マ「・・・ん?そういえば作者は?」
響「ああ、それが、大晦日前日に見事に風邪を引いちゃったみたいで・・・」
戦「熱は下がったみたいだが今は大事をとって休憩中ってことだ。なんか初日は頭痛が酷くて寒気が凄かったらしいぞ」
マ「うわぁついてない・・・後でお見舞いにいってあげましょうか」
響「あ、皆も呼びましょう」
マ「ダメよ。大人数で押しかけたら無理させちゃうかもしれないじゃない」
響「え~そんなぁ・・・」
戦「ま、それはともかく、あらすじ紹介行ってみようか!」
響「はい!強大な力を秘めたフロンティアを巡って、米軍艦艇、二課、そしてF.I.Sの間ですさまじい戦闘が勃発した」
マ「しかし米軍艦艇はウェルの手によって壊滅。戦いはF.I.Sと二課の一騎打ちに持ち込まれた」
戦「ジェームズが作り出したネフィリムスマッシュは翼とクリスの手で殲滅、万丈と慧介の戦いは万丈が勝利をおさめ、そしてついに、ソロモンの杖を奪還する事に成功したのであった!」
マ「そして残すは私・・・う、耐えるの、耐えるのよ・・・よぉし。私とシンのいるブリッジだけとなった・・・そういえば桐生戦兎。セレナが貴方の為に新たな強化アイテムを造ったそうだけど、それは一体何なの?」
戦「ふっふっふ、それは本編までのお楽しみにだ」
響「え~、何か教えてくださいよ~。読者の皆さんは知ってても、私たちは知らないんですよ~」
戦「あーもう、それじゃあギュインギュインのズドドドドォな奴だ!」
響「おー!ギュインギュインのズドドドドォ!」
マ「何よそれ!?擬音ばっかで何にも分からないんだけど!?」
戦「一言で語れないのが天っ才なもんで!」
マ「はあ・・・まあいいわ。今回の話で明かされるわけだしね。どうなる第四〇話!」
ブリッジへと続く昇降盤の通る通路にて、龍我によって顔面をぶん殴られ、大きくその右頬を腫れさせ右側の歯がほとんど折れたウェルがいた。
「くそ!ソロモンの杖を手放すとは!こうなったらマリアをぶつけてやる・・・ッ!!」
狂気と怒りに満ちた表情で、ウェルは憎々し気にそう呟いた。
魂を切り裂く刃の直撃を受けた調は、背中から血を流し、力無くその場に倒れ伏していた。
「調、目を開けて!調!」
そんな調に切歌は両目から大量の涙を流して呼びかけていた。
しかし、調は一向に起きる気配は無く――――
その呼びかけは、沈みゆく調の意識に、微かに響いていた。
「切ちゃん・・・?」
その声に、調は、まるで海の底のような場所に映る人影にそう呼びかけるも、すぐに違うと否定する。
「じゃない・・・だとすると、貴方は・・・」
「―――どうでもいいじゃない。そんな事は」
突如として人影が、調の呟きに答える。しかし調は、それに驚く事なく首を横に振った。
「どうでもよくない。私の友達が泣いている・・・」
「そうね。
その人影は、微笑みながらそう言ってくる。しかし、その気配が、微かに、しかし確実に薄くなっていっている事を、調は感じていた。
「魂を両断する一撃を受けて、あまり長くは持ちそうにないか・・・」
イガリマの絶唱特性は、対象の魂を斬り裂く事によって、事実上の死を与える防御不能技。即ち、それを受けた調はその瞬間、もう二度と眼が覚めない筈だった。
彼女の中に、もう一人の魂がなければ。
「私を庇って?でも、どうして・・・」
調には、訳が分からなかった。
彼女の願いは、月より放射されるバラルの呪詛の解除、及び異端技術による人類支配の筈だ。そんな彼女が、何故、永遠を生きる彼女にとって、すぐに消えてしまう命の一つである自分を庇ったのか。
「あの子に伝えて欲しいのよ」
彼女が、答える。
「あの子?」
調は、首を傾げる。
「だって、数千年も
彼女は、自虐するようにそう話す。
「
「立花・・・響・・・」
調は、思い出すようにその名を口にする。
あの、馬鹿としか言いようがない程お人好しで、しかしそれでも真っ直ぐに自分の想いを貫き通そうと動く彼女の名を。
「ああ、それと、あの男にも伝えておいてくれないかしら?」
そして、彼女は、思い出したかのようにもう一人の事も言い出す。
「あの男・・・?」
「そう、今頃私の研究データの解析にあくせくしているだろうから、ヒントを貴方に残すわ。そのヒントから、私の全てを託すって」
「桐生・・・戦兎・・・」
もう一人の名前も、調は口に出す。
愛と平和、ラブ&ピース、それを本気で実現しようと、誰かの明日の為に戦おうとする、あの少女と同じくらい馬鹿でお人好しな男の名前を。
「いつか未来に、人が繋がれるなんて事は、亡霊が語るものではないわ」
―――彼の謳う、愛と平和の為の力になる。そう、伝えなさい――――
その言葉を最後に、その気配は消え―――そして、調は、現実に戻っていく。
「目を開けてよ、調・・・!」
もう半ば諦めかけて、それでも諦めきれず涙を流す切歌。
彼女自身も分かっているのだ。否、分かり切っているからこそ、この事実を受け入れたくないのだ。
イガリマを扱うのは彼女だ。だから、誰よりもその危険性を知っている。その特性を誰よりも熟知しているからこそ、切歌は、絶望と現実逃避のままに調の名前を呼び続けているのだ。
それも、もうすぐ途切れる―――そんな切歌に、答える声があった。
「開いているよ、切ちゃん」
「え・・・」
それに驚いていると、すっと調が何事もなかったかのように起き上がる。
「体の、怪我が・・・・」
驚いたことに、調の背中の傷は、跡形もなく消えていた。あれほど大きな刃が肉深く突き刺さっていた筈なのに。
それはきっと、彼女の置き土産。
調は、切歌の顔をじーっと、見つめる。
「調!」
切歌は、調に抱き着く。
「でも、どうして・・・?」
しかし、すぐに離れて疑問を口にする。
「たぶん、フィーネの魂に助けられた」
そうして、調は切歌に答えを言う。
「え、フィーネに、デスか・・・?」
そう聞き返す切歌に、今度は調から抱き着く。
「皆が私を助けてくれている。だから切ちゃんの力も貸してほしい・・・一緒にマリアを救おう」
「・・・うん、今度こそ調と一緒に、皆を、助けるデスよ」
二人は、やっと仲直りをしたのだ。
勘違いから始まった、喧嘩は終わった。
ブリッジにて。
『マリア、もう一度、月遺跡の再起動を・・・』
「無理よ!私の歌で世界を救うなんて・・・!」
ナスターシャの言葉を、マリアが泣きながら拒否。
『マリア!月の落下を食い止める、最後のチャンスなのですよ!』
そうナスターシャが叱咤する中、ウェルが、昇降盤でやってくる。
「ウェル!」
シンが雷切を背中の鞘から抜いてウェルに向ける。
「そこをどけェ!月が落ちなきゃ、好き勝手出来ないだろうが!」
ウェルが血走った目をシンに向けてシンに向かって怒鳴る。
「断る!もうこれ以上貴様の好きにさせるものか!」
シンがウェルに向かって怒鳴り返す。
「いいからそこをどけぇ!」
ウェルが左手を床に当てる。すると、突如としてシンの足元の床の一部が正方形に飛び出し、それが予想外な事に反応出来なかったシンの腹に突き刺さり吹き飛ばす。
「がっ!?」
「シン!!」
そのまま壁に叩きつけられ、その場に力なくずり落ち、ぐったりとしてしまう。
「シン!」
マリアが泣きそうな顔でシンの名を呼ぶ。
「やかましいわ!」
だがそこへウェルは走り出してマリアを殴り飛ばす。
『マリア!シン!』
「あ?やっぱりオバハンか」
ウェルが、ナスターシャの声を聞き、にやりと笑う。
するとウェルはコンソールに触れると、何やら作業を始める。
『お聞きなさいドクターウェル!フロンティアの機能を使って、収束したフォニックゲインを月へと照射し、バラルの呪詛を司る遺跡を再起動出来れば、月を元の起動に戻せるのです!』
それが、世界を救う唯一の方法。ナスターシャが命懸けで導き出した、彼女の『勝利の法則』。
だが、このウェルという男の『勝利の法則』は、そんなものとは真逆のものだった。
「そんなに遺跡を動かしたいのなら―――!!」
この男にとっては、支配こそが至高。人の上に立ってこその英雄という固定観念がある。
故に、自分にとって邪魔となる存在は―――容赦なく排除する。
「あんたが月に行ってくればいいだろ!!」
そして、ウェルは、ナスターシャのいる制御室を
が、その為にはコンソールに触れ、その命令を実行しなければならない。
ウェルのネフィリムの細胞を仕込んだLiNKERを投与した左手をコンソールに触れる、その寸前―――
そのコンソールに何かが撃ち込まれ、『残念だったな!』と書かれたスマホのアイコンのような質量あるホログラムがウェルの手を阻んだ。
「なっ!?」
それに、ウェルは驚愕する。それは、マリアもシンも同じだった。
さらに次の瞬間、そのアイコンの表示が代わり、ウェルを指差すかのようなイラストと『さあ、お前の罪を数えろ』というキャッチコピーの文字列が並び立ち―――
「待てぇ!」
そして、どこからともなく、その声が聞こえてきた。
「ッ!?」
突如として、叫び声が聞こえてきたと思いきや、ブリッジの窓部分から、突如としてバイクが一台飛び込んでくる。
「見つけたぞくそったれ科学者ァ!!!」
「よくもマリア姉さんを傷つけてくれたなサイコパスサイエンティストォ!」
「え、えーっと・・・観念してくださいウェル博士!!」
その上には戦兎、セレナ、響の三人が乗っていた。
すかさず戦兎がホークガトリンガーをウェルに向かって容赦なく撃ちまくる。
「うわぁああ!?」
それにウェルは慌てて情けなく転げまわるように逃げ、そこへ戦兎がバイクをアキラストップでバイクを止め、それと同時に響とセレナがマリアとシンの元へ向かう。
「マリア姉さん!」
「セレナ・・・?」
セレナは真っ先にマリアの元へ向かい、そのままマリアに抱き着く。
「良かった、マリア姉さん・・・!!」
「セレナ・・・なの・・・でも、どうして・・・」
ありえない事態に、マリアは理解が追い付いていない様子だった。
「大丈夫ですか?」
「ぐう・・ああ・・・連れてきたんだな・・・・」
その一方、響はシンの元へ向かう。
そんな中で、シンが呟いた言葉に、響は微笑む。
「やっぱり、貴方だったんですね」
「何・・・?」
その言葉に、シンは目を見開き、その一方戦兎はウェルと対峙していた。
「チィッ!いつもいつもこっちの都合の悪い時にィ!!!」
「ハッ!テメエの都合を潰して何が悪いんだか。ってかなんだその左手、
「黙れ黙れ黙れェ!英雄である僕に、こんな事が許されると思っているのかぁぁああ!!」
半狂乱になったウェルが戦兎に向かって殴り掛かる。しかし、ネフィリムの細胞を埋め込んだ左手の一撃を、戦兎は何の苦もなく受け止める。
「はえ・・・?」
「英雄、だと・・・?」
ぐぐぐ、と戦兎の手がウェルの左手を抑え込むように下に動かし、次の瞬間、もう一方の拳でウェルの顔面に拳を叩き込んでいた。
「ぐべあ・・・!?」
思わずよろめいたウェルにすかさずもう一方の拳で顔面を殴り、腹に膝蹴りを叩き込んで前のめりになった所で、回し蹴りを再度顔面に叩き込んで蹴り飛ばす。
「ぐげあ!?」
「お前がヒーロー?ふざけんのも大概にしろ!」
そして倒れ伏したウェルに戦兎は自分を指差してそう言い切って見せる。
「テメエのような人でなしにヒーローなんて名乗れるものかよバーカ」
そしてあからさまに馬鹿にし始める戦兎。それにウェルは顔を真っ赤にしてブチ切れる。
「くそぉ・・・くそくそくそくそくそくそくそくそォォォォオ!!」
ウェルが、建物を変形させる。
床が変形し、戦兎を襲うも、既にラビットフルボトルを振っていた戦兎は常人にはあり合えない速度でそれを躱し、そしてすかさずウェルの懐に飛び込む。
「はえ?」
そして、顔面を殴り飛ばす。
「ごぱぁ!?」
もはや何が起きたのか理解していないウェル。
「フルボトルにあんな使い方が・・・」
響に肩を貸されつつ、シンは戦兎の戦いに目を見張る。
「あ・・・あば・・・な、何が・・・」
もはや何が起きているのか分からないウェル。
「お前には色々と借りがあるからなぁ・・・」
そのウェルの背後に、戦兎はいつの間にか立っており、右肩をぐるぐると回していた。
「はっ!?」
注意、ここから先、ウェルが戦兎に徹底的にボコボコにされます。
「まず、これは俺の私情!お前が使役していたネフィリムにぱっくんちょされた分!」
「ごぱっ!?」
「万丈、クリス、響だまくらかしてソロモンの杖奪っていらん被害出した分!」
「あが!?」
「Anti LiNKERなんか言う奴でみんなを苦しめた分!」
「ぐべ!?」
「それとこれは俺の日頃の不満三連発!セレナが勝手に何か作る響が発明品に勝手に障るクロがいたずらしてくるの三つ!」
「待てそれ関係なくくげごがぶが!?」
「スカイタワーにノイズ放って響を悲しませた分!」
「そげぶ!?」
「そんで未来に無理矢理シンフォギア装着させた分!」
「あがぱ!?」
「調と切歌の関係を変にこじらせた分!」
「げんぶ!?」
「慧介が暴走する原因を造った分!」
「はぶ!?」
「そんでもってこれはちょっと楽しくなってきたからおまけ一発」
「理不尽!?」
「最後に翼のステージ潰してくれた分だゴラァ!」
「あるふれっど!?」
ひとしきり殴った所で一旦休憩に入る戦兎。
「く、くそぉ・・・この英雄の顔をここまで殴りまくってくれたなぁ・・・!!」
が、ウェルはそこまで殴られてもまだ話せるようだった。顔は見るも無残な程に腫れあがっているというのに。
「「「うわあ・・・」」」
女性陣はドン引きである。
「お前なんてヒーローじゃねえよ。ヒーローってのはな、無償で誰かを助ける奴が名乗れるもんなんだよ。そもそも人を殺す事に愉悦覚えてる奴に英雄名乗る資格なんてないわボケ」
「はっ!何を言い出すのかと思えば・・・歴史上の英雄を見なさい!彼らがその功績を立てるのに多くの血を流してきた!であるならば僕もそれ相応の血を流す事で、真の英雄になる事が―――」
「どうでもいいんだよ歴史上の人物の事なんざ」
「なっ!?」
割とバッサリと持論を一蹴されるウェル。
「問題なのはどれほど多くの人間を救えるかだ!その為に多くの血を流したっていうけどな、マジでふざけてんじゃねえぞ。人を殺して、それに喜びを感じる奴を俺は絶対にヒーローだなんて認めねえ」
「であるならば何故お前は兵器であるライダーシステムを使う!それが戦争の引き金になるかもしれないと何故―――」
「んな事分かってんだよ!これが戦争に利用されて、多くの人々が涙を流すって事も知ってんだよ!だけど、俺はこの力を、愛と平和の為に使う・・・例え何かを壊す力であったとしても、俺は、誰かを守るためにこの力を使う。それをお前に否定させはしない!!」
互いに睨み合う戦兎とウェル。
戦兎は揺るぎない信念を持った表情で、ウェルは思い通りにいかない事に苛立ちを感じた表情で。
しかし、そんな時だった。
「誰かを守るために使うだと?ふざけるのも大概にしてくれ」
ジェームズが、昇降盤を使ってやってくる。
「ジェームズ博士・・・!?」
その登場に、シンは目を見開く。
「それは葛城という悪魔どもが自らの生贄とした人間の血肉から創り上げた悪魔の
ジェームズは嘲笑するようにそう言う。
「そうかもしれないな・・・でも、父さんはこの力を、正義の為に作ったんだ。それを、破壊の為としか考えていないお前に否定される筋合いはないな」
戦兎は、毅然と言い返す。
「くく・・クハハハハハ!!!」
ジェームズが、その返しに高笑いをする。
「ふざけるな」
しかし、すぐさま憎悪に塗れた声で戦兎を睨みつける。
「正義だと?そんな訳があるか!あの男は他者の才能を妬み、そして自分を超える才能があればすぐに消す!そんな男だ!そんな男が、正義など語るものかァ!!」
憎しみに血走った眼を向けるジェームズ。しかし、そんなジェームズに、戦兎は冷めた目を向けていた。
「・・・あんたが父さんに殺された理由が、やっとわかったよ」
「なんだと・・・?」
戦兎の言葉に、ジェームズは訝し気に聞き返す。
「あんたは父さんの事を何も理解していない。父さんが、たかが才能の差で誰かを殺す人間じゃないって事は、息子である俺が一番よく知ってる」
以前、父親である忍に聞いたことがある。
何のために科学者になったのだと。
それに、忍はこう答えた。
『
「才能を嫉んでいたのはお前だ。いや、それも違う。お前はライダーシステムを兵器としてしか見てなかった。そして、それをいつか起こる戦争の為に本国に持ち帰ろうとしたんだ」
「息子・・・だと・・・いや、それ以前に貴様は奴の事を父さんと・・・」
ジェームズは、目を見開く。
「ああ、そういえば言ってなかったな――――俺がお前を人体実験に使った『葛城忍』の息子、『葛城巧』だよ」
今更気付いたのか、と呆れる戦兎。
「ま、悪魔の科学者としての記憶は一切ないけどな」
「く、くく・・・」
それに、ジェームズは口を抑え、腹を抱えて笑い出す。
まるで、この巡り合わせに、感謝しているかのように。
「これほど運命に感謝した事は無いィッ!!」
狂気に歪んだ顔で、ジェームズは戦兎を指差す。
「今日!ここに!私の復讐目標である葛城忍の息子をこの場に引きずり出してくれた運命にッ!!私はこれほど感謝する事はないだろうッ!!」
ジェームズは、狂ったように背中を反らして笑い出す。
「今ここで葛城巧を殺し、葛城忍の前にその首を突き出し、恐れおののいた所を家族ごと惨たらしく殺し、この復讐を完遂するッ!!」
末恐ろしい事を喚き散らし、ジェームズが、ルインドライバーを取り出す。
「ッ!?それは・・・」
シンが、目を見開く。一方の戦兎は冷静にジェームズを睨みつけていた。
「悪いがそう簡単に殺される訳にはいかない。これでも仲間が待ってるんだ。そう簡単に死ねるかよ」
「散々人を殺しておいてよく言う・・・貴様なんぞに仲間などいるものかァ!!」
「いる!!」
そう答えたのは、戦兎ではない。響だ。
「私だけじゃない。翼さんやクリスちゃん、龍我さんに、二課の皆が戦兎先生の仲間だ!」
「ならば貴様らも悪魔の仲間だ!悪魔は、まとめて私が全て葬り去ってくれる!」
そう言って、ジェームズはルインドライバーを自らに装着した。
「何っ!?」
「ルインドライバーを、自分で・・・・!?」
その行為に、驚くシンとマリア。
「くくく、どちらにしろ貴様を葬り去るために用意したものだ。それを私が使ってもなんら問題はない」
「待て、それは確かハザードレベルが規定値に達しなければ使えない筈だ!」
「そんな事はとっくに知ってるんだよォ!!」
ジェームズがシンに怒鳴り返す。
「すでにお前たちに隠れてハザードレベルを上げる為にネビュラガスをお前たちより早い段階で注入していたに決まっているだろぉ?それでもお前に使わせたのはいずれ私が使う時の事を考えて試験的に貸してやったに過ぎない・・・まあ、その段階でまさか葛城の仮面ライダーを葬り去るチャンスが到来するとは思っていなかったがな・・・」
ジェームズには自信があった。元少年兵であるシンと格闘訓練ならシンを覗いてトップの慧介なら必ず戦兎と龍我を葬り去ってくれると。
しかし実際は違った。
実際に戦わせてみれば、優位なのは戦兎と龍我たちではないか。
その上、慧介に限っては無様に惨敗するばかり。
であるならばどうするべきか。
もう自分が戦うしかないじゃないか。
ジェームズは、ポケットから一本のボトルを取り出す。
「このフロンティアのエネルギーを込めたこのボトルで、貴様を葬ってくれるわァ!!」
そう叫び、ジェームズはそのボトル『フロンティアレリックフルボトル』をルインドライバーに装填、収納スペースをすぐさま元に戻す。
『Ready』
「変身ッ!!」
そして、そう叫び、ジェームズは引き金を引いた。
『Penetration Armor Type-Frontier』
深い藍色の装甲を身に纏い、その装甲に輝くラインが走る。
クライムの時のバイザーはなく、ただ横に伸びる複眼がある、禍々しい姿だった。
「くくく・・・これが仮面ライダー・・・名付けるならそう『リベンジ』・・・私は今日から、仮面ライダーリベンジだ!!」
ジェームズ―――仮面ライダーリベンジがそう声を挙げる。
「戦兎先生!」
「分かってる!」
響の叫びに、戦兎はすぐに応じる。
ラビットタンクスパークリングを取り出しそれを振り、プルタブスイッチを起動し、そのまま腰に装着したビルドドライバーに装填する。
『ラビットタンクスパークリング!』
ボルテックレバーを回してスナップライドビルダーを展開。両手を広げた後にファイティングポーズをとって戦兎は叫ぶ。
「変身ッ!!」
『シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』
ビルド・ラビットタンクスパークリングに変身し、ビルドはリベンジと対峙する。
「死ねぇぇえ!!葛城巧ィッ!!」
リベンジが叫び走り出し、それにビルドが迎え撃つように走り出し、そして、激突する。
ビルドがリベンジと激突する。
その様子を、マリアはただ茫然と見つめていた。
「マリア姉さん、大丈夫?」
そこへ、マリアの頬の腫れを心配するようにセレナが近寄る。だがマリアはなおもセレナがいる事に困惑していた。
「セレナ、どうして貴方がここに・・・」
「それは・・・」
マリアの質問に、セレナは返す言葉に戸惑う。
「俺が隠していた」
そこへ、シンがやってきて、そう言う。
「シン、どういう事・・・?」
「あの日、俺はセレナを間一髪の所で助けた。だが、絶唱の負荷でもはや生死を彷徨う状態だったセレナを、俺は誰に言うでもなく、凍結させる事で生き永らえさせた。だが、いずれはばれ、セレナがまた回復すれば奴らは何度もでもネフィリムの起動実験を行うだろう・・・だから俺は、毎夜孤児院を抜け出し、闇医者をつきとめ、金を稼ぎ、三年でセレナの治療に成功させたはいいものの、あの時の俺では、セレナをどこにも預ける事は出来なかった。その上、お前たちにも隠していかなければならなかった」
そんな時に、ルナアタック事変が起き、月の起動が変わり、人類存亡の危機になった。
そして、作戦を成功させる為には、日本に向かう必要がある事が分かり、シンはすぐさま、セレナを特異災害対策機動部に預ける事にした。
そこなら、セレナの安全を保障してくれるだろうと踏んだ。
幸い、闇医者の見立てでは失血による脳へのダメージで記憶を失っているという診断結果が出ていた。
であるならば、記憶喪失のままで、新たな人生を歩ませた方が安全だと踏み、二ヶ月前にセレナを二課へと預けさせたのだ。
「そう・・・だったの・・・」
マリアは、茫然とシンの言葉を聞いていた。
「本当にすまなかった・・・だが、セレナの事がバレて、本国で人質にされるよりはマシかと思った。日本は、和を重んじる国だと聞いていたから、それにかけたわけだが・・・どうやら間違いではなかったようだ」
セレナの様子に、シンは微笑む。
「じゃあ、セレナは・・・」
マリアは、目の前に座るセレナを見る。
「うん、ちゃんと生きてるよ。マリア姉さん」
そのマリアに、セレナは微笑む。
「セレナ・・・せれ・・・な・・・!!」
死んでいたと思っていた妹が生きていた。これ以上、嬉しい事も、悲しい事もないだろう。
「ごめんなさい・・・貴方の意志を継いで・・・世界を救おうとしたけど・・・私には出来なかった・・・!!ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・貴方のいる世界を・・・私は・・・救えなかった・・・!!」
「そんな事ないよ。まだ間に合う」
抱き合う二人の様子に、響は微笑みが浮かび上がるも、すぐさま背後に気配を感じ振り返ると、そこには抜き足差し足でコンソールに近付こうとするウェルの姿があった。
(あれに触らせちゃだめだ!!)
直感的にそう悟り、響は立ち上がってウェルに向かって走り出す。
それに気付いたウェルは、すぐさまコンソールに向かおうとする。
が、
(あれ?そういえばさっき戦兎先生がウェル博士に何か気になるような事を言ってたような。確か、未来にシンフォギアを装着させた―――)
瞬間、響の思考が超速で回転する。
その間、僅か0.1秒。
その理由はただ一つ。
「そいつが小日向未来にギアを無理矢理取り付けた張本人だッ!!」
そう、シンが言い放ったからだ。
それを聞いた響は直後に―――
ぶちっ
「お前かぁぁぁああぁあああ!!!未来を誑かして苦しめたのはぁぁぁあ!!!」
ブチ切れてウェルを容赦なく殴り飛ばした。
「ぐべあぁあ!!?」
普段の響からは考えられない程容赦ない一撃。それが見事に顔面の奇しくも龍我がぶん殴った方とは反対の方に炸裂し、そのまま一気に殴り飛ばす。
「よし、計算通り」
「「ええ・・・」」
そう言ってガッツポーズを取るシンに、イヴ姉妹は引いてしまう。
「ふうー・・・あ、つい本気で殴っちゃったけど・・・まあいっか」
もはやウェルに対する良心の一切が消えている響。
普段は心優しい響だが、やはり未来の事になると容赦はなくなるようだ。
『マリア、シン、聞こえますか!?』
「この声・・・マム!?」
『その声は・・・まさか、セレナなのですか!?』
ナスターシャが酷く驚いたような声で聞き返す。
「はい!シンさんのお陰で、この通りぴんぴんしてます!」
『シンが・・・いえ、この際、それについては後回しにしましょう。もう時間は限られています。フロンティアの機能を使って、収束したフォニックゲインを月へと照射し、バラスの呪詛を司る遺跡を再起動が出来れば、月を元の起動に戻せるのです』
「だからマリア姉さんは歌ってたんだね・・・」
『セレナ、貴方がいるのなら、貴方の歌で世界を救いなさい』
声の向こう側のナスターシャの声は、掠れている。
気絶する寸前で見えた、あの瓦礫の時のダメージが残っているのだろうか。
だが―――
「ぐおあ!?」
ビルドの悲鳴が聞こえ、そちらに視線を向ければ、なんとビルドがリベンジに一方的に打ちのめされていた。
「ハハハハ!!たかだか人間一人の力で、この巨大宇宙船の力を使うリベンジに叶う者かァ!フハハハハハ!!」
「こっのやろう!!」
距離を取ったビルドが足裏で泡を破裂させて、一気にリベンジに迫る。
その拳を叩きつけるも、叩きつけたビルドの拳から伝わってきたのは大地のように重い感触だった。
「ッ!?」
「無駄ァ!!」
リベンジがその腕を弾き飛ばし、ビルドを殴る殴る。ラッシュを一気に叩きつけていく。
「貴様如きの力で、このリベンジの力を覆せるものかァ!!散々大勢の人間をネビュラガスの人体実験に使いッ!殺し!非道の限りを尽くしてきた貴様にィ!この私が負ける道理はないのだァ!!!」
蹴り飛ばされ、よろめき、すかさず近付いたリベンジがビルドを掴み、そのまま反対側、昇降盤の方へ投げ飛ばす。
「ぐぅ・・・!!」
「どうだ!自分の兵器が負けている様を感じるのは!実に、実に滑稽だな!葛城巧ィ!!」
その言葉に、戦兎は立ち上がって言い返す。
「ライダーシステムは・・・兵器なんかじゃない!!」
その手にドリルクラッシャーをもって、リベンジに接近するビルド。
振り下ろされるドリル。それをフロンティアは躱し、続く一撃をも躱して三撃目を止める。
「本当に兵器じゃないと言えるのかぁ?」
「ッ!?」
一瞬、ビルドの動きが止まる。
次の瞬間、片手でドリルクラッシャーを持つ手とは反対の手を、ビルドの顔面に向かって振るう。
それを顔を傾ける事で間一髪で躱し、続く二撃目も反対に顔を傾け躱す。だが三撃目、抑えた手を引っ張りバランスを崩した所での背中への蹴りは躱せなかった。
「がっ!?」
「科学は人が争う事で発展してきた!科学が進展するのはいつも人を殺すための『兵器』が生まれる時!いついかなる時も、他国を凌駕する兵器を造らんと多くの科学者どもは躍起になった!お前も同じだ。お前は、科学の発展が戦争を生み出すと知りながら、ライダーシステムを造ったのだ・・・!!」
圧倒的な強さに、ビルドはどんどん追い込まれていく。
しかし、それでもビルドは言い返す。
「戦争に加担したい科学者なんて、一人もいない!!人々の幸せを願って、平和利用の為に力を尽くしてるんだ!」
ビルドの拳がリベンジを襲う。泡の破裂によって引きあがる拳の威力。それに差し引いても、その拳の速さは、常人のそれを超える。
しかし、その拳を全ていなし躱し、反撃の蹴りを叩き込んでビルドを下がらせる。
「ふん、戦争に加担したい科学者は一人もいないだと?それは偏見というものだ。科学者はいつだって、自らの
「ぬぐあ!?」
続けてリベンジがやった事は、そこらに転がっている瓦礫を蹴り上げ、それをもう一度ビルドに向かって蹴り突けるというもの。
一発目は躱して見せる。しかし続く二撃、三撃と次々にその攻撃をもらう。
「ぐあぁあ!?」
「それでもまだ平和の為と抜かすなら聞こう!ハザードトリガーはどう説明する!」
リベンジが、糾弾するように尋ねる。
「暴走し、全てを破壊する兵器と化すあの力を、どう平和利用するというのかね?」
「あれは、希望だ・・・!」
「希望だと!?暴走し他人を傷つける力が希望を抜かすか!この偽善者め!」
すかさず、リベンジが瓦礫を投げ飛ばし、それをビルドに叩きつける。
「がぁ!?」
顔面に炸裂し一瞬、体が仰け反る。そうしてリベンジから一瞬、目を放した隙に、リベンジは接近、そのままビルドを殴り飛ばし、壁に叩きつける。
「がっは・・・」
「戦兎先生・・・!」
壁から剥がれ落ちるように崩れ、地面を転がり、仰向けに倒れる。
「お前は分かっていたんだよ・・・こうなる事を・・・ククク」
それは、この戦いが引き起こされた事に対する侮蔑と、自分の力が相手より勝っていた事を証明するが故の、優越感がこめられた言葉。
「あの世界で、戦争が起こる事も、全てなぁ!!」
リベンジが、声を挙げてビルドを嘲笑う。その圧倒的な強さに、マリアとシンは諦めるかのように目を閉じる。
「・・・・戦争は、悲しみを生むだけだ・・・!」
ふと、そんな中で、ビルドは呟く。
「はあ?」
思い起こされるのは、旧世界で引き起こされた戦争。多くの人々が争い、傷つき、その命を落としていった。
全て、自分が作った、『ライダーシステム』の所為で。
子供が親とはぐれる、兵士が血を流す、阿鼻叫喚、多くの人々が泣き、叫び、住む場所を失い、逃げても逃げても、敵は武器を構えてやってくる。
止まる事は許されない、止まれば、自分の命が終わる。敵を蹂躙しなければ、自分たちが殺される。だから戦う。
その戦いで、多くの人々が、傷つき倒れて、自分たちの街が、故郷が破壊される。
破壊されれば報復しようとする。そして報復すればまた報復される。復讐が復讐を呼び、悪意が弱い命を踏み潰す。
戦争とは―――負の連鎖だ。
「巧だって・・・本当はそんな事望んでいなかった。だけど、それでも悪魔を名乗るしかなかった。世界を守る為に、多くの人々の明日を守るために、例え力に頼ろうとも、多くの人々を救うために!!」
「まるで自分は別人とでもいうような言い草だな」
「そうだ。俺に悪魔の科学者としての記憶はない。それでも俺は、『葛城巧』であり、『桐生戦兎』なんだ・・・だから、
『ボルテックブレイクッ!!』
ドリルクラッシャー・ガンモードにタンクフルボトルを装填、ついで、ホークガトリンガーもフルバレット状態にしてリベンジに向かって乱射する。
一方リベンジはルインドライバーの引き金を引き、必殺技を発動する。
『Impact Frontier Break!』
叩き込まれる弾丸の嵐の中を突っ切って、リベンジはビルドに接近。そのまま頭上を飛び越え、ビルドの背後を取ると、フロンティアの成分が込められた右腕でビルドを殴り飛ばす。
「ぐあぁぁああ!?」
殴り飛ばされ、ビルドは地面を転がる。その最中でドリルクラッシャーとホークガトリンガーを落とし、地面に仰向けに倒れ伏す。
「ぐ・・あ・・・ハア・・・ハア・・・」
そんなビルドを見下し、リベンジはなおも嘲笑う。
「もはや何をしても無駄だぁ。お前は私には勝てない。私という才能を恐れた結果がこれだ。お前たち『葛城』は、私という才能を見誤って死ぬのだぁ!」
ハハハハハ!と、リベンジは高笑いをする。
全身を苛む痛みに耐え、ビルドは倒れたままリベンジの方を見る。
その最中で、その向こうにいるセレナたちを視界に入れてしまう。
それを見て、ビルドは――――
「・・・ああ、最悪だ。こんな時に思い出しちまうなんて・・・」
もう一度天井を仰ぎ見て、ビルドは、思い出す。
『誰かの力になりたくて、戦ってきたんだろ!?誰かを守るために、立ち上がってきたんだろ!?それが出来るのは、葛城巧でも、佐藤太郎でもねえ!桐生戦兎だけだろォがァ!!』
かつて、相棒が言ってくれた言葉。
「筋肉馬鹿に言われたあの言葉が、今の俺を創った・・・あいつだけじゃない」
ビルドは―――桐生戦兎は立ち上がる。
「皆の想いを受けて、俺は『桐生戦兎』として、正義の為にライダーシステムを使ってきたんだ!」
ビルドが、ハザードトリガーを取り出す。
「ふっ、使うが良い。そして暴走するがいい。その力で、全てを破壊するが良い!!」
リベンジは嘲笑う。暴走する力に手を出すビルドを・・・桐生戦兎を。
「俺はもう何も壊さない。大切なものを見失わない。『葛城巧』としてじゃない――――」
しかし、それに戦兎は、揺るがない覚悟をもって叫ぶ。
「―――自意識過剰でナルシストな正義のヒーロー『桐生戦兎』としてのやり方で、俺は大切なものを守り通して見せる!」
そして戦兎は、ハザードトリガーを起動する――――
『マックスハザードオンッ!!!』
その音に、リベンジは驚く。
「いきなりマックスだと・・・何を考えている!?」
まさか、いきなり暴走領域の力を使うとは思ってもみなかったのだろう。
「オーバーフロー状態になれば暴走する・・・初めから暴走して戦うつもりなのか!?」
「無茶よそんなの!!」
そのビルドの行為に、シンやマリアも驚く。
「大丈夫!」
そんな二人に、セレナは叫ぶ。
「もし、戦兎先生を信じられないなら、私を信じて!」
セレナが、二人に向かって、そう言う。
その、セレナの自信に二人は、何も言わずにビルドの方を見る。
ビルドが、ビルドドライバーにハザードトリガーをセットする。
そして次にビルドが取り出したものは―――長いボトル。
「なんだそれは・・・!?」
見た事もないアイテムに、リベンジは戸惑いを隠せない。
ピョンピョンピョン
振れば、まるで何かが跳ねるような音が聞こえてくる。それと同時に、そのボトルの片方。銀色の部分にある発光装置が赤く光る。
そして、ビルドは、そのボトルの金色の蓋『セレクティングキャップ』を捻り、そのすぐ下の『リボルインジケーター』に兎の絵柄が表示される。
『ラビット!』
そして、すぐさまそのボトルを引き延ばし、折り曲げ、『ビルドアップコネクター』を連結させ、ビルドドライバーに装填する。
『ラビット
そのような音声が鳴り響き、ビルドは、言う。
「ビルドアップ」
そして、ボルテックレバーを回し、ハザードビルダーを展開する。
『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』
展開されたハザードビルダーがビルドを挟み込み、そこから真っ黒なビルドを出現させる。
『Are You Ready?』
『オーバーフロウッ!!』
そのような音声が発せられると同時に、どこからともなく赤い機械の兎が飛んでくる。
可愛らしい仕草をするそれは、一度首を左右に振ると、突如としてその体を五つのパーツに分解させ、ビルドの周囲に展開される。
その形は、まるで鎧。
それをビルドが―――着装する。
『紅のスピーディージャンパーッ!!!』
『ラビットラビットッ!!!』
『ヤベェーイッ!!!ハヤァーイッ!!!』
それが、ビルドの新しい強化フォーム――――
真っ赤な装甲をその身に纏い、ついに紅のビルドがその場に姿を現す。
「あれが、ギュインギュインのズドドドドド・・・・」
マリアが、そう呟き、紅のビルドは、リベンジの方を見る。
そしておもむろに駆け出し、その拳を叩きつける。
「ぐぅ!?」
その速さは、あまりにも速かった。
「おぉぉお!!!」
そのまま、凄まじい勢いでリベンジにラッシュを叩き込んでいく。
「ぐっ!?なんだ、この強さは・・・この速さは・・・!?」
リベンジが反撃するも、その全ての拳がビルドに辿り着く前に、ビルドの拳が先に叩き込まれる。例え先に拳を叩きつける事が出来たとしても、その拳は全て防がれ、カウンターの一撃がリベンジに突き刺さる。
「ハア!!」
渾身のストレートが叩き込まれる。
「速い・・・!」
響が、純粋に思った事を思わず口にしてしまう。
「ぐぅ!?・・・だが、今の私は、重力を自在に操る事が出来るッ!」
すぐさまリベンジが周囲の重力を操り瓦礫を浮かせる。
「これでもくら―――」
それをぶつけようとした瞬間、顔面に謎の衝撃が走る。
「ぐべあ!?」
すかさず腹、胸、肩、とまるで拳を何度も叩きつけられているかのような衝撃がリベンジを襲う。
「な、なにが起きて――――」
そしてリベンジは見る。
ビルドの突き出した腕が
「馬鹿な・・・ぐあぁ!?」
まともに喰らったその一撃で吹き飛び、壁に叩きつけられるリベンジ。
それを遠目で見ていたシンは、その強さに圧巻する。
「あの動き・・・暴走状態のものと同じ・・・だが、自我を失っていない・・・」
今のビルドは間違いなくオーバーフロー状態。即ち暴走していてもおかしくない状態なのだ。
しかし、今のビルドが暴走している様子はなく、リベンジを圧倒していた。
「ハザードトリガーの万能強化剤『プログレスヴェイパー』を、同じフルボトル二本分の成分の常温による相互干渉によって生み出される万能抑制剤『スタビライザヴェイパー』によって抑制、自我を失う寸前で留める事で、理性を保ったままオーバーフロー状態で戦う事が出来る。それが、戦兎先生が考案して、作り出した強化アイテム『フルフルラビットタンクボトル』。そして、あのフォームが、速さ、機動性に特化した姿、『ビルド・ラビットラビットフォーム』!」
暴走を克服し、手に入れた新たな力――――
セレナが得意気に語るのを他所に、ビルドはさらにリベンジを追い込んでいく。
「俺はもう、自分を見失ったりはしない・・・この力は、完全に俺のものだ!!」
ビルドが跳ぶ。
高く跳んだビルドが、天井にその両足を付けると、すぐさま壁に向かってその天井を蹴り、また壁に両足を付けるともう一度蹴り飛ばし、三次元に四方八方、否、縦横無尽に駆け巡る。
「ば、馬鹿な・・・この私が、ルインドライバーが、悪魔如きに圧倒されるなど・・・!?」
目が追い付かない。おそらく、ビルドの動きがまともに見えているのはシンだけだろう。
十分に攪乱したビルドが、壁を蹴ってリベンジの腹に一撃を叩き込む。
「がっは・・・」
まるで相手になっていない。その理由は、一重にその速さ。
拳を突き出し、伸ばす際もその速さはすさまじく、まるで弾丸の如く勢いで敵を打ち据える。
それだけに留まらず、
「がぁぁあ!!」
リベンジの上段蹴りがビルドの顔面を捉えようとする寸前、その足が空振り、地面に着く前に背後に周り、殴り飛ばす。
挙動が速い、行動が速い、攻撃が速い。何を置いても、今のビルドの速さは、クライムに匹敵する程の速さを見せつけていた。
それだけじゃない。両腕両脚が伸縮するため、いつでもどこからでもリベンジに攻撃を叩き込めるのだ。
接近して殴り飛ばす、足を伸ばして蹴り飛ばす、腕を伸ばして薙ぎ払う、突っ込んで踵落としを決める。
まさしく一方的。
「ば、馬鹿な・・・この私が、ルインドライバーが、負けているだと・・・!?そんな、そんな事―――」
その言葉が終わる前に、ビルドのアッパーがリベンジに炸裂。それによって宙に浮いたリベンジを、再び拳が叩き込まれ、吹き飛ばされる。
「ぐあぁぁぁあ!?」
大きく距離を離され、地面を転がるリベンジ。
「フルボトルバスター!!」
一方ビルドは、着地と同時に、フルボトルバスターを取り出し、それにラビットフルボトルを装填する。
『ラビット!』
「これが正義の力―――桐生戦兎の力だァ!!」
トリガーを引き、バスターブレードモードでリベンジをぶった切る。
『フルボトルブレイクッ!!!』
天井から強襲。リベンジを脳天から叩き斬る。
「がはっ・・・」
さらに、後ろに飛んでもう一度三次元移動。その間にもう一度ラビットフルボトルを装填、そして次にゴリラフルボトルを装填する。
『ラビット!』『ゴリラ!』
『ジャストマッチでーす!!』
すかさずもう一度トリガーを引き、今度は斜め後ろからの水平薙ぎ。
『ジャストマッチブレイクッ!!!』
「がはぁ!?」
さらなる一撃を受けてよろめくリベンジ。
そのリベンジに、ビルドは更なる一撃を加えに行く。
『ラビット!』『ゴリラ!』『忍者!』
ラビット、ゴリラ、忍者―――それは、戦兎が愛用したベストマッチ、巧が一か八かで使おうとしたベストマッチ、そして、忍が良く使っていたベストマッチの有機物ボトルの組み合わせ。
『ミラクルマッチでーす!!』
リベンジは、よろめき、どうにかビルドの一撃から逃れようと、ルインドライバーのトリガーを引く。
『Impact Frontier Break!』
腕にボトルの成分が収束し、その拳でビルドの振り抜くフルボトルバスターを迎え撃つ。
だが、もはやその攻撃はビルドの前には無意味だった。
『ミラクルマッチブレイクッ!!!』
振り抜かれた、三本のボトルの一撃。葛城一族の、桐生戦兎の一撃。
壁を蹴り、リベンジに向かって袈裟斬りを炸裂させ、リベンジを壁に叩きつける。
「がっはぁ・・・」
それでリベンジの意識が一瞬飛びかける。
その隙にビルドはフルボトルバスターを仕舞い、ボルテックレバーを回す。
『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』
ボルテックレバーを回したビルドが、地面を蹴って飛び上がる。
『Ready Go!』
飛び上がったビルドが、右脚をリベンジに向かって伸ばす。
それに思わず身構えるリベンジ。しかしそれはリベンジに当たる事なく、その寸前で止まる。
『ハザードフィニッシュッ!!!』
だが、本命はそれではない。
空間に固定された次元伸縮バネ『ディメンションスプリンガー』によって引き延ばされた足は、元に戻ろうとする。
そして、その足先は、空間を歪めるが故に伸縮だけでなく、物体をその場に固定する事も出来る。
そうして固定された伸ばされた右足の先は、敵に狙いを定めるスコープにして、カタパルト。
その反動だけでなく、背中のマフラー『マフラビットアクセラレーター』によって超音速にまで加速する。
そこから放たれる、超音速の一撃――――
『ラビットラビットフィニッシュッ!!!』
それが、今リベンジへと叩き込まれた
「ぐあぁぁああ!?」
胸部アーマーが砕け散り、その後ろの壁を砕けさせ、外に叩きだす。
ばらばらと砕けたアーマーの破片が宙を舞うも、金属光沢の放つそれらが、太陽の光に曝され、きらきらと輝く。
そうして、リベンジは外へと叩き出された。
「すごい・・・」
「これがビルドか・・・勝てない訳だ・・・」
その圧倒的強さに、マリアは呆然とし、シンはその強さに納得していた。
そんな中で、ビルドは響たちの方を向く。
「響!セレナ!こことそいつらとその英雄もどきは任せた!」
「分かりました!」
「待てぇ!その英雄もどきという言葉を撤回―――」
「貴方は黙っててください」
「げぼあ!?」
響に顔面をぶん殴られ悶えるウェルに同情はせず、ビルドは外に叩きだしたリベンジを追う。
その、リベンジが落ちた先で――――リベンジは
「己ェ・・・・」
もはや憎しみの感情しか抱いていないリベンジが、その場で這いつくばっていた。
砕け散った胸部装甲。そこから、想像を絶する痛みが、ジェームズを襲っていた―――否、もはや今のジェームズに痛みなどなかった。
「己、己己己おのれオノレオノレオノレオノレおのレオのれおノれオノれオノレオノレオノレオノレぇぇぇえ!!!」
叫ぶリベンジ。
もはや、葛城巧や忍に対する怒りで、痛みを脳内から排除しているのだ。
痛みを無駄な思考として、脳内から排除し、それ以外の事を気にしないように。
ただ、奴を―――ビルドを殺す為だけに。
その想いに呼応するかのように、その両手両足の地面から、リベンジが何かを吸い出していた
「殺ス・・・絶対ニ殺スゥ・・・!!カァツラギィタクミィィィィイ!!」
地獄の底から轟くような雄叫びがその空に響き渡る。
そこへビルドがやってきて、リベンジの異常に気付く。
「・・・おいおい」
それにビルドは冷や汗を流す。
装甲が生きているかのように胎動し、膨れ上がり、変形し、まさしく異形、怪人にでも成り代わっているかのような変化が、今まさに、リベンジに起きていた。
砕け散った筈の胸の装甲はいつの間にか修復され、しかし禍々しく変形しており、またその体も肥大化。下半身はそのままで、まるで上半身がトロルのように巨大化している、まさしく異形ともいうべきその姿は―――とてもではないが仮面ライダーとは言えなかった。
否、それは、むしろ――――
「・・・スマッシュ・・・だな」
―――地球上には存在しないネビュラガスを人体に注入する事で、特殊な細胞分裂を引き起こし、創り上げる怪物―――
「おおかた、フロンティアから力を吸い上げて、それをボトルの成分に変換、ルインドライバーの機能でそれを体内に浸透、それが体内に残存しているネビュラガスと化学反応を起こして、結果、こうなったと・・・」
目の前にいるのは、もはや人間ではない。
「さあ・・・実験を始めようか」
フルボトルバスターを構えて、ビルドは、目の前の怪物―――『フロンティアレリックスマッシュリベンジ』と対峙する―――
次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?
「どんだけ頑丈なんだよ・・・」
リベンジと激闘を繰り広げるビルド
「ウェルを止めて・・・」
マリアから、ガングニールを託される響。
「心配しないで!」
そして、響は再び、ガングニールを纏う―――
「喰らいつくせ、僕の邪魔をする何もかもを・・・!」
暴走したウェルが生み出した怪物『ネフィリム』
「フざけルなぁァぁあ・・・・!!!」
怪物へと成り果てたジェームズ=リベンジ。
「マリア姉さんがやりたい事は、何?」
「皆を守りたい・・・」
そして、姉妹の歌が、世界に響き渡る―――
次回『始まりの
『Start Up』