翼「この小説を読んでくれる皆様には感謝以外の言葉もありません」
戦「という訳で!」
響「全ての事件の黒幕であったフィーネを前に大ピンチに陥っていた仮面ライダーとシンフォギア装者たち」
万「しかし絶体絶命の中、硬い心でフィーネと戦っていた俺たちだった」
ク「そこへ生き残っていた奴らからの歌が聞こえ、最高の奇跡を引き起こす」
翼「その名も『エクスドライブ』『ビルド・ツヴァイウィングフォーム』『クローズイチイバル・ヘルトラヴァース』!」
未「その力が今、開放される時!」
クロ「キュルル!」
ガキ「俺たちにもそういうフォームあるのかな?」
工具「きっとある。だから待とう」
頭「それまで心火を燃やして」
農具「待つのデース!」
罪「まあ、それまでかなり長い時間がかかるだろうけどな」
タヤマ「うう、セレナーセレナー・・・」
妹「まだ引きずってる・・・」
元詐欺師「まああーしたちの出番はまだ先だけど」
けん玉「ここいらで登場させてもらうワケだ」
麗人「いや、ここで勝手に登場させてすまない・・・」
響「ああ、貴方が謝る事じゃないですよー!」
万「てかなんでお前らとっくに出てんだよ!?」
ク「ああ、またカオスな事に・・・」
弦「ハッハッハ!まあいいではないか!賑やかで」
緒「ツッコミが追い付かなくなるんですよ・・・」
無性「確かに今のツッコミはクリスさんと龍我さんと戦兎さんだけですから・・・あと原型」
原型「おい確かにパヴァリアが出てきたからと言ってオレも出すな。そして原型ってなんだ!?この体もスペアだ!」
藤「ここにきてほぼ全員集合・・・」
友「これは色々とややこしくなりそうね・・・」
妹「これ本部の食堂の予算足りるでしょうか・・・主に出演料で・・・」
弦「あ、考えてなかった・・・」
戦「だーもう!こうなったららちが明かない!」
元詐欺師「待って!まだあーしたち一言しか喋ってないわ!」
けん玉「あと武器は確かにけん玉っぽいがこの名前は納得いかないワケだ!」
麗人「落ち着きなさい貴方たち。出させてもらってるだけありがたいと思いなさい」
戦「という訳で!最終回の第二二話をどうぞ!」
クロ「キュールルールルールルールルッ!!」
ビルド・ツヴァイウィングフォーム
クローズイチイバル・ヘルトラヴァース
シンフォギア・エクスドライブ
その三つが揃い、天に羽ばたき、彼らは空に立つ。
「皆の歌声がくれたギアが、私に負けない力を与えてくれる・・・クリスちゃんや翼さんに、もう一度立ち上がる力を与えてくれる・・・戦兎先生や龍我さんに、誰かを守る力を与えてくれる・・・歌は、戦う力だけじゃない―――命なんだ」
響が、その力に、そう呟く。
「高レベルのフォニックゲイン・・・こいつは二年前の意趣返し・・・?」
《―――んなこたどうでもいいんだよ!》
突如として頭の中に響くクリスの声。
《うお!?なんだこれ!?頭の中に声が直接響いてくる!?》
《どういう原理なのかめっちゃ気になる!》
《お前はぶれないな!?》
「念話までも・・・限定解除されたギアを纏って、すっかりその気か!?」
フィーネがソロモンの杖を使い、ノイズを召喚する。
《いい加減芸が乏しいんだよ!》
《世界に尽きぬノイズの災禍は、全てお前の仕業なのか!?》
翼の問いかけにフィーネは念話をもって答える。
《ノイズとは、バラルの呪詛にて、相互理解を失った人類が、同じ人類のみを殺戮するために創り上げた自立兵器・・・》
《人が、人を殺すために・・・》
《ノイズには建物を透過する能力がある・・・建物を壊さず人だけを炭化させるだけのものがノイズか》
その言葉に響は面食らい、ビルドは仮面の奥で苦い顔をする。
《バビロニアの宝物庫は、扉が開け放たれたままでな、そこからまろびいずる十年一度の偶然を、私は必然へと変え、純粋に力と使役しているだけの事》
《また訳の分かんねえ事を・・・》
《ようはノイズの発生源の扉が開いたままで、それをあの杖で自由に開閉できるって事か・・・》
《なんだ、簡単な話じゃねえか》
クローズが拳を鳴らす。
《ようはあの杖奪っちまえばこっちのもんじゃねえか!》
《出来るものならな!》
次の瞬間、ノイズが弾丸の如くビルドたちに遅いかかかる。
しかし、それを躱すのは容易、かすりもしない。
だが、そのおかげで、ほんのわずかに時間が出来る。
「満ちよ―――!!」
フィーネが、ソロモンの杖を掲げる。
ソロモンの杖から発せられる光が、天へと昇り、そして眩く拡散する。
そして、その拡散した光が着弾した瞬間、おぞましい数のノイズが、街中に出現しだす。
小型も大型も、そして空にも、街全体を埋め尽くすほどの大量のノイズが、この街に跋扈する。
それは、一種の災害ともいえる光景だった。
「あっちこっちから・・・!」
「おっしゃあ!どいつもこいつもまとめてぶちのめしてくれる!!」
そう言って、クリスは一足先に飛んでいく。
「よし、それじゃあ俺も・・・」
「あの、龍我さん・・・」
「ん?」
クリスに続こうとしていたクローズを呼び止める響。
「どうした?」
「その、私・・・龍我さんに・・・」
「ん?・・・ああ、これね」
そう言って、クローズは自分の鳩尾に手を当てる。
「確かに結構効いたが・・・別にどうでもいいだろ?」
「え?」
「お前は俺の呼びかけに答えてくれた。ちゃんと戻ってきてくれた。だったらそれでいいじゃねえか。切欠を作ったのは俺だが、戻ったのはお前の力だ。お前はその強さを誇っていいんだよ」
「龍我さん・・・うわ!?」
ぽん、と響の頭に手をおくクローズ。
「一緒にやるぞ。響」
「・・・はい!」
それに響がうなずく。
その一方で、ビルドと翼は・・・
「お前生きてたんなら早く復活しろ」
「し、仕方ないだろう!先ほどまで本当に死んでいた気がするんだから・・・・」
確かに、臨界にまでエネルギーを溜め込んだカ・ディンギルに突っ込んだのだ。
あれで無事という方が信じられない話である。
「それと・・・桐生」
「ん?なんだ・・・って本当になんだ!?」
ふと、翼はビルドの夕焼け色の装甲に触れた。
「・・・・そこにいるんだね、奏」
「・・・・」
その言葉に、ビルドは何も言い返せず、
《―――やっぱ翼にはバレちゃうか》
ビルドの中の奏が、そう答える。
「桐生の中にいるんだったら、早く言ってよ」
《いやー、なんかあたし、表に出られないみたいでさ。あくまでこいつの頭の中にいる存在って感じで。こうして翼と話せるのも、きっとその
「じゃあ、奏と直接話が出来るのは、こういう時だけなんだね・・・」
《まあそうなるな》
何か気まずい。
翼自身自覚はないのだろうが、絵面的に見れば、翼がぴったりとビルドに引っ付いているような光景だ。
当然、奏の声は翼とビルドにしか聞こえておらず、傍から見れば恋人同時の逢引きである。
だけど、ビルドにそんな事を突っ込む余裕はなかった。
翼が、泣いていたから。
「奏、私はもっと、貴方と話がしたい・・・」
《ああ、あたしもだよ・・・でも、今は・・・》
「うん、分かってる・・・・だから、桐生の力になってあげて」
《おう!あたし達ツヴァイウィングの名前を使っているんだ!生半可な事はさせねえよ!》
「あー・・・そろそろいいか?」
時間的にもそろそろなんとかしなければならない。
「あ、ごめんなさい・・・」
《それとだな翼》
「え?何、奏」
《さっきの様子だと、完全に恋人同士が抱き合ってるみたいだったゾ☆》
「――――ッ!?」
奏に指摘されて、一気に顔を赤くする翼。
それを見てビルドも顔を抑えていたたまれなくなる。
「わ・・・忘れて・・・・」
「お、おう・・・」
本当に消え入りそうな声でそういう翼に、ビルドはとにかく頷く事しか出来なかった。
《そんじゃあ、いっちょやってやろうじゃねーか!》
ビルドが両手を合わせ、腕のアームドをアームドギアに変形させる。
それは、かつて奏が使っていた槍だ。
「これがアームドギアか・・・毎度思うが一体どんな仕組みなんだ?」
「奏のアームドギアを使うんだ。情けない戦いをしたら即斬るからな」
「おおこわ。分かってるよ!」
《さあ、実験を始めようか!》
「俺のセリフをとってんじゃないよ!」
五つの光が、街のノイズたちの元へ飛んでいく。
それぞれの翼を羽撃かせて、彼らは敵の方へ飛んでいく。
装者三人の歌声が空に響く中、まず一番槍を手にしたのはクローズ。
手甲から二本の光り輝く爪『エクスティンクションクロー』を展開させ、その切れ味に物を言わせて地面すれすれで滑空。その先にいるノイズを恐ろしい機動力で一気に切り刻んでいく。
その上にいる巨大ノイズは、続く響のパイルバンカーナックルによる一撃が貫通し、直線状にいた巨大ノイズが纏めて消し飛ぶ。
その上空へ、クリスはその身に飛行ユニットのようなアームドギアを展開、そのアームドギアから追尾性のあるレーザーを乱射し、一切外すことも無く上空のノイズを一網打尽にしていく。
《やっさいもっさい!》
『MEGA DETH PARTY』
ノイズがその数を一気に減らしていく。
《すごい!乱れ撃ちだ!》
《全部狙い撃ってんだ!》
《だったら私が乱れ撃ちだぁぁあああ!!》
腕のギアのバンカーを拳に叩きつける事によって、アームドギアのエネルギーを前方に拡散、地上にいるノイズに散弾銃の如く叩きつける。が――――
《うぉぁぁぁあぁあああ!?》
《あ、ごめんなさい》
《気を付けろやァ!?》
クローズも巻き込んでいた模様。
その一方で、上空へ飛び上がった翼はその大剣を掲げて、二体の飛行型超大型ノイズに向かって蒼い斬光を放つ。
『蒼ノ一閃』
それが重なっていた二体の超大型ノイズをそのまままとめて両断する。
《お前の槍の穂先ってドリルクラッシャーよりも速く回転するんだな》
一方のビルドは、翼たちよりもはるかに高い場所から奏の槍を見てそう呟く。
《ん?ああ、そうだな》
《実は天才科学者の俺にもやってみたかった事があるんだ》
《それはなんだ・・・ってそれかぁ、そういやアタシもやってみたいなとは思ってたんだよ》
《子供大人関係なく熱中した、あの必殺技・・・・》
槍を掲げ、柄の部分すらも穂先の拡張に使い、そして槍の根本に作った穴の部分に手を突っ込む。
すると、ビルドの右手に巨大な槍の穂先が装着されたような見た目になる。
しかし、それだけに留まらす、槍は巨大化し、やがて巨大な槍へと変化して――――
「行くぜ・・・!!」
そのまま超速回転したかと思うと、一気にノイズの大群に向かって突進、凄まじい回転に加えて、その槍―――否、ドリルからジェット噴射の如き勢いでエネルギーが放出され、恐ろしい速度でノイズの大群を貫く、その技の名は――――
「ギガァ―――」
《ドリルぅ―――》
「《ブレイクゥゥゥゥウウゥゥウウゥウウウ!!!!」》
実際の名前は『LAST∞METEOR』の突撃バージョンなのだが、男のロマンか(奏は女だけど)やってみたかったのかすさまじい勢いで敵を殲滅していく。
《ぎ、ギガドリルブレイクだぁ!》
《おいこら!戦いに集中しろぉ!》
そして、弦十郎の影響を諸に受けている響にとってはこれほど目を輝かせられない事は無い。
そのまま、装者と仮面ライダーたちはたちまちノイズをその力をもって一気に消し炭にしていく。
クローズの爪が、響の拳が、クリスの銃が、翼の剣が、ビルドの槍が、ノイズを一匹残らず殲滅せんと振るわれる。
クローズの持つブラストモービルの弓による狙撃も、恐ろしい威力を発揮して直前上のノイズを撃ち貫く。
クリスの飛行ユニットに乗る響が、クリスの一斉砲火と共に腕のアームドギアから放たれる拳の一撃が放たれ、何十ともいえるノイズを消し飛ばす。
翼の大剣が放つ斬撃とビルドの槍が巻き起こす竜巻が重なり、上空のノイズを一気に蹴散らす。
全てが灰に帰すほどの激しい暴力の嵐が巻き起こり、ノイズはたちまちにその数を減らしていった。
「どんだけでようが、今更ノイズ・・・!」
ほぼ全てのノイズを殲滅したあたりで、クリスがそう呟いた時、フィーネが動いた。
なんと、ソロモンの杖を自分の腹に向けているのだ。
「何をする気だ!?」
次の瞬間、フィーネをソロモンの杖で自分を貫いた。
「じ、自殺・・・?」
「いや、あの執念深さだ。何かが・・・起きる・・・!」
ビルドがそう予測した通り、突き刺されたフィーネの体から、彼女の体の一部が伸びた。
それがソロモンの杖に引っ付き、浸食する。
すると次の瞬間、街中に残っていたノイズが、一斉にフィーネの元へ集まり、その体を融合させていく。
それだけに留まらず、さらにノイズを呼び込み、自分に向かってどんどん集めさせていく。
「ノイズに、取り込まれて・・・」
「そうじゃねえ・・・アイツがノイズを取り込んでんだ!」
《了子さん・・・何を・・・!?》
クリスの言葉通りなのか、集合したノイズがビルドたちに向かってその体を伸ばす。
「来たれ・・・デュランダル!!」
そう叫んだ瞬間、カ・ディンギルの最奥にあるデュランダルを取り込んでどろどろの液体となった体で取り込み、そして、その体を巨大な化け物に変容させる。
それは、ヨハネの黙示録に登場する怪物。赤き竜。
『緋色の女』または『大淫婦』とも呼ばれた女『ベイバロン』に使役された滅びの獣。
即ち、混沌の獣。滅びの聖母の力―――
黙示録の赤き竜がその口元から光線を吐く。
その光線が迸った瞬間、街は焼かれ、凄まじい熱気と衝撃を巻き散らした。
「街が・・・!」
「なんて威力だよ・・・」
下手すれば、この国などあっという間に焼け野原である。
《―――逆さ鱗に触れたのだ》
フィーネが、呟く。
《相応の覚悟が出来ておろうな?》
次の瞬間、竜がブレスを吐く。
それを躱そうと三人は回避行動に移る―――だが、
「「うぉぉぉぉおおぉぉおお!!」」
《え!?ちょ、まぁぁああ!?》
ビルドとクローズだけは真正面から迎え撃った。
「な!?」
「龍我さん!?戦兎先生!?」
「何して――――」
次の瞬間、ビルドとクローズに直撃した砲撃は拡散した。
真正面から迎え撃ち、尚且つ後ろに受け流しているのだ。
そして、凌ぎ切った。
「何・・・!?」
「・・・はっ、この程度かよ」
クローズが鼻で笑う。
「こんなもの、エボルトのブラックホールに比べたら屁でもない」
何故なら、奴は一人で星を殺す事の出来る存在なのだから。
《ははっ、やっぱすげーな・・・!》
奏の感心した声が挙がる。
「調子に乗るな・・・!!」
ひれを展開し、そこからクリスと似たようなレーザーを発射する。
「それが―――どうしたァ!!!」
クローズが飛び出す。
腕の爪を使い、レーザーを真正面から撃ち落としていく。
「龍我!後ろ!」
「は?ぐおあ!?」
だが死角から飛んできたレーザーまでは防ぎきれず撃ち抜かれる。
「何やってんだよ!?」
「ハア!!」
翼が蒼ノ一閃を放つ。それが竜の頬らしき部分に直撃し、その装甲を削るが、たちまちにその傷は回復していく。
「このぉ!」
すかさずクリスが砲撃するが、首あたりにいたフィーネの部分の外壁が閉じ、砲撃を阻んでしまう。
「なんだと・・・!?」
すかさず反撃の砲撃。
「うわ―――ぁぁあぁあ!!」
直撃を貰い、よろめく。
「うぉぉおおぉお!!」
響の拳が竜を撃ち抜くも、はやりすぐさま修復し、無かった事にされたかのように傷は修復されてしまう。
「ダメ、すぐに治っちゃう・・・!」
「どうすりゃいいんだよ・・・」
「・・・」
響とクローズがそう声を挙げる中、ビルドは黙って黙示録の赤き竜を観察する。
《いくら
そう、フィーネが絶望を突きつけるかのように言った。
「・・・・言ったな」
ビルドが、そう呟く。
《聞いたか?》
「チャンネルをオフにしろ」
「え?なにが?」
「馬鹿は馬鹿らしく馬鹿やればいいんだよ」
「馬鹿じゃねえよ筋肉つけろ!」
「論点そこじゃないよ」
クローズの言葉には呆れつつ、ビルドは続ける。
「とにかく、それをやるためには・・・」
ビルド、翼、クリスの三人は響の方を見る。
「お前に体張ってもらうぞ。いいな?」
「あ、えっと・・・その・・・」
実際、彼女自身は何も分かっていないだろう。
だけど、何かをしなければいけないというのは分かっているのだ。
だからこそ、彼女は頷く。
「・・・やってみます!」
力強いその答えに、彼らは頼もしく思い、笑みを零す。
そこで竜から砲撃が轟く。
それを躱しながら、クリス、翼、クローズが前に出る。
そしてビルドは、右手を掲げ、右の複眼のアンテナで指を滑らせて、いつもの決め台詞を言う。
「勝利の法則は、決まった!」
突っ込む三人、
「ええい、ままよ!」
「私と雪音と万丈で露を払う!」
「手加減無しだぜ!」
「分かっている!」
「おっしゃあ!負ける気がしねぇ!」
クリスと万丈が突っ込み、その後方にて、翼は己が持つ剣に意識を集中させる。
エクスドライブによって解放された力であるならば、さらなる力を発揮できる―――
想いは、現実となり、翼の大剣はさらに巨大となる。
「ハァァァ―――ァァアッ!!!」
そして、そこから放たれるは蒼ノ一閃に非ず――――
『蒼ノ一閃・滅破』
全てを断ち切る必殺の一撃が竜に直撃、その装甲を吹き飛ばし、中のフィーネを曝け出す。
しかし傷はすぐに修復される。だが、そこへクリスとクローズが飛び込む。
傷が修復される前に侵入に成功、それにフィーネは驚きを隠せない。
そしてクリスが密閉された空間の中で砲火しまくって黒煙を巻き散らす。
それを振り払い、フィーネは周囲を警戒する。
(クローズはどこだ!?)
そう思った瞬間、すぐ真下からクローズが急上昇、そのままフィーネの右手にあったデュランダルを殴り、フィーネの手から離れさせる。それと同時に外から翼の斬撃が炸裂し、さらに穴が開く。
「ウオリャアァァァアアアァアアアアア!!!!」
そして、その開いた穴に向かって、クローズはデュランダルをオーバーヘッドキックで蹴り飛ばす。
その蹴り飛ばした先には、響がいる。
「そいつが切り札だ!」
翼が叫ぶ。
「勝機を零すな!掴み取れ!」
失速して落ちかけるデュランダルがまた跳ね、落ちそうになったらまた跳ねる。
「ちょっせえ!」
クリスが拳銃で撃ち飛ばしているのだ。
「それが勝利の法則の最後の鍵だ!絶対に取りこぼすんじゃねえぞ!」
遠くからタイミングを見計らっていたビルドもそう叫びながらボルテックレバーに手をかける。
そして、飛んできたデュランダルを、響は掴み取る。
―――そして、意識が、強烈な破壊衝動に塗り潰され掛ける。
「ガ・・ぁ・・・ァ・・・!!?」
闇が、体を、意識を塗り潰す。
(だ・・め・・・!!)
その闇を、響は己が全力をもって抑え込む。
デュランダルの放つ重圧が大気を震わせる。
「グ・・ぅゥ・・・ぅうゥ・・・!!」
(おさえ・・・こまなきゃ・・・・!!!)
飲み込まれ掛ける意識、塗り潰そうとする破壊衝動、心を食いつぶそうとする闇。
その全てに、響が全力で抗う。
しかし、少しでも油断すれば一気に飲み込まれてしまう程凄まじい衝動だ。
それを抑え込むのは、簡単な事じゃない。
しかし、このままでは、フィーネに――――
「―――正念場だ!踏ん張り処だろうがッ!!!」
聞き覚えのある声が、響の耳に届く。
弦十郎だ。
「強く自分を意識してください!」
「昨日までの自分を!」
「これからなりたい自分を!」
(昨日・・・まで・・・これから・・・なりたい・・・・)
緒川、藤尭、友里の叫びが聞こえる。
「屈するな立花」
翼とクリスが寄り添う。
「お前が構えた胸の覚悟、私に見せてくれ!」
「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分を信じなくてどうすんだよ!」
「わたし・・・の・・・かくご・・・わたしを・・・しんじる・・・!!)
翼とクリスの叫びが聞こえる。
「貴方のおせっかいを!」
「アンタの人助けを!」
「今日は、あたしたちが!」
友の声が、聞こえる。
「姦しい!!」
フィーネが怒鳴り、黙示録の赤き竜がその触手を伸ばす。
「黙らせてやる!」
その触手が、響たちを狙う。
しかし、それをクローズが全て叩き落す。
「お前の手は束ねる手、誰かと手を繋ぐための手・・・それは俺たちの目指すものと同じだ!それを守るのが俺たち『仮面ライダー』の役目だ!だから信じろ!お前だけの力を!!」
クローズの叫びが聞こえる。
「お前がいままでやってきたことはなんだ。お前が信じてきたものはなんだ。それは、お前という一人の人間を創り上げてきた全ての筈だ。それを思い出せ。そうすれば、お前は絶対に、その闇に打ち勝てる!」
ビルドの叫びが聞こえる。
(信じる・・・思い・・・だす・・・・)
意識が、遠のく。全て、塗り潰される。
破壊衝動が―――彼女を塗り潰――――
「―――響ぃぃぃぃいいいぃぃいいいいぃいいいい!!!」
未来の叫びが、響の胸に響く。
(そうだ・・・今の私は、私だけの力じゃない・・・!)
「うぉぉぁぁぁあぁあああ!!」
襲い掛かる触手の攻撃、その全てを、クローズが叩き落して見せる。
「おぉぉぉぉおおぉお・・・・!!!」
ボルテックレバーを全力で回し、その機会を伺うビルド。
「ビッキー!」
「響!」
「立花さん!」
「・・・」
響の力を信じ、その名を呼ぶ友と、そしてただひたすらに信じて見守る親友。
(そうだ・・・この衝動に、塗り潰されてなるものかァ!!!)
その破壊衝動を―――抑え込め!!
闇が、消える。
「――――今だぁぁああぁぁああぁああ!!!」
『Ready Go!』
デュランダルから黄金の光が迸り、響はその光の翼を広げ、翼とクリスと共に不滅の大剣を掲げる。
ビルドの槍が変形し、それが右脚に装着されると同時に、その両翼を広げる。そして、蒼と夕焼けの二重螺旋の光がビルドの右脚に収束される。
「その力・・・何を束ねた・・・!?」
その光景にフィーネは目を見開く。
それに響は叫ぶ。
「響き合う皆の歌声がくれた―――シンフォギアでぇぇええぇえええ!!!」
《―――いけぇええぇええ!!!戦兎ぉぉぉおおぉお!!!》
奏の叫びとともに、ビルドが、飛ぶ。
『Synchrogazer』
『シンフォニックフィニッシュ!!!』
蒼と夕焼けの二重螺旋を描くビルドのライダーキックをブーストするように、デュランダルの光がビルドの背中から炸裂する。
その光すら螺旋に巻き込んで、三重の螺旋を描きながら、その翼を羽撃かせ、黙示録の赤き竜に直撃する。
「おぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉおおお!!」
その一撃は、いともたやすく赤き竜の頭部を穿つ。それで終わりかと思われた瞬間、ビルドの軌道が変わり、背中から竜の背中を撃ち貫く。そのまま、何度も軌道を変え、何度も何度も赤き竜を完膚なきまでに消し去るべく突撃を繰り返し、ライダーキックを叩き込み続ける。
(完全聖遺物同士の対消滅・・・いや、これは、それ以上の・・・!?)
「おぉぉぉぉあぁぁああぁぁぁあぁぁぁあぁああああ!!!」
螺旋を描くビルドのライダーキック。それが、デュランダルの力をさらに強め、一方的な消滅を促す破壊の一撃へ昇華していた。
まるで、響が束ねた歌の力だけでなく、
「おぉぉおぉぉお―――――ッ!!!」
全ての力が、
(――――天羽、奏・・・!?)
ビルドの面影に、今までに見た事のない、純白のギアを纏った天羽奏の姿を見た。
「誰かを悲しませる何もかも――――」
《誰かを苦しめるもの全て―――》
ビルドが、上空へ飛び上がる。そして、そのまま赤き竜を貫くように落下していく。
「《―――全部砕けろぉぉぉぉぉおおおおぉぉおお!!」》
その一撃が、竜に激突し――――
「どうしたネフシュタン!?再生だ!」
フィーネが叫ぶ。
「この身、砕けてなるものかぁぁぁあああぁぁああぁぁぁぁああぁぁあああ!!!」
――――赤き竜は、消滅した。
街は破壊され、いわゆる廃墟と化していた。
夕焼け色に染まる空の下、激戦を繰り広げた跡地にて、ビルドはフィーネに肩を貸して、仲間たちの元へ戻ってくる。
「お前・・・何を、馬鹿な事を・・・」
「別に、ただのおせっかいだよおせっかい」
そう返して、ビルドは近くの岩に彼女を腰掛ける。
「全く、お人好しかよ」
「ま、自意識過剰でナルシストな正義のヒーローですから」
「自分でいいますか?それ」
小さな笑いが漏れる中、響はフィーネに歩み寄る。
「もう終わりにしましょう、了子さん」
「私は・・・フィーネだ・・・」
「でも、了子さんは了子さんですから」
「俺たちが知ってる櫻井了子は、あんた以外にいないからな。少なくとも元の櫻井了子を俺たちは知らねえよ」
「・・・・」
フィーネは何も答えない。そんなフィーネに、響は続けて言う。
「きっと私たち、分かり合えます」
「・・・・」
ふと、フィーネは立ち上がった。
「ノイズを創り出したのは、先史文明期の人間・・・統一言語を失った我々は、手を繋ぐ事よりも相手を殺す事を求めた・・・そんな人間が分かり合えるものか」
フィーネは、最後まで否定をする。
「人が、ノイズを・・・」
「だから私は、この道しか選べなかったのだ・・・・!」
刃の鎖を握り締めて、フィーネは、辛そうにそう告げた。
「おい・・・」
思わず突っかかりそうになったクリスを翼が手で制し、クローズは、ただ黙ってそれを見守る。
「・・・結局の所」
ビルドが、口を挟む。
「科学っていうのは、使う人間によって悪にも正義にも変わる。それが、人を殺す目的で作られたとしても、もっと別の用途を見つける事は可能だった筈だ」
ビルドにとって、科学に善悪はない。ただ、使う人間や環境によってそれが決まる。
科学の発展に、悪い事しかないことは無いのだから。
「人は分かり合えない・・・だけど、誰か一人だけでも、誰かに向かって諦めずにその手を伸ばして、掴む事が出来れば、きっと分かり合う事が出来る筈だ。だって人間は、元々そんな風に出来ているんだろ?アンタという存在が、統一言語っていう証拠を持ってきてくれたんだからよ」
ビルドは、背中を見せるフィーネを真っ直ぐに見据えた。
ふと、フィーネがほうっと息を吐くのを感じだ。
そして―――振り向き様に刃の鞭を振るった事も、
「ハァァ!!」
その顔は狂気に歪み、笑っていた。その一撃を響とビルドは躱し、響は前に出てフィーネの懐に入り込み、その拳を寸止めで止める。
そこで止まるかと思われた。
「私の勝ちだァ!」
「!?」
しかしフィーネはその笑みを崩さない。
刃の鞭は、天に向かって伸びていた。
「まさか――――!?」
「てぇやぁぁぁあぁあぁああ!!」
次の瞬間、まるで何かを引っ張るかのように、振り向き様に刃の鞭を引っ張る。
地面が砕け、雄叫びを挙げて、ネフシュタンを砕きながらもフィーネは何かを引っ張る。
そして、勝利を確信したような顔で、その行為の真意を明かす。
「月の欠片を落とすッ!!」
「「「なッ!?」」」
見上げれば、確かに欠けた月の欠片がどことなく大きく感じる。
間違いなく、落ちてきているのは明白だ。
「私の悲願を邪魔する禍根は、ここでまとめて叩いて砕く!この身はここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからな!」
その体は、すでにボロボロだった。
「聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に黄泉返る!」
《了子さん・・・》
ビルドの中の奏が、悲しそうに呟く。
「どこかの場所!いつかの時代!今度こそ世界を束ねる為に・・・!!」
とてつもない執念。この場にあるもの全てを破壊しようとも、彼女は、決して諦める事はないのだろう。
「アハハ!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女!フィーネなのだぁぁぁ――――」
その時だった。
響が、その拳を胸に当てたのは。
小さな風が、吹いた。
「・・・うん、そうですよね」
響は、頷いて、拳を引く。
「どこかの場所、いつかの時代、蘇る度何度でも、私の代わりに皆に伝えてください」
その顔は、いつも通りの彼女の笑顔だった。
「世界を一つにするのに、力なんて必要ないって事を。言葉を超えて、私たちは一つになれるって事を。私たちは、未来に手を繋げられるって事を。私には伝えられないから、了子さんにしか、出来ないから」
「お前、まさか・・・」
フィーネの言葉は、続かなかった。
《・・・アイツが、あたしのガングニールを受け継いでくれて良かった》
「そうか?」
《ああ。アイツがあの日を生き残って、そして、今、こうして立派になってくれたんなら、悔いはないよ》
「そっか・・・・」
その光景を、ビルドは、奏と共に見届ける。
「了子さんに未来を託すためにも、私が今を、守ってみせますね!」
はっきりと、確固たる決意をもって、響はそう宣言した。
その言葉に、フィーネは呆れかえり、やがて、ふっと笑った。
「本当にもう、ほうっておけない子なんだから」
その表情は、彼女たちが今までに見てきた、櫻井了子の顔だった。
フィーネは、響の胸に指を当てる。
「―――胸の歌を、信じなさい」
その言葉を最後に、フィーネは塵となって消えていった。
その最後に、弦十郎はぐっと堪え、クリスは涙を流し、クローズはそんなクリスの頭に手を乗せ、翼も涙をこらえて、その光景を見送った。
「―――軌道計算、出ました」
藤尭が、そう告げる。
「直撃は避けられません・・・」
「あんなものがここに落ちたら・・・」
「全部まとめて吹っ飛ぶな」
ふと、そう軽い口調でビルドは呟いた。
「安心しろ。俺が全部片づけてやっから。ヒーローは俺だからな」
「あの、戦兎先生・・・」
そう言って飛び立とうとするビルドを、響が呼び止めるも、その前にビルドが響たちに向かって指を差す。
「こういうのは『仮面ライダー』の仕事だ。誰かの夢守れなくてどうする?それに、お前には今だけじゃなく、フィーネと同じようにこれから先の未来の事も任せたい」
「戦兎先生・・・?」
そして、すぐにその指を二本に変えて、ビルドは、仮面の奥で
「『
そう言ってビルドは、クローズを掴む。
「え?」
「お前も行くんだよ。ほら、来い」
「え!?な!?ちょ!?まだ心の準備が」
「今の状況で心の準備が出来ると思ってんのか」
「うぉ!?うぉぉぉぁおぉぉおぉおおおぉおお!?」
飛翔するビルドとクローズ。
「ん?ああ、分かった」
その最中でビルドはふと止まり、また振り返って言う。
「生きるの、諦めんなよ」
「あ―――」
答えを聞かず、二人は空に向かって飛んで行った。
大気圏を突破し、ビルドとクローズは、落下してくる月の欠片に向かって飛ぶ。
《・・・なあ、戦兎》
真空の宇宙空間だから声が届く事はない。しかし、この状態でなら、念話で会話する事は可能だ。
《どうした?》
《本当にいいのか?あれ、いくらこのフォームでも、ただじゃ済まねえぞ?》
《分かってる》
その言葉に、ビルドは頷く。
《だったら・・・!》
《この新世界に、『仮面ライダー』は必要ない》
《・・・!?》
予想外の言葉が、ビルドから吐き出される。
《お前・・・》
《ノイズに対抗するだけなら、シンフォギアシステムだけで十分だ。それに、俺たちという異物がこの新しい世界に紛れ込んでいたら、きっと、何か悪い事が起きる》
ライダーシステムは、正義の為に作られた力だ。だが、結局は兵器利用され、多くの人々を傷つけた。
《ライダーシステムは、その気になれば誰でも扱える兵器だ。対してシンフォギアシステムはそれに見合った適合者がいなければ、誰もが使える代物じゃない分、安全だ。だから、ライダーシステムを、
《おいそれ俺も巻き込んでねえか?》
《あくまで保険だ。俺が先に突っ込んで失敗したらそん時は頼む》
なんて、軽いノリで言っているビルドだが、
《・・・そんな体震わせてんじゃ、なんの説得力もねえよ》
《ッ・・・》
ビルドの手は、握り締められたまま震えていた。
《だから、一緒に突っ込んでやる》
《万丈・・・》
クローズが、ビルドと並び飛ぶ。
《どんな時も一蓮托生だ》
《・・・あー、最っ悪だ。お前も新世界で記憶なくしてたら良かったのに》
がっくりと項垂れるビルド。
そんな時だった。
《――――存在ごと消すなんて、そんな悲しい事言わないでください》
《!?》
二人は、思わず後ろを見た。
そこには、三つの翼を広げる光があった。
《お前ら!?》
響、翼、クリスの三人だ。
《そんなにヒーローになりたいのか?》
《こんな大舞台で挽歌を唄う事になるとはな。桐生や万丈には驚かされっぱなしだ》
《お前ら・・・なんで来た!?》
ビルドは思わず怒鳴る。
しかし、そんなビルドの怒鳴りを無視して、響は言う。
《だって、勝手に二人だけに片付けさせるわけにはいきませんでしたから》
《奏も連れていくなら、その片翼である私が赴かない訳にはいかないからな》
《ま、一生分の歌を唄うには、いい機会だからな》
《お前ら・・・!》
クローズが嬉しそうに声を挙げる中、ビルドは一人茫然とする。
《ま、そういうこった》
奏が、話しかけてくる。
《ほかの二人はともかく、翼は結構頑固だぞ?》
《・・・・ああ、最っ悪だ・・・》
頭を抱える戦兎。
《今日と言う日を俺は、きっと後悔する・・・》
だけど、その声は、どこか嬉しそうだった。
《何言ってるんですか》
響が、手を差し伸べる。
《私たちの未来は、これからですよ》
《ああ、そうだな》
五人、手を繋ぎ、改めて飛ぶ。
「―――不思議だね、静かな空」
響の歌声が、真空の世界に響き渡る。
「―――本当の剣になれた」
翼の歌声が、森羅の世界を包み込む。
「―――悪くない時を貰った」
クリスの歌声が、万象の世界に鳴り響く。
手と手を繋ぎ合わせ、五人は飛翔する。
《―――それでも私は、立花と雪音ともっと歌いたかった。戦兎や万丈に、歌を聞いてもらいたかった》
《なんか、すまん・・・》
《バーカ、そういう時はそうじゃねえだろ》
《そうだぞ。辛気臭くちゃ、せっかくの歌が台無しだろ?》
《・・・そうだな、ありがとうな。皆》
ブースターを点火、飛翔能力促進、加速する。
《解放全開!いっちゃえ!
響の叫びと共に、一気に月へ突っ込んでいく。
《皆が皆、夢を叶えられないのは分かっている。だけど、夢を叶える為の未来は、皆に等しくなくちゃいけないんだ》
《皆、色んなもん抱えてんのは知ってる。それを、誰かに任せたくないのも分かる。だからこそ、そんな誰かの助けになりたい。誰かの為に戦う事が、俺の戦いだ》
《命は、尽きて終わりじゃない。尽きた命が、残したものを受け止め、次代に託していく事こそが、人の営み。だからこそ、剣が守る意味がある》
《この新世界で、多くの事を学んだ。シンフォギアの事、二年前のライブの事、皆が抱えている事・・・愛と平和がどれほど脆い言葉かなんて知っているし、散々その事を言われてきた。だけどそれでも俺は謳い続ける。俺は、その為に科学者になったのだから》
《例え声が枯れたって、この胸の歌だけは絶やさない。夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!》
光が、五つに分かれる。
《これが私たちの絶唱だァ――――――――ッ!!!》
響、翼、クリス、ビルド、クローズが、それぞれの力を爆発させる。
翼は、その手に山をも断ち切る巨大な刀を。
クリスは、全てを殲滅せしめる大量の大型ミサイルを。
響は、両手足のガジェットを限界にまで引き絞る絶対破壊の拳を。
ビルドは、螺旋を描くあらゆるものを穿つ蹴りを。
クローズは、全てを焼き払う巨大な砲門を。
『Set Up!Blast Grand Cannon!』
『Ready Go!』
『シンフォニックフィニッシュ!!!』
『トラヴァースフィニッシュ!!!』
そして、月の欠片は――――跡形もなく消滅した――――
「―――よっ」
「・・・」
気が付けば、そこはあの真っ白な空間。
「・・・・ああそうか、俺死んだのか」
「勝手に死んだ判定するんじゃないよ」
なんて言い合って、二人は向き合う。
「まあ、なんだ・・・一応、楽しかったって言っておくよ」
「・・・もう、行くのか?」
戦兎の問いかけに、奏は悲しく笑う。
「きっと、未練がましかったんだろうな。アタシの所為で大怪我を負ったあの子は大丈夫だったか。翼はあの後、いじけてないか。きっと、心配だったんだろうな」
「・・・・」
だけど、それはもう杞憂だったと知れた。だから、もう残る理由はない。
「死人は死人らしく、天国に行くとするよ」
そう笑いかける奏。
「ちょっと待て」
そんな奏を、戦兎は呼び止める。
「一つ、俺の方である仮説を立ててみた」
「仮説?」
「ああ」
戦兎は説明を始める。
「新世界を創造する時、俺は、エボルトとの戦いで、本当は消滅しかけていた。異物が異物らしく、排除されるようにな。だけど、そうはならなかった」
その理由は、言うだけなら至極簡単な事だった。
「―――俺とお前の体が融合したんだ」
特定の世界での時間の流れが違うのと同じように、戦兎たちが新世界を創造したのは、本当は二年前、あのライブの日だったのだ。
その時、奏が絶唱を使い、その身を塵へと変える瞬間、世界は融合した。
そしてその時、世界が融合する際に消滅しかけていた戦兎の体と、同じく塵となり消滅しかけていた奏が、『消滅』という概念を、融合する事で対消滅させたのだ。
即ち、今の戦兎の体は、同時に奏の体でもあるのだ。
しかし、物理的に確実に死んでいた奏の体は崩壊しかけていた為に、ただ存在が消えかけていただけの戦兎の補強を行っただけだった。
だから、見た目と記憶は戦兎のまま、この世界に落ちたのだ。
「俺は、お前に助けられた。それが、今の俺だ」
ただ、目覚めたのが二年後というのは気になる所だが。
まあ、それぞれの世界で時間の流れが違うという事もある。
体を構成するのにそれほどの時間がかかったという事なのだろう。
万丈の場合はエボルトの遺伝子で存在の崩壊には至らなかったのだろうが、それでもこの世界に適応するのにそれなりの時間を要したのだろう。
「そっか・・・あたしは、知らずにアンタも助けていたって事か・・・」
それが、無性に嬉しいのか、奏は笑った。
「そっか、そっかぁ・・・だったら、安心だな」
「何がだよ?」
「アタシの体が、アンタの中にあるんだったら、心配はいらないってことさ。だってアンタは、正真正銘の正義のヒーローなんだからさ」
誰かの為に戦える、誰かの為に勇気を振り絞れる。
そんな男の体に、自分の体が一部となっているというのなら、それほど誇らしい事は無い。
「ヒーローは、どんな時だって誰かの為に戦わなくちゃいけない。確かにシンフォギアがあるから大丈夫だとは思うけど、それでもほんの少しの手助けが必要な時だってある」
「そうだな」
「アタシは消えてしまうかもしれないけど、アタシの魂は、アンタの心の中で生き続ける」
「非現実的だな」
「でも悪くないだろ?」
「ああ、悪くない」
「だからさ」
「ん?」
奏は、ほんの少し、困ったような、それでいて一つの確信を込めた表情で、戦兎に言った。
「―――翼の事、頼んだ」
「・・・・ああ、任せろ」
その答えに、奏は満足したのか微笑んで、その姿を消した。
《―――じゃあな・・・桐生、戦兎―――》
「・・・じゃあな、天羽奏」
そして、全てがホワイトアウトしていき、戦兎の意識は、現実に引き戻される――――
「――――」
そうして、目を開けて最初に映ったのは、見慣れた青い空だった。
「・・・・」
見慣れた青い空。それが意味する事は、ここは地上のどこかであるという事。
そして、自分は今、生きているという事の証だ。
「・・・・あー、最っ悪だ。結局生き残っちまった」
清々しいまでに青い空。いっそ憎らしい程青い空だ。
しかし、いつまでもその空を見上げている訳にはいかない。
とりあえず体を起こそうと身動ぎしてみると、ふと自分の左腕に何かが乗っかっている事に気付く。
すぐに左を見てみるとそこには―――
「ん・・・んぅ・・・・」
これまた可愛らしい寝顔の風鳴翼がいた。
「――――」
瞬間、息が止まった。
全ての時間が停止したかに思えた。
まず、翼が横にいる事には確かに驚いた。
しかも自分の腕を枕にして、憎たらしい程の寝顔で寝ている事にも。
だが、フリーズした理由はそこではない。
超眼前に、いつもは毅然と振舞う少女の普段からは考えられない可愛らしい寝顔があったのだ。
見慣れた顔とは言え、このいわゆるギャップ萌えというものに、戦兎は間違いなくやられていた。
(ど、どうする・・・?)
どうにかしなければ。下手に起こせば、逆に拳を喰らう事になるかもしれない。
だからと言ってこのままでいるのもまずい。
彼女は日本が誇るトップアーティスト風鳴翼。こんな所で見知らぬ男と寝ているなんて知れたら、スキャンダルで彼女の芸能生命は絶たれてしまう。
それだけはどうにか阻止しなければ。
しかし、そんな思考は無駄だというかのように、翼が目を覚ました。
「ん・・・んん・・・ん?」
うっすらと眼を開けて、翼は、眼前の戦兎を見つめた。
「よ、よお・・・おはよう?」
「き・・・りゅう?」
誰なのかは認識しているようだ。
そうして待つ事数十秒。改めて目の前にいる人物が桐生戦兎だという事を認識し、徐々に自分が置かれている状況を理解したのか、たちまちその顔を真っ赤に染め上げていき――――
「きりゅ―――!?」
「ふぎゅ!?」
思わず飛び退いた翼だったが、その先で腰を地面についた途端、何やら悲鳴のような声が聞こえた。
見てみれば、そこには青い顔をして悶えている響の姿があった。
「た、立花!?」
「う・・・うぐ・・・な、なんでご飯食べてただけなのに、机の下からぱんちんぐましーんがお腹に渾身のボディーブローを・・・!?」
慌てて立ち退くも、余程の大ダメージだったのかしばらく腹を抑えて悶える響。
「「・・・・」」
もはや哀れとしか言いようがない。
そこで、ふと戦兎は背後に気配を感じて後ろを振り返ってみれば、今度はそこには芝生の上に大の字になって寝る万丈とその上ですやすやと眠るクリスの姿があった。
こちらは響とは違って随分と微笑ましい。
その様子に苦笑しつつ、戦兎は立ち上がる。
そうして立ち上がって見たものは、見知った街並み、されど以前のようなものではない、みすぼらしい姿と成り果てた街だった。
「・・・」
「・・・私たちは、生き残ったんだな」
隣で、翼がそう呟く。
「ああ。死に損なった」
「そっか・・・私は、まだ歌えるんだな」
「ああ」
翼の呟きに、戦兎は確信をもって頷く。
「そっか・・・そうなんだ・・・私は、まだ・・・」
言葉は、長くは続かなかった。
「う・・・ひっぐ・・・・生きて・・・る・・・みんな・・・生きて・・・うう・・・!」
泣いていた。震える体を必死に抑えつけるように体を抱きしめ、嗚咽を漏らして、翼は泣いていた。
『―――翼の事、頼んだ』
その様子を見て、戦兎は、奏からの言葉を思い出し、そっと、その頭を撫でた。
「ああ、生きてる。皆、生きてる」
「う・・・ぅぅ・・・ぅぁぁぁああぁあああ・・・・!!!」
二年前、大切な片翼を失ってしまった。守れなかった。
だけど、今回は守り切った。そして、生き残った。
それが、嬉しいから、泣くのだ。
やがて、響が復活して起き上がり、その一方で先に起きたクリスが誰の上で寝ているのかに気付いて顔を真っ赤にして万丈を殴り飛ばし、万丈は何故殴られたのか首を傾げる。
その様子に一通り、こちらの生体反応を嗅ぎ付けてきたのか、ヘリコプターで弦十郎たちが駆け付けてきてくれた。
そうして実感する。
戦いは、終わったのだ、と――――
「――――それで、奏はもういないんだな」
「ああ、未練はもうないってさ」
「そうか・・・」
「寂しいのか?」
「ああ・・・すごく」
「そうか・・・」
「でも、ほんの一時とはいえ、奏と再び一緒に戦えたのは嬉しかった」
「それは良かった」
「だから、今度こそ前を向いて、夢を追いかけてみようと思う」
「夢・・・世界を舞台に歌う事か」
「ああ。全てのノイズを駆逐した暁に・・・それで、だな・・・」
「ん?どうした?」
「・・・その夢を叶えるのを、手伝ってくれないか?」
「ん?手伝うもなにも、俺は初めからそのつもりだが?」
「ふふ、そうか。そうだったな。貴方は、そういう人だったな」
「おう。俺は―――」
「「自意識過剰でナルシストな正義のヒーローだからな」」
「ははっ」
「ふふっ」
「あ!翼さんと戦兎先生見つけたー!」
「こんな所で何してんだよ」
「そんな所でイチャコラしてんじゃねえよ」
「い、イチャコラなんてしていない!」
「ほーうそんな反応するってことはそういう事なんじゃねえのぉ?」
「~~っ!雪音ぇ!!」
「そう怒んなって」
「それで、どんな話をしていたんですか?」
「ん?そうだな―――」
どこかの場所、いつかの時代、彼らはいつだって、正義の仮面を被り戦う。
そんな彼らはいつだって、誰かのヒーローであり続ける。
どれほど強大な敵が立ちはだかろうとも、どれほど傷付いても、どれほど裏切られても、どれほど苦しんでも、彼らは決して、諦める事は無い。
そう、何故なら彼らは―――
『仮面ライダー』なのだから――――
「―――次の
愛和創造シンフォギア・ビルド『無印・永遠の巫女編』―――完―――
次章――――愛和創造シンフォギア・ビルド『G・天翔ける大舟編』―――
次回は『創造しないシンフォギア・ビルド!』
内容はお楽しみに!