愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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戦「天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、この世界でノイズとやらと戦う特異災害対策機動部二課の一員として今日もノイズと戦って・・・」
翼「だから私を忘れるなといっているだろう!?」
戦「うるさいな!この物語の主人公は俺だぞ!?」
翼「そう思っているのは今の内だがな・・・まあとにかく、同じく特異災害対策機動部の者にしてシンフォギア奏者である風鳴翼は、今日も仮面ライダービルドと共にノイズと戦う日々を送るはめとなった。まあ私はまだ信用はしていないがな」
戦「何気に酷いなお前・・・」
万「なあ、俺の出番まだか?」
戦「お前はまだ出てないんだからここに出てくんなよ。馬鹿なの?」
万「馬鹿じゃねえ!筋肉つけろ筋肉を!」
響「ツッコむ所そこじゃないと思いますけど・・・あ、どうなる第三話!」
戦「ぽっと出にセリフとられた!?」



この国の首相は氷室さんじゃないとか言ってましたが編集して氷室さんにしました。
確認をお願いします!

戦「そうなるぐらいなら始めにそうしとけ!」

仰る通りでございます・・・


覚醒!完封!クローズ&ガングニール!

戦兎が無事、二課の一員として活動する事が決まった所で、ふと弦十郎が思い出したかのように戦兎にある事を言った。

「そういえば、お前の戸籍がなかったんだが・・・」

「あ」

それで戦兎も重大な事を思い出す。

そう、戦兎には戸籍がないのだ。

この世界の創造主ではあるがゆえに、その存在はこの世界にとっては異端だ。

故に、戦兎の存在はこの世のどの記録にも残っていない。

「あー、それは・・・」

「何か問題があるようなら、こちらで作ってやらん事もないぞ」

「マジか!?」

弦十郎の提案に、戦兎は食いつく。

「ああ。ただし、それなりの職業にはついてもらうからな。いわゆる、表向きの顔という奴だ」

「そういえば戦兎君、物理学者って言ってたわよね?」

「ええ、()()物理学者です」

了子の言葉に何の恥ずかし気もなく肯定する戦兎。

「だったら、ぴったりの職業があるわよ」

 

 

 

 

 

翌日――――

「今日から物理学の講師をしてくださる、桐生戦兎先生です」

「天才物理学者の桐生戦兎です。よろしく」

翼の目の前で、わくわくした様子で自己紹介している戦兎の姿があった。

 

了子が提案した職業とは、教師である。

 

戦兎の天才的頭脳は、超難関の物理試験で百点を取る程だ。

その頭脳をもってすれば、誰かに教える事も出来るだろう。

ついでに二課の本部の真上はリディアン音楽院という学校だ。

であるならば、二課のすぐ傍で働けるというメリットも存在する。

だからこうして、教師となった戦兎。

「天才って自分で言っちゃってるよ・・・」

「自分で天才って言っておいて、実はそんなにすごくないって事よくあるよね」

「私これからあんな人に物理教わるのかな」

始めの印象はこれだ。

翼も、自分で天才と言っている男が他人にまともに教えられるのかと思っていたのだが―――

「―――と、いう訳で、力はこのように釣り合うのです」

 

その質は、凄まじかった。

 

物事の例え方、生徒への質問に対する対応、教科書に囚われない独自の授業方法。

その全てが、彼の教えを受ける全ての生徒の心を掴み、次第に惹かれていった。

 

 

そして数日、桐生戦兎という物理教師の噂は瞬く間に広がり、そして学園中で彼の授業を受けたいという生徒が殺到した。

 

 

 

 

「―――正直に言って、舐めていた」

学校が終わり、二課の一室にて翼は頭を抱えていた。

「物理学者としての実力、教師としての技術、キャラによる人気の獲得、何をとっても一流。さらに人当りも良いから生徒からの人気もすさまじい・・・正直ここまで大騒ぎになるなんて思ってもみなかったぞ!」

「それはまた」

その翼の愚痴を聞いているのは、彼女のアーティストとしてのマネージャーである緒川慎次である。

彼もこの二課の職員であり、翼に最も近い存在だ。

そんな彼を前に、翼は戦兎に対する自分の評価を恥じていた。

完全に彼の事を舐めていた翼にとっては目から鱗である。

「私は最初はそれほど凄い男とは思っていなかった。だが、よくよく考えてみたらシンフォギアに対しての理解力が速い上に、あのビルドドライバーという装置を組み立てた技術力に加えて、その理論を組み立てる頭脳もあったんだ。だからその時点で気付いておくべきだった。あの男は科学者としては一流だという事を・・・人間としてはどうかと思うが・・・!」

「まあまあ落ち着いてください。そんなに思い詰めても仕方がありませんよ」

「ふう・・・そうですね」

一旦落ち着きを取り戻した翼に、緒川は飲み物を渡す。

「そういえば、このごろ桐生を見かけませんが、何かあったのですか?」

「ああ、彼なら、自室にて武器の修理を行っているそうですよ」

「武器・・・?」

「ビルドとしての武装ですよ。何やら、ある戦いで全て壊れてしまったようでして、今、自室にこもってそれの修理をしているようです」

「そうですか・・・」

そこで翼はふと考える。

(もしかしたら、ビルドの事について色々と聞き出せるかもしれない・・・)

この時、翼は自分でも自覚してない程に、仮面ライダービルドに興味を惹かれていた。

 

 

 

 

 

一方、学校が終わり、徹夜覚悟で武器の修復を行っている戦兎は、様々な道具を駆使して修理を行っていた。

やはりその技術力は凄まじく、何時間も掛かりそうな配線の手直しも数秒で終わらせる程だ。

「ふう・・・これでホークガトリンガーも修理完了っと」

そう言いつつ、戦兎は回転式機関銃のホークガトリンガーを傍らに置き、軽く伸びをする。

「ちょっと休憩するか」

「桐生」

ふと、そこでドアの方から声が聞こえた。

「翼か?」

「入ってもいいか?」

「ああ、良いよ」

戦兎の返事を聞き、翼が入ってくる。

「よっ。どうした?」

「いや、ビルドについて聞きたい事があってな」

翼は、意外と整理されている戦兎の自室を見渡す。

机の上には、幾つもの武装が置かれており、別の机の上には幾つものフルボトルが置かれていた。

翼は、今戦兎が傍らに置いてあるホークガトリンガーに目を向ける。

「それは?」

「ん?これか。これはホークガトリンガー。俺の発・明・品だ」

「何故誇張して言うのかは知らんが、それもビルドとしての武器なのか?」

「その通り!これはガトリングフルボトルの成分を使って創り上げた武器でな、ガトリングフルボトルを使えばどんなフォームでも使える武器でな。これの最大の特徴はロックオンした相手の位置情報を元に弾速や発射角度の微調整を行う事でな、さらに使用者の手癖を記録分析する事で―――」

「分かった!分かったから少し落ち着け!」

興奮気味に自分の発明品を自慢しだす戦兎を抑えつつ、翼はホークガトリンガーに施された鷹の意匠に注意する。

「何故、鷹の意匠を?」

「ああ、ガトリングとのベストマッチがタカだからだよ」

それを聞いて、翼は机に置いてあるフルボトルのうち、タカの柄の入ったボトルとガトリングの柄が入ったボトルを手に取る。

「何故、これとこれがベストマッチとかなんだ?」

「あー、それは・・・」

どう説明したものか。

 

ベストマッチとは、かつての戦兎の仲間であった石動美空の父親、石動惣一に憑依したエボルトが、惣一の記憶を元に作ったフルボトルの組み合わせの事であり、そのベストマッチの起源は、『思いついた動物を殺せる武器や兵器の組み合わせ』だ。

途中、コミックだとか時計だとか訳の分からない物もあるが、その理由は、父親の娘の愛故だ。

思い浮かべた動物のほとんどは、幼少の美空との思い出から浮かべた事であり、その思い出を汚されたくなかった惣一は、途中から訳の分からない物を思い浮かべたのだろう。

 

故に――――

「実は俺にもよく分かんないんだよな」

誤魔化す事にした。

彼らにエボルトの事は言っていない。だから、馬鹿正直に話せば、エボルトを倒す為にライダーシステムを作った父親に悪い印象を持たれてしまう可能性があったからだ。

だから、これが最適解・・・の、筈だ。

「そうか・・・」

その答えに、翼は短く答え、また別の道具に手を伸ばす。

「これはフルボトルか?見た所、缶のように見えるんだが・・・」

それは、『ラビットタンクスパークリング』。ビルドの強化アイテムである。

「それはビルドの強化アイテムだ。今は成分が抜けてて使えないけど、それも後で直すつもりだよ」

「他の違う形状のものも使えないのか?」

「ああ。どれもこれもどういう訳かボトルの成分が抜けててな。ラビットタンクスパークリングとか、今持ってるボトルと同じ成分の奴ならどうにかなるんだが、全部のボトルがないと使えない物は今の所修理は絶望的だ」

「これだけあるのに、まだ他にもあるのか?」

「ああ」

これで全部ではない。それに翼は驚きを隠せない。

「全部で何本あるんだ?」

「まあ特殊な奴もあるからなんとも言えないんだが、まあざっと言って六十本って所かな」

総勢六十。なんという数なのだろうか。

確か、ビルドは二つのボトルの組み合わせによって変身する。

それを考えると、その組み合わせはざっと三千六百通り。

かなりのバリエーションが見込める。

「ちなみに、大まかに分けると生物と道具で三十本づつだ」

「ほう・・・」

「そして!そのベストマッチとなるボトルを見つける事の出来る機能を搭載したこのビルドドライバーなら、こうやってベストマッチ発見機にもなるのだ!」

 

ラビット!』『タンク!』

 

ベストマッチ!』

 

「すごいでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?」

「分かった。分かったから」

もはや戦兎の異常なテンションに慣れてきた翼。

「他のボトルはどうしたんだ?」

「ああ、仲間に預けてある」

「仲間・・・?仲間がいるのか?」

「ああ。今は・・・離れているけどな」

「それは、何故・・・?」

「まあ色々あって」

そう言って戦兎は新たな武器の修理に取り掛かる。

「うっわ、これは酷いな・・・」

「・・・」

何か、上手く誤魔化された気がする。

その時、翼は、今自分のポケットに入っている、机の上に置かれているフルボトルと同じフルボトル―――『不死鳥フルボトル』をポケットの中で握りしめる。

真っ赤な紅蓮のボトル。

その紅蓮の色が、自分とは相反する色であるのにも関わらず、手放す気になれないでいた。

あのように自己紹介をして、名乗りあったにも関わらず、翼は、戦兎の事を信じられないでいた。

 

この男には、謎が多過ぎる。

 

隠し事がある事は既に気付いている。

その隠している事が一体何なのか、それまでは分からない。

だが、その隠し事を聞き出せない限り、翼は、戦兎の事を信じる気にはなれないでいた。

 

その時、手の中にある不死鳥フルボトルが、ほんの僅かに温かくなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は、深夜。

自衛隊が、その大火力を使い、ノイズの集団を迎え撃っていた。

だが、弾丸や砲弾、ミサイルは全てノイズの体を透過し、まるで効いている様子はなかった。

「くそ!やはり通常の兵器ではノイズに太刀打ちできんか!」

隊長格である自衛隊員がそう吐き捨てる。

 

ノイズには、通常の兵器は効かない。

 

その理由は、位相差障壁と呼ばれる、現実世界への存在比率を自在にコントロールできる事にあり、いわば彼らは半幽霊状態でこの世に存在しているようなものなのである。

故に、全ての武器は透過、貫通し、ノイズに一切の攻撃が通用しないようになっている。

 

たった一つ―――否、二つの例外を除いて。

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron――――」

 

タカ!』『ガトリング!』

 

ベストマッチ!』

 

どこからともなく、歌と声が聞こえ、上空を通ったヘリが、ノイズへと向かう。

そのヘリから、二人の人影が空中に躍り出る。

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

天空の暴れん坊ホークガトリング!イェイ・・・!』

 

空中で展開されたスナップライドビルダーに挟まれ、人影の一人―――桐生戦兎は仮面ライダービルド・ホークガトリングフォームに変身する。

それと同時に、翼は天羽々斬を纏い、ノイズの大群の前に降り立つ。

一方のビルドは、ホークガトリングの能力である飛行能力によって空中に留まる。

その時、マスクの下のインカムから通信が入る。

『翼、戦兎君。まずは一課と連携しつつ、相手の出方を・・・』

「いえ、私一人で問題ありません」

『翼!』

無線の向こうの弦十郎の言葉を無視して、翼は天羽々斬を抜く。

 

「―――去りなさい!無想に猛る炎、神楽の風に滅し散華せよ!」

 

「本気で一人でおっぱじめやがった・・・」

『すまない。翼のフォローを任せられるか?』

「問題ない。勝利の法則は既に決まっている」

右手を右のアンテナで滑らせ、ぱっと開く動作をして、戦兎は―――ビルドはその手に持つホークガトリンガーを翼が暴れ回る場所のノイズに向かって銃口を向ける。

「翼、俺が雑魚を一掃する。お前は大物を頼んだ」

 

警告は、した。

 

次の瞬間、引き金を引いた瞬間、凄まじい連射性で翼の周囲のノイズを一掃する。

一発も外さず、全てだ。

『ついでだ。空からも来ているぞ!』

「OK!」

見れば、飛行型のノイズがビルドに向かって襲い掛かってきていた。

その突進を軽く躱して、ビルドはホークガトリンガーのリボルマガジンを手動回転させる。

 

『Ten!』

 

しかし、それは一回だけに留まらず、

 

『Twenty! Thirty! Forty! Fifty! Sixty! Seventy! Eighty! Ninety!』

 

その数、十回。

 

One Hundred! FULL BULLET!』

 

最大弾数にまで達すると同時に、今空中にいる全てのノイズを球状の空間に閉じ込める。

「オォォアァアア!!」

その全てのノイズに向かって、ビルドはホークガトリンガーの弾丸を全て一気にぶっ放す。

タカの唸り声が響いたかと思うと、ほぼ一瞬にして全てのノイズを縦横無尽に蹂躙し、銃弾の餌食にする。

それと同時に、下にいる翼が巨大ノイズを一刀の元、両断する。

 

蒼ノ一閃

 

翼が着地すると同時に、ノイズが爆散する。

これで、ここら一帯のノイズは全て倒した。

「よ、お疲れ!」

翼の元へ降り立つビルド。

しかし、翼は何も答えず、その脇を通り過ぎていく。

「あれ?」

何やら素っ気ない彼女の様子に、ビルドは首を傾げる事しか出来ない。

「あいつ・・・なんかあったのか?」

『そういえば、君は知らないんだったな』

「どういう事だ?」

『二年前、ライブ会場の惨劇と呼ばれる事件が起きた。その事件で、翼は唯一無二の相棒を失ったんだ』

「相棒を・・・」

『それから二年、アイツはずっと一人で戦い続けていた。おそらく、戦兎君が戦いに加わった事で戸惑いを感じているのだろう。だからあまり責めないでやってくれ』

「・・・」

それを聞いて、ビルドは思う。

 

(俺、翼の事なんも知らないんだな・・・・)

 

一人孤独に戦い続ける少女の事を、ビルドは何も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、どうすっかなぁ・・・」

翌日の学校にて、戦兎は職員室で一人そう呟く。

「桐生先生、何か悩み事ですか?」

「ん?まあ、そんな所かなぁ・・・」

向かいの女性教師の言葉にそう返事を返しつつ、戦兎は考える。

どうしたら、翼ともっと親密な関係になれるのか。

これから共に戦う仲間として、信頼度は上げておきたい。

とりあえず、互いの健闘を讃え合えるぐらいには。

「相談に乗りましょうか?」

「ん~・・・いや、大丈夫」

女性教師の提案を拒否しつつ、戦兎は立ち上がる。

「次の授業がありますから」

「そうですか、頑張ってください」

「どうも」

そうして職員室を出る戦兎。

(しっかし、どうすっかなぁ・・・)

「あ、見て、戦兎先生よ」

「ほんとだ!」

(翼は結構頑固そうだし、ちょっとやそっとじゃ心を開いてくれそうにないんだよなぁ)

「戦兎先生、頭良いし格好良くて素敵よね」

「うんうん、さらに運動も出来るみたいだし、いつも乗ってくるバイクは自作なんだって」

「すごぉい!」

(まあ、出会って数日の俺なんかに心を開いてくれる訳がないけど・・・でも二年前の事件か・・・それを調べてみるってのも手かもな。そうすれば地雷を踏まずにすむかもしれない)

「あの顔、何か悩んでいるのかしら?」

「ああ!出来る事なら相談に乗ってあげたい!」

「ちょっと!抜け駆けは許さないわよ!」

(でも気を使いすぎるとかえって不審がられるかもなぁ・・・万丈ならどうしたんだろうな・・・結構何も考えずにずばずばいってそうだが・・・)

「ええ~、いいじゃないそれぐらい」

「私だって戦兎先生と話したいの!」

「だったら一緒に聞けばいいじゃない」

「「ダメ!私だけで戦兎先生と話すの!」」

「ちょっと!そっちも抜け駆けしようとしてるじゃない!」

「そういうアンタだって!」

(いや、万丈を手本にするのはやめよう。あの馬鹿のやり方でどうにかなるのは同じ馬鹿だけだ)

「ていうかそこ、なんか喧嘩してるようだけどここ学校だからやめなさい」

「は、はい!」

「すみません!」

 

戦兎は知る由もない。

 

「きゃー!戦兎先生に話しかけられちゃった!」

「ちょっと!先生は私に話かけてくれたのよ!」

「なんですって!?」

「あーもう喧嘩しない!」

 

 

既に学校内で自分にファンクラブが出来てしまっている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、戦兎が考えに考えた結果は、

「お前って昔デュエット組んでたんだな」

馬鹿正直な直球勝負だった。

「・・・それがどうかしたのか?」

「いや、ちょっと気になってな」

「はあ・・・」

溜息をつかれた。完全に悪い印象を持たれた。

「二年前の記事は見たのでしょう?」

「ああ、あれね。胸糞悪かったよ」

二年前、『ライブ会場の惨劇』と呼ばれる事件があった。

それは、風鳴翼と天羽(あもう)(かなで)という二人の歌手のユニット『ツヴァイウィング』のライブの最中に起きた最悪の事件。

空を埋め尽くす程のノイズがライブ会場に出現し、何百人という人達が死んでいった。

そして、あの事件の後、心無いメディアによって、ノイズの襲撃を生き残った者や、その遺族は、世間からの凄まじいまでのバッシングを受けた。

理由は、逃げる際の被害者たちへの誤解。

事件によって死んだ人間のほとんどはノイズによる炭化が原因だ。だが、それ以外で死んだ人間の事をメディアは挙げ、結果、自分が生き残りたいが為に他者を犠牲にしたクズとして世間に広まり、凄まじい非難を浴びる事となったのだ。

それによって自殺する者が出たり、あるいは蒸発する者が出たり、たかが生き残っただけで、何十人もの人間が不幸な目にあった。

全ては、メディアの持つ、情報のもたらす利益故に。

その、人間の腐った部分に、戦兎は怒りとやるせなさを感じていた。

「それを見て、お前はなおも愛と平和を掲げるのか?」

「ああ。確かに、人間には醜い部分がある。世界中に生きる全ての人間が良い奴だなんて思わない。それでも俺は愛と平和の為に戦う。仮令どれほど罵倒されようとも、きっと誰もが『愛と平和』を胸に掲げて生きていける日を、俺は創っていきたい」

即答だった。

どこまで行っても、桐生戦兎は、その覚悟を曲げるつもりはないらしい。

その戦兎の真っ直ぐな目が、翼には輝いて見えた。

「天羽奏だっけ?」

「・・・・ええ」

それは、翼の唯一無二の親友にして、ツヴァイウィングの片翼の名前。

「その事件で、命を落としたそうだな」

「その様子じゃ、奏の最期まで・・・・」

「絶唱、だったか」

己の全てを捧げて歌う、最後の一撃にして、下手を打てば自爆技となる、諸刃の剣『絶唱』。

本来、『絶唱』はシンフォギアとの適合率が高ければ高い程、そのバックファイアの影響は少なくなる。

だが、天羽奏は本当はシンフォギアの適合者にはなれない筈だった。

それを、無理な投薬によって適合率を無理矢理引き上げて使っていた為に、そのバックファイアは凄まじいものとなり、天羽奏は、その身を一欠片も残すことなく塵となって消滅した。

そして、それ以来翼は、己の身を『剣』として研ぎ澄まし、ノイズとの戦いに没頭した。

「俺も昔、相棒を助ける為に捨て身の戦法を取った事があった」

「え?」

予想外な言葉が、戦兎の口から出た。

「そいつ諸共消滅する事で、体を乗っ取られたそいつを助け出そうとしたんだが、力を奪う事には成功したんだが、逆に体を乗っ取られてな。ほんっと、あの時は最っ悪だったよ」

「そう・・・だったの・・・」

でも、今彼はそこにいる。きっと、彼の仲間が、彼を助けたのだろう。

だけど、自分は大切な人を助ける事が出来なかった。

 

彼とは、違う。

 

「それに、最後の戦いじゃあ一緒に戦ってくれた仲間も死んじまった」

「っ!?」

また、衝撃の事実が戦兎の口から出る。

「一人は俺の忠告を無視して勝手に強化アイテム使って死んじまうし、もう一人は敵の強化アイテム壊すだけ壊して死んじまうし、色々と大変だったぜ」

だけど、と戦兎は続ける。

「託されたものあったんだ」

愛と平和の為に。ただ一つの信念の元に戦った仲間たち。

その仲間を失い、戦兎は、一人ここに立っている。

 

そう、―――戦兎は今、独りだ。

 

「・・・」

それは、独り戦い続けてきた翼と、どこか似た感覚があった。

その期間は、天と地程の差があるものかもしれない。

しかし、戦兎は自分たちには話せない秘密を隠し持っている。

だが、その秘密を独り抱え続けている。共有できる相手もいなければ、その事を知っている者もいない。

だから、彼は今、どうしようもなく独りだ。

例えるならば、突然、知らない場所に放り込まれた子供そのもの。

それでも、彼は、笑って戦うのだろう。

愛と平和の為に。揺るがぬ信念のままに。

 

その身が、滅んだとしても。

 

そう思うと、翼は胸がきゅうっ、と締め付けられるような感覚を感じた。

(あれ、なんで私、胸が・・・)

その理由が分からない翼。

しかし、そんな翼の様子に気付かず、戦兎は続ける。

「だからさ、お前も奏から何かを託されたんじゃないかと思うんだ。俺が何か言えた義理じゃないけど、それでもその想いを継いでいく事は出来ると思う」

戦兎は、手を差し出す。

「だからさ、もう少し連携が取れるようにならないか?そうすりゃ、少しは肩の荷が下りるかもしれないし」

その差し出された手を見て、翼は、戸惑う。

「私は・・・」

この手を、取ってもいいのだろうか。

 

 

 

その時、二人の通信機に、通信が入る。

 

 

 

翼はそれを反射的に取り出して耳に押し当てる。

「どうしたんですか?」

『ノイズだ!すぐに二課にまで来てくれ!』

「分かりました」

ノイズ―――それが出現したのなら、自分たちの出番だ。

「ノイズよ」

「分かった。いこう!」

二人同時に駆け出し、二課本部まで一気に向かう。

 

 

 

 

二課に到着した翼と戦兎。

「状況を教えてください!」

「おいどーなってんだ!?」

翼と戦兎の言葉に、オペレーターの一人が答える。

「現在、反応を絞り込み、位置の特定を最優先としています」

モニターを見れば、この街の地図と幾つもの点を中心に円形の力場を示す表示が映し出されていた。

まだ、位置は分からないようだ。

「く・・・!」

「現場の監視カメラとか見れないのか?」

戦兎がオペレーターの一人が使う端末に駆け寄る。

「出来るには出来ますが・・・」

「やってくれ。俺が全部見る」

戦兎の指示に、オペレーターが応じる。

映し出されたのは、ノイズが出現したと思われるあらかたの場所全ての監視カメラのリアルタイム映像。

その無数の映像を、戦兎は頭を高速回転させて全て確認する。

その最中で、戦兎は、ある映像に目を奪われる。

「ッ・・・!?」

「どうかしましたか?」

戦兎の異変に、そのモニターを使っていたオペレーターが訪ねる。

「このモニター、ちょいと巻き戻してくれ」

「分かりました」

戦兎が指差した監視カメラの映像を巻き戻す。

「ここだ!」

映像が止まる。そこに映っていたのは――――

 

「ば、万丈・・・!?」

 

戦兎の相棒である、万丈龍我だった。

 

 

そして、異変は、起きる――――

 

 

「反応を絞り込めました!位置特定!」

「ノイズとは異なる、高出力エネルギーを検知!」

「波形の照合急いで!」

「まさかこれって・・・アウフヴァッヘン波形!?」

動揺が、広がる。

「それって確か、聖遺物から検出されるエネルギー波・・・まさか、シンフォギアか!?」

戦兎の予想は的中し、その名がモニターに映し出される。

 

[code:GUNGNIR]

 

GUNGNIR(グングニル)・・・?」

GUNGNIR(ガングニール)だとォ!?」

「え!?読み方そっち!?」

どうでも良い所で驚いているが、とにかく戦兎は、その場所の映像を映し出すように指示を出す。

そして、そこに映し出されているのは――――青い装甲を身に纏った戦士。

「あれは、まさか・・・」

「もう一人の仮面ライダーだとォ!?」

その名を、戦兎は呟く。

「・・・・クローズ」




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「なんだろう。これ・・・」

謎の青いボトルを拾った立花響。

「ん?あ!?ちょ、おま、出てくんな!」

女子高生に飯を奢られる万丈龍我。

邂逅する二人。

「わあ可愛い」

何故かクローズドラゴンに懐かれる小日向未来。

そして、新たに出現するノイズ。

「こっちだ!」

「生きるのを諦めないで!」

その最中で、響の胸の奥に秘められた力が開放される。

そして、もう一人の仮面ライダーが、その姿を現す。

『Wake Up Burning!』

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

次回『復活の槍撃!目覚めろドラゴン』

「見せてやるよ・・・俺の変身をなァ!」

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