが繋ぎ繋がる手を持っている・・・!)

また一方で、群がるノイズを得意の徒手空拳で粉砕していく響。

(私の戦いは、誰かと手を繋ぐこと!)

この拳で、全てを守るため、彼女は、

「最短で最速で真っ直ぐに一直線に、この想いを拳に乗せる!」

パイルバンカー式の鉄拳が、直線状のノイズを一掃する。

(砕いて壊すも、束ねて繋ぐも力・・・)

さらに襲い掛かるノイズを己が手の刀をもって斬り捨てていく翼。

(フッ、立花らしいアームドギアだ!)

であるならば自分は何をするべきか。

「決まっている。この剣をもって、その想いに答える!」

蒼ノ一閃が迸り、薙ぎ払う。

そしてついに、クリスのイチイバルが臨界を突破する―――ッ!!

 

「光が・・・力が・・・魂を―――ぶっ放せッ!!」

 

(今、アタシが出来る最善をォ――――!!)

クリスのシンフォギアが変形する。

三連四門のガトリング砲、小型ミサイルポッド、四基の巨大ロケットミサイル―――明らかに敵をオーバーキルするつもりの完全武装をもって、クリスはその身に溜め込んだエネルギーを解き放つつもりなのだ。

そんな彼女に向かって、彼らが言う事は一つ。

 

「「「「―――託したッ!!」」」」

 

それが、クリスの最大火力の必殺技―――!!!

 

 

MEGA DETH QUARTET

 

 

放たれる大火力。

放たれた四基のミサイルは、一基は小型ノイズのほとんどを薙ぎ払い、さらに放たれた小型ミサイルからもさらに小型のミサイルが放たれノイズの殆どを一基に殲滅。残った個体すらもガトリング砲の餌食となり、塵芥と成り果て、消し飛んでいく。

撃って撃って撃ちまくって、それで粉砕して、上空のノイズ全てを消し飛ばす。

その間に、地上の敵も全て、四人の活躍によって駆逐された。

「やった・・・のか?」

「ったりめえだ!」

「わあ・・・!」

「おっしゃあ!」

「よし」

黒い塵が降り注ぐ。

空にはもうノイズはおらず、ただ真っ青な空が広がっており、地上にはあちらこちらにノイズの炭化した成れの果てが転がっていた。

「これで殲滅したな」

「あー、つっかれた」

変身を解除して、合流する戦兎と万丈。

「んで、お前あの時会った時は言わなかったけど、そのボトルはなんだよ?」

「これか?いや俺にもよくわからなくてな」

「キュル」

ボトルを輩出したクローズドラゴンは元の青い姿に戻る。

「ちょっと見せてみろ」

「おう。一応、あのエボルボトルが変化した奴なんだが・・・」

「エボルボトルが・・・?」

とてもそうには思えない。というかエボルボトルだったころの原型が既にない。

何か、弓を携えた射手といった柄が入った完全に普通のものと同じフルボトルだ。

一体全体何がどうなってこうなったのか。

いや、そもそもな話、『クローズイチイバル』という名前の時点で察しは付く。

おそらくはクリスの歌。そして、クリスの発するフォニックゲインによって、このボトルは変化したのだろう。

であるならば、他のボトルは一体どうなるのか。

特定のボトル―――フルボトルを『聖遺物』と仮定するならば、彼女たちの歌で変化する事はあり得る。

しかし、ボトルを進化させるという形でならば、それはこちらで言う所の『ハザードレベル7』に相当する所業だ。

とてもではないが、ネビュラガスを注入されていない、ましてやハザードレベルの概念そのものがない世界で、『歌』程度でボトルが変わるとは思えない。

果たして、これは一体どういう事なのか。

(そもそもこのボトルは万丈がエボルトのエボルボトルを自らの力で変化させたボトルだ・・・だからクリスの歌はあくまで()()()()()()()()()()()に反応して、それに呼応する形で変化したという事で片付けられるが・・・どうにもそれだけで終わる気がないんだよな・・・)

なんて考えていると、先ほどまでクリスとじゃれていた響の通信端末に連絡が入る。

「はい」

『響!?』

聞こえてきたのは、未来の声だった。それも、かなり()()()()()()

『学校が、リディアンがノイズに襲われ――――』

 

 

ブツンッ――――

 

 

その声を最後に、通信は途切れた。

「・・・・え」

次に聞こえたのは、響の茫然と漏らした声だけだった。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「避難してください!」

ノイズに襲われるリディアン!

『カ・ディンギルの正体が、判明しました』

そして明かされる、カ・ディンギルの正体。

「上手くいなせていたと思ったのだが・・・」

襲来するフィーネ。

「待ちな」

立ち塞がる弦十郎―――

「リディアンが・・・」

そして、ようやく辿り着いたリディアンの惨状を目の当たりにして、彼女たちは何をするのか――――

次回『月を穿つ/夢を守る』

(―――アタシの歌は―――その為に――――!)

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