愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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マ「天才物理学者であり仮面ライダービルドこと桐生戦兎が昏睡状態の中、二課とF.I.Sの間で新たな抗争が勃発していた」
調「本当、なんであんなクズを守らなければならないの」
マ「抑えなさい調。それについては私も同感だけども、今の私たちにドクターは必要なの」
調「はあ・・・そんなわけでぶつかったドクターと響さん。しかし、いま響さんの体には、とんでもないことが起きていることを、まだ誰も知らない・・・」
マ「・・・よし、終わったわね」
調「じゃあ私はこれから慧くんと出かける予定があるから」
マ「わかったわ。さてこっちは今日の夕飯の献立でも考えて・・・」
シ「おい」
マ「あらシン、何かしら?」
シ「このカンペが見えないのか」
マ「えっと・・・『終わるのが早すぎる』・・・え?」
シ「そういう訳だ」
マ「どういう訳よ!?」
シ「マリアの体重は「え」この間の測定で「待って」ちゃっかりh」
マ「待ちなさぁぁぁあい!!」蛇腹剣
シ「ふん」回避&どろん!
マ「はあ・・・はあ・・・だ、誰にも聞かれてないわよね・・・?」
響「マリアさん・・・・」
マ「ん?どうしたのそんな申訳なさそうに・・・」
響「・・・リークしたのセレナちゃんです」
マ「セレナぁぁぁあぁああ!?」


翼「今回より、作者の都合により、二日間投稿から週一投稿となりました。楽しみにしていただいている皆様には申し訳ありませんが、しかしこれからもこの小説をよろしくお願いします」


ブレイクしていくキミに

――――果たして彼女は、自らの体の熱量が引きあがっている事に気が付いているだろうか。

 

 

その答えは―――否である。

 

(力が・・・漲る・・・)

その身に触れた木の葉が燃えて消えていったという事も、彼女は気付かない。

「な、なんだと・・・!?」

「この・・・熱気は・・・もしかして・・・」

その熱さに、ウェルと未来は驚きを隠せない。

(もしかして、これがクロの言ってた、響の危険・・・!?)

体から発せられる異常な熱。それが、一体何を意味するのか。

「なんなんだ・・・お前もあの()()()()()も!いつもいつも都合の良い所で、こちらの都合をひっちゃかめっちゃかにしてくれる、お前らはぁぁああ!!!」

ウェルがソロモンの杖を振りかざし、ノイズをさらに召喚していく。

「ハァー・・・戦兎先生は、英雄もどきなんかじゃない・・・」

腰をぐっと落として、拳を構えて、響は走り出す。

「愛と平和の為に戦う、仮面ライダー(正義のヒーロー)だ!」

叫び、その拳をノイズに叩きつける。

 

「―――ぎゅっと握った拳、1000パーのThunder」

 

そのまま一気に蹂躙、もはやノイズなど、彼女の相手ではない。

そのまま千切っては投げ、千切っては投げ、もはや一方的な展開。

「いつもいつもいつもいつもいつもぉぉぉぉおお!!!」

一方のウェルも負けじとノイズを出しまくる。しかし、それでも響の拳には敵わず、着実にその数を減らしていく。

しかし、時間もかけてはいられない。

響は一気に勝負に出る。

右手のギアを巨大なナックルに変形させて、腰のブースターとギアのブースターを掛け合わせ、回転炉によってエネルギーをチャージ。

「行っけぇぇぇぇええぇぇええぇえええええ!!!」

そのまま前に飛び出し、目の前のノイズを一気に消し飛ばす。

「うわぁぁああ!?」

衝撃が迸る。

凄まじい程の爆発が起き―――それでもウェルはしぶとく生き残る。

(仕留めそこねた・・・!)

であるならば、さらなる一撃を叩き込むだけの事。

ウェルは相も変わらずソロモンの杖を使ってノイズを狂ったように召喚しまくる。

足のギアのパワージャッキを叩き起こし、そして腰を低くして右腕のギアのエネルギーを充填。

「ウォォォォオオオォォオオ!!!」

叫び、ジャッキを叩きつけて瞬間加速、そのまま腰と腕のジェットでさらに加速。

ノイズの集団の中を突き進み、ウェルに迫る。

「う、うわぁぁああぁぁあぁあああ!?」

そのままウェルに拳が直撃するかと思いきや――――

 

響の必殺の一撃は、いとも容易く弾かれた――――

 

 

『Ready Impact Wolf Breke』

 

 

「うあ!?」

 

否、響が()()()()()

 

その理由は、響にしか分からない。

引っ込めた腕のすぐ傍で吹き荒れた、()()()()()()()

脳裏にいきなり叩きつけられた、()()()()()()()()()()イメージ。

それらが意味する事とは一体。

だが、しかし、これだけは分かった。

(今腕を引っ込めてなかったら、この人に、腕を斬り飛ばされた・・・)

響の目の前に立つ、存在。

スリム感のあるボディ、無機質な黒の装甲―――そして、顔全体を覆うV字のバイザー・・・

「仮面ライダークライム・・・シンさん・・・!」

完全聖遺物にして高周波ブレード『雷切』を右足で掴み、振り抜いた足を突きつけたまま、クライムはそこに立っていた。

その後ろには、ギアを纏った切歌がウェルを庇うように立っていた。

「ドクターと合流した。至急、回収を頼む」

シン―――クライムがこちらに来ているであろうナスターシャたちに連絡を入れる。

 

 

 

その一方で、クライムから連絡を貰ったナスターシャとマリアは。

「櫻井理論に基づく異端技術は、特異災害対策機動部の占有物ではありません。ドクターがノイズを発生させた事で、その位置を絞り込むことなど容易い・・・」

「だけどマム・・・」

「分かっています。こちらが知り得たという事は、相手もまた然りです。急ぎましょう」

そう、敵は、こちらと同じ戦力を有しているのだ。

時間はない。

「聞こえてるわね?二人とも」

『ああ』

『ドクターを連れて速やかに離脱デスよね』

 

 

 

 

が、しかしである。

「アイツを相手に、言う程簡単ではないデスよ・・・」

「俺ならどうにか出来ない事はない、が・・・」

何か、様子がおかしい。

彼女は、否、人間であれほどの熱量を発して果たして無事でいられるのだろうか。

『それと、もう一つ・・・』

「ん?どうした、マリ――――」

その時だった。

 

「立花響ぃぃぃいい――――ッ!!!」

 

「「「ッ!?」」」

その登場は、完全に彼らの意の外だった。

 

スクラップクラッシュッ!!!』

 

全てを喰らう虎の牙が響に襲い掛かる。

「うわ――――」

紙一重で躱した―――が、

「がぁぁぁああ!!」

着地したタスクがさらなる牙を響に叩きつける。

「がっ―――」

その蹴りは響の腹を抉り―――

「ダダダダダダ―――――ッ!!」

そしてライダーキックのラッシュの叩き込み、蹴り飛ばす。

「ダラァッ!!」

「ごはっ―――」

そして、次の瞬間、叩き込まれた全ての衝撃が響の体を一周回り――――

 

―――体内で炸裂した。

 

「かはっ・・・」

喀血し、その場に膝をつく響。

「慧介!?」

「なんでこんな所に・・・」

『ッ!?もう着いたの!?』

「どういう事だマリア!?」

『ジェームズ博士が慧介にドーピング剤を打ったのよ!それで、ドクターがノイズを出したのを検知したらすぐに出ちゃって・・・』

「あの野郎・・・ッ!!!」

思わずその手の雷切を握りしめるクライム。

一方、タスクは、膝をついた響の髪の毛を掴み、無理矢理持ち上げる。

そしてツインブレイカーを構える。

「くたばれ」

「う・・・あ・・・」

ツインブレイカーのパイルはすでに高速回転している。

「ッ!?待て慧介!」

「流石に人殺しはまずいデスって!」

二人が止めるも止まらず、タスクはそのままツインブレイカーを響に振り下ろそうとする。

「やめてぇぇええ!!」

しかし、そこへギアを纏った調がタスクの腕に掴まり止める。

「だめだよ慧くん!そんな事をしたら、もう後戻りなんて・・・」

「引っ込んでろ!」

「きゃあ!?」

タスクが調を振り払う。

「調!おい慧介!いくらなんでも・・・」

「黙ってろっ・・・!!」

「っ・・・!?」

タスクが複眼越しに切歌を睨む。その眼光と声音に、切歌は押し黙ってしまう。

「俺の邪魔をする奴は、誰であろうとぶっ潰す・・・!!」

「慧くん・・・!」

変わり果てたタスクの言動に、調は、涙を流す。

そのまま、タスクは今度こそ、響にツインブレイカーを叩き込もうとした――――

 

レッツブゥレイクッ!!!』

 

響の背後、その上空から、クローズがクローズドラゴン・ブレイズを纏ったツインブレイカーをタスクに叩き込んで吹っ飛ばす。

「ぐぁぁぁあ!?」

「慧介!?」

そのまま吹っ飛んでクライムたちの背後のトラックに激突する。

「間一髪だったな」

そんな中で、倒れる響を支えて登場したクローズは、彼らを一様に睨みつけていた。

 

―――が、

 

「・・・ぅあっつ!?あっつ!?ちょ!?おま、あっつ!?」

響の放つ熱量に耐えられず、思わずその場に座らせて離れるクローズ。

「おまっ、とんでもない程に熱いぞ!?」

「あつ・・・い・・・?」

響は、タスクから受けた必殺技が痛むのか、曖昧に返事を返す事しか出来ない。

しかし、クローズの言葉に、自分がとてつもない熱を発している事に気付き――――

 

突如として胸の痛みを自覚した。

 

「う・・・ぐ・・・あぁぁ!?」

「響!?」

突然苦しみだした響に驚くクローズ。

「がぁぁああぁああ!」

しかし、そこでなおも立ち上がるタスクが、クローズと響に向かって走り出す。

「待て、慧――――」

クライムの制止すら振り切って、彼はその中を突っ走り、クローズに向かってその拳を振り下ろす。

しかし、それをクローズは受け止める。

「よお、調子良さそうじゃねえか」

「万丈・・・龍我ァ・・・!!」

仮面の奥ではさぞ血走った眼を走らせているのだろう。

 

何故、ここにクローズがいるのか。

 

少し、プロテインでも買いに出かけていたのだが、その帰りに弦十郎から連絡を受けてすぐさま急行、途中未来とクロを見つけ、未来にそこにいるよう促し、クロを連れて響の元へやってきたのだ。

(そろそろ本気でお灸をすえねえとな)

ふとクローズは響の方を見る。未だ、胸を抑えて苦しそうに蹲っていた。

(悪い・・・少しの間だけ我慢してくれ)

直後、タスクのもう一方の拳がクローズに叩き込まれる。

しかし、それはいとも容易く受け止められており―――

「もう、遊びの時間は終わりだ・・・・」

「ッ!?」

次の瞬間、タスクの顔面にクローズの鉄拳が入っていた。

「がっ!?」

すかさずもう一方の拳によるブローが決まり、崩れた所を腕を掴まれ、建物に向かって叩きつけられる。

 

シィングルゥッ!!』

 

ツインブレイカーにロックフルボトルを装填し、そのまま駆け出して壁に叩きつけたタスクに叩きつけられ、壁を抜ける。

 

シングルブゥレイクゥッ!!!』

 

「ぐあぁぁあああ!?」

タスクとクローズはそのまま建物の壁をぶち抜いて中へ。しかし、そこから聞こえるのは、タスクの悲鳴のみ――――

「慧くん・・・」

「今は慧介の事は、クローズに任せるしかないですよ。止められるのは、アイツだけなんデスから・・・」

そう切歌が言った所で―――

「頑張る二人にプレゼントです」

「「ッ!?」」

いつの間にか、否、タスクに気を取られていたせいでクライムですらウェルが二人の背後にいる事に気付かなった。

そして、ウェルは、二人の首に何かを押し当てた。

「それは―――」

そして、それを容赦なく二人に注入した―――

思わず距離を取る調と切歌。

「ッ!?」

「何しやがるデスか!?」

何かを注入された部分を抑える二人。

 

それは、彼女たち『第二種適合者』がシンフォギアを纏う上では必要不可欠な『LiNKER』と呼ばれる薬品―――

 

「投薬してから、まだ効果時間には余裕がある、それなのに何故―――」

「だからこその連続投与です!あの化け物が来る前にケリをつけるには、今以上の出力でねじ伏せるしかありません。その為にはまず、無理矢理にでも適合係数を引き上げる必要があります・・・!」

眼鏡のブリッジを上げ、得意気に語って見せるウェル。

「でも、そんなことをすれば、過剰投与(オーバードーズ)の負荷で・・・うっ」

言いかけた所で、調がめまいを覚える。

「ふざけんな!なんでアタシたちが、アンタを助ける為にそんな事を――――」

「するデスよ!」

切歌の怒鳴りをウェルはすかさず言い返して見せる。

「いいえ、せざるを得ないのでしょう!貴方たちが、連帯感や仲間意識などで、私の救出に向かうなど到底考えられない事を!」

どうやら、互いの事をよくわかっているようだ。

「大方、あのオバハンの容態が悪化したから、おっかなびっくりかけつけたに違いありませぇん!」

狂ったように喚き散らすウェル。

「病に侵されたナスターシャには、生化学者である私の治療が不可欠・・・さあ、自分の限界を超えた力で、私を助けて見せたらどうですか!?」

下に置いたものを拾い上げ、二人を指差しそう言って見せる。

「う・・・ぐ・・・このぉ・・!!!」

その一方で、胸の痛みに苦しみながらも立ち上がる響。

そして、過剰投与(オーバードーズ)によって強烈なめまいなどの症状に侵されている調と切歌。

「ッ・・・やろう、切ちゃん・・・!!」

苦しそうに、言葉を絞り出す調。

「マムの所に、ドクターを連れ帰るのが・・・私たちの使命だ・・・!」

「調・・・」

言い切る調に、クライムは何も言えず。

「絶唱、デスか・・・・?」

もはや、手段はそれしか残されていない。

「そう、ユーたち歌っちゃえよ!」

ウェルが、気持ち悪い笑顔で言う。

「適合係数がてっぺんに届くほど、ギアからのバックファイアを軽減できる事は、過去の臨床データが実証済みィ!だったらLiNKERぶっこんだばかりの今なら、絶唱唄いたい放題のやりたいほうだーい!!!」

そう喚き散らすウェル。

「分かった。だからもう喋るな」

―――に、向かって強烈な膝蹴りを叩き込むクライム。

「ぐげあ・・・!?」

腹に炸裂したそれは一気にウェルの全身を駆け巡り、呆気なく崩れさせる。

「な、何を・・・ぐげ」

顔を踏みつけ、クライムは仮面の奥の眼光で見下す。

「貴様は脅せば簡単になんでもしてくれる奴だ。だからマムへの治療も脅せばどうという事はない。何安心しろ。すぐに良くなる・・・が、しばらくそこでくたばってろ」

と、ウェルから足をどかして二人の元へ行く。

「俺が時間を稼ぐ。二人はその間に絶唱を唄え」

「さっきのですっきりした・・・」

「やらいでかデス・・・!!」

叫び、そして二人は―――歌う。

 

「「―――Gatrandis babel ziggurat edenal―――」」

 

「―――ッ!?」

それを聞いた瞬間、響が一気に青ざめる。

「この歌って・・・絶唱・・・!?」

 

そう―――自身の全てを燃やし尽くして放つ、シンフォギアの最終決戦技『絶唱』

 

 

それを、調と切歌は歌っているのだ。

 

 

「「―――Emustolronzen fine el baral zizzl―――」」

 

 

そして――――響にとっては禁忌にも等しい、禁断の必殺技。

それは、戦兎にとっての、ハザードトリガーにも等しい、彼女たちが絶対にやってはいけない事。

「だめだよ・・・・LiNKER頼りの絶唱は、装者の命はボロボロにしてしまうんだ!」

響の叫びは虚しく、それでも二人は歌い続ける。

 

 

「「―――Gatrandis babel ziggurat edenal―――」」

 

「止めて・・・止めてください!今すぐ、二人に歌わせるのをやめさせてください!」

「・・・立花響」

響の叫びに、クライムは静かに答える。

「・・・これが二人の生き様だ」

「――――ッ!?」

その言葉に、響は、言葉を失った。

 

「「―――Emustolronzen fine el zizzl―――……」」

 

詠唱が、終わる――――

「「―――ぐぅっ!?」」

すぐさま、絶唱の負荷が二人に叩きつけられる。

 

女神ザババの絶唱二段構え。

 

シュルシャガナの絶唱は、無限軌道から放たれる、果てしなき斬撃。

それによって、敵の肉を削ぎ落すのがシュルシャガナの力。

その力で、響の動きを封殺――――

 

そして続くイガリマの絶唱。

その特性は、対象の魂の両断。物質的な防御手段は無く、絶対切断の一撃を叩きつける事が出来る。

 

女神ザババの振るう二対の神の刃。それがシュルシャガナとイガリマ。これほど相性の良い必殺技があろうか―――

 

(これが決まれば、いくら融合症例といえど・・・)

念のために、三撃目を構えるクライム。ルインドライバーの引き金に手をかけ、いつでも必殺技を放てるようにする。

クライムの必殺技『インパクトウルフブレイク』は、成分の浸透率を刀を持たせた足に収束させる事で、最速で重厚な斬撃を叩き込む事が出来る。

その斬撃は、シンの刃物に対する圧倒的才能による腕と、ルインドライバーによる変身によってもたらされる、絶対切断の一撃。

切歌の絶唱とは対を成し、魂ではなく万物を切断する。

そのまま、絶唱によるエネルギー臨界を迎えようとした時だった。

 

「―――Gatrandis babel ziggurat edenal―――」

 

なんと響も絶唱を歌い出した。

(何を・・・!?)

その行為に、クライムは驚く。

しかし、すぐに気付く。

「ギアの出力が・・・」

「エネルギーレベルが、絶唱発動まで届かない・・・あ!?」

驚くのも束の間、絶唱形態に変形させたギアが、急激に元に戻っていく。

「減圧・・・うわ!?」

切歌のギアすらも元に戻る。

それを見て、クライムの直感が感じ取った。

「まさか―――束ねたのか!?二人の絶唱を・・・中途半場な絶唱で・・・!?」

「「・・・!?」」

響のアームドギアの特性は、誰かと手を繋ぐ事による、エネルギーの収束、または操作。

「S2CA・・・トライ・バースト・・・」

 

「―――セット・ハーモニクス!!」

 

響が叫び、収束したエネルギーが解放させる。

「いくらなんでも無茶だ・・・!!」

「それでも・・・二人に、絶唱は歌わせない・・・!!!」

「何故、お前は・・・お前たちはそこまでする!?何故敵である俺たちに、そこまでする必要がある!?」

クライムが響に向かって尋ねる。

そんな中で、響は、クライムに向かって――――ピースサインを向けてきた。

「ラブ&ピース・・・・私の尊敬する人が、いつも言っている事です・・・」

開放されたエネルギーを合体させたギアに収束させつつ、響は語る。

「くしゃっとするそうなんです。誰かの為になれると、つい思わず、くしゃっとするそうなんです。私も、同じです・・・」

「・・・桐生戦兎か」

クライムは、思い当たる人物の名を口にする。

「だから・・・私も――――!!!」

高速回転するギアを天に向けて、その膨大なエネルギーをぶっ放す。

「愛と―――平和の―――為にぃぃぃぃぃいいいぃいい!!!」

巻き起こる虹色の螺旋。

その光は天を突き、その輝きを街に轟かせる。

それが、立花響にしか出来ない、束ねる力。

「これが・・・立花響・・・!」

その威力に、クライムは畏怖せざるを得なかった。

この様な存在がいるとは、思わなかったのだ。

(人間の身で化け物と呼べる人間なら戦場で何人も見てきた・・・だがこの立花響という存在は、破壊の力を存分に振り回せるいわば文字通りの人間の枠を逸脱した怪物・・・彼女がもし殺意をもってこちらにあれを向けていたら、間違いなくやられていた・・・)

今更ながら、とんでもない相手に喧嘩を売ったものだと思ってしまう。

S2CAを放った響は、その場に立ったまま動かない。

凄まじい熱を放っているのだ。おそらく、体に相当な負荷が掛かっている筈。

「マム、敵の位置情報を教えてくれ」

『天羽々斬とイチイバルが現在そちらに急行しています。ビルドの姿は確認できませんが、到着までもう少しかかります。その間に向こうの装者は合流するでしょう。ですので到着するまで耐えてください』

「ああ。過剰投与(オーバードーズ)の影響で二人は動けないが、この刃で守り通して見せよう」

クライムはナスターシャとの連絡を切る。

「ごめんなさい・・・」

過剰投与(オーバードーズ)でなければ、こんな事・・・・」

二人が、顔色を悪くさせながらも、クライムに申し訳なさそうに謝る。

「気にするな。俺がいる限り、誰も死なせはしない」

「シン・・・」

「とにかく今はウェルを確保する事が先決だ」

ふと、調が響の方を見る。

「あいつは・・・」

「今はやめておいた方がいい。あのままにしておいた方が戦力の分散にはなる」

「分かったデス」

その時だった。

「ぐあぁぁあ!?」

その直後で、彼らの後ろの横の建物の壁からタスクが壁を突き破ってごろごろと地面を転がりながら出てくる。

「慧くん・・・!?」

その姿を見る調だが、過剰投与(オーバードーズ)の影響で上手く喋れない。

タスクが突き破った所からクローズが歩いて出てくる。

「ぐ・・・ぅ・・・あぁぁああ!!!」

タスクは狂ったように叫び、そのアクティベイトレンチを降ろす。

 

スクラップクラッシュッ!!!』

 

タスクが必殺技を発動する。

「まて慧介!」

クライムの制止も聞かず、タスクはクローズに向かってオレンジに輝く右脚をもって走り出す。

飛び上がり、高所からクローズを狙う。

「がぁぁあぁああ!!」

「・・・」

それに対して、クローズもアクティベイトレンチを降ろす。

 

スクラップブレイクッ!!!』

 

それによってクローズの右脚にエネルギーが収束する。

そのクローズに向かって、タスクが回転して蹴りを叩き込もうとする。

だが、それをクローズは前に出る形で回避。

「がぁぁぁあ!!」

すかさずタスクは左足を軸に背後のクローズに向かって回し蹴りを放つ―――しかし、タスクの回し蹴りは空振る。

「な―――」

気付けば、クローズは飛び上がっており―――

「ウオリャァァアァアアア!!!」

その顔面にボレーキックを叩きつけた。

「ぐあぁぁああぁああ!?」

蹴り飛ばされたタスクは、そのまま調たちの元まで吹っ飛ぶ。

そして、彼女たちのすぐ傍で止まった所で、彼の変身が解除される。

「慧くん!」

そんな慧介に、調が涙ながらに駆け寄る。

「慧くん!慧くん・・・!!」

必至にゆするも、起きない慧介。

「立花ぁ!!」

「おい!無事か!?」

そこへ、まさかのバイクに乗ってやってきた翼と、ヘリから飛び降りて走ってきたクリスがやってくる。

「響!」

さらには未来までやってくる始末。

「く、ここまでか・・・!」

クライムは刀を構える。

響は動けず、実質三対一のこの状況。

(どう切り抜ける・・・!?)

全力で頭を回転させるクライム。

そんな中で、未来は一人、膝をついた響へと駆け寄る。

しかし、その最中で、未来は伸ばした手にとてつもない熱さを感じる。

「うっ・・・!?」

それは、響自身から放たれる圧倒的熱量。

「絶唱の三重唱を受けた事でのオーバーヒート・・・?だが、これは・・・!?」

その最中で、クライムは見た。

 

響の胸から、何か、金色の物質が出来ている事に。

 

「なんだあれは・・・!?」

「いやあ!響ぃ!!」

「ッ!?」

そんな中で、未来がなおも駆け寄ろうとする。

(いや、響が遠く、私がいけない所に行っちゃう・・・!!)

そんなのは、嫌だ。だから――――

「よせ!それ以上近付けば火傷では済まないぞ!」

「そうだ!落ち着け!」

「でも、でもぉ!!」

クライムが叫び、クリスが未来を止める。

(このままでは奴は死ぬ、だが、どうすれば・・・)

「慧くん・・・慧くん・・・!!」

後ろでは調が泣きながら慧介に呼びかけている。

「立花・・・」

そして、翼はどうすればこの状況を打開できるかと考えていた。

「やばい、このままじゃ響が・・・・」

自身の熱量にやられてしまう。

(熱なら冷やせばいいよな?何か冷やせるもの・・・)

見上げたクローズはそれを捉える。

「貯水タンクだ!」

響の真上には、貯水タンクがあった。

「承知ッ!!」

それを聞いた翼がすぐさま動く。飛び上がってその貯水タンクに傷をつけ、そこから水を溢れ出させる。

それが、一気に響に掛けられ、全ての水が流れ出たころには、ギアが解除され、私服姿になった響が出てきた。

「どうにかなったのか・・・」

「響!」

クリスが呟く中、未来が響に駆け寄る。

「響、しっかりして、響・・・!!」

未来が呼びかけても起きる気配を見せない。

「立花・・・」

そんな様子を翼は拳を握りしめて悔しがり、改めてクライムたちの方を見る。

そこには、何かの要因で動けない切歌と、変身解除されて昏倒している慧介に必死に呼びかける調、腹を抱えて悶絶するウェル、そして、そんな三人を構えるクライムがいる。

そんな彼らに、翼は、静かに歩み寄る。

その翼に、クライムは警戒して雷切を向ける。

「・・・出来る事ならば戦いたくはない」

「なんだと・・・?」

「先ほどの言葉で、貴方は悪人ではないと十分に分かる。だからこそ、私は貴方たちとは戦いたくない」

翼は、静かに、彼らに話しかける。

「今すぐに無理とは言わない。ただ、どうかその少年が身につけているスクラッシュドライバーを返してほしい。その力は、その少年には荷が重すぎる」

そう言って、翼は右手を差し出す。

その行為に、クライムは戸惑いを見せる。

「スクラッシュドライバー・・・」

そんな中で、調が呟く。すぐに、その視線は慧介の腰に巻き付けられているスクラッシュドライバーに視線を向けた。

「調?」

「そうだ・・・こんなものがあるから・・・慧くんは・・・」

調は、そのドライバーを掴み、そして慧介の腰から引き剥がす。

「こんなものが・・・あるから・・・ッ!!」

怒りに血走った眼をそれに向けて、調はそれを上空へ投げる。

「こんなものがあるから慧くんはぁぁぁぁぁああぁあああッ!!!」

そして、ヘッドギアを変形させ、巨大な回転鋸を展開し、その鋸をもって()()()()()()()()()()()()()()()()

「スクラッシュドライバーを・・・」

「壊しやがった・・・!?」

その行為に、その場にいる全員が茫然とした。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・!!」

肩を激しく上下させ、荒々しく呼吸する調。

そんな調を見て、クローズは何も言わず、自身のスクラッシュドライバーからドラゴンスクラッシュゼリーを取り出して変身を解除する。

そして、黙って破壊されたスクラッシュドライバーとタイガースクラッシュゼリーを拾い上げてそのまま調の横を素通りする。

「・・・確かに返してもらった」

「・・・」

すれ違い様にそう言って、龍我は仲間の元へ向かう。

それと同時に、上空からマリアたちの乗る飛行機が飛んでくる。

 

 

調、切歌、シンは気を失った慧介とウェル、そしてウェルが持っていたものをもってそのまま飛び立ち、

 

龍我、翼、クリスは響をすぐさま治療室に搬送、破壊されたスクラッシュドライバーとタイガースクラッシュゼリーを厳重に保管した。

 

 

 

 

そうして、分かった事は――――

 

 

 

 

 

――――響がガングニールに侵食されているということだった。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「では本題に入りましょうか」

無事、F.I.Sと合流したウェル。

「俺を退院させて戦力に加える、ね・・・」

その一方、戦えない響の代わりに、戦兎が出ることとなる。

「楽しい楽しい買い出しだって、こうも荷物が多いとめんどくさい労働デスよ!」

その一方で買い出しに出ていた調と切歌。

その最中で、彼女たちの身に危機が迫る。

次回『隠されたトゥルース』

「これは・・・まさか・・・!?」

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