愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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戦「天っ才物理学者の桐生戦兎と!」
翼「と、トップアーティストの風鳴翼と・・・」
響「どこにでもいる普通(じゃないけど)の高校生立花響に」
万「プロテインの貴公子万丈龍我!」
ク「そんでもって元戦場育ちの雪音クリスが、F.I.Sの連中に決闘の申し込みをされるのであった」
マ「そのせいで一体どのような結果になってしまうのか!」
麗人「すまない。私一人だけ勝手に出演してすまない・・・」
原型「おいそこの救済者(笑)。もう始まってるぞ立ち直れ」
麗人「は!?すまない・・・こほん。さて、その一方でシン・トルスタヤの過去が明らかになった訳だが、その正体が『白い悪魔』『切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)』という事が明かされた」
戦「言っておくが、この時点じゃ俺たちまだシンの正体知らないからな?」
シ「あの時は本当に色々とやらかした・・・敵兵に恐怖を刻み付けて戦意を喪失させる為に〔自主規制〕抜き出した死体を(はりつけ)にしまくったものだ・・・」
ク「おいそれアタシが育った戦場でもやらなかったぞ・・・!?」
響「どうしよう・・・最近師匠と見たスプラッタ映画を思い出し・・・おぇぇえ・・・」
翼「立花ァ!?いくらなんでもここで吐くなよ!?いいな?吐くなよ!?」
麗人「ここはいつもこんななのか?」
原型「残念な事にな・・・やれやれこれじゃあ先が思いやられる・・・」
戦「本当、いつになったらこのグダグダが終わるんだか・・・」
原型「仕方がない。今回はここでシメるとしよう。では、何やら不穏な空気が漂う第二九話を見ろ」

麗人「さて、私はもう戻るとしよう・・・あの二人の猛攻をどう掻い潜ろうか・・・」
戦「まあ、その・・・頑張れ」
響「勝手に引っ張り出してすいません~!」


彼の地にてのデュエル

カ・ディンギル――――かつて、旧リディアンの校舎があった地であり、二課の本部があった場所。

そこから、フィーネらの合流地点(ランデブーポイント)だった。

飛行機が着陸し、そこから、マリア、シン、慧介が出てくる。

「マリア!」

「シン、慧くん・・・!」

「大丈夫デスか?」

「・・・ええ」

心配そうな二人の言葉に、マリアは短く返す。

「敵は俺とウェルで排除した。マリアは戦闘に出ていない」

「良かった・・・」

「あー、俺も戦いたかったな」

慧介がそうぼやく。

「フィーネの魂に塗り潰されたら、もう会えなくなるから・・・」

「フィーネの器となっても私は私よ。だから心配しないで・・・」

「マリア・・・!」

調と切歌は、そろってマリアに抱き着く。

「・・・」

「二人とも無事でなによりです」

そこへナスターシャとウェル、そしてジェームズがケースをもってやってくる。

「強化はしておいた。もう遅れはとらないだろう」

「すまない、ジェームズ博士」

差し出されたケースを受け取り、シンはそう返す。

「さあ、追いつかれる前に出発しましょう」

「待ってマム!」

しかしナスターシャの言葉に待ったをかける切歌。

「アタシたち、ペンダントを取り損なってるデス!このまま引き下がれないデスよ!」

「決闘すると、そう約束したから・・・・」

調がそう言った直後に、ナスターシャが調の頬を引っ叩く。

「マム!」

すかさず庇いに入った切歌だが、その切歌にもナスターシャの掌が叩きつけられる。

「いい加減にしなさい!」

ナスターシャの叱責が飛ぶ。

「マリアも、貴方たち二人も、この戦いは遊びではないのですよ!」

彼らが行っているのは、まさしく下手をすれば死に直結しかねない戦いそのものだ。

しかし、そんなナスターシャの叱責を、ウェルが止める。

「そのくらいにしましょう。まだ取り返しのつかない状況ではないですし。ねえ?それに、その子たちの交わしてきた約束、『決闘』に乗ってみたいのですが・・・」

「しかし・・・」

「貴方もその方がいいですよね?念願のリベンジマッチですよ?」

ウェルはジェームズに問う。

「当然だ」

それに、ジェームズは拳を握りしめて答える。

「今度こそ奴らを捻り潰してくれる・・・!!」

 

 

 

 

 

二課仮説本部にて。

「ノイズの発生パターンを検知!」

ノイズの出現を知らせる警報が鳴り響く。

「古風な真似を・・・決闘の合図に狼煙(のろし)とは・・・」

「ノイズ使って俺らを呼び出そうってのか!」

藤尭が場所を特定する。

「位置特定!・・・ここは・・・・!?」

突如として藤尭が動揺したような声をあげる。

「東京番外地・・・特別指定封鎖区域!」

「そこって・・・!?」

「カ・ディンギル跡地だとぉ!?」

弦十郎が立ち上がってそう声をあげる。

「なるほど、そこなら邪魔は入らないな・・・」

戦兎は、モニターに映し出された地図の座標を睨みつけながら、そう呟く。

「カ・ディンギル・・・・」

そしてセレナもまた、不穏な空気を感じていた。

 

 

 

 

 

 

「決着を求めるのなら、おあつらえ向きの舞台という訳か」

カ・ディンギル跡地―――フィーネとの戦いによって、崩壊したリディアンを移転するに伴って、しばしカ・ディンギルの撤去工事やらをするために、立ち入り禁止となった場所だ。

そこに、五人はやってきていた。

「ここでやるなんてな・・・」

「・・・ん?おい、あれ!」

クリスが見る先に、奴らはいた。

その数、三人。

一人は、ソロモンの杖を携えたウェル。

そしてその前に、シンと慧介が佇んでいた。

「シン・トルスタヤ・・・」

「慧介君・・・」

「野郎・・・!」

戦兎と龍我が前に出る。

「万丈、スクラッシュドライバーにはスクラッシュドライバーだ。俺はハザードトリガーを使う」

「おう、任せろ」

 

『スクラァッシュドライバァーッ!!』

 

『ハザードオンッ!』

 

戦兎がビルドドライバーを腰に巻き付け、ハザードトリガーを起動し、龍我が先日戦兎が新しく作ったスクラッシュドライバーを巻き付ける。

「行くぞ、慧介」

「おう」

シンが腰に巻いたルインドライバーの収納スペースを引っ張り出し、そこにウルフボトルを装填する。

慧介はタイガースクラッシュゼリーを、龍我はドラゴンスクラッシュゼリーをスクラッシュドライバーに装填する。

そして戦兎は、ラビットフルボトルとタンクフルボトルをビルドドライバーに装填した。

 

 

『Ready』

 

ドゥラゴンジュエリィーッ!!』

 

タイガァージュエリィー!』

 

ラビット!』『タンク!』『スーパーベストマッチ!!』

 

 

そして、ウェルがノイズを召喚した直後、それに対抗するように装者三人が聖詠を唄う。

 

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)―――」

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)――」

 

「―――Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)―――」

 

 

『Are You Ready?』

 

 

戦兎がボルテックレバーを回しハザードライドビルダーを、龍我と慧介がケミカライドビルダーを、そしてシンが周囲に鎧を呼び出すのと同時に叫ぶ。

 

「「「「変身ッ!」」」」

 

『潰れるゥ!流れるゥ!!溢れ出るゥッ!!!』

 

タイガァー・イン・タァスクゥ!!』

 

ドゥラゴン・イン・クロォォズチャァァジッ!!』

 

『Penetration Armor Type-Wolf

 

『アンコントロールスイッチッ!!ブラックハザード!!!』

 

『ヤベェーイ!!!』

 

『ブルァァァァア!!!』

 

戦兎が鋳型に挟まれ、そこから真っ黒なビルドが姿を現す。

龍我と慧介がビーカーに満たされた液体を体に纏い、ジェル状の液体が頭部から噴出。体に纏われる。

シンがその装甲を身に纏い、ボトルの成分が装甲内に浸透していく。

響、翼、クリスの三人が、シンフォギアをその身に纏う。

F.I.Sのライダーと二課のライダー、シンフォギア装者が対峙する。

「お前らはノイズを、俺たちはアイツらだ!」

「おう!行くぜぇえ!!」

「気を付けてください!」

装者三人がノイズを掃討する中で、ライダーたちが激突する。

クライムの抜いた電気を帯びた刃がビルドに向かって振り下ろされる。

(はやっ―――!?)

それをビルドは寸での所で躱し、すかさず拳を突き出すも、その拳を紙一重でかわされ、すかさずその顎を蹴りで打ち据えられる。

「がっ!?」

それに思わずあとずさるも、すぐさま前に踏み出して再び拳を突き出す。

だが、それすらも躱される。

「なっ・・・!?」

「今までと同じだと思うな。俺たちも成長する・・・!」

懐に潜り込まれ、胸に一閃を受ける。

「ぐぅ・・・!?」

思わず後ずさるビルド。そのビルドに追撃しようとするクライム。

そのまま激しい追撃がビルドを追い詰めていく。

雷を帯びた刃による神速の斬撃が次々にビルドを打ち据える。

だが、その最中、ビルドがその顔をあげたかと思った瞬間に振り下ろされた刃を僅かに掠めるも躱し、その顔面を拳が打ち据える。

「ぐっ・・・!?」

予想外の反撃。クライムの斬撃に対応し、

「お前こそ、俺を、俺たちを舐めるなよ・・・・!」

掌に黒い霧のようなものが発生する拳を握りしめて、ビルドはクライムに向かって走り出す。

 

その一方で、クローズとタスクは。

「オォオ!!」

「づっ!?」

タスクの攻撃はその柔軟性のある体でしなりのある攻撃を繰り出してくる。

その時放たれる一撃はまるで鞭の一撃が如く、大きく振りかぶる攻撃ほど威力が凄まじくなる。

問題なのは、その振りかぶる攻撃が、モーションの大きい腕ではなくリーチも威力も高い足が主体だという事だ。

故に、足を主体とした攻撃がクローズに叩き込まれていた。

「ぬっぐっ・・・!?」

叩き込まれる蹴りの嵐。素早く鋭いその一撃一撃は、確かにクローズを打ち据え下がらせていた―――が、

「これが・・・」

「ッ!?」

しかし、突如としてその足を掴み取られる。

「なっ・・・!?」

「どうしたァ!?」

そのまま片手で持ち上げ、一気に地面に叩きつける。

「がぁっ!?」

「このぐらいじゃ足りねえぞ!!」

「うわぁぁあ!?」

そのまま地面から引きはがされ、地面から突き出した岩に投げられて叩きつけられる。

叩きつけられた岩はそのまま砕け散り、タスクは地面に倒れ伏す。

(さっさと変身解除させてドライバーを・・・!)

ツインブレイカーを取り出してクローズはすぐさまタスクの元へ走ろうとする。

しかし、その最中でタスクが立ち上がる。

それにクローズは立ち止まる。

 

タスクの様子がおかしい。

 

「ぐ・・・ぁ・・・」

どうにか立ち上がったタスクの体を、気のせいか、小さなプラズマが走っているように見える。

「俺・・・は・・・負けない・・・!!」

「・・・まさか」

立ち上がったタスクが、背を反らして雄叫びを上げる。

「オォォォォォオオオォォッ!!!」

けたたましい程の叫び声を出して、タスクはクローズに向かって走り出す。

 

『ツゥインブゥレイカァーッ!!』

 

その手にツインブレイカーを呼び出し、アタックモードで突き出す。

「ぐっ!?」

「ぶっ倒す!お前をぶっ倒して、俺たちは計画を完遂させるっ!!」

しなる体でツインブレイカーによる一撃。

これによって攻撃手段は絞られるも左による一撃の威力は上がる。

だが、問題はそこではない。

突き出されたツインブレイカーを持つ左手を右手で掴み取って止める。

「ぐぅぉぉぉぉおおぉおお!!」

(こいつ、暴走してやがる!?)

アドレナリンの過剰分泌。それによって引き起こされる、闘争本能の暴走。

そして、それによって引き起こされる、最悪の結末は―――

「だらぁ!!」

「ぐあ!?」

クローズの容赦のないツインブレイカーの一撃がタスクに叩き込まれる。

(さっさと倒さねえと、こいつがあぶねえ!!)

 

自分の二の舞に、なって欲しくないから。

 

 

 

 

 

そして、ノイズを掃討する装者三人。

「調ちゃんと切歌ちゃんは!?」

響がノイズを倒しながらウェルに問いかける。

「あの子たちは謹慎中です。だからこうして僕が出張ってきているのですよ。お友達感覚で計画に支障をきたされては困りますので」

「何を企てる!?F.I.S!」

翼が怒鳴り気味に問う。

「企てる?人聞きの悪い。我々が望むのは、()()()()()!」

「は!?」

クライムと戦っていたビルドが思わず声を漏らす。

しかしそれを気にせずウェルは、夜空に昇る欠けた月を指差した。

「月の落下にて損なわれる、無辜の命を可能な限り救い出す事だ!」

「月の・・・!?」

そのウェルの言葉に、彼らは驚く。

「冗談だろ!?」

「冗談じゃないから俺たちが戦ってるんだよ!!」

クローズがそう言えば、ウェルの代わりに答えるようにタスクが叫んで再びクローズに向かう。

「月の公転軌道は、各国機関が、三ヶ月前から観測中、落下などという結果が出たら黙っていな――――」

「黙っているに決まってるじゃないですか?」

なんとも厭味ったらしい口調でウェルは翼の言葉を遮る。

「対処方法の見つからない極大災厄の対処法など、さらなる混乱を招くだけです。不都合な真実を隠蔽する理由など、いくらでもあるのですよ」

「まさか、この事実を知る連中ってのは、自分たちだけ助かる算段を立てている訳じゃ・・・」

「だとしたらどうします?貴方たちなら」

クリスの言葉に、ウェルは聞き返す。

「対する私たちの答えが・・・ネフィリム!」

そうウェルが叫んだ瞬間、

「ぉぉおおッ・・・おお?」

タスクを追い詰めていたクローズの足元が突如として砕け散り、何かが飛び出す。

「ぐおぁぁぁあ!?」

「ッ!?」

それは、あの時の怪物だ。

「アイツは・・・!?」

「あれが、俺たちの最大の切り札・・・『天より堕とされし巨人(ネフィリム)』だ」

クライムがそう言い、飛び出してきたネフィリムは、その場で咆哮を上げた。

「龍我さん!!」

「ぐおあ!?」

頭から落下するクローズ。

「龍我!」

そんなクローズにクリスが駆け寄る。

そうしてクリスがクローズを抱き起した瞬間、駝鳥型ノイズが強力な粘液を放出、クローズとクリスを拘束する。

「くっ、こんなもので・・・!!」

どうにかもがいて脱出しようとするが、動けば動くほど粘液は体に絡みついてくる。

「人を束ね、組織を編み、国を建てて命を守護する!ネフィリムはその為の力!」

ネフィリムが咆哮を上げて駆け出す。

その正面には、響と翼の二人。

「立花!」

「はい!」

そのネフィリムを響が真正面から迎え撃ち、翼が側面から攻撃する。

得意の格闘術でネフィリムを翻弄し、その刃を側面から突き立てる。

だが、ノイズじゃないからか、あまり効果がないように見える。

「ルナアタックの英雄よ!その拳で何を守る!?」

ウェルが、戦う響に尋ねる。

しかし響は歌を唄いながら無視、両腕のアームドギアのガジェットを引き起こし、左のバンカーをネフィリムのどてっぱらに叩きつける。

そこへ、翼の『蒼ノ一閃』が叩き込まれる。

「立花!」

動きが止まったネフィリム。そこへ、響が飛び込む。

腰のブースターを噴射させ、一気にネフィリムへと突っ込む。

しかしすかさずウェルがノイズを響とネフィリムの間に呼び出して道を阻む。

「そうやって君は、誰かを守るための拳で――――」

そのノイズを一気に蹴散らして、響はネフィリムへ拳を叩き込もうとした瞬間―――

 

「―――もっと多くの誰かをぶっ殺してみせる訳だァ!!」

 

その時、響の脳裏に、あの時調に言われた言葉を思い出す。

 

『それこそが偽善』

 

その言葉は、今でも、響の胸につっかえている事だ。

だけど―――

「―――違う!!!」

その言葉に、響は真正面から否定してみせる。

「例え、誰かに否定されても、誰かに偽善と罵られようとも―――!!」

ネフィリムが、大口を開けるのが見えた。

「この拳に―――」

それを見た響は、すぐさま腕を捻り――――

 

「―――愛と平和がある限り、誰かと手を繋ぐという想いは、絶対に曲げないッ!!!」

 

その顎に強烈な一撃(アッパーカット)をお見舞いした。

「それが、私のシンフォギアだぁぁぁぁああ!!!!」

響の予想外の攻撃にウェルは目をむく。

「あいつ・・・!」

その響の雄姿に、クリスと翼は笑う。

ぶっ飛ばされたネフィリムはそのまま吹っ飛ばされて地面に落ちる。

「よし、このまま・・・」

その時だった。

粘液で動けないクリスとクローズの元に、タスクが立った。

「あっ・・・!?」

「ぶっ倒す・・・・!」

ツインブレイカーを掲げて、そのまま一気に振り下ろす。そのままクリスに直撃する―――その寸前、クリスは何もかに引っ張られ、気付いた時には仰向けに倒れていた。

「え・・・」

「ぐあ・・!?」

いつの間にか目の前にはクローズの仮面があった。

クローズが、クリスの上に覆いかぶさっているのだ。

「がぁぁぁあああ!!!」

タスクが、ツインブレイカーを何度も無防備なクローズの背中に叩きつけられていた。

「がっ、ぐぅっ、ぐがっ・・・!?」

「りゅ、りゅう・・・」

「アァァァアァアアア!!」

タスクが、何度も、何度もツインブレイカーを振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

そしてその様子は、遠場でモニターしていたマリアたちにも見えていた。

「慧介・・・!?」

「なにしてるデスか!?」

無防備な相手に向かって、何度も叩きつけられる凶刃。

その行為は、今までの慧介では考えられない行動だった。

「フハハハハ!!いいぞ!そのまま万丈龍我を殺すがいい!!」

ジェームズは、まるで愉快そうに高笑いをしていた。

「まさか・・・これがあの人の言っていた・・・・」

スクラッシュドライバーによる暴走―――

闘争本能が引き起こす、精神の暴走。

「くっ!」

「どこにいくつもりですか?」

思わず飛び出そうとした調を、ナスターシャが止める。

「貴方たちに命じているのはこの場での待機です」

「慧くんを止める。あんな事、止めさせないと・・・!」

「では、今をおいて、彼が万丈龍我に勝てる勝算はありますか?」

「え・・・」

ナスターシャの言葉に、調は押し黙ってしまう。

「このまま万丈龍我が消えれば、我々の優位性は格段に向上します。今、彼を排除するチャンスは、ここ以外にないでしょう」

「でも、あんなの慧くんじゃ・・・」

「子供が大人の事情に口するものじゃないぞ、ミス月読」

ジェームズが、調の言葉を遮る。

「ああでもしなければ、我々の計画は達成されません。より確実に遂行するべきだ」

「そんな・・・」

調は、茫然とする。

「これが・・・」

ふと、マリアが呟く。

「これが、私たちの成すべき事なの・・・!?」

その問いかけに、ナスターシャは何も答えず。

「・・・アタシたち、正しい事をするんデスよね・・・?」

切歌の言葉は、ただ虚空に消えていき、耐え切れなくなった調は、叫んだ。

「慧くん、やめてぇぇえ!!」

 

 

 

 

 

 

「やめろ!」

何度もツインブレイカーをクリスを守るクローズに叩きつけるタスク。

そんなクローズに、クリスは涙を滲ませながら叫ぶ。

「もういい!これ以上は龍我が・・・・!」

「ぐ・・・っざけんなよ・・・ここでお前を守れなくちゃ、愛と平和なんて語れるかよ!」

「ッ・・・馬鹿!!」

 

『ツゥインッ!!』

 

「「ッ!?」」

聞き覚えのある音声に二人は目を見開く。そこには、スクラッシュドライバーにタイガースクラッシュゼリーとトラフルボトルを装填したツインブレイカーを掲げるタスクの姿が―――

「やばい・・・!」

「くたばれぇぇぇえ!!!」

エネルギーが充填されたツインブレイカーが、クローズに向かって振り下ろされる。

「だめぇぇえ!!」

しかし、それが直撃する前に、響がタスクを殴り飛ばす。

「ぐぅッ!?邪魔をするなぁぁぁあ!!」

「ハァァァア!!」

二人の拳が交錯する。

 

ツゥインブゥレイクッ!!』

 

高速回転するパイルが、響の顔面に迫る。

しかし、それを響はしっかり目を捉え、既の所で躱し、一方の響の左拳はタスクの顔面に突き刺さる。

「ォォォオオオッ!!」

そのまま殴り飛ばす。

「大丈夫!?クリスちゃん!?龍我さん!?」

「あ、ああ・・・」

「すまねえ・・・」

無事を確認した所で響はタスクの方を見る。

タスクは、未だ変身解除していない。それでも立とうとしている。

「まだ戦えるの・・・!?」

 

 

 

 

 

「涼月慧介・・・ハザードレベルこそは低いものの、体の柔軟性と頑丈さにおいて類稀な体質をもった特異体質・・・もちろんスクラッシュドライバーのリスクは知っていたさ。だからこそ、彼を選んだのだよ・・・スクラッシュドライバーの負荷に耐えられる()をもった彼をね・・・!」

 

 

 

涼月慧介。

イギリス人と日本人の間に生まれたハーフ。

体質・一般を遥かに超える柔軟性と、特殊な遺伝子配列による突然変異による頑丈性。

彼が、親の実験事故の場で生き残った理由がこれだ。

この頑丈性によって、彼は生き残ったのだ。

 

 

 

「倒す・・・!!」

「もうやめようよ!これ以上戦ったら・・・」

「黙れぇぇぇええ!!」

タスクが駆け出す。

「くっ!」

響は思わず構える。

しかし、その横から復活したネフィリムが襲い掛かる。

「あ・・・・!?」

「立花ァ!!」

大口を開けるネフィリム。その口に大剣化した天羽々斬を押し付けて響への攻撃を防ぐ翼。

「うぉぉぉぉお!!」

「ッ!?」

そこへタスクのツインブレイカーの一撃が叩き込まれる。

「あぁぁああ!?」

「ぐあぁぁあ!?」

二人纏めて吹き飛ばされ、地面に倒れる響と翼。

その時、翼はネフィリムに口に天羽々斬を残してきてしまう。

「喰ったぁぁぁあ!!」

そこでウェルの歓声が上がった。

「ついに聖遺物を喰ったぁぁぁあ!!!」

見れば、なんとネフィリムは翼が手放してしまった天羽々斬をバリボリと喰っていた。

「天羽々斬を・・・」

「食べている・・・」

その光景に、二人は呆然とする。

「ぐぅ・・・ん?」

「あれは・・・」

それは、ビルドとクライムも戦いを止める事のものだった。

「完全聖遺物『ネフィリム』は!いわば自立稼働する増殖炉。他のエネルギー体を暴食し、取り込む事でさらなる出力を可能とするぅッ!!」

その時、ネフィリムの体全体が赤く光り出し、その体の形を変化、増大させていく。

「さあ始まるぞ!!聞こえるか?覚醒の鼓動・・・!!この力が『フロンティア』を浮上させるのだぁぁぁぁあ!!」

「フロンティア・・・・?」

ビルドが呟くが、その間にネフィリムはさらに大きく、禍々しくなっていった。

その全長は、成人が見上げる程であり、腕はさらに肥大化し、その図体もずんぐりとなっていた。

その光景に、響、翼、クリス、クローズ、ビルド、クライム、タスクは呆然とするしかなかった。

「ウェーヘヘヘヘヘハハハハアハアヘヘヘヘハハアア!!!!」

気持ち悪い笑い声を上げるウェル。

「まさか、この為に俺たちを、いや、響たちを・・・!?」

「その通りぃぃぃいい!!!本当ならそこのガキの腕ごと食わせるつもりだったが、天羽々斬でも十分に成長させるに至ったぁ!!だが折角だ・・・他の奴らアームドギアも喰らわせてやろう!!」

ネフィリムが動く。

響と翼に向かってずしんずしんと近付いてくる。

二人は立ち上がり、響は拳を握りしめて構え、翼はもう一本の刃を取り出して構える。

「翼さん・・・」

「分かっている」

二人は、ネフィリムの出方を伺う。

「立花響ぃぃぃいい!!!」

「ッ!?」

そこへタスクが襲い掛かってくる。

そのまま響に拳をぶつけて吹き飛ばし、それを追いかけていく。

「立花!」

思わず翼が振り返って名を呼んだ瞬間、ネフィリムが拳を振り上げていた。

「あっ・・・」

気付いた時にはもう遅く、翼はネフィリムの一撃を諸に喰らって宙を舞った。

「翼さっ・・・ぐあ!?」

「やばい・・・!!」

空に打ち上げられた翼のギアは所々破損し、翼自身も大きなダメージを負っていた。

(しくじった・・・)

そのまま受け身もとれずに落下。

「う・・ぐぅ・・・」

呻く翼に、ネフィリムが近付く。

「さあネフィリムぅ!!その女ごと聖遺物を喰らうが良いぃぃぃいい!!」

ネフィリムが咆哮を上げて、その開けた口を翼に向けて一気に迫らせる。

「あ、あぁ・・・」

それを避ける事は翼には出来ず――――ネフィリムは何かに噛みついた。

「翼さぁん!!」

「翼ぁ!!」

響とクローズの叫びが響く。

だが、翼は喰われていなかった。

ネフィリムが噛みついたのは―――ビルドだった。

両手でネフィリムの歯に手をかけ、閉じないように踏ん張っていた。

「き、桐生・・・!」

翼の声は、泣きそうだった。

「ぐっ・・・早く逃げろ・・・!!」

「だ、だけど・・・」

「早く!ハザード限界が、近いんだ・・・・!!」

既に強化剤『プログレスヴェイパー』が、すでに脳の奥深くに浸透してきているのだ。

このままでは、いずれ意識がなくなる。

(まずい・・・もう、限か――――)

そして、ビルドが、その意識を手放してしまった、その直後、

 

 

ビルドが、ネフィリムに、喰われた。

 

 

「―――あ」

翼が、そう声を漏らした。

血が、喰われたビルドの装甲の歯が突き立てられた隙間から溢れていた。

ビルドの装甲にネフィリムの歯が食い込んでいるかのような形に。

左手は口の中、右手は、まだビルドの装甲に阻まれ、出来ている口の隙間から出ていた。

「き・・・りゅう・・・?」

流れ出す、おびただしい程の血。それが、ビルドの足元に血だまりを作っていく。

まるで、ぐったりしているビルド。

「―――いったぁぁぁああ!!!」

ウェルが、奇声を上げる。

「ついにライダーにもパクついたぁぁあ!!」

ゲヒャヒャヒャとウェルが嗤う。

その光景に、クリスとクローズは呆然とし、クライムは仮面の奥で目を閉じ、響は、そんな、と呟いてその場に膝をついて、タスクは突然戦いをやめた響に戸惑いを見せ、調、切歌、マリアの三人は、ビルドが喰われた事にただ目を見開いている事しか出来ず、ナスターシャは哀悼を捧げるように目を閉じた。

そして、それを目の前で見せられた翼は――――

「―――うわぁぁぁあああぁぁああぁああああぁぁぁあぁあぁああぁぁぁあぁあああ!!!」

悲鳴を上げた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マックスハザードオンッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――直後にその音が聞こえたのは、一瞬だった。

 

 

 

 

突如として、ネフィリムの口が開き、何かが砕かれる音と、何か重いものを殴り飛ばすかのような音が響き、ネフィリムが吹き飛んだ。

 

 

『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』

 

 

そして聞こえた、聞き覚えのある音声。

 

 

 

『Ready Go!』

 

 

 

そこに佇むのは、真っ黒な人影。

 

それは、先ほどネフィリムに食われていたビルド。

そのビルドがまるで何事もなかったかのように、その場に佇んでいた。

しかし、何か、様子がおかしかった。

「・・・・桐生?」

先ほど流した涙を拭わず、翼は呆然と呟く。

「・・・・やばい」

そして、クローズは、その状態のビルドを知っていた。

「これは、やばい・・・!!!」

それは、その―――音声は―――

 

 

『オーバーフロウッ!!』

 

 

 

仮面ライダービルドの――――

 

 

 

『ヤベェーイッ!!!』

 

 

 

 

―――暴走(ハザード)が、始まる。

 

 




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「やめろぉぉぉぉおお!!」

ついに暴走するビルド!

「なんなんだ・・・それは・・・」

その圧倒的強さに、何もかもが破壊されていく―――

「や、やめろぉ!やめるんだぁ!!」

「慧介!」

「こちらの不始末は、こちらがつける・・・」

最悪な状況の中、動くのは―――

次回『ハザードは止まらない』

『ガタガタゴットンズッダンズダン!』

「貴方は・・・私が止める・・・!」




少し疑問に出された『何故慧介がスクラッシュドライバーで変身できるのか』という事なんですが、実はジェームズ博士の専門は生物で『遺伝子』。
旧世界でエボルトの遺伝子を植え付けられた戦兎、龍我、一海、あと時系列的にはもう既に仮面ライダーになってた幻徳のエボルトの遺伝子操作時の配列を記憶していた為、自らの持てる技術を駆使してシンと慧介に遺伝子操作を行った・・・という事で勘弁してください。
ジェームズ博士、小物感強いですけど本当に優秀なんです。
ただ、めっちゃ残念な性格になってるだけです。
まあ、だからって同情はしないんですけどネ(無慈悲)
ではまた次回にて。

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