愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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原型「さて、今回超トラウマ回という訳でレギュラーメンバーがほとんど欠席しているため、このオレがあらすじ紹介に駆り出された訳だが・・・」
麗人「何故前回に引き続き私まで・・・」
俺様「ハッハッハ!ついにこの小説オリキャラ三号であるこの『自主規制』が登場だぁ!さあ俺を崇めよ称えよひれ伏すが良い!!」
元詐欺師「うるさいわよ少しは静かになさい」
俺様「黙れ偽女!そのデカ乳はただの飾りだろうが!ハッハッハー!」
元詐欺師「かっちーん・・・言ったわねあーしより年上だからって調子乗ってると痛い目みるわよ!」
俺様「はたしてこの俺の速さについてこれるかァ!?」
錬金術師「うるさいぞ」
俺様「へぶ」
けん玉「自業自得なワケだ」
錬金術師「いきなりで悪いが、仮面ライダービルドであり天才物理学者桐生戦兎は、現在、敵との戦闘によってハザードフォームの暴走に陥ってしまう」
麗人「聞いた話だと、何やら相当なトラウマがあるそうだが・・・」
錬金術師「俺には関係ない話だ」
武人「うむ。相変わらずであるな!」
無性「と、とにかく!果たしてハザードフォームを止める事は出来るのか!」
原型「そんな訳だ。不穏な展開漂う第三〇話を見ろ」
麗人「なお、作中に作者の独自解釈があります。その点についてはご容赦を」


ハザードは止まらない

―――『オーバーフロー』。

 

溢れ出る、という意味をもつこの言葉が意味する事はただ一つ――――

 

 

 

 

 

―――仮面ライダービルドの暴走を意味する。

 

 

 

 

 

「・・・・」

ただ黙って、その場に佇むビルド。

「き・・・りゅう・・・?」

そんなビルドに、翼はどう声をかけていいのか分からなかった。

未だビルドの割れた装甲の隙間からはぼたぼたと血が流れ出ている。

だが、これだけは分かる。

 

今は、ダメだ。

 

今のビルドは、間違いなく、危険だ。

「なんなんだ・・・それは・・・」

ウェルはネフィリムが吹き飛ばされた事に狼狽しており、クライムは突っ立たまま何もしないビルドに刀を構えて警戒していた。

「響!」

そんな中で、クローズが響に向かって叫ぶ。

「この粘液をどうにかしてくれ!急げ!」

「あ、はい・・・!」

響がそれに応じて立ち上がった。その直後、響の目の前を何かが通り過ぎた。

その何かは、一気に棒立ちのビルドに襲い掛かる。

 

タスクだ。

 

「慧介・・・!?」

クライムは思わず狼狽する。

「くたばれッ!!」

そのままツインブレイカーを叩き込もうとした時――――その手を掴まれて、引っ張られ、後頭部を掴まれたと思ったら、その顔面を地面に叩きつけられていた。

「がっ!?」

地面に叩きつけられたタスク。その腹に、ビルドはすかさず蹴りを何発も叩き込んで、そして最後にサッカーシュートの如くタスクを蹴り上げる。

「がはっ・・・!?」

あまりにも一方的な展開。ビルドは吹っ飛んだタスクを追いかけて、落下してきた所を追撃。

そのまま走り続けて吹き飛んでいくタスクを何度も殴り、地面に叩きつけ、そして最後に蹴りを叩きつけて岩に叩きつける。

「があ!?」

そして、止めの渾身の右ストレートが腹に突き刺さる。

「がはっ・・・」

その一撃に、タスクは思わず膝をつく。そのまま倒れるかに思われたが、その体を掴んで、ビルドは倒さず、持ち上げて無理矢理立ち上がらせる。

 

『マックスハザードオン!』

 

再び、BLDハザードスイッチを押し、ボルテックレバーを回す。

 

『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』

 

『Ready Go!』

 

ビルドの体から、真っ黒な禍々しい煙が立ち上る。

「・・・まずい」

その危険性を察知したクライムはすぐさま走り出す。

 

『オーバーフロウッ!!』『ヤベェーイッ!!!』

 

「ぐあぁぁあぁああ!?」

ビルドの手から伝わった、余剰したプログレスヴェイパーを直接流し込む一撃。

それがタスクの体を駆け巡り、激痛を与え、よろめかせる。

オーバードーズの原理で、一気に薬品を叩き込んで身体にダメージを与えたのだ。

だが、それだけで終わらない。

 

『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』

 

今度はボタンを押さずにボルテックレバーを回しているのだ。

「だめだ・・・」

それを見たクローズは、思わず声をあげる。

それは、かつて、あの状態のビルドが使った―――最悪の()()コンボ――――

「やめろぉおお!!戦兎ぉぉぉおお!!!」

さらなる煙が蒸気のように立ち昇り、それが右足に収束する。

 

『Ready Go!』

 

そして、それを、タスクに容赦なく叩きつけた。

 

 

『ハザードフィニッシュッ!!!』

 

 

最悪の一撃が、タスクに叩き込まれた。

「ァ――――」

その一撃を叩き込まれたタスクは、その中枢に一撃を叩きつけられ、一度よろめく。しかし、やがて膝をついて、ビルドの足元に倒れ伏し――――変身が解除された。

 

 

 

「慧くん!」

調は、顔に手を押し付ける程動揺していた。

「いや、いやぁ!慧くん、慧くんっ!!」

「ッ・・・」

「これが・・・ハザードトリガーの力・・・だとでもいうの・・・?」

その光景に切歌は言葉を失い、マリアは戦々恐々していた。

「馬鹿な・・・そんな事が・・・」

「これは・・・」

ジェームズは、タスクの―――慧介の完全敗北に狼狽え、ナスターシャはいよいよ状況がやばくなった事に冷や汗をかいていた。

 

 

 

 

 

地面に倒れ伏す慧介を見下す事なく、ビルドは、次の標的を探す。

そうして捉えたのは―――ネフィリム。

「ま、まさか・・・!」

ビルドが、駆け出す。

ネフィリムが腕を振り上げる。それが叩きつけられる寸前でビルドはネフィリムの腹に拳を叩きつける。

敵味方関係なく全てを破壊するビルドの拳は、例え完全聖遺物のネフィリムであろうと容赦なく叩きのめしていく。

「や、やめろぉ!やめるんだぁ!!」

ウェルが止めても、ビルドは構わずネフィリムを殴り続ける。

「成長したネフィリムは、これからの新世界に必要不可欠なものだ!」

殴る、殴る。ただ殴る―――否、壊していく。

「それを・・・それをぉぉおお!!」

ネフィリムの一撃がビルドに叩きこまれ吹き飛ばす。しかし地面に着地したビルドはすぐさまネフィリムの元に舞い戻り、さらにネフィリムを攻撃していく。

「いやぁぁあぁああ!!」

半狂乱状態になったウェルがソロモンの杖を使い、ノイズを呼び出し、そのノイズらが一つに纏まってギガノイズと化す。

しかしビルドはただ淡々とそのノイズに近寄り、その顎をただ一撃打ち据えた。

それだけで、ノイズの炭素分解を超える分解攻撃がそのノイズを駆け巡り、一気に分解、消滅させる。

そのノイズをただの一撃で分解させると、そのビルドの強さに恐怖したのか一目散に逃げるネフィリムを強襲。

頭上から叩き落し、すかさず降りてその首根っこを掴んだと思ったら一気に立ち上がらせ、人間で言う所の急所を的確に殴り続ける。

それはまさしく、一方的な蹂躙だった。

時には持ち上げて叩きつけ、踏みつけ、立ち上がらせ、容赦なく叩きのめしていく。

その隙にクライムは、慧介の元へ駆け寄っていた。

「慧介!」

呼びかけ、体をゆるって見るが反応がない。

「慧介!慧介!・・・くそ!」

まるで反応がない為に、急いで脈を測る。

 

通常より弱っているが、まだ鼓動している――――

 

それを感じたクライムはすぐさまナスターシャのいる飛行機に連絡を入れる。

「ナスターシャ!慧介はまだ生きている!今から誰かをここに呼んで運んでくれ!」

 

 

 

 

それを聞いて真っ先に動いたのは調だった。

「調!?」

「慧くん!」

「待ちなさい!」

ナスターシャの制止も無視して調は飛び出す。

「アタシも・・・」

「切歌はここに残りなさい!」

「でも・・・!」

「これは命令です!」

「くっ・・・」

ナスターシャの強い口調にそれ以上なにも言えず、切歌は先に行ってしまった調の方を見た。

 

 

 

 

 

ビルドが、ネフィリムの胸当たりに拳を突き刺した。

分解能力によって皮膚が分解され、その中の臓器を掴んでいるのだ。

そのまま力任せに何かを引っ張り出し、それを捨てる。そして、いきなりぐったりしだしたネフィリムを片手で持ち上げ、もう片方の手でボルテックレバーを回す。

 

『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』

 

黒い蒸気がまた発生し、再びそれが右脚に収束する。

 

『Ready Go!』

 

そして、再び必殺の一撃が、ネフィリムにも叩き込まれた。

 

『ハザードフィニッシュッ!!!』

 

それを喰らったネフィリムは―――跡形もなく分解・霧散していった。

「・・・」

それをビルドは淡々と見届ける。

「ひ、ひぃぃいい!!」

怯え切ったウェルは情けなく逃げ出す。

「慧くん!!」

そこへギアを纏った調が駆け付ける。

「慧くん!慧くん!!」

倒れ伏す慧介に、調は涙を流しながら駆け寄る。

「ごめんなさい!あの時、スクラッシュドライバーの危険性を伝えてたいら、ううん、戦う前にスクラッシュドライバーを取り上げれていたら、こんな事には・・・!!」

「懺悔するのは後にしろ!お前はすぐに慧介を抱えて飛行機に戻れ!」

クライムが調たちを背に叫ぶ。

「シンはどうするの?」

「俺は・・・奴を止める」

ふと、調はクライムが見る先を見る。

そして、恐怖する。

「ぁ――――」

ざっ、ざっ、ざっ、とビルドがゆっくりとこちらにやってきていた。

まるで感情の無い足取りで、ゆっくりと、クライムたちに近付いてきていた。

「あの状態の奴に逃げ切れるとは思えない。だから先に慧介だけでも連れていくんだ」

「でも、あれは明らかに正気じゃない!もしかしたら、シンも・・・」

「そんな甘ったれた事を言える状況か!慧介を見ろ!早く応急処置をしないと取り返しのつかない事になるぞ!」

クライムがそう怒鳴って、調を見た時、ビルドから視線を外した所を狙ってビルドが走り出す。

(しまった・・・!?)

今のビルドの理性は蒸発している。だが、戦いの本能というのか、最適で最速で最短で相手を破壊する為の直感は生きていた。

それが、クライムがビルドから一瞬目を放したこの瞬間だった。

この距離では、いくらクライムといえど反応に遅れる。

ビルドが、低い姿勢でクライムの懐に潜り込もうとする。

それに対して、クライムは足で刀を掴んで振るう斬撃で対応しようとした。だが―――ビルドは飛び上がった。

「なっ!?」

下と思わせての上からの攻撃。

クライムの攻撃は、すでに下段で繰り出す用意が出来てしまっている。

だから、この距離で対応する事は出来ない。

(こんな事が・・・)

ビルドの拳が、クライムに叩き込まれる―――

「ウオリャァァア!!」

その寸前で、クローズが横からぶん殴る。それによってビルドは横に吹っ飛ぶ。

「なっ!?」

「一つ貸しにしておいてやる!」

クローズがクライムに向かって指を差す。

「俺たちがアイツを抑えてるうちにさっさと行け!」

「なんのつもりだ・・・?」

「ソイツ大変なんだろ!?」

クリスがボウガンを両手にそれぞれもってそう言う。

「早く治療してあげて!」

響が言う。

「こちらの不始末は、こちらがつける・・・」

翼が、ビルドに最も近い距離で刀を構える。

「どうして・・・」

まるで自分たちを庇うかのような動きに、調は戸惑いを隠せない。

「どうして、私たちを・・・」

「私たちがそうしたいからだよ」

響は調にそう言い返す。

「私たちが、調ちゃんたちを守りたい。ただそれだけ」

ビルドが立ち上がる。

その複眼は、翼を映している。

「桐生・・・・」

刀を構えて、翼は言う。

「貴方は・・・私が止める・・・!」

それを言うのと同時に、ビルドが駆け出す。遅れて翼が駆け出し、そして激突する。

「さあ!行って!」

翼とビルドが戦い始めるのと同時に、響とクローズ、クリスも戦いに参加する。

「・・・・」

その様子に、調は呆然とし、そんな調にクライムが言う。

「行くぞ調」

「う、うん・・・」

クライムに促され、慧介を抱えて足の鋸を回転させて駆け出す。

「・・・・恩に着る」

クライムは、一度立ち止まって、聞いていないであろう彼らにそう呟き、調の後を追いかける。

調は、後ろ髪が惹かれる想いで、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

『―――戦兎先生はネフィリムにかまれた事で今もなお出血しています!早く止めて治療室に叩き込まないと出血多量で死んでしまいます!』

セレナが無線越しにそう言ったのを聞いた時に、真っ先に動いたのはクローズと翼だった。

暴走の果てに待つ者が死だなんて、そんな事、認められる訳がないからだ。

そして、クローズがビルドを殴り飛ばし、そして殴り飛ばされたビルドの前に翼が立ち、今の構図が出来上がる。

「くっ・・桐生・・・!」

全てが急所で確実に殺しにかかってきているビルド。

その攻撃を、翼は天羽々斬で受け流していた。だが―――

「くぅっ!」

天羽々斬が、刃こぼれを起こしていた。

ハザードフォームの最大の利点はその分解能力。

相手の装甲を分解し剥き出しにさせて、そして一気に中枢に一撃を叩き込むという現代兵器もかくやと言うべき能力を有している。

その分解対象は聖遺物とて例外ではない。

何より、欠点である理性が蒸発する事を踏まえると、より一層兵器としての力が発揮されている。

「く・・・ぅ・・・!」

(桐生・・・今の貴方がしたい事は、本当にこんなの事なのか・・・?)

ビルドの攻撃を受け流しながら、翼は心の中で呟く。

(違うだろう・・・そうじゃないだろう・・・貴方は、愛と平和を誰よりも信じて戦ってきた筈だ)

ビルドの拳が、とうとう天羽々斬を折る。

だが、翼は残った刀身で応戦を続ける。

今の戦兎に、言葉は届かない。それを聞くための耳はないからだ。

だから――――

「私は、お前を止めるぞ!」

右のストレートを脇に抜ける形で躱す。

「雪音!」

「もってけダブルだ!」

翼が叫べば、クリスが容赦なくミサイル二基をビルドに叩き込む。

しかし、爆発はすれどそのミサイルを破壊する対象として認識したビルドはすぐさま拳を叩きつけて分解・霧散させ、自分への威力を軽減する。

舞い上がる爆炎。

そこへさらにクリスはガトリング砲や小型ミサイルを叩き込む。滅多打ちである。

(前に龍我が言っていた。お前は誰よりも綺麗事を言っちまう奴だって。そんなお前が、そんなもんに振り回されてんじゃねえよ・・・!!)

「お前は愛と平和の為に戦ってきたんだろ!!」

その手の武器を狙撃銃へと変えて、一気にビルドを撃ち抜く。

それに吹っ飛ばされて倒れるビルド。だが、手を使わずにばっと立ち上がるビルド。

「ウォォォオオ!!」

そのビルドに向かって巻き起こった黒煙の中からクローズが突っ込んでくる。

そのクローズの拳がビルドの顔面を打ち据えるも、踏み止まったビルドの拳がクローズを捉える。そのまま激しい殴り合いに発展、互いに互いを殴り続ける。

(戦兎、何やってんだよ・・・・!)

その最中で、クローズは胸中でビルドに語り掛ける。

(また、そんなもんに振り回されやがって・・・!)

振り抜かれる拳を叩き落し、その顔面にもう一度拳を叩きつける。

「さっさと目ぇ覚ませ!バカ野郎!!!」

胸に一発叩きつける。そうして後ずさるも、ビルドはなおも襲い掛かる。

右の拳を防ぎ、続く左の拳も防ぐ――――

「今だ!」

両手を使わせた。これで、()()()()()()に反応出来ない。

「うぉぉおお!!」

響が爆炎の中を突っ切ってビルドのドライバーに取り付けられたハザードトリガーに向かって手を伸ばす。

(もう、これ以上、貴方に人を傷つけさせない。貴方が、もう二度と絶望しないように・・・だから!)

「届けぇぇぇぇええ!!!」

精一杯、手を伸ばす。そのまま、一気にハザードトリガーに向かって手を伸ばす。

そうして、それに触れる――――寸前で、ビルドの右手に掴まれる。

クローズが抑えきれずに、響がトリガーに触れるのを阻止されたのだ。

万事休す―――に、見えるかもしれない。

響とビルドの手。その隙間から、ビルドの背後から伸ばされた手。それが、ハザードトリガーを掴み取る。

「――――お願い」

そのトリガーを掴み取ったのは―――翼だ。

「戻ってきて!桐生ぅ――――!!」

そして、翼は、ハザードトリガーを力任せに外した。

外れた瞬間、ビルドの装甲から、『(ハザード)』が消えた。

元の、ラビットタンクフォームのビルドが、そこに立っていた。

「・・・俺・・・は・・・」

茫然としているビルド。

「良かった・・・戻った・・・」

「ったく、手間かけさせんじゃねえよ・・・」

疲れ切った様子でその場にへたり込む響とクリス。

だが・・・・

「う・・・・」

ビルドの体が大きく傾き、やがて装甲が粒子となって消える。

「あ・・・!」

倒れ行くビルド―――戦兎を後ろから慌てて抱き留める翼。

「桐生?・・・桐生!?」

あまりにもぐったりとし過ぎていた為に呼びかけてみたが返事がなく、見てみれば顔を歪めていた。

「桐生・・・あ・・・」

ふと戦兎の顔に触れようとした翼は、その手を見て気が付く。

 

血が、べったりとついていた。

 

そして思い出す。ビルドが―――戦兎が、ネフィリムに噛まれていたという事を。

それを知らせるかのように、遠くから、救急車のサイレンが鳴り響いていた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハザードフォーム・・・暴走の危険性を孕んだ、ビルドの形態・・・」

ナスターシャは、その戦闘力に戦慄を覚えていた。

「いつでもこの状態になれるというのは、中々に厄介なものですね・・・」

バンッ!と壁を叩く音が一つ。

「・・・ッ!己ェ・・葛城ィ・・・ッ!!」

頭に血が昇っているのか顔を真っ赤にして、額に青筋を浮かべて歯を食いしばっていた。

「暴走する力を与えるなど・・・悪魔、悪魔め・・・悪魔如きが、この私をここまでこけにするなど・・・・許さんぞォ・・・!!」

ぶつぶつと悪態を吐きながら部屋を出ていくジェームズ。

「ジェームズ博士・・・」

「・・・うっ!?ごほっ、ごほっ!」

「ッ!?マム!?」

突然、激しく咳き込むナスターシャ。

そうして、抑えた手を見てみれば、そこには口から吐いた血がついていた。

「こんな時に・・・げほっ、ごほっ・・・!」

「マム・・・マム!しっかりして!マム!」

ほどなくしてナスターシャは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ただ、止めたかっただけだった。

 

 

 

 

ハザードトリガーを使った理由は、ただそれだけだった。

ただ、龍我を止めたいという一心で、その禁断の力に手を出した。

だけど、その力で、自分は人を殺めてしまった。

本当は、責め立てられてもおかしくなかった。だけど、誰も責めてはくれなかった。

自分はただ暴走しただけで、意識がなかっただけだ、と。

だけど、そうはいかなかった。

愛と平和、誰一人として死なせない・・・そんな信念を抱えて戦ってきた筈なのに、自分は、人を殺してしまった。

本末転倒だ。

そして、絶望した。

また自分は暴走して人を殺すのではないのか。あのアイテムを使い続ける限り、自分は、人殺しの業からは逃げられないのではないか――――そう、思っていた。

自分は、『悪魔の科学者』で、人体実験で多くの人間をその手にかけてきたのだ。

記憶はないとはいえ、自分が、大勢の命を犠牲にしたのは確かだった。

だけど、そうだとしても―――自分はその力を、誰かの為に、正義の為に、愛と平和の為に使うと決めた。

他の誰でもない―――『桐生戦兎(ヒーロー)』と『葛城巧(ヴィラン)』の二面性をもつ、自分だからこそ。

 

誰かが言った。『科学の歴史は戦争の歴史だ』と。

 

人は、闘争によってその技術を高めてきた、と。

違う。そうじゃない。科学とは、人の暮らしを豊かにするものだ。

その善悪なんて、使う人間によって決まる。だから自分は、この力を誰かの為に使うと決めたのだ。

父が願ったように、もう一人の自分が望んだように。

 

誰かを失う痛みを知っているから。

 

自分が誰かを殺してしまう苦しみを知っているから。

 

誰かを悲しませてしまう辛さを知っているから。

 

誰かの為に傷付く、傷を知っているから。

 

 

 

 

俺は―――その為だけに―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ん」

意識が、覚醒する。

真っ白な天井を見上げて、戦兎は自分が寝ていたという事を認識する。

視線を動かし、口に呼吸器が取り付けられている事に気付いて、それを外して起き上がる。

そうして頭を抑えつつ、戦兎は思い出す。

 

病人のローブ、医療機器のある部屋、そこで寝かされていた自分――――

 

そして、ネフィリムの口が閉じないように踏ん張っていた所で、意識が途切れた事を―――

 

「ああ、そうか・・・また暴走したのか・・・」

なんとも間抜け話だ。暴走すると分かっていても、それを使わなければ奴には勝てないのだから。それで暴走していては、まさしく本末転倒だ。

「早急にあれを作らねえとな・・・・」

あれを完成させて、ハザードトリガーの力を制御しなければならない。

その為には、多少の無理を通してでも―――

「・・・ん?今何日だ?」

と、割とどうでも良いかもしれない事を思い出し、日程を見てみると――――

「えーっと・・・一、二、三・・・ああ、三日かって結構経ってるじゃねえか!?」

 

 

 

戦兎は知らない。自分が寝ていた間に、自分よりも響の方が重大な事態に陥っている事に―――

 

 

 

融合症例が故の、最大の苦難というものを――――




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

戦兎が昏睡状態となった状態の二課では。

「なんでお前そんなに眠そうなんだ?」

それぞれがそれぞれの想いを馳せる。

(もう、私一人の想いでは、何も成せない・・・)

自らの行いを見返すマリアは、どう思うか。

「ここで何をしているんですか?」

次回『それぞれのアンビバレンス』

『随分と困っているようだな』
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