ク「部屋を片付けねえからそういう事になるんだろうが」
翼「返す言葉もない」
ク「やれやれ・・・とりあえずテレビのリモコンの事は後にして」
エボ「仮面ライダービルドこと桐生戦兎は新世界でノイズという人類共通の特異災害であるノイズ共と戦う日々を送っていたァ!」
翼「貴様ァ!まだ登場も先なのにまた出てくるとはどういう了見だ!」
エボ「ハッハッハ!そう簡単にオレを止められると思うなよォ!」
ク「くっ、龍我たちの登場を差し置いて自分だけ勝手に出てくるなんて・・・おのれエボルト!」
翼「落ち着け雪音!それは自分の事を棚上げして相手を勝手に追い詰める迷惑おじさんのセリフだ!」
ク「無駄に長いなそのあだ名!?」
エボ「そんな事はどうでもいいだろう。あ、そうだ。ちょいとここらで遊ぼうか」
ク「おいまて一体なにして遊ぶ・・・」
エボ響「
翼「それは中の人ネタ!?それも私たちでも滅多に使えない他人のものだと!?」
エボ響「どうだ!これぞ声の仕事を募集出来る地球外生命体の力だァ」
ク「くっそぉ・・・」
エボ響「じゃあついでにこれはどうだァ!」
エボクリ「このビチ〇ソがーッ!」
ク「あぁぁああ!!アタシの声でそれをやるなァ!」
翼「おのれ!立花だけには飽き足らず、雪音まで」
エボ翼「いくよ、バル〇ィッシュ」
翼「え?なんで私だけまともなキャラ・・・」
エボ翼「まああれだァ。今は全く見てねえが昔作者が見てたからだな」
ク「いくら作者の推しキャラだからってこの扱いの差はなんだ・・・」
翼「す、すまない雪音!私の中の人にもそれ相応の悪役を演じていたのだが・・・」
エボ「ま、作者の気に入ったアニメが少ねえのが原因だなァ」
ク「おのれくそ作者ァ!」
作「え?自分が悪いの?」
エボ「ちなみにィ、作者はCVよりも作画とストーリー性を優先するタイプの視聴者だったりする」
作「やめろぉ!それじゃあ完全に自分がにわかに見えるじゃないかァ!」
翼「ちゃっかり中の人に興味を持ち始めたのがシンフォギアからだったりするからな貴方は」
ク「それなら中の人ネタ使うな!慣れてもないのに!」
作「うわぁぁああ!!」心の奈落に落っこちた
翼「やれやれ・・・あ、しまった!?これではあらすじ紹介が出来ていない!」
ク「そういやそうだ!よし、今からでもやるぞ!」
エボ「あー、聖遺物に体を侵食されていた立花響は、小日向未来の制止も無視してシンフォギアを纏い、んでもって未来は爆発に巻き込まれて死にました。はい終わり」
つばクリ「勝手に終わらせるなぁぁぁあ!!そして殺すなぁぁあ!!」
エボ「という訳で、シンフォギア・ビルド、その第三五話をどうぞォ!」
翼「だが、これだけは譲らんぞ」
ク「ああ、これだけは譲らねえ」
つばクリ「十二月五日の日間ランキングでシンフォギア・ビルドが七十九位にランクインしました!」
翼「本当にありがとございます!」
ク「正直週間の方にも乗った事はあるんだが、日間に乗ったのはこれが初めてだ」
作「これからもこの作品をよろしくお願いします!」
ク「と、いうわけで、本編をどうぞ!」
「シンに何したの!?」
マリアがジェームズの胸倉を掴み上げてそう問い詰める。
その理由は、シンの突然の体調不良によるものだ。
何故かスカイタワーから戻る途中、変身を解除したシンがいきなり倒れたのだ。
それも見た目以上に深刻な様子で。
そのマリアの問いかけに、ジェームズはなんの悪びれもなく答える。
「何って簡単だよ。フルボトルの成分を装甲だけでなく人体にまで浸透させるよう改良しただけの事」
「人体に・・・ですって・・・!?」
その言葉に、マリアは目を見張る。
「それって、大丈夫なんデスか!?」
「知らんよそんな事。実際何が起こるのか、私に分かる訳がない」
「シンを実験体にしたの!?一体なんのつもりでそんな事を――――」
「黙れェッ!!」
ジェームズがマリアの手を振り払う。
「貴様に何が分かる!私の才能を恐れたクズによって殺された私の気持ちなど、貴様なんぞに分かってたまるかッ!!」
もはや正気じゃない。
人は、もはやここまで狂ってしまうものなのか。
「それに、貴様らのやっていた事も存外、人の事を言えないのではないかね」
「なんですって・・・!?」
「そうだろう。何せ全ての計画をおじゃんにしようとしたんだからな」
「・・・!?」
何故、バレている。
「マリア、どういう事?」
慧介の看病を一旦切り上げてきた調が訪ねる。
「それは僕からお話ししましょう」
そこでウェルが部屋に入ってきた。
「ナスターシャは、十年も待たずに落ちる月の落下より、一つでも多くの命を救いたいという私たちの崇高な理念を、米国政府に売ろうとしたのですよ」
そう言って見せるウェルの言葉に、調と切歌は思わずナスターシャの方を見る。
「マム・・・」
「本当なのデスか・・・?」
「それだけではありません」
さらにウェルは続ける。
「マリアに、フィーネの魂が宿ったっていうのも、とんだでたらめ。ナスターシャとマリアが仕組んだ狂言芝居」
「ッ・・・」
それにマリアは目をそらす。
「ごめん・・・二人とも、ごめん・・・」
マリアは、本当に申し訳なさそうに二人に謝る。
「マリアがフィーネでないとしたら、じゃあ―――」
切歌を、どうしようもない恐怖が蝕む。
マリアが違うのであるならば、本当の器は――――
「僕を計画に加担させる為とは言え、貴方たちまで巻き込んだこの裏切りは、あんまりだと思いませんか?折角手に入れたネフィリムの心臓も、無駄になる所でしたよ」
その言葉に、誰も何も言う事が出来なかった。
その一方、近場のレストランにて、クリスは一人、ナポリタンをなんとも汚く食べていた。
戦場育ちという事を鑑みれば、それは仕方がないが、見ていてなんだか、口元を拭ってやりたくなる光景である。
そんなクリスの向かいには、翼がいた。
「なんか食えよ。奢るぞ?」
「夜の九時以降は食事を控えている」
「そんなんだからそんなんなんだよ」
「何が言いたい!用がないなら帰るぞ!」
立ち上がって、そう言う翼。
「・・・怒ってるのか?」
「愉快でいられる道理がない」
全く持ってその通りなのだろう。
「F.I.Sの事、立花の事、桐生の事、そして、仲間を守れない私の不甲斐なさを思えば・・・」
肩を震わせる翼。やがて座る翼。
「・・・呼び出したのは、一度一緒に飯が食いたかっただけだ」
理由を話すクリス。
「腹を割って話し合うのも色々悪くないと思ってな。アタシらいつからこうなんだ?目的は同じはずなのに、てんでバラバラになっちまってる。もっと連携を取り合って・・・」
「雪音」
そんなクリスの言葉を遮って、翼が厳しい言葉を言う。
「腹を割って話すというのなら、いい加減名前くらい呼んでもらいたいものだ」
「ハア!?」
それにクリスは思わず声を挙げる。
「それは、まあ・・・」
「まあまあそう言うなよ」
そんな時だった。聞き覚えのある声がしたと思い顔を上げてみれば、そこには龍我がいた。
「龍我・・・なんでこんな所に・・・」
「いや、ちょいと腹ごしらえしようと思ったら偶然お前らを見つけてな。そこちょっと座らせてもらうぜ」
龍我が、まるで翼の退路を断つかのように翼の隣に座る。
この座席の出口は一方のみ。もう一方は窓だ。
「お前もなんの用だ。用がないなら、そこをどいてもらいたいものだが・・・」
「何、俺も腹を割って話したいと思った所でな。まあなんだ、ここじゃちょっとなんだ」
龍我が右手で何かを投げ、それを左手で翼の前で掴み取って見せる。
それは、ドラゴンスクラッシュゼリーだった。
「これで語り合おうぜ」
「・・・」
それは、まさしく決闘の申し込みだった。
「・・・悪いが、そうする理由は私には・・・」
「だからそう言うなって。それともなんだ?俺に負けんのが怖いのか?」
あからさまな挑発。
翼と龍我の視線が錯綜し火花を散らす。
それを傍目に見ていたクリスは・・・
「・・・なんでこうなるんだ・・・・」
想った事を口にしてしまった。
拠点となる飛行機にて。
「・・・ん、ぐ・・・」
意識を覚醒させるシン。そこは、飛行機の医療室のベッドの上だった。
「俺は・・・」
頭を抑えつつ、シンは起き上がる。
そうして、徐々に意識を覚醒させつつ、何故自分がこんな所で寝ていたのかを思い出す。
「・・・そうか、俺は・・・」
おそらく、ルインドライバーの副作用的な何か。
「ジェームズ博士め・・・」
改良、否、改造によって、何か機能が追加されたのだろう。
それが、何かしらの副作用を及ぼしたのだろう。
なんとも、はた迷惑な男である。
「マリアたちは・・・」
どうにかベッドから降りようとした所で、体がかなり鈍重な事に気付く。おそらく何かの副作用故だろう。
しかし、だからといって足を止める訳にもいかず、シンはおそらく集合に使われているであろう部屋に向かう。
その最中で、未だ目を覚まさない慧介の方を見る。
その姿に一抹の罪悪感を感じ、すぐにその部屋を出る。
そうしてしばらく歩いた所で、ある部屋から話し声が聞こえてくる。
「嫌だなあ。悪辣な米国の連中から、貴方を守って見せたというのに」
ウェルだ。
「このソロモンの杖で」
会話に耳を傾けるシン。中には、調や切歌、マリア、ジェームズもいるようだ。
その中で、やや緊迫した雰囲気が感じられる。
ふと、足音が聞こえて、止まる。マリアの足音だ。
「マリア?」
「どうしてデスか・・・!?」
今の声の位置で、室内にいる者たちの大体の位置を把握する。
「フハハっ!そうでなくっちゃ!」
ウェルの嫌な嗤い声が聞こえてくる。
「偽りの気持ちでは世界は守れない・・・セレナの想いを継ぐ事なんて出来やしない。全ては力・・・力をもって貫かなければ、正義を成す事など出来やしない!世界を変えていけるのはドクターのやり方だけ。ならば私はドクターに賛同する!」
(マリア・・・)
その言葉に、シンは、どうしようもなかった。
「・・・そんなの嫌だよ」
そんな中で、調が声を挙げる。
「だけどそれじゃあ、力で弱い人たちを抑え込むって事だよ・・・」
そう調が呟くも、それに何かを言う者はいなかった。
「・・・分かりました」
ナスターシャがそう呟く。
「それが偽りのフィーネではなく、マリア・カデンツァヴナ・イヴの選択なのですね」
その言葉に、マリアは何も答えない。きっと、目で答えを返しているのだろう。
「うっ・・・ごほっ、ごほっ・・・」
「ッ!?大丈夫デスか!?」
ナスターシャの容態の変化を感じ取ったシンは部屋の中に入る。
「ッ、シン・・・」
「おや、もう起きれるのですか。驚きましたね」
マリアは少し気まずそうに、ウェルは嫌な笑顔でシンを見る。
その状況を見て、シンはシンを見てすぐに顔をそらしたマリアの方をしばし見て、やがて視線を外して隅の方にいるジェームズを見る。
「説明を聞こうか」
「ふん・・・成分を肉体にまで浸透させるようにしておいた。それによって本来の性能のさらに三倍の性能を引き出せるようにしておいた」
「三倍・・・体にかかる負荷は?」
「さあな。ただ、お前の体に成分が残留していなかった事を考えれば、ちゃんと成分回収機能は働いていたという事だろう。だが、成分を体に浸透させた影響で体調に不調が出たようだがなぁ・・・」
「そうか・・・」
シンはそれに頷くだけ、そしてすぐにナスターシャの方を見る。
「大丈夫か?」
「あとは僕に任せて、ナスターシャはゆっくり静養してください。さて、計画の軌道修正に忙しくなりそうだ。
ウェルはそれを最後に、部屋から出ていく。
「では、私もルインドライバーの改良といきましょうかね」
そう言って、ジェームズもウェルが出ていった扉とは別の扉から部屋を出ていく。
「・・・やりたいなら自分でやればいいのに」
その調の一言は、果たしてジェームズに聞こえていたかどうかは、誰にも分からなかった―――
そして、飛行機の一室。そこに張られた光の格子の中に―――未来はいた。
人目の付かない、橋の下。
そこはかつて、戦兎と龍我が、戦兎が葛城巧だという事が判明して決闘した場所だ。
そこに龍我と翼が対峙する。
それを、クリスが遠目ながら見守っていた。
『スクラァッシュドライバァーッ!!』
龍我がスクラッシュドライバーを腰に巻き付け、続けてドラゴンスクラッシュゼリーを装填する。
『ドゥラゴンジュエリィーッ!!』
何かを叩くような待機音が鳴り響き、龍我はファイティングポーズを取る。
そして翼は、すかさず天羽々斬の聖詠を唄う。
「―――
「変身!」
翼が聖詠を唄い終えると同時に、スクラッシュドライバーのアクティベイトレンチを一気に降ろす。
『潰れるゥ!流れるゥ!!溢れ出るゥッ!!!』
『ドゥラゴン・イン・クロォォズチャァァジッ!!』
『ブルァァァァア!!!』
龍我がクローズチャージに変身すると同時に、翼も天羽々斬をその身に纏う。
対峙する両者。
翼が刀を構える一方でクローズが構えるのはツインブレイカー。
そうしてしばし対峙していると、おもむろに翼が駆け出す。
「ハァア!!」
振り下ろされる一撃を、クローズはツインブレイカーで受け止め、すかさず反撃に右拳を突き出す。それを紙一重で躱した翼はそのまま回転、横薙ぎにクローズを斬り裂こうとするがクローズはそれを下がって回避。そしてツインブレイカーを振りかぶって翼に殴り掛かる。
それを大きく後ろに飛んだ翼は、上空から無数の刃を振らせる。
『千ノ落涙』
降り注ぐ剣の雨。それがクローズに向かって降り注ぐ。
クローズは両腕を掲げてそれを受ける。いくつもの刃がクローズに叩きつけられる。
「ぬ・・・ぐぉぉぉおお!!」
その雨の中を、クローズは突っ切って翼の所へ。
「―――ッ!!」
それに翼は予想通りと刀を構えて迎え撃つ。
突進していくクローズはツインブレイカーを振りかぶり、翼に向かって振り抜く。
それを翼は外側に躱し、その背中に刃を叩き込もうとする。しかし、それを引き戻したツインブレイカーによって防がれる。
そしてすかさず繰り出された後ろ回し蹴りを繰り出し、それを翼は紙一重で躱す。
その翼を追いかけ、刃と拳の応酬が始まる。
「お前、戦兎がああなったのは自分のせいって思ってるだろ!?」
「ッ!?」
突然、クローズがそう言いだした為に翼は思わず目を見開く。
「図星かよ!」
「くうっ!?」
拳が刀に叩きつけられる。
「お前って、そういう所似てるよな!」
「ぐっ、似ているって、誰にだ!?」
「戦兎だよ!お前と戦兎、一人で何かを抱え込む所なんかそっくりだ!」
ビームモードにしたツインブレイカーで光弾を放つクローズ。
その光弾を翼は叩き落し、すかさず接近する。そうして刃を振り下ろした瞬間、クローズは懐からビートクローザーを取り出してその刃を受け止める。
「私と桐生が・・・そんな事・・・」
「あるね!アイツの事を一番知ってる俺だから分かる。お前はそうやって一人で抱え込んでる!そんな所がアイツに似てんだよ!」
鍔迫り合いで翼を押し退け、すかさずツインブレイカーを放つ。
それを横に転がって躱す翼に、クローズはビートクローザーの連撃を叩きつける。
「私が一人で抱え込んでいるだと・・・そんな事、お前なんかに分かるものか!」
翼がその連撃に反撃する。
「私が天羽々斬を喰われさえしなければ、桐生があんな大怪我を負う事はなかった!私が桐生をあんな目に遭わせたんだ。立花の事も、私が不甲斐ないばかりにあんな事になってしまった。全ては、私の至らなさが迎えた結果だ。皆を守る剣である私が守る事が出来なかった・・・その気持ちがお前に分かるのか!?」
「ああ、そうだな・・・でも、俺だってそういう時はあったよ!」
クローズが翼の斬撃を下段から弾く。
「このスクラッシュドライバーに振り回されていなけりゃ、戦兎が誰かを殺す事も、ああして苦しむ事もなかった。戦争をすぐに終わらせたかった。だけどそのせいでアイツが苦しむ事になっちまった・・・だから、俺はお前に同じ道を辿らせたくねえんだよ!」
激しい撃ち合い、その最中でクローズが剣を殴りつける。
「それに聞くけどな!お前なんでそんな剣って奴に拘るんだよ!?訳分かんねえよ!俺お前の事情とかあんま知らねえけど、なんでそんなに剣っていうのに拘る必要があるんだ!?」
「それは・・・」
「分かった。この際お前の在り方についてはなんも言わねえ。だけど、いくら剣でも休ませなきゃいずれはぽっきり折れちまうぞ!」
ツインブレイカーから光弾が放たれる。
「だからもう、一人で抱え込もうとすんな!それじゃあ他の奴らがまた無茶しちまうぞ!」
「そんな事・・・私は・・・・」
「奏の事をずっと一人で抱え込んでたやつが言ったって、なんの説得力もねえな!」
それを指摘にされて、翼は思わず動揺する。
「もっと俺たちの事を頼りにしろよ。お前から見たら、俺たちはそんなに頼りねえか?」
「それは・・・」
その言葉に、翼は何も言えず、そんな翼に仮面の奥で笑いかけて、ビートクローザーを投げ捨ててアクティベイトレンチを降ろした。
『スクラップブレイクッ!!!』
「なっ!?」
「ウオリヤァァァアア!!」
そして飛び上がり、容赦なく翼に強烈なライダーキックを叩き込んだ。
それを大剣化した天羽々斬で受け止めるも、防ぎきれず直撃を受ける。
そうして倒れ伏した翼は天羽々斬を強制解除される。敗北したという証だ。
その一方、クローズも変身を解除して翼に歩み寄り、そして手を差し出す。
「ほら、俺は頼りになるだろ?」
「・・・全く」
そんな風に大胆不敵に言って見せる龍我に翼は呆れ、
「無茶をする男だ・・・」
その差し出された手をとった。
「おい!大丈夫か!?」
そこへクリスが駆け寄ってくる。
「お前な、マジで必殺技叩き込む奴あるか!?」
「しょうがねえだろ勝つにはあれしかなかったんだからよ」
「だからと言って本気の一撃叩きつける奴があるか!?」
「じゃあお前だったらどうすんだよ!?」
途端に言い争いになるクリスと龍我。
わーぎゃーと子供みたく喧嘩を始める二人に、翼は呆気にとられ、やがてふっと笑う。
「雪音」
「ん?なんだよ?」
「先ほどは済まなかった。少し気が立っていた」
「ああ、いや・・・アタシの方こそ・・・」
突然の翼の謝罪に戸惑うクリス。
「でも、名前の方は・・・まだ、待ってくれ・・・」
そう顔を赤くしながら、クリスは絞り出すようにそういう。
その様子のクリスに翼は・・・・
「・・・ぷっくく」
「な、なに笑ってんだよ!?」
「い、いやすまん。なんだか改めて見ると雪音が可愛く見えて・・・」
「か、かわっ・・・で、でたらめ言ってんじゃねえ!」
「なんだよ事実だろ?」
「な、なんでお前が肯定してんだよ!?ああもう!やっさいもっさい!!」
クリスの叫びが、夜の空に響き渡る。
しかしそこに先ほどのような重い雰囲気はなく、明るさを取り戻した雰囲気がそこにあった。
その一方、スカイタワー屋上にて。
「戦兎さん、戦兎さん」
「んが・・・はっ!?エボルト!?」
「なんでもうすでにいない敵の名前を言ってるんですか・・・・」
座りながら眠りこけていた戦兎を、緒川が叩き起こす。
「緒川か?っていつの間に暗くなって・・・」
「そんな事より見てください」
緒川が指差す先、そこにあるのは、一枚の絵―――
「こ、これは・・・!?」
「先ほど、彼女の通信機を見つけました。これを解析すれば、これの裏付けにも・・・」
「ああ、そうだな。でかした俺の発明品!」
「キュル?」
それを
そうして翌日、二課仮説本部の指令室にて――――
「あの、一体何の用ですか?」
昨日から元気のない響。
その場には、翼、クリス、セレナ、龍我、戦兎の姿もあった。
そして、そんな響に戦兎が一枚の絵を渡す。
「まずはこれを見てくれ」
「これは・・・!?」
それを見た響の顔が強張る。
その絵には、互いに手を伸ばし合うマリアと未来の姿が描かれていた。
それも、相当リアルにだ。
マリアはギアを纏い、腕には謎の女性を抱えている事が変わる。さらにその隅にはクライムの姿も映っている。
まるで写真だ。
「これ、どうやって・・・」
「コイツが書いたんだよ」
戦兎が天井を指差す。そこには、自由にそわそわぐるぐると空中旋回を繰り返すクロの姿があった。
「え?いやいやいやまさかそんなありえねえだろ?」
「これ、お前らの顔写真とクロが描いた絵な」
「そっくりじゃねえか・・・・」
取り出した響、クリス、翼の写真と絵をそれぞれ一枚ずつ、計六枚を見せてみてみる。
「おそらくクロ君の機械としての記憶力が、その絵を完成させるに至ったのだろう。そして、昨夜見つけた未来君の通信機の記録から、破損されるまでの間、一定の速度で移動していた事が判明した」
それが、意味する事とは―――
「それってまさか―――」
「ああ、未来は死んでない。今はF.I.Sに拉致されて監禁されていると考えた方が妥当だ」
「それってつまり・・・!」
「こんな所で呆けている場合じゃないって事だろうよ」
まさかの吉報。未来が生きているという、想定外の言葉に、響は喜びを隠せない。
「さて、気分転換に、体でも動かすか!」
「はい!」
弦十郎の提案に、響は確かに元気よく答えた。
そんなわけで―――
「なんで俺まで走らされてんの!?」
装者とライダー、そして弦十郎を加えた六人で朝の走り込みを行っていた。
「俺病み上がりなんだけど・・・」
「だからこそ、体の調子を戻す方が先決なんじゃないのか?」
「うっわ無慈悲・・・」
翼の言葉に戦兎はがっくりと肩を落とすほかなかった。
「フゥハハハァー!お前いつも部屋ん中閉じこもってるからな!いい機会だから体動かして汗流せハッハァー!」
「なんでお前はそんなにテンション高めなんだよ。そういうテンションが一番疲れんだよ!ていうかなんで風鳴さんが『英雄故事』歌ってんだよ!?」
「意外に知ってるんだな」
「まあな!意外にセレナが映画好きでな!」
「ハア・・・ハア・・・ま、まだ終わらないのか・・・」
「クリスはクリスでもう死にそうになってるんですけど!?おいこれどうすんだ!?コイツ倒れたら一大事じゃないのか!?」
「そん時は俺が抱えていってやる!」
「ちょ・・・それは・・・恥ずかしい・・・」
「万丈、雪音が抱えて欲しいそうだぞ」
「よしきた」
「って、そんな事言ってねえから!てかこの持ち上げ方はやめてくれ本当に恥ずかしいからぁ!」
顔を真っ赤にして龍我にお姫様抱っこされるクリスとそれを面白がる翼となんか調子に乗っている龍我。
そんな様子を見て、戦兎は思う。
(なんか、憑き物落ちたようだな)
今まで、影さしていたような表情を、翼はしていなかった。
「よし、俺もしっかりやるか!」
そうして、戦兎も改めて、特訓の戦列に加わった。
なお、生卵を飲む段階で戦兎は盛大に吐いた模様。
未来が監禁されている部屋にて。
「りんごは浮かんだ お空に―――…」
そこには、マリアが監視の名目でいて、壁に背をもたれかけさせて、一人歌を口ずさんでいた。
それを、未来は光の格子の中で聞いていた。
そんなマリアの手の中には、やや欠けた状態のシンフォギアのペンダントが持たれていた。
その名は、『アガートラーム』。
かつて、マリアの妹、セレナがその身に纏っていたシンフォギアであり、六年前からずっと、壊れたままのギア――――
それを唄いながら眺めていたマリアは、ふと未来の視線に気付く。
「ん?どうしたの?」
尋ねられた未来は、思わず目をそらす。
「いえ・・・ありがとうございました・・・」
単純な話、未来はマリアに助けられたのだ。
響が飛び降りた直後、変わるようにしてマリアが床から飛び出し、それに続くように現れたクライムに、未来は思わず、涙に濡れた目を向けた。
そして、マリアはそんな未来に、手を伸ばしたのだ。
『死にたくなければ来い』と。
そうして無事に燃え盛るスカイタワーから脱出したのだが、最終的に未来はこの檻にぶち込まれる事になったのだ。
「どうして、私を助けれくれたのですか?」
それでも、未来は尋ねられずにはいられなかった。
世界の敵となった彼女が、何故、自分を助けたのか。
「さあ・・・逆巻く炎に、セレナを思い出したからかもね・・・」
「ッ・・・セレナ!?」
マリアが出した言葉に、未来は思わず声を挙げる。
その事にマリアは首を傾げるも、未来はすぐさま視線をそらす。
(セレナ・・・偶然じゃないよね・・・?)
同じ名前の人間・・・それは別段、珍しい事ではないだろう。
苗字が同じ人なんてざらにいるし、同じ名前の人間もいない訳がないだろう。
とある珍しいものを発見する番組で、お互いの名前どころか誕生日、生まれた場所、挙句の果てには母親の名前まで同じ人間もいたりするのだから。
と、そんな事を思い出していると、二人がいる部屋に新たかに誰かが入ってくる。
「マリアの死んだ妹ですよ」
「ドクター・・・」
ウェ・・・・屑はマリアと未来の間に立つ。
「何か地の文でけなされたような・・・」
「「?」」
ウェルにマリアは尋ねる。
「この子を助けたのは私だけど、ここまで連行する事を指示したのは貴方よ。一体何のために?」
その問いかけに、ウェルは気前よく答える。
「もちろん、今後の計画遂行の一環ですよ」
そう言ってウェルは格子に囲まれた未来の前にかがむ。
そんなウェルに、未来は抱えた足を抱き寄せ、縮こまる。
「そんな警戒しないでください」
ウェルは、優しく話しかける。勿論建前だ。
「少し、お話でもしませんか?きっと貴方の力になってあげますよ」
そう言って微笑むウェルに、未来はやはり、警戒の色を拭えなかった。
外にて、洗濯物を取り込む、シン、切歌、調の三人。
(・・・マリアがフィーネでないのなら、きっと、アタシの中に・・・)
この間、戦兎と対峙した時に発現した、フィーネの力の一旦。
それは、切歌の中にフィーネがいるという証拠。
そして、その魂に自分が塗り潰されてしまうかもしれないと言う事――――
(怖いデスよ・・・)
心の中で、切歌はそう呟く。
「マリア、どうしちゃったんだろう・・・」
「え?」
ふと、調が呟く。
「私は、マリアだからお手伝いがしたかった・・・フィーネだからじゃないよ」
「あ、うん、そうデスとも」
「・・・」
調の言葉に、切歌は戸惑い気味に答え、シンは黙って洗濯物を取り込む。
「身寄りがなくて、泣いてばかりの私たちに優しくしてくれたマリア・・・弱い人たちの味方だったマリア・・・なのに・・・」
昨日の、あの言葉。
『力をもって貫かなければ、正義を成す事など出来やしない!』
それは、今までのマリアからは考えられない言葉だった。
それに、調は悲しそうな表情を浮かべる。
「・・・・ん」
そんな時、シンが調の後ろから、黙ってその頭を撫でる。
「シン・・・」
「・・・調やシンは、怖くないデスか?」
ふと、切歌がある事を呟きだす。
「マリアがフィーネでないのなら、その魂の器として集められた、アタシたちがフィーネになってしまうかもしれないデスよ?」
それは、最もな事だ。
フィーネの魂の発現には、シンフォギア起動の際のアウフヴァッヘン波形に干渉する必要がある。
それに常にさらされ続けているシンフォギア装者など、恰好の的以外なんでもない。
「確かに、俺もレセプターチルドレンとして集められたが、俺はあくまで
「私は・・・よくわからない・・・」
「それだけ・・・!?」
切歌は、思わず声を強くして聞いてしまう。
「・・・どうしたの?」
ふと、切歌の様子が変な事に、調は思わず聞き返す。
それに、切歌は逃げるように、エアキャリアに戻っていく。
「切ちゃん・・・!?」
その後ろ姿を、調とシンは呆然と見る事しか出来なかった。
「どうしちゃったの・・・?」
「自分たちにフィーネの魂が覚醒する可能性があると感じて、それに恐怖しているのかもしれない・・・あるいは、既に・・・」
「そんな事・・・!」
シンの言葉に、調は否定しようとするが、先ほどの切歌の言葉で、否定しきれない事に思わず歯噛みしてしまう。
「・・・調」
その様子に、シンは調に向かって言う。
「お前は、お前がやりたい事をやるんだ。マリアだから、切歌だからじゃない。お前自身の心に従え」
「え・・・」
「そうしなければ、いつか後悔する事になるぞ」
あの日、血塗れの部屋の事を思い出しながら。
シンは、そう言って、取り込んだ洗濯物と、調の持っていた洗濯物を取り上げて、ヘリキャリアに戻っていった。
その後ろ姿を、調は呆然と見つめ、そして、思う。
(私の、やりたい事・・・・)
その意味を、調は心の中で噛み締める。
そうして、彼らは、戦場へ――――
次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?
日本より南側の海にて、F.I.Sの乗るヘリキャリアはいた。
「月が落下する前に、新天地にて、人類は結集しなければならない」
その先にて待ち構える米国海軍。
「この道を行く事を恐れはしない」
始まる、ノイズによる虐殺。
「慧くんの事、お願い」
しかし、それを調は見過ごせず、自ら戦地へ飛び込む。
「アタシじゃなくなってしまうかもしれないデス・・・!」
だが、切歌が彼女のギアを強制的に外してしまい、
「ソロモンの杖を使うアイツはどこにいやがる!?」
さらに、二課の装者や仮面ライダーが出現。
その時、その場にいる者たちにとって、ありえない者たちが姿を現す。
次回『予測不能のイレギュラー』
「―――