愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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作「十二月二十一日土曜日・・・即ち今日真夜中だけど―――祝え!!全ライダーの力を受け継ぎ、過去を未来をしろしめす時の王者にして、平成最後の仮面ライダー、その名も『仮面ライダージオウ』!そして、令和最初にして、飛電インテリジェンスの社長の仮面ライダー、その名も『仮面ライダーゼロワン』!!その二人のライダーが出会う、令和最初のジェネレーション映画が公開される!その名も『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』!まさに祝福の瞬間である!!」
戦兎「ついにジオウが令和の仮面ライダーと出会うのか・・・」
作「ついでに!昨日、遥か彼方の銀河。そこで繰り広げられる光と闇の戦い。その完結編がついに公開された!その名も『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』!!まさに祝福の瞬間である!!」
翼「おい。なんでそこで仮面ライダーと全く関係のないスター・ウォーズを出す!?」
ク「なんというか、結構気になる作品なんだと」
作「さらに!」
響「まだやるんですか!?」
作「最高のヒーローを目指す少年が、最高のヒーローに至る物語!その映画第二弾がスター・ウォーズと共に公開された!その名も『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』!!まさに祝福の瞬間である!」
龍「ついに実写からアニメに変わっちまったよ!?」
セ「なお、これら全ては今やってる映画で作者が見たいと思う映画全部です。コメントでネタバレはやめてくれると嬉しいです」
作「そして―――」
戦「もういいわァ!」ドロップキック
作「ふげあ!?」
戦「ハア・・・ハア・・・の、ノイズが蔓延る新世界にて、天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、二課の仲間たちと共に、ノイズと戦う日々を送っていた!」
未「そして、不覚にも敵のシンフォギア装者となってしまった私を救うため、響が体を張って私を救ったのでした。しかし、それによって敵であるF.I.Sの目的であるフロンティアを起動させてしまったのです」
翼「作者の暴走から始まってしまったが、とにかくシンフォギア・ビルド、その第三八話をどうぞ!」


蘇るメモリー

「本当に大丈夫なのか?」

シンが、慧介に向かってそう尋ねる。

「ああ、今まで心配をかけてごめん」

「そうか・・・」

いつもの慧介の言動に、シンはほっと息を吐く。

「・・・マリアは?」

「・・・」

慧介がそう尋ねると、シンは気まずそうに視線をそらす。

「・・・ウェル博士のやり方に賛同し、結果、あの有様だ」

「・・・そっか」

「すまない。俺が不甲斐ないばかりに・・・」

「シンが気にすることじゃないよ。俺も色々と迷惑かけたからさ」

「・・・そうか」

慧介の言葉に、シンはそう返す。

「どちらにしろ、俺たちだけでやれる事は少ない。だからもう、俺たちはあの人たちに頼るしかない・・・」

「だから調を二課に保護させたのか」

「軽蔑するか?」

「いや・・・賢明な判断だ」

もはや、事態は彼らだけでは止められない事態になりつつある。

未だシンの元にはルインドライバーは戻らず、慧介のスクラッシュドライバーは従来の四倍の負荷が掛かる仕様となっている。

だが、今の慧介はそれを克服してみせている。

「・・・少し見ない間に、随分と大きくなったな」

「まだシンには敵わないよ」

「そんな事はない。俺は結局、マリアを止める事が出来なかったんだからな」

シンは自虐するように笑う。

そんなシンを、慧介は心配そうに見上げる。

そこへ。

「いやあおめでとう慧介」

「「ッ!?」」

その声に、二人は思わず身構える。

ジェームズだ。

「そんなに警戒するな」

「うるせえよ。お前のせいで散々な目にあったんだぞ」

慧介が軽蔑の眼差しでジェームズを睨みつける。

「ふん、たかだか私の駒の分際で言ってくれる」

「お生憎様、俺はあんたの駒になるつもりはないぞ」

「ふん、言っているが良い。どちらにしろ桐生戦兎と万丈龍我を殺してくれればそれでいい。それが出来ないようなら今ここで死ね」

なんとも直球に言ってくれる。

「どちらにしろ。ビルドにはハザードフォームがある。それを攻略しない限りは到底不可能だろうな」

「ふん。この際、貴様らには何も期待などしない」

「なんだと?」

ジェームズが踵を返す。

「もう既に桐生戦兎を殺す算段は出来ている・・・!」

ジェームズがそう言い、さっさと出ていってしまう。

「・・・算段が出来ているって、どういう事だ?」

「さあな・・・だが、どちらにしろ俺たちに出来る事は、この戦いを見守る事だけだ」

「あー・・・その事なんだけどさ、シン」

「ん?」

慧介は、シンにある事を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮説本部の潜水艦内にある、戦兎の研究室として割り当てられた部屋にて。

「・・・よし」

そう呟いて、戦兎は最後のパーツをクロに戻す。

「もういいぞ」

「キューイ!」

クロが、元気を取り戻したかのように飛び回る。

「クロちゃん、元気になったようですね」

「ああ」

別の机では、セレナがフルフルラビットタンクフルボトルの修復作業を行っていた。

「これから未来の所に戻る所だ。お前も一旦休憩にしておけ」

「分かりました」

戦兎が立ち上がると同時に、セレナもうなずいて戦兎に続く。

その前をクロが飛ぶ。

そんな中で戦兎は考える。

(しかし、クロはどうして、未来のギアに対して有効なボトルを見分けられたんだ?)

あの咄嗟な状況で、正確に有効なボトルを導き出した。こちらには、なんの事前情報もなかったのにだ。

まるで、初めから知っていたかのような行動だった。

ダイヤモンドの特性として、光を屈折させるという効果がある。

その効果で鏡を創り出し、そしてその特性を利用して神獣鏡の光を弾き飛ばしていた。

ただ元がダイヤだったために完全反射には至らず、背後へ拡散させてしまったわけだが。

(それに、クロを修復させる過程で、変なものもあったしな・・・)

一部のパーツに融合していた、謎の物質。

時間がなかったために詳しくは調べていないが、おそらくあれがクロが本物の動物のように動くようになった理由だ。

後で調べるとしても、とにかく今は――――

 

 

 

 

医療室(メディカルルーム)にて、未来は一人、そこにいた。

そんな時に、医療室の扉が開き、そこから響とクロが駆け入ってくる。

「未来!」

「キュル!」

その後ろから、翼、クリス、龍我、戦兎、セレナが入ってくる。

そんな中で響は未来に抱き着き、クロは未来の頬に自分の頭をすりよせる。

「小日向の容態は?」

「LiNKERの洗浄も完了、ギア強制装着の後遺症も見られないわ」

その報告に、響とクロは心底嬉しそうにする。

「良かったぁ、ほんとに良かったぁ!」

「キュールルールルールルールルッ!」

そんな中で、未来は響の顔にある絆創膏などに気付く。

「響・・・その怪我・・・」

それは、未来がギアを纏っていた時につけた傷だ。

「うん」

「私の・・・私の所為だよね・・・」

親友を傷つけてしまったことに、思わず涙を流す未来。

「うん、未来のお陰だよ」

「え・・・?」

しかし、響から出たのは彼女を責める声ではなく、感謝の言葉だった。

「ありがとう、未来」

何故、お礼を言うのか。

「響・・・?」

「私が未来を助けたんじゃない。未来が私を助けてくれたんだよ」

訳が分からない。一体、何故、どうしてなのか。

「友里、あれを出してやれ」

「はいはい命令しないで」

戦兎の言葉に友里は呆れながらも、モニターに一枚の画像を表示する。

それは、響のレントゲン写真である。

「これ・・・響・・・?」

「あの聖遺物には、聖遺物を分解・無力化する効果があってな。その光を利用して、お前からギアを引き剥がすと同時に、響の中のガングニールの欠片も除去したってわけ。いやぁ、この作戦思いついた俺さっすがー!」

「って、お前なのかよ!?」

「ブレないな相変わらず」

「全く。呆れる程のナルシスト野郎だな」

「ですね」

相変わらずの戦兎の言動に回りは呆れる。

「つまり・・・」

「小日向の強い思いが、死に向かって疾走するばかりの立花を救ってくれたのだ」

「ま、そういうこったな」

「私が本当に困った時に、やっぱり未来は助けてくれた。ありがとう!」

「私が、響を・・・」

そう思うと自然と嬉しさがこみ上げるも、その反面、申し訳なさが出てくる。

何故なら、響はもう―――

「でもどちらにしろ、F.I.Sはフロンティアってのを浮上させた訳だろ?」

「ああ、本当の戦いはこれからってことだ」

「何、そんなもの、私と雪音、それに桐生と万丈がいれば問題ないだろう」

そう言って見せる翼。

「あ、戦兎さんは出撃するのは少し待っててくれませんか?あともう少しでフルフルボトルが直りそうなので」

「それだけでも上出来だ」

セレナの頭を撫でる戦兎。

「えへへ・・・」

「・・・・むう」

それを面白くなさそうに見る翼。

「なんだ?嫉妬してんのか?」

「な、なにを言ってるんだ!?」

「ん?どうした?」

「ん?ああ、実はコイツgむご!?」

「ななななんでもない!なんでもないからな!」

「お、おう・・・?」

何故か必至な翼に首を傾げる戦兎。

「ふふ・・・あはは・・・!」

その様子に、未来は思わず笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

フロンティアにある通路にて―――

「着きました」

マリア、シン、慧介、切歌、ナスターシャ、ウェル、ジェームズの七人が、フロンティアのとある一室にやってきていた。

「ここがジェネレータールームです」

ふるぼけたその空間の中央には、巨大な球体の何かがあった。

「なんデスかあれは・・・」

切歌がそう呟く傍ら、ウェルがそれに近付いて、もってきていたケースからネフィリムの心臓を取り出す。

「へっ」

そしてそれを球体に取り付ける。

すると球体が突如として輝きだし、謎の模様を描き出す。そして上の固定器が持ち上がり、光はさらに強まる。

そして、周囲の水晶に、光の粒子が迸る。

「ネフィリムの心臓が・・・!」

「心臓だけとなっても、聖遺物を喰らい、取り込む性質はそのままだなんて・・・卑しいですねえ・・・ふひひひ・・・」

 

 

外では、フロンティアに緑が生い茂り始める。それは、フロンティアが起動したという証拠ともいえる。

 

 

「エネルギーが、フロンティアに行き渡ったようですね」

ナスターシャがそう呟く。

「さて、僕はブリッジに向かうとしましょうか。ナスターシャ先生も、制御室にて、フロンティアの制御をお願いしますよ」

そう言って、ウェルは向かう。

その輝きを見つめて、切歌は、調に言われた事を思い出す。

 

『ドクターのやり方では、弱い人たちを救えない』

 

「そうじゃないデス・・・フロンティアの力でないと、誰も助けられないデス・・・調だって助けられないんデス!」

そう、言い聞かせるように切歌は叫ぶ。

「切歌・・・」

そんな様子の切歌に、慧介は心配そうに見て、シンは―――

(どうする・・・桐生戦兎・・・)

そう、思うのだった。

 

 

 

 

 

 

米国の艦隊の第二陣がやってきた事。

それでもってフロンティアが起動した事を受けて、戦兎たちは指令室に来ていた。

未来も一緒である。

「まだ安静にしてなきゃいけないじゃないか」

「ごめんなさい。でも、いてもたってもいられなくて・・・」

「自分がやった事だからどうしてもだと」

戦兎が仕方ないように言う。

「あれは君の責任ではないのだがな・・・」

「まあどちらにしろ、響が戦線から抜けたんだ。ついでにタスクがまともに戦えるようになったから敵にとってはウィンウィンな結果だな」

「んな事軽く言ってる場合か」

戦兎の言い分に突っ込みをいれるクリス。

「大丈夫ですよ。何故ならこの天才物理学者の助手がすぐにビルドの強化アイテムを作ってみせますから」

「アハハ・・・セレナちゃんも戦兎先生みたくなってる・・・」

もはや呆れるしかない。

「フロンティアへの接近は、もう間もなくです!」

そこで、藤尭がそう報告を上げ、モニターには、浮上したフロンティアの映像が映っていた――――

 

 

 

フロンティア・ブリッジ――――

 

そこに昇降盤を使ってやってきたのは、ウェル、マリア、シンの三人。

「ここがブリッジ・・・」

その中心には、ジェネレータールームになったものと、サイズは小さいが同じような球体があった。

その前にウェルが立つと、あるものを取り出した。

「それは?」

「LiNKERですよ」

そういうと、ウェルは左手の袖を捲る。

「聖遺物を取り込む、ネフィリムの細胞サンプルから生成したLiNKERです・・・」

そして自分の左腕にそのLiNKERを注入した。

すると左腕が黒く変色、肥大化、変形し、異形の腕へと変わってしまう。

そして、その左手で目の前の球体に触れた。

すると、端末が光り出す。

「ウェヘヘ・・・早く動かしたいなぁ・・・ちょっとぐらい良いと思いませんか?」

「なんだと?」

「ねえ?」

すると、目の前の石板にある映像が映し出される。

それは、米国からの増援艦隊―――

それを見て、ウェルはその口角をさらに吊り上げる。

 

 

 

その一方、制御室では、ナスターシャが一人、フロンティアに記録されているデータを調べていた。

(フロンティアが、先史文明期に飛来したカストディアンの遺産ならば、それは異端技術の集積体。月の落下に対抗する手段もきっと・・・)

その時、ナスターシャの目の前にある柱型の水晶にある映像が映し出される。

「これは・・・!?」

『どうやら、のっぴきならない状況のようですよ?』

どこからともなくウェルの声が聞こえてくる。

『一つに繋がる事で、フロンティアのエネルギー状況が伝わってくる・・・これだけあれば、十分にいきり立つ・・・』

何やら、良からぬ事を考えている様子のウェル。

その行動を察したナスターシャはすぐさま制止の声を挙げる。

「早すぎます!ドクター!」

『さあ、行けぇ!』

ウェルがそう声を発すると同時に、フロンティアが動き出す。

 

 

 

フロンティア中心の石造から三本の光が放たれる。それが天に向かって立ち上る最中で纏まっていき、やがて一本の手を形成。

そしてそのまま――――()()()()

 

 

「どっこいしょぉぉぉぉお!!」

そして次の瞬間、その手が月を引き寄せ―――その力でフロンティアが一気に浮上する。

 

 

 

「ドクターの欲望の暴走・・・手遅れになる前に、私の信じた異端技術で阻止して見せる・・・!!」

制御室にて、ナスターシャはすぐさま端末を忙しなく操作する。

 

 

 

そして、その影響は海中にまで。

突然の海流に二課の潜水艦は大きく揺れていた。

「うわわわわわ!?」

「な、なんだぁ!?」

「広範囲にわたって海底が隆起!我々の直下からも迫ってきます!」

「おいそれってまさか―――」

戦兎が言い終える前に、とてつもない衝撃が彼らを襲う。

 

潜水艦の直下にて、まさしくフロンティアの一部が激突していた。

 

それでもって艦内なのだが。

「うわあ!?」

「え?ふごあ!?」

衝撃によって跳ねたクリスがそのまま龍我に激突し、もつれあうかのように倒れる。

「う、お、あぁあ!?」

「え?うわぁあ!?」

一方揺れに耐えきれなかった戦兎も翼に向かって倒れ込む。

そうして揺れが収まった時だった。

「ん・・・んん・・・いってて、なんだったんだよ一体・・・ん?」

倒れたクリスはどうにか体を押し上げる。しかしそこで自分の胸に何かがのしかかっている事に気付いて見下ろしてみれば―――

 

龍我が胸に顔をうずめていた。

 

その一方、戦兎の方は―――

「いったた・・・すまない翼、バランスを崩しちまった・・・ん?どうした?」

「あ・・・ああ・・・」

一方の戦兎は体を起こして見せれば、すぐ眼下に翼がこちらを見つめていた。

だが、その顔はりんごのように真っ赤で、耳の先まで真っ赤っかなのである。

「ん?翼、おーい・・・」

「は、はう・・・」

「え?ちょ!?なんで白目向いてんだ!?おい、翼!?どっかぶつけたりしたのか!?翼ー!?」

 

まあ、龍我の場合はクリスが倒れた事によって押し付けられてしまったという理不尽なのだが―――

 

「う、うわぁぁああぁぁあぁああ!!!」

「ふげあ!?」

「翼ぁぁぁあ!目を覚ませぇぇええ!!」

「きゅう・・・」

 

まあ、ご察しの通りである。

 

 

 

 

そして、一方のフロンティアは――――空中に浮いていた。

 

それは見事なまでの浮遊である。

そのブリッジには、そんなフロンティアに向かって艦砲射撃を行っている米国艦隊の姿が映っていた。

「楽しすぎて眼鏡がずり落ちてしまいそうだ・・・」

ウェルがさらにフロンティアを操作。

するとフロンティア下部にあるオブジェクトが光り出し、その瞬間、海上の艦船が突如として浮き上がる。

そして次の瞬間、何かに握りつぶされたかのようにへこみ潰れ、最後には爆発を引き起こした。

それだけで一気に艦隊は全滅した。

「んー、制御できる重力はこれぐらいが限度のようですねぇ・・・」

嗤うウェル。

(これが人類を救済する力だと?これではただの殲滅兵器じゃないか・・・)

その脅威さにシンは冷や汗を流す。

「ついに手に入れたぞ。蹂躙する力ァ・・・!これで僕も、『英雄』になれるゥ!!この星のラストアクションヒーローだぁああ!!ウェヘヘヘ!!やったぁぁああ!!!」

仰け反って、ウェルは大いに喜んだ。

 

 

 

 

二課潜水艦にて。

「・・・・・」

顔に大きな手形の痕を作って不機嫌そうにしている龍我と、顔を真っ赤にして戦兎から顔をそらしてその場にへたり込んでいる翼を他所に、指令室では状況確認を急いでいた。

「下から良いのを貰ったみたいだな・・・」

「計測結果が出ました!」

「直下からの地殻上昇は、奴らが月にアンカーを打ち込む事で―――」

「フロンティアを引き上げた!?」

「おい、待て、それってまさか――――」

戦兎がそれを聞いて顔を青ざめさせる。

 

 

 

 

「行き掛けの駄賃に、月を引き寄せちゃいましたよ」

ウェルがなんでもないとでもいうように言って見せる。

それに、マリアとシンの表情が強張る。

「月を!?」

「落下を速めたのか!?」

それを聞いたマリアがウェルを押し退けコンソールに触れる。

「救済の準備はまだ何も出来ていない。これでは本当に、人類は絶滅してしまう・・・!!」

しかし、マリアの操作をコンソールは受け付けない。

「どうして・・・どうして私の操作を受け付けないの!?」

「ウェヘヘ・・・LiNKERが作用している限り、制御権は僕にあるのです。人類は絶滅なんてしませんよ。僕が生きている限りはね」

そう当然のように言って見せるウェル。

「それが僕の提唱する、一番確実な人類救済方法です」

「ふざけるな貴様!そんな救済方法などあってたまるか!」

「ならばどうします?貴方には全人類を救う手立てがあるとでも!?」

「月の落下を阻止すればそれだけでいい筈だ!なのに何故人類を逆に減らすような事をする必要がある!?」

「それじゃあ僕が好き勝手出来ないだろう!僕が英雄にならない世界など、滅んでしまえばいい!」

「ふざけるな・・・私は、そんな事の為に悪を貫いてきた訳じゃない!」

マリアがウェルに掴みかかろうとするが、ウェルがそれを左手で叩き弾く。

「マリア!」

「ここで僕を手にかけても、地球の余命があと僅かなのは変わらない事実だろ?ダメな女だなあ」

倒れ伏すマリアをウェルが嘲笑う。

「フィーネを気取ってた頃でも思い出して、そこで恥ずかしさに悶えてな」

「セレナ・・・セレナ・・・私は・・あ・・あぁぁあ・・・!!」

もはや変えようのない事実に、マリアはそこで一人打ちひしがれる。

「そこで気のすむまで泣いてなさい。帰ったら、僅かに残った地球人類をどうやって増やしていくか、一緒に考えましょう」

ウェルはそう言ってブリッジを出ていく。

そこには、床に倒れて嗚咽を漏らすマリアと、ただ他者に運命を委ねなければならない事実に拳を握りしめるシンの姿しかなかった。

(最後の希望は・・・)

その最中で、シンは、おそらくこの状況を覆せるであろう男の事を思い出す。

(お前だ・・・桐生戦兎・・・)

 

 

 

二課本部にて。

ライダースーツに身を包んだ翼とクリス、そして龍我が並び立つ。

「翼、クリス君、龍我君、行けるか?」

「無論です」

「任せておきな」

クロは、未来と離れるのが惜しいのか、未来の側にいる。

「キュル・・・」

「私はもう大丈夫だから、龍我さんの力になってあげて」

「・・・キュル!」

その言葉にクロは力強く頷いて、龍我の元へ。

「よし、行くか」

「あ、あの・・・」

そんな中で、響が声をかけようとすると、三人は笑って返す。

「案ずるな。私だけじゃない。雪音や万丈もいる」

「お前は安心してここにいろって」

「あとの事は俺たちに任せろ。お前も早く来いよ」

「ああ、分かってんよ」

戦兎は、セレナがフルフルラビットタンクボトルの修復が終わるまで動けない。

今回の戦い。アレ無しではおそらく戦いきれないからだ。

彼らが向かっていく様子を、響は見送る。

 

 

そして、潜水艦の格納庫の扉が開き、そこから翼とクリスがバイクに乗って、クローズイチイバルになったクローズが足のホイールを使って飛び出す。

それと同時に、翼とクリスが同時に聖詠を唄う。

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)――」

 

「―――Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)―――」

 

そしてすぐさまその身を蒼天の装束、紅蓮の装束へと変えた二人は、そのままフロンティアの大地を駆け抜ける。

その前方には、ノイズ―――

「行くぞ雪音!」

「おう!」

翼が足のギアを変形、クリスが腕のギアを変形させ、バイクの前方に巨大な刃を、その手にボウガンを展開する。

そして、その刃によって向かってくるノイズを切り払い、撃ち漏らしそうになったノイズをクリスが狙い撃つ。

そのまま一気にノイズを殲滅していく。

 

騎刃ノ一閃

 

QUEEN's INFERNO

 

「よっしゃあ!俺も負けてられねぇぜ!」

クローズもブラストモービルを変形。シューターですかさず前方に向かって乱射、一気に殲滅していく。

 

 

 

その様子は、二課の指令室から見えていた。

「流石・・・!」

それに友里が賞賛する。

「問題なのは、こっちが装者二人で向こうも二人だとして、あちらには戦兎さんがハザードで戦わなければ敵わないクライムがいます」

「ついでに三倍強化で四倍負荷のスクラッシュを克服したタスク・・・」

戦力的には、こちらが不利だ。

その上、クライムには『戦場の白い悪魔』『切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)』の異名を持っているとも聞いている。

元少年兵としての力が、奴らにはあるのだ。

さてどう動くべきか・・・・

「司令」

そこへ緒川が入ってくる。

「どうした?」

「捕虜の装者が、どうしてかセレナさんとの面会をしたいと要求してきていて・・・」

「調ちゃんがセレナちゃんに?」

一体どういう訳なのだろうか。

「どうしても話がしたいと言ってて・・・」

「しかし今セレナ君は戦兎君の強化アイテムを作っている最中だ。引っ張り出せるかどうか・・・」

「いいんじゃないか?」

そこで口を挟んだのは戦兎だった。

「もしかしたらアイツは、セレナの過去を知っているかもしれない。何か、記憶を呼び起こす切欠になる筈だ」

 

 

 

そうして、指令室には未だ手錠をはめられた状態の調が連れてこられた。

「申し出を受け入れてくれてありがとうございます・・・」

「何、気にすんな」

しおらしく言う調に、戦兎は笑って返す。

「それで、セレナは・・・」

「もうすぐ来る筈だが・・・」

「お、遅くなりました!」

そこへセレナが駆け入ってくる。

それに調が振り返れば、そこには、白衣を着て、余程急いできたのか肩で息をしているセレナの姿があった。

「セレナ・・・」

「貴方が、月読調さん・・・?」

「ッ・・・」

その返しに、調は思わず目を見開いてしまう。

そんな調に、戦兎は言う。

「今のコイツは記憶喪失だ。今名乗ってる名前も偽名だ。だから、何か知ってるなら話してやってくれ」

「記憶喪失・・・」

戦兎の言葉に、調はもう一度セレナの方を見る。

セレナは、何かを覚悟してきているかのように真剣な顔立ちでそこに立っていた。

そんなセレナの様子に、調も、意を決して話し出す。

「・・・貴方の本当の名前は、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。マリア・・・マリア・カデンツァヴナ・イヴの妹よ」

「私が・・・マリアさんの・・・・?」

「うっそぉ・・・・」

その言葉に、セレナだけでなく、その場にいるもの全員に衝撃を与える。

「そして、私たちと同じ、レセプターチルドレン」

「レセプターチルドレン?」

「フィーネの魂の器として非合法に集められた孤児たちの事だよ」

「・・・何故それを?」

戦兎が答えたので、調は訝し気に戦兎を見上げる。

「こちらには櫻井了子(フィーネ)本人がいたんだ。その時の研究データを俺が預かっていて、今は俺が解析中って訳」

「・・・・そう」

そこから、調は、セレナに関して、様々な事を話した。

マリアの事、白い孤児院の事、ネフィリムの事。

しかし、そのどれも話ても、セレナは一向に記憶を思い出す事はなかった。

「これだけ言ってもまだ何も思い出さないなんて・・・」

緒川の言ったその言葉は、まさしくその場にいる者全員の心の代弁だった。

「ごめんなさい・・・」

「ううん、貴方が謝る事じゃない。ちゃんと記憶を呼び起こせない、私が悪いんだもの・・・」

セレナがそうフォローを入れるも、調はあからさまに落ち込んで俯く。

その様子に、セレナは申し訳ない気持ちになり、周りは色々と諦めかけていた。

そんな中で、未来は自分が監禁されていた時の事を思い出す。

「・・・そういえば、マリアさん、何か歌を唄っていたよ」

「歌?」

その言葉に、未来は頷く。

「・・・Apple・・・」

唐突に調が呟く。

「マリアが、よく唄ってた歌」

「マリアさんが?」

「それ、覚えているか?」

「うん」

戦兎が聞けば、調は頷き、そして、耳にこびりついたその歌を紡いだ。

 

「―――りんごは浮かんだお空に…」

 

その時だった。

 

「―――りんごは落っこちた地べたに…」

 

その次の歌詞を、唐突にセレナが歌い始めたのだ。

 

「―――星が生まれて歌が生まれて ルルアメルは笑った常しえと」

 

無心で歌うセレナ。その両頬を、きらめく何かが伝っていた。

 

「―――星がキスして歌が眠って」

 

その様子に、響も、未来も、戦兎も、弦十郎も、緒川も、友里も、藤尭も、二課の職員も、歌っていた筈の調も、ただ黙ってそれを聞いていた。

 

「―――かえるとこはどこでしょう…? かえるとこはどこでしょう…?」

 

セレナは、ただ涙を流し、その歌を、最後まで歌いきる。

 

「―――りんごは落っこちた地べたに… りんごは浮かんだお空に…―――」

 

そうして、セレナは閉じていた眼を開ける。涙に濡れ、そして、何かを決意した眼差しをもって。

「・・・行かなきゃ」

唐突に呟いた言葉に周りの人間は察した。

「せ、セレナ・・・もしかして・・・」

 

「―――ごめんなさい調さん。忘れてたりして」

 

恐る恐る尋ねる調に、セレナは―――セレナ・カデンツァヴナ・イヴは涙を流しながら笑って答える。

「セレ・・ナ・・!!」

思わず嬉しさがこみ上げ、調はセレナの胸に飛びつく。

「良かった・・・良かった・・・セレナ・・・!!」

泣きじゃくる調の頭を、セレナはそっと撫でる。

しかし、そこである事を思い出した調がセレナを見上げる。

「でも、どうして・・・」

それにセレナは目をそらす。

「それが、私にも分からないの・・・ネフィリムを元に戻したっていう所までは覚えてるんだけど、それからの記憶がなくて・・・」

「それで俺たちに拾われたところからしか何も思い出せない、と・・・」

戦兎がそう指摘すれば、セレナは頷く。

そして、すぐにセレナは戦兎にせがむ。

「お願いします戦兎先生。私をマリア姉さんの元へ連れていってください!」

「待て待て、いくら記憶が戻り、元装者だからと言っても、流石にギアがない状態での出撃は・・・」

「ま、そこは俺がどうにかするさ」

戦兎が弦十郎の言葉を遮ってそういう。

「安心しろ。こいつは俺が責任もって送り届けてやる」

「戦兎君・・・」

その様子に、調も自分も申し出をしようとするが、しかし敵である自分を出撃させてくれるとは思えず、その言葉を引っ込める。

しかし―――

「師匠。調ちゃんも行かせてあげてください」

「え・・・!?」

突然の響の提案に、調は思わず目を見張る。

「調ちゃんもいれば、万が一にも対応できると思うんです」

「うーむ、それなら問題はないか・・・緒川」

そしてなぜか止めない弦十郎。

そして訳も分からず手錠を外される。

「捕虜に出撃要請って・・・どこまで本気なの?」

「もちろん全部」

調の言葉に響はそう答えて見せる。

「貴方のそういう所好きじゃない。正しさを振りかざす、偽善者の貴方が・・・」

なおも、偽善者と呼ぶ調。

「私、自分がやってる事が正しいだなんて、思ってないよ。以前、大きな怪我をしたとき、家族が喜んでくれると思って、リハビリを頑張ったんだけどね。私が家に帰ってから、おばあちゃんもお母さんもずっと暗い顔ばっかりしてた。それでも私は、自分の気持ちだけは偽りたくない。偽ってしまったら、誰とも手を繋げなくなる」

自分の手を握って、そう言って見せる響。

「手を繋ぐ?そんな事、本気で・・・」

「だから調ちゃんにも、やりたい事をやりとげて欲しい。もしもそれが私たちと同じ目的なら、少しだけ力を貸してほしいんだ」

調の手を取って、そう言って見せる響に、調は戸惑いを隠せない。

「私の、やりたい事・・・」

「お前のやりたい事は、暴走している仲間を止める事だろ?だったら協力してやる」

戦兎からもそう言われ、調は、思わずその手を振り払って背中を向ける。

「・・・皆を助ける為だったら、手伝ってもいい・・・」

その言葉に、響や未来は嬉しそうにする。

「だけど信じるの?敵だったのよ?」

「敵とか味方とか言う前に、子供のやりたい事を支えてやれない大人なんて、かっこ悪くてかなわないんだよ」

「師匠!」

弦十郎が、調の言葉にそう言ってのける。

そして、弦十郎は調のギア『シュルシャガナ』を返す。

「こいつは、可能性だ」

そして、そう言って見せる。

そんな弦十郎に、調は目尻に浮かんだ涙を拭ってこう返す。

()()()()()()()()

「甘いのは分かってる。性分だ」

「・・・ん?」

(あれ、今のは・・・)

何か、言動が可笑しかったような気がする。

この違和感はなんだ・・・?

しかし、その違和感を考える前に、響が調の手を取る。

「じゃあハッチまで案内してあげる!セレナちゃんと戦兎先生も!急ごう!」

「あ、その前に」

そこでセレナが呼び止めた。

 

 

 

戦兎の研究室にて。

「これを」

セレナは、戦兎に長い筒状のものを渡す。

「成分はまだ片方しか入ってませんが、これでオーバーフロー状態をどうにか出来ると思います」

「ここまで直しただけでも上出来だ。ありがとうな」

「はい!」

戦兎の感謝の言葉にセレナは嬉しそうに返す。

「よし、それじゃあそろそろ―――」

「ねえ」

それを見ていた響の言葉を遮って、調は戦兎に尋ねる。

「貴方はどうして戦うの?」

「ん?愛と平和(ラブ&ピース)の為だけど?」

調の質問に、もはや条件反射のように言い返す戦兎。

「よくもそんな事をなんの恥ずかし気もなく・・・」

「よく言われるよ。だけど、俺はこれを曲げるつもりはない」

「そんな叶いもしない言葉を掲げて、貴方は何がしたいの?」

そう言われて、戦兎は―――一切考えずに答える。

「くしゃっとなるんだよ」

「くしゃ・・・?」

「そ、誰かの為になれると、心の底から嬉しくなってくしゃってなるんだ。だから、俺は今まで誰かの為に戦ってきたし、これからも誰かの為に戦い続ける」

戦兎は調に歩み寄り、そして調の前に立っていう。

「だから、お前の為にも戦わせてくれよ」

「・・・」

そんな戦兎を見上げて、調は言葉を失う。

「・・・まあいい」

調はいじけるように視線をそらす。

「セレナを助けてくれた事には、感謝してるから」

その言葉に、彼らは嬉しそうに笑う。

 

 

 

そうして、ハッチから飛び出すギアを纏い、禁月輪で走る調と、セレナを後ろに乗せてバイクで出る戦兎。

だが、調の禁月輪には、どういう訳か響がいた。

『何をやっている!?響君を戦わせるつもりはないと言ったはずだ!?』

「戦いじゃありません。人助けです!」

『減らず口の上手い映画など、見せた覚えはないぞ!』

「まあまあそう言うなって風鳴さん」

そこで戦兎が割り込む。

「いざって時の為の発明品渡してあっから大丈夫だって」

『しかしだな・・・』

『行かせてあげて下さい』

未来の声が聞こえる。

『人助けは、一番響らしい事ですから』

「未来・・・」

未来の言葉に、響は感慨に浸る。

『・・・ふっ、こういう無理無茶無謀は、本来俺の役目だった筈なんだがな』

「まああの強さだからなぁ・・・」

そうして通信を切り、四人は向かう。

「さあ、さっさとこのふざけた事やってる奴ぶん殴って、敵も味方も全部救ってやろうじゃねえか!」

戦兎がそう叫んで、バイクを一気に走らせ、その後を調の禁月輪が追った。

 

 

 

 

「立花と桐生と、あの装者にセレナが一緒に?」

その一方で、翼たちは本部から響たちが出たという報告を受けていた。

「全く、アイツはいつもアタシらの想像の斜め上をいきやがる」

「本当にな」

「ああ」

そんな彼らの行動に、三人は思わず笑ってしまう。

「了解です。ただちに合流します」

「さて、ノイズを深追いしすぎちまったな・・・」

そうクリスが呟いた時だった。

どこからともなく銃弾が彼らに襲い掛かり、三人は一重に回避行動を取る。

「なんだ!?」

「敵襲か・・・!?」

そうして彼らは銃弾が飛んできた方を見れば―――

「なっ・・・・」

それを見て、クローズが固まる。

そこに立っていたのは、一重に異形ともとれる存在。それが複数、計五体。

ノイズとは違う、人に近いそれは――――

「なんだあれは・・・」

「あんなノイズ見た事ねえぞ!?」

「・・・ノイズじゃねえ」

クローズが、呟く。

「あれは・・・『スマッシュ』だ!」

 

 

 

 

 

その一方、人がいなくなったジェネレータールームにて。

「ククク・・・ネビュラガスとネフィリムの細胞を使い、創り上げた私だけのスマッシュ・・・その名も『ネフィリムスマッシュ』・・・!人を依り代にしなくていい分、捕食して取り込む力は無くなっているが、それぞれの個体に特有の能力を持たせてある・・・くくく・・・」

ジェームズは、一人狂喜に満ちた顔で何かの作業をしている。

「そして、このボトルさえ完成すれば、私は桐生戦兎をぉ・・・くく・・くひひ・・・!!」

結晶を流れる粒子の一部が、何本ものチューブを通って、一本のボトルに入れられていた。

 

 

 

 

 

「スマッシュって、確か旧世界での・・・」

「なんでそんなもんがこんな所に・・・!?」

想定外の事態に、翼とクリス、そしてクローズは動揺を隠せない。

そんな中で、クローズは周囲に誰かいないかと探していると、遠くに見覚えのある人物が立っている事に気付く。

そこには―――慧介がいた。

慧介は、真っ直ぐにクローズを見ていた。

「・・・悪いお前ら」

「ん?」

「龍我?」

「ここは任せた」

そう言って、クローズは慧介に向かって走る。

「龍我・・・」

そんなクローズを見送り、クリスはその意思を汲み取り、スマッシュたちに向き直る。

「やるぞ」

「ああ」

翼とクリスがスマッシュと対峙する。

 

 

 

そして、クローズは慧介の元に辿り着くと、変身を解除して慧介と対峙する。

「よお、元気にしてるか?」

「おかげさまで」

龍我の言葉に、慧介は爽やかな笑顔で答える。

しかし、すぐに真剣な表情になって龍我を見つめる。

「貴方なら、来てくれると思いましたよ。俺がどうしたいのかというのも、きっと分かってくれると」

「前に俺も色々やらかしたからな。お前に同じようになって欲しくなかっただけさ」

「そうですか・・・俺が、ここで貴方を待っていた理由はただ一つ。貴方との決着をつける為です」

そう言って、慧介はスクラッシュドライバーを取り出す。

「貴方には、暴走を止めてくれた恩があります。ですが、調を傷つけた事に対するけじめがまだ出来ていない・・・だから、俺は、貴方と全力で戦う事で、その答えを見つけたい」

「はっ、そういう事か。だったら受けて立ってやるぜ」

龍我もスクラッシュドライバーを取り出す。

「全力でかかってこい」

「ありがとうございます」

 

『スクラァッシュドゥライバァーッ!!』

 

腰にスクラッシュドライバーを取りつけ、それに互いのスクラッシュゼリーを装填する。

 

ドゥラゴンジュエリィーッ!!』

 

タイガァージュエリィーッ!!』

 

何かを叩くような待機音と共に、二人は構える。

 

「「変身!!」」

 

そして、スクラッシュドライバーのアクティベイトレンチを叩き下ろし、二人は変身する。

 

『潰れるゥ!流れるゥ!!溢れ出るゥッ!!!』

 

タイガァー・イン・タァスクゥッ!!』

 

ドゥラゴン・イン・クロォォズチャァァジッ!!』

 

『ブルァァァァア!!!』

 

その身をシンプルな素体の装甲に身を包み、二人は対峙する。

そして、互いに変身が完了した瞬間に、二人は激突する――――

 

 

 

 

 

 

 

戦兎がバイクを走らせ、調が禁月輪を走らせている最中、彼らはフロンティアの巨大な建造物へ向かっていた。

「あそこにいるのか!?」

「分からない。だけど、そんな気がする・・・」

調の答えに、戦兎は深く追求はしない。

そこで、調は突如としてその場で旋回。戦兎も特に驚かずその場でバイクを止める。

「うわぁっと!?」

「どうしたんですか!?」

響とセレナが驚く中、戦兎と調は上を見上げていた。

それにつられて彼女たちも見上げてみれば、そこには、切歌がいた。

「切歌ちゃん・・・!」

「切歌さん・・・」

切歌は一度、戦兎の乗るバイクの後ろに乗るセレナを見やる。

「セレナ・・・」

それを見て驚くも、すぐに首を振る。

そして切歌は、自らの聖詠を唄う。

 

『―――Zeios igalima raizen tron(夜を引き裂く曙光のごとく)―――』

 

その身を深緑と黒の戦闘装束へと身に纏い、その手に鎌を展開する。

「切ちゃん!」

「調、どうしてもデスか!?」

「ドクターのやり方では何も残らない・・・!」

「ドクターのやり方じゃないと何も残せないデス!間に合わないんデス!」

もはや平行線な二人の言い争い。

「二人とも、落ち着いて話し合おうよ」

「「戦場(いくさば)で何を馬鹿な事を!」」

(いやなんかの恒例行事なのかこれ!?)

思わず突っ込んでしまう戦兎だが、そんな事を言っている場合ではない。

「貴方たちは先に行って。貴方やセレナがいればきっと、マリアを止められる。手を繋げられる」

「調ちゃん・・・」

思わぬ言葉に、響は純粋に驚く。

「・・・止められるか?」

「・・・必ず」

戦兎の問いかけに、調はそう答える。

「・・・分かった。響、後ろに乗れ」

「え、わ、分かりました」

「セレナ、開けろ」

「はい」

セレナが下がる事で響が座れるだけのスペースを作る。

そこに響が座った時、調が呼び止める。

「ねえ」

「え?何?」

「・・・胸の歌を、信じなさい」

その言葉は、いつか了子が響に向かっていった言葉。

「・・・やっぱり、お前は・・・」

戦兎は、その言葉にある事を悟る。しかし、それ以上追及する事はなく、戦兎はバイクを走らせる。

「させるもんかデス!」

そう言って止めに入ろうとした切歌を、調が放った百輪廻で止める。

「調、なんでアイツを・・・アイツらは調が嫌った『偽善者』じゃないデスか!?」

「でもアイツらは、自分を偽って動いているわけじゃない。動きたいときに動いて、愛と平和の為に動くアイツらが眩しくて羨ましくて、少しだけ信じてみたい」

「サイデスか・・・」

そう言い切る調に、切歌はそう呟く。

「でも、アタシだって引き下がれないんデス!アタシがアタシでいられるうちに、何かを形で残したいんデス!」

「切ちゃんでいられるうちに・・・?」

「調やマリア、マムの暮らす世界と、アタシがここに至って証を、残したいんです!」

「それが理由?」

「これが理由デス」

一気に臨戦態勢に入る。

そのまま切歌が刃を増やし飛び上がり、その鎌から刃を飛ばす。

 

切・呪リeッTぉ

 

すかさず調がヘッドギアから展開した巨大円盤鋸を投擲して迎撃する。

 

γ式 卍火車

 

その二つの刃が今、激突する――――

 

 

 

フロンティアのそれぞれの場所で、戦いが繰り広げられる。

 

 

クリスと翼はネフィリムスマッシュと、

 

クローズはタスクと、

 

調は切歌と、

 

それぞれの戦いが繰り広げられる。

 

そして戦兎、響、セレナは―――敵本陣に乗り込み、物語は終盤へ向かう――――




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?」

「「大好きだって―――言ってるでしょぉぉぉぉぉおお!!!」」

激突する調と切歌。

「すまない。仕留めきれなんだ」
「いや、アタシもとれなかった」

スマッシュたちを相手取るクリスと翼。

「全く・・・末恐ろしい人だ!」

己の覚悟の確認の為に、クローズに戦いを挑むタスク。

『貴方の歌で、世界を救いなさい・・・!』

そして、歌で世界を救おうとする、マリア―――

それぞれの想いが、ぶつかり合う戦場の結末は―――

次回『譲れないエモーション』

「まさか、調、デスか・・・」








最近、Google playで見た『るろうに剣心(実写版)』を見て―――




風鳴―――鎌倉の時代より、人々の恐れられ続けてきた一族―――


戦国、幕末と、様々な時代の変わり目、動乱期に、その力を振るい、多くの血を流し、多くの人々の殺めた、護国の鬼を自称する一族―――


しかし幕末、その動乱の後に、その姿はぱったりと消える事となる―――


そして、明治の時代―――彼女は、現れた。


「怪我はないか、そこの娘よ」
「あ、アンタは・・・!?」


多くの人を殺め、されど刃と峰が逆さとなった刀『逆刃刀』をもって流浪の旅を続ける剣士の少女『風鳴翼』。
その翼と出会った、西洋人とのサラブレットの少女『雪音クリス』。
その二人を中心に、物語は動き出す―――

襲い掛かる、クリスを狙う刺客たち。

「何故雪音を狙う!」
「その女はとある血統の娘だからさぁ!」

そんな彼女たちを助けてくれる、仲間。

「困った時はお互い様です!」
「うちの響がすみません・・・」

支えてくれる、かつての部下と親たち。

「僕はいつでも貴方の味方です」
「子供が気張ってるんだ。大人の俺が何もしなくてどうする!?」
「娘の我儘を聞いてやるのも、父親としての務めだ」

苦悩するクリス。

「アタシのせいで・・・」


少女は、人を切らぬ刃を振るう。


どれほどの強敵がこようとも、どれほど過去が縛りつこうとも、


「私は、雪音だけの防人。故にこの刃は、雪音の為だけに振るおう」


愛する者を守るために、


「アンタは、アタシが醜くないのかよ」


混血であることに悩める少女を、救う為、


「雪音が醜い訳がなかろう。私が証明しよう」


翼は、戦う―――



「いくぞぉ、『風鳴の鬼』ィ――――!!」
「あぁぁぁああぁぁああ!!!」





明治剣客浪漫譚―――『雪のままに風は舞う』






――――完全につばクリじゃねーか(書いて思った事)



とまあ、そんな所で、また次回を楽しみに!

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