愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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戦「天才物理学者にして仮面ライダービルドの桐生戦兎は、創造した新世界にてノイズと戦う日々を送っていた」
シ「F.I.Sとの戦いももうすぐ決着。前回のウェルとジェームズをぼこぼこにするシーンは俺も混じるべきだったか」
マ「待ってそれは私もやりたいわ」
調「私も」
切「アタシもデス!」
響「あ、私も」
未「私にもやらせてくれるかな」
龍「殴り足りねえからな」
慧「待て待て待て!?いくらなんでも皆殺意マシマシ過ぎじゃね!?杉田だけに!」
戦「誰が上手いこと言えといった」
慧「あいた」
戦「まあそれはともかく、ジェームズが変身した仮面ライダーリベンジは思いっきりボッコボコにされ、戦いは次なるステージへ」
シ「その結末を見逃すな」
マ「というわけで、第四一話をどうぞ!」


始まりの(バベル)

ビルドがリベンジを追って、外に出ていった時の事だった。

「ぐ・・・ぐそぉ・・・・!!」

ウェルが呻き声を上げながら立ち上がる。

「大人しく降参してください。これ以上戦っても、貴方に勝ち目はありません」

そんなウェルに、響は冷静に降伏勧告を告げる。しかし、ウェルはそれを拒否。

「黙れ!黙れ黙れェ!!英雄である僕が負けるだと?そんな事があってたまるかァ!!」

もはや、呆れを通り越して醜い。

醜すぎる欲望である。

「貴方は、英雄にはなれない・・・」

「何ィ?」

「貴方のような人は、決して英雄になれない・・・もちろん、私も英雄になりはしない」

「ハッ!ルナアタックの英雄と呼ばれておきながら、なんて傲慢な!お前のような奴がいるから色んな奴が好き勝手するんじゃないのか!?」

「そうかもしれない・・・だけど、それでも私は誰かに向かって手を伸ばし続ける。じゃないと、誰とも繋がれない。愛と平和を、語る事なんて出来はしない!」

ウェルに向かって構えて見せる響。

「ここで貴方を止めて見せます。ウェル博士!」

その言葉に、ウェルは激しく歯ぎしりする。

 

その時だった。

 

「融合症例第一号!」

突如としてマリアが響に向かって叫ぶ。

振り返れば、何故かシンフォギアを解除しているマリアが、響に向かって何かを投げる。

 

それは、シンフォギアのペンダント。

 

「これって・・・」

「一度、ガングニールと融合した事があるのなら可能な筈だ!だからお願い・・・ウェルを止めて・・・世界を救って!」

マリアの懇願するかのような言葉。

「そんな事させるかぁぁぁあ!!」

そこへウェルが飛び掛かる。今のウェルの左腕はネフィリムの特性と同等の力を持つ。

それで聖遺物に触れれば、その聖遺物を取り込む事が可能―――即ち、響の手の中にある、ガングニールのペンダントに触れ、取り込む事が出来れば、永久に封じる事が可能なのだ。

それに対して、響は拳を握りしめて迎撃しようとする。

「うげあ!?」

だがその前にセレナがガンモードにしたドリルクラッシャーでウェルの左腕を撃ち抜く。

「それはこっちのセリフです」

「いったぁぁああ!?」

撃ち抜かれたウェルはその場で悶え転げまわる。

「調ちゃんにも言われてるんだ」

そんな中で、響がマリアに向かって言う。

「マリアさんを助けてって。だから、心配しないで!」

そう言って、笑って見せる響。

「ああそれと、私、『融合症例第一号』なんて名前じゃありません!」

「え?」

「立花響、十六歳。好きな物はごはん&ごはん、体重は・・・まあそれは後で、どこにでもいるただの女子高生です!そして―――」

響は、ウェルの方を見て、高らかに言い放つ。

「愛と平和の為に戦う、シンフォギア装者です!」

 

そして、胸の歌を―――信じて歌う。

 

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)―――」

 

 

聖詠と共に、手の中のペンダントが輝き、響の衣服を、どんな困難も打ち倒すための力を込めた戦装束へと変化させる。

胸の聖遺物―――奏のガングニールは消えた。

本来であれば装者になる事が出来ない、普通の一般人の少女。その運命を変えたのは、やはり、あのライブの日。

あの日、彼女が憧れる切欠となった歌の世界が、戦場と化した世界で戦う、二人の戦姫が紡ぐ歌が、彼女の運命を変えた。

あの日、胸に受けた傷。それは彼女を蝕むものだったのかもしれない。しかし、それでも彼女は―――その力があったからこそ、多くの人々を救えたのだ。

 

だからそれは、必然だ。

 

それは、マリアのものと同じ、ガングニールではあれど、黒ではない撃槍。

しかしそれは、マリアの槍でも、奏の槍でもない槍―――ただ真っ直ぐに貫き通す、拳の一撃。

彼女だけの、矛―――全ての人と手を繋ぐための拳ッ!!

 

今ここに、立花響のガングニールは復活した。

 

「ひぃぃい!?」

それを見て、流石に勝ち目がないと踏んだのか、無様に逃走を始めるウェル。

「こんな所で・・・うわぁあ!?」

階段を踏み外し、転げ落ちるウェル。

「こんな所で・・・終われるものかぁあ!!」

落ちた先で床を叩き、そこにどういう原理か穴を生成するウェル。

「穴!?」

「逃げるつもりか!?」

そこへ、どういう訳か弦十郎と緒川がやってくる。

「ウェル博士!」

ウェルはそのまま穴の中で逃げていく。その穴は、ウェルが入ると同時に消えてしまう。

「くっ・・・!」

「響さん!そのシンフォギアは・・・」

緒川が響の姿を見て、驚いたように尋ねる。

「マリアさんのガングニールが、私の歌に応えてくれたんです!」

その直後、突如としてフロンティアが揺れる。

 

フロンティアが、上昇しているのだ。

 

「今のウェルの左手はネフィリムと同じもの。だからこのフロンティア内であればどこでもフロンティアを意のままに操作できる状態になっている。だからウェルの暴挙を止める為にはフロンティアの動力を止める必要がある。今は、桐生戦兎がハザードフォームで消し飛ばしたネフィリムの心臓を使って動力を起動している。それさえ破壊する事が出来れば・・・」

「ウェル博士の暴挙を止められるんですね?」

響の言葉に、シンがうなずく。

「頼む、立花響。戦えない俺たちに代わって、奴を止めてくれ」

シンは、そう言って頭を下げる。

「お願い・・・」

マリアも、一緒になって頭を下げる。

「心配しないで」

そんな彼らに、響はなんでもないように答える。

「さっきも言ったけど、調ちゃんに頼まれてるんだ。だから、絶対に止めてみせます」

その時、何かが砕けるような音が響く。

見れば、そこには先ほどウェルが穴を開けた場所に拳で亀裂を作っている弦十郎がいた。

「師匠!」

「ウェル博士の追跡は、俺たちに任せろ。だから響君は・・・」

「ネフィリムの心臓を止めます!」

弦十郎の言葉に、響はそう答えて見せる。

それに、弦十郎がうなずく。

「待て」

そこへシンが弦十郎に申し出る。

「それなら俺も・・・」

「あ、待ってくださいシンさん」

しかし、それをセレナが遮り、肩にかけていたアタッシュケースを下ろす。

「戦兎先生から、シンさんに渡し物です」

「桐生戦兎から・・・俺に?」

そう言って、セレナがアタッシュケースの留め具を外した直後、箱が勢いよく開く。

「うわ!?」

そして、その中から何かが飛び出し、一度セレナの額を蹴っ飛ばしてからシンの方へ飛んでいく。

「はぐあ!?」

「セレナ!?」

「うお!?」

そうしてシンの左掌に乗って、そのまま左腕、左肩、右肩、右腕を通って右手の甲に乗ったそれは、シンの手の上で一鳴きする。

「バールルルル!!」

「コイツは・・・!?」

白い、狼の機械。

一見クローズと似たそれは、折り畳み式なのか若干スリムであり、しかしその背中には、ボトルを装填する為のスロットがあった。

「いったた・・・『クライムウルフ』。戦兎先生が、シンさんの為に作ったお目付け役兼、変身アイテムです」

「奴が・・・俺に・・・一体何故・・・」

その事に、戸惑うシン。

「ええ!?戦兎先生が!?」

「また勝手に何か作ったんですね・・・」

「全く、戦兎君は・・・」

響は心底驚き、緒川は苦笑いし、弦十郎は仕方がないとでもいうように頭を掻く。

「龍我さんからシンさんの事を聞いて、戦兎先生がシンさんの事を信じて作ったそうです。シンさんは、優しい人だから、きっと、この力を託せるって」

セレナは、アタッシュケースの中からもう一つの装置を取り出す。

それは―――戦兎が新しく作った、ビルドドライバー。

「はっ・・・自分で愛と平和の為と言っておきながら・・・いや、奴の持論から言えば、この力は使う者次第という事か・・・だが今は、これほど都合の良い事はない」

シンが、セレナから受け取ったビルドドライバーを腰に巻き付ける。

「ジェームズ博士が、俺たちの遺伝子を弄ってくれた事に関しては感謝しなければならないな」

そう言って、シンは取り出したウルフフルボトルを振り、そして背負われるように取り付けられたフルボトルスロットにそのボトルを装填する。

 

Start Up』

 

装填すると同時にそのような音声が鳴り響き、そのままウルフを横に折りたたむようにして、ビルドドライバーにセットする。

 

CRIME WOLF

 

まるで抑揚のない音声。しかし、それがまたシンらしさを出している。

そして、ボルテックレバーを回し、スナップライドビルダーを展開。

 

 

『Are You Ready?』

 

 

―――覚悟は良いか?

 

そう、ベルトが呼びかけてくる。

それを聞いてシンは、なるほど、と思う。

彼らは、いつも、この様な問いかけを受けてながら戦っていたのかと。

 

自分の『正義』を、再確認するために。

 

シンは、一度、マリアの方を見た。

マリアは、シンがこちらを見た事にきょとんとしているが、その事に、シンは思わず微笑む。

(彼女が、笑顔でいてくれるのなら―――)

この力、あえて受け入れよう――――

 

「変身」

 

特に変身ポーズを取らず、シンは、ビルダーに挟まれる。

 

『Start Up Lightning!Let's CRIME WOLF!Yeah!』

 

ビルダーに挟まれ、現れるは灰色の戦士。

その素体は、ビルドのウルフハーフボディを二つ組み合わせたようなものだが、腕の爪はなく、代わりに頭部の複眼『ツインアイウルフ』を覆うV字のバイザー『オーグメントレイヤー』が取り付けられており、その全身も若干スリムな体系となっていた。

ルインドライバーによって変身するクライムを『プロトクライム』とするならば、これは、まさしく本当の『仮面ライダークライム』と言った所だろうか。

そう、それはまさしく―――

 

 

新生・仮面ライダークライムの誕生である。

 

 

そう、変身したクライムは、一度変身した自分の姿を見る。

「これがビルドドライバーによる変身か・・・」

ルインドライバーの時より、ずっと動きやすい事に、クライムは感心する。

おそらく、ルインドライバーの『装甲にボトルの成分を浸透させる』というコンセプトの元、金属製の装甲が若干重いのだ。システムの補助とボトルの成分の効果が向上する効果があるとはいえ、それでも装甲の重さは否めない。

その一方で、ビルドドライバーの『ボトルを装甲に加工して纏う』というものは、いわば装甲に金属並みの硬さをもつプラスチックを纏うかのような感覚だ。

性能はともかく、動きやすさで言えばビルドドライバーの方がマシだった。

ある程度の調子を確かめると、シンは―――クライムは頷くと、響の方を見やる。

「行こう、立花響」

「はい!」

「よし、行くぞ緒川!」

「はい」

弦十郎と緒川が亀裂に入っていく。

そしてクライムは、出る前にマリアの元へ向かう。

「マリアはここで待っていろ」

両手を肩において、クライムはマリアにそういう。

「シン・・・気を付けて・・・」

それに、マリアはとても心配そうに、今にも泣きそうな表情でシンを見上げていた。

「ああ」

目元に滲んでいた涙を拭ってやる。

「必ず」

「待ってて、ちょっと行ってくるから!」

「気を付けてください!」

セレナの言葉を背に、クライムと響は走り出し、外へと飛び出す。

その後ろ姿を、マリアは見届ける―――

 

 

宙に浮く瓦礫を足場に、二人は飛ぶ。

「お前たちは炉心の破壊をしに行け!俺はビルドの援護に向かう!」

「お願いします!」

視界で、大きな土煙が舞い上がる瞬間を見据える。

ツインウルフアイの能力を、オーグメントレイヤーによって強化した結果だ。

このオーグメントレイヤー。

集団戦特化の『ウルフフルボトル』の能力に単独戦闘用の機能を追加する能力があるらしく、半径一キロ以内の索敵、動体視力の大幅強化、敵味方関係なくその行動を把握する事が出来たり、挙句の果てに

「あそこか・・・・」

そこから、ビルドが飛び出し、それを何故か上半身が肥大化したリベンジが追いかけていた。

変形し、巨大な手と化した手の爪によってビルドを切り裂こうとし、ビルドの速さを捉えきれず、躱される。

そして距離を取った所で、ビルドが腕を伸ばして攻撃。

それを躱してその腕を掴むも、しかしすかさずビルドが戻る反動を利用して突撃、体当たりをかまして吹き飛ばす。

吹き飛ばされたリベンジが地面を滑り、激しく土煙を立てるも、まるでダメージがないように立ち上がる。

「チッ、どんだけ頑丈なんだよ・・・」

「手伝ってやろうか?」

そこへクライムがやってくる。

「お、その様子じゃ俺の見立ては正しかったようだな」

「何故俺が奴に遺伝子操作されていると?」

「慧介がスクラッシュドライバーを使えたんだ。だったらお前も使えて当然だろ」

「そうか」

そのビルドの物言いにクライムはふっと笑う。

「キサマ、そノドラいバーは・・!?」

「もうお前に従う必要はないからな。それに、折角の贈り物だ。ありがたく使わせてもらう事にした」

クライムは、そう言ってビルドドライバーに触れる。

「く、くクく・・・そうカ、それガオ前の答エか・・・!!」

さらに、リベンジの装甲が変形する。

「ならバ!貴様も悪魔ノ一人!いマこコで引導を渡してクれルワあぁぁああぁああ!!」

恐ろしいまでに変形した装甲。

それに、ビルドとクライムは怖気づく事はなく、敵と対峙する。

「行くぞ」

「おう!」

 

 

 

 

その一方、響は翼たちの元へと向かっていた。

「翼ちゃん!クリスちゃん!龍我さん!それに慧介君も!」

翼とクリスは、Anti LiNKERの効果が抜けたのか再度ギアを纏っており、龍我はクローズイチイバル、慧介は先の戦いで三倍強化四倍負荷のスクラッシュドライバーが壊れた為に龍我のスクラッシュドライバーでタスクに変身していた。

流石にあれほどの負荷が出る調整をしていたのだ。壊れて当然である。

「立花」

翼が響の名を呼ぶ。

「もう遅れは取りません。だから・・・!」

「ああ、一緒に戦うぞ」

「はい!」

ふと響は、ソロモンの杖を持つクリスを見つけると、まるで自分の事のように喜んでその手を手に取る。

「やったねクリスちゃん!きっと取り戻してくれると信じてた!」

「お、おう、ったりめえだ・・・!」

そんな中で、タスクは響に歩いて行って、頭を下げる。

「すみませんでした!」

「え?」

「自分が暴走したせいで、アンタにも迷惑をかけた!本当にごめん!」

「ああ、気にしないで!でも、無事に制御出来て良かったよ。だから、一緒に戦おう」

その響の言葉に、タスクは顔を上げて頷く。

「はい!・・・って、そういえばシンとマリアは・・・」

「ああ、シンさんなら戦兎先生と一緒に、ジェームズ博士と戦ってて、マリアさんはセレナちゃんと一緒にいるよ」

「シンはジェームズと戦って・・・ん?待って、今セレナって言った!?」

タスクが驚く傍らで、ふと彼女たちの通信機に弦十郎から通信が入る。

『本部の解析にて、高出量のエネルギー反応地点を特定した!おそらくあそこが、フロンティアの炉心!心臓部に違いない!装者たちは、本部からの支援情報に従って急行せよ!』

それを受けた翼が高らかに言う。

「行くぞ!この場に槍と弓、剣を携え、龍と虎を従えているのは私たちだけだ!」

ふと、向こう側で激しい爆発音が聞こえてくる。見れば激しい土煙が、本部の支援情報のあった場所に向かって移動していた。

というか、戦いながら移動しているのだ。

「あそこにシンたちが・・・」

「行くぞ!」

「あ、はい!」

それぞれの目的に向かって、彼らは飛ぶ。

 

 

その様子を、炉心にてウェルは見ていた。

「人ん家の庭を走り回る野良猫め・・・!フロンティアを喰らって同化したネフィリムの力を、思い知るが良い!!」

その時、炉心に取り付けられたネフィリムの心臓が一際強く鼓動する――――

 

 

その時、響たちの向かう先の地面が、まるで生物のように動き出す。

「え!?何!?」

「今更何が来たって・・・!」

そうして出来上がったのは――――巨大な怪物だった。

巨大な腕、棘のある肩や背中、何もかもを喰らい飲み込みそうな程巨大な口―――おおよそこの世の生物とは思えない異形だった。

「グォォォォォオオオォォォオオ!!!」

咆哮を上げたそれは、背中の棘をミサイルのように飛ばす。

それを、彼女らは躱す。

「これは、あの時の自立型完全聖遺物(ネフィリム)なのか!?」

さらに、怪物―――ネフィリムが火炎弾を吐き出す。

クリスに向かって放たれたそれを、クリスはどうにか躱す。

「にしては張り切り過ぎだ!!」

 

 

 

 

「喰らいつくせ、僕の邪魔をする何もかもを・・・!」

炉心にて、ウェルの絶叫が迸る。

「『暴食』の二つ名で呼ばれた力を示すんだ!ネフィリぃぃぃぃぃぃィム!!!」

 

 

 

 

 

 

その一方、ブリッジにて。

「セレナ、お願い、貴方の歌で世界を・・・」

マリアは、壊れたもう一つの聖遺物―――『アガートラーム』のシンフォギアを彼女に差し出す。

もう、修理しなければ起動できないものであるそのシンフォギアは、元々はセレナのものだ。それを、この六年、マリアがずっと持っていたものだ。

しかし、それをセレナは、首を振って受け取らない。

「どうして・・・」

それに、マリアは戸惑う。

「確かに、私なら何の負荷も無しに、アガートラームをもう一度纏う事は出来ると思う。でも、きっと私一人だけの歌じゃ、世界は救えない」

「そんな・・・貴方が出来なきゃ、一体誰が・・・」

「だから、私たち二人で歌うの」

セレナは、アガートラームを持つマリアの手を両方の手で包み込む。

「一人ではできなくても、二人ならきっと出来る。それに、私はもう装者じゃない。それはもう過去のもの・・・今のアガートラームは、マリア姉さんのものだよ」

セレナは、マリアに向かって微笑む。

「マリア姉さんがやりたい事は、何?」

その問いかけに、マリアは、胸の中で思ったことを、するりと答えて見せる。

「歌で、世界を救いたい・・・月の落下がもたらす災厄から、皆を守りたい・・・」

その答えに、セレナは大いに微笑む。

「生まれたままの感情を、隠さないで―――」

「セレナ・・・・」

そう言って、セレナは―――歌う。

 

「りんごは浮かんだお空に…―――」

 

それに、マリアが続く。

 

「りんごは落っこちた地べたに…―――」

 

その歌が、二人の間を流れ、そして――――世界に鳴り渡る―――

 

 

 

それは、まるで魔法のような光景。

 

 

二人が歌っているのはただの民謡。彼女たちの故郷で、祖母より聞かされてきた童歌(わらべうた)だ。

その歌が世界各地に響き渡り、その歌詞を知らない筈の人々が、自然にその歌を口ずさみ、共鳴し、旋律一つ奏でる度に、人々が衝動的にその歌を唄っていた。

 

 

それによって、高まったフォニックゲインは――――

 

 

 

 

「ごふっ・・・」

すでに限界に近い体で、ナスターシャはその光景を目の当たりにしていた。

「世界中のフォニックゲインが、フロンティアに収束していっている・・・」

世界中の人間が奏でるフォニックゲイン。それが今、このフロンティアに収束していっていた。

「これだけのフォニックゲインを照射すれば、月の遺跡を再起動させ、公転軌道の修正も可能・・・!!」

もう、時間がない。迷っている暇もない。

ナスターシャは、すぐさま行動を開始する。

 

 

 

『マリア!セレナ!』

「・・・ッ!マム!」

マリアとセレナが、コンソールへと向かう。

『貴方たちの歌に、世界が共鳴しています。これだけフォニックゲインが高まれば、月の遺跡を稼働させるには十分です』

その言葉に、二人は思わず安堵してしまう。

『月は私が責任をもって止めます・・・う、ごふっ、ごほっ!』

「ッ!?マム!」

向こうの様子が見えない中で、ナスターシャが何かを吐いた事が分かる。

『う・・・もう何も貴方を縛るものはありません・・・行きなさい、マリア』

それは、今まで聞いたナスターシャのどの声よりも優しい声だった。

『行って私に、貴方の歌を聞かせなさい』

「マム・・・オーケー、マム!」

その言葉に、マリアは、涙を流しながら、笑って、力強く答える。

『セレナ・・・』

「・・・はい」

『まさか、貴方の声がまた聞けるとは思ってもみませんでした』

「私も・・・またマムに会えるなんて思ってなかった」

『貴方には、本当に申し訳ない事をしました。貴方一人に、大きな責任を負わせてしまいました』

「気にしないで・・・あれは、私が選んだ道だもの」

セレナは、力強く答えて見せる。

『少し見ない間に、とてもたくましくなりましたね・・・』

「姉さんには負けるよ」

『そうですか・・・・さあ、貴方も行きなさい。貴方たち姉妹の歌を、聞かせなさい』

「・・・・イエス、マム」

その言葉を機に、マリアが高らかに宣言する。

「世界最高のステージの幕を上げましょう!!」

 

 

 

 

 

「ぉぉおらぁぁあ!!」

ビルドが走り出し、そのまま腕を後ろに伸ばしリベンジに接近する。

一瞬にして距離を詰めて、伸ばした腕を反動によって引き戻し、そのまま一気に叩きつけてぶっ飛ばす。

「ぐあぁあ!?」

その吹っ飛んだ先で、クライムが刀を正眼に構えていた。

「自由斬撃ッ――――」

手の中の雷切から放たれる電流を、スーツの性能向上に使用。反応速度を極限にまで高め、もはや時間が止まったと錯覚するほど遅くなった世界で、クライムは、突っ込んできたリベンジを、横薙ぎ一閃で斬撃する。

「がっは・・・!?」

確かに深く切り裂いた。しかし、その傷が瞬く間に修復されていく。

「チッ!」

「うぉぉぉお!!」

「ウオリャア!!」

そこへ、何故かここにやってきたクローズとタスクの高所からの飛び掛かり攻撃。

ブラストブレードとツインブレイカーによる一撃がリベンジを地面に叩きつけられる。

激しい衝撃によって土煙が巻き起こる。

「お前!?なんでこっちに!?」

「ああ?苦戦しているようだったから手伝いに来てやったんだろうが」

「お前に心配される程弱くないよこの馬鹿!」

「馬鹿って言うな、せめて筋肉つけろ筋肉を!」

ビルドとクローズは相変わらず、

「シン!」

「慧介か。調と切歌は?」

「ごめん見てない!ただ向こうにネフィリム復活して出てきたんで響さんたちにそっち任せてる!」

「ネフィリム!?ウェルの奴か・・・!?」

そこで瓦礫の中からよろよろとリベンジが立ち上がる。

「はあ!?今の食らってまだ立てんのかよ!?」

「ボトルの成分を体にまで浸透せているとは言っていたが・・・どうやらフロンティアからの供給がある限り、何度でも再生するようだ」

「ええ!?どうすんだよそんな奴!」

「だったら再生できないように攻撃するまでだ!!」

ビルドがフルボトルバスター片手にそう叫ぶ。

「うがぁぁあああ!!」

そこでリベンジが地面を叩く。すると地面が一気に盛り上がり、四人を纏めて打ち上げる。

「うぉぉぉおお!?」

「ちっ!こんな事まで出来るのか!?」

「もうほんとの化け物だな・・・」

「・・・・ん?」

ふとタスクが後ろを見れば、そこには、ネフィリム相手に奮戦している響達の姿がいた。

「あ、これネフィリムとぶつかる軌道だ」

「「「え」」」

ネフィリムのすぐ傍に着地してしまった四人。

「え!?なんで四人ともこっちに!?」

「すまんなんか連れてきちまった!」

突然の飛来に驚く装者三人。

「なんか見たこともない姿になっているが・・・それが噂に聞くハザードフォームを制御する力か!」

「おう!」

「なんか色が被ってんな・・・ってあぶねえ!」

ネフィリムが、すぐさま四人に攻撃目標として敵意を向ける。

その拳が四人に向かって振り落とされるも当たらず、ビルドが地面を駆け抜けてネフィリムの懐に飛び込む。

「っ!?待て桐生!そいつに物理的攻撃は―――」

後ろに向かって腕を伸ばし、そのまま反動でネフィリムを殴り飛ばす。

するとどうだ?ネフィリムの皮膚は呆気無く砕け、その中の中枢を穿ってみせた。

「―――ああ、そういえば防御力関係なしに攻撃を加えられるんだったな・・・」

ハザードフォームの『BLDコンバージェントグローブ』は、拳による攻撃の衝撃を破壊対象内部の特定部位に収束させる機能を備えており、敵の装甲強度に関わらず、一定のダメージが与えられるのだ。

「じゃああのデカブツとまともに戦えんのはアイツだけかよ!?」

「あー、そうでもないっぽい」

次の瞬間、ネフィリムの腕が斬り落とされる。

クライムだ。

「ふん、この程度か」

クライムの斬撃が、ネフィリムの腕を綺麗さっぱりに斬り裂いたのだ。

「もうなんか、同じ人間と思えないんだが・・・」

「あの剣技・・・是非一度手合わせてしてみたいものだ・・・ッ!?」

ふと背後から殺気を感じて飛び退く翼。そこへもはや人のものとは思えない腕を振り上げて振り下ろしてきたリベンジの腕が炸裂する。

「お前は・・・!?」

「貴様らだナ・・・あノ悪魔ニきョウりょクしテいるクズドもは・・・!!」

「は・・・?」

思わず硬直してしまう翼。

「い、一体なんの話・・・」

「とボケるナ!きサマがあの悪魔ト共謀シているノはシッテいるノだ!ついデに今ここデお前ヲ殺セば、少なくとも奴ノ気力を削ぐコトは出来ルだロうな!」

「だ、だから、一体何の話を・・・」

訳が分からない翼はただ混乱しているだけだが、そこへこっそり翼に忍び寄ったクライムが翼にしれっと説明する。

「そいつが悪魔と言っている相手は桐生戦兎だ」

 

ぶちっ

 

「きっさまぁぁぁあああ!!!」

「ぐあぁぁああ!?」

いきなり蒼ノ一閃でリベンジをぶった切る翼。

「桐生の事を悪魔だと・・・貴様、余程死にたいらしいな・・・・!!」

鬼の形相で翼はまるでどのような方法で斬り刻んでやろうかと熟考するかの如く片手に持った刀の峰をもう一方の掌にとんとんと何度も叩いていた。

「グっ・・・・何ガ悪い!あの男は、正真正銘ノあくm・・・」

「問答無用!!!ここで私に斬り刻まれろォ!!」

すかさず斬撃の嵐をリベンジを襲う。

「あ、あんな先輩初めて見た・・・・」

「よほど戦兎先生の事を悪魔呼ばわりされたのが許せなかったんだね・・・」

「よし、計画通り」

「「ええ・・・」」

何やら満足気でガッツポーズを取るクライムに引く響とクリス。

だが―――

「ふザケるナァァアァァアアア!!」

「な!?」

翼がリベンジに弾き飛ばされる。

「野郎、まだ―――」

「ガァァアアァアア!!」

「うごっ!?」

別方向から飛び掛かってきたクローズを殴り飛ばす。

「さっきよりも動きが―――!?」

リベンジに変化が起こる。肥大化していた腕は急激に収縮、その装甲も一気に引き締まり、スリム体系になる。

そして次の瞬間、恐ろしい速さでタスクに接近、殴り飛ばす。

「ぬぐあ!?」

「慧介!?」

声をあげるクライムに、リベンジが迫り、恐ろしい速度で拳を振るう。

それに対してクライムは恐ろしい反応速度で対応。リベンジの振るう拳の連撃をクライムがその刀剣をもって叩き落していく。

だが―――

(こいつ、だんだん早く、強く――――!?)

「シャァァアア!!」

雷切を蹴り上げられ、大きく上体が仰け反る。そのがら空きになったどてっぱらにリベンジの蹴りが叩き込まれ、クライムは大きく下がらされる。

「ぐっげほっ・・・!?」

(時間が経つ度に強くなっていく・・・これは、いよいよ早急に決着をつけないとまずいぞ・・・!)

リベンジの異常な成長性。

それはおそらく、この巨大宇宙船から力を供給し続けられているために、その余剰分が成長するための経験値だかアビリティポイントだかに変換されているのだ。

その上ジェームズ自身は科学者。考える事に関しては戦兎に匹敵する程だ。

その頭脳を使って、自らを強化していっているのだ。

遺伝学に精通している事も、彼の強化をさらに加速させてみてもいいだろう。

そんなリベンジがネフィリムを投げ飛ばしているビルドを見る。

「カァツゥラァギィィィィイ!!」

「ッ!?そっちに行ったぞ!」

恐ろしい速度でビルドに突っ込んでいくリベンジ。

「なっ―――!?」

その速度に反応できず、呆気なく吹き飛ばされるビルド。

「ぐぁぁああ!?」

地面に叩き落とされる。

「シィネェェエェエエエ!!」

「ッ!?」

起き上がった所を、リベンジがさらに追撃しようと飛んで蹴りを向けてくる。

その時だった。

「慧くんを苦しめた仇ぃぃぃぃぃいい!!」

調が巨大な丸鋸をもってリベンジをぶった切った。

「デェェェエスッ!!」

さらにネフィリムの腕を拘束し、そのままギロチンのような刃でぶった切る切歌もやってくる。

「がっはぁぁああ!?」

吹っ飛ばされるリベンジ。

「お前ら・・・!」

「シュルシャガナと」

「イガリマ、到着デース!」

「来てくれたんだ!」

響が嬉しさに声を挙げる。

「あの人は斬り刻むあの人は斬り刻むあの人は斬り刻むあの人は斬り刻む・・・」

「あ、アハハ・・・まあ、アイツらを相手にするのは、結構骨が折れそうデスよ」

なにやら呪詛のように言葉を繰り返しながらリベンジが吹っ飛んで行った方を睨む調とそんな調に苦笑しつつ先ほど断ち切った腕を早急に再生させるネフィリムを見上げる切歌。

「おーい切歌ー、調ー!」

「あ!慧介!」

そこへタスクが駆け寄ってくる。が、次の瞬間。

「慧くん!・・・あ」

「え、ちょ、しら―――うげはあ!?」

タスクに駆け寄ろうとした調がなぜか小石に躓いてタックル気味にタスクに抱き着きそのままもつれ合うかのように倒れる。

「いたたぁ・・・」

「んぐ!?ちょ、調、どいてくれ―――」

そう言って上に乗って抱き着いたままの調をどかそうとするタスクだったが、次の瞬間、

「んひゃん!?」

なんとも色っぽい声が調から発せられる。

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・え、何今の声?」

瞬間、場が凍り付く。

が、それをよそに、タスクは調を押し上げる―――調の胸をつかみながら。

「・・・・」

「・・・・」

沈黙――――後に、

「いやぁぁあああ!!!」

「ふごあ!?」

仮面ライダーになってなければ確実に死んでいる張り手。それがタスクに炸裂し、ものの見事に吹っ飛んで行った。

「ああ、なんか、本当に元通りって感じがするデス」

「・・・ん?ちょっとまて、日常茶飯事なのかこれ!?」

「ああ、もはや呪われているレベルに、調と慧介はこんなだ」

「そ、そういうのは家でやれぇ!」

切歌が遠い目をし、ビルドが驚き、クライムが説明、そしてクリスが顔を真っ赤にしてそう叫ぶのだった。

「あはは・・・って!そんなことしている暇じゃないですよ!」

そう、ここは戦場。目の前には、自立稼働型の完全聖遺物ネフィリムとスマッシュと化した仮面ライダーリベンジがいるのだ。

すでに再生を終えて、こちらに向かってきているネフィリムは咆哮を挙げて彼らを見下ろし、一方のリベンジは調から受けた傷を再生させて、こちらに向かってきていた。

「グォォォォオ!!」

「カァツゥラァギィィィィ・・・・!!」

ネフィリムはともかく、リベンジは見るからに哀れだ。

復讐に取りつかれた亡霊、憎しみのままにその身を怪物に変えた哀れな一人の男。

そんな怪物が、今、一つの脅威となって、彼らの前に立ち塞がっていた。

「せめてツヴァイウィングになれればな・・・」

ふとビルドがそう呟く。

「ツヴァイウィング?それって確か・・・」

「ああ、翼が昔組んでたユニットの方じゃねえぞ」

ビルドがラビットフルボトルとフェニックスフルボトルを取り出す。

「ツヴァイウィングフォームなら、色んな力を纏め上げてアイツを一撃で消し飛ばす事が出来るんだが・・・」

「それをするにはどうすれば?」

「シンフォギアに搭載された『限定解除(エクスドライブ)』って言う力を開放する程のフォニックゲインがあれば、どうにかなるんだが・・・」

そう言って、二本のフルボトルを握りしめるビルド。

「じゃあどちらにしろ今の状態でどうにかするしかない訳デスね?」

そんな時だった。

 

「それでも、私たちには歌がある」

 

声が響き、聞こえてくる。

そちらに視線を向ければ、そこには、大舟フロンティアが発生させる重力によって浮遊する岩の上に乗ったマリアとセレナがいた。

「マリア!」

「それにセレナも!」

「ええ!?本当にセレナなの!?」

すぐさま全員がマリアのいる岩の上に乗っかる。

「本当に、本当にセレナデスか?」

切歌が、信じられないとでもいうようにセレナに問いかける。

「はい。こうしてぴんぴんしてます」

「マジかよ・・・」

「セレナ・・・!」

セレナの生存に、何も知らない切歌とタスクはただただ驚くしかなかった。

だけど、それ以上に、嬉しかった。今はただ、それしかない。

「マリアさん!」

「・・・もういいのか?」

クライムの問いかけに、マリアは頷く。

「私は、もう迷わない・・・だってマムが、命懸けで月の落下を阻止してくれてる・・・」

そうして、マリアは月を見上げる。

彼らの敬愛する人が、残り少ない寿命を削りに削って、月の落下を阻止してくれているのだから。

もう、迷いはない。

それにうなずき、ビルドは叫ぶ。

「目標は自立型完全聖遺物ネフィリムと仮面ライダーリベンジ!奴らを即刻倒して、この戦いを終わらせるぞ!!」

『―――おう!』

 

 

 

「―――出来損ないどもが集まった所で、こちらの優位は揺るがないッ!!!」

ウェルが、この上無く醜く喚き散らす。

「焼き尽くせ!ネフィリィィィィム!!!」

 

 

 

 

ウェルの絶叫に応えるかのように、ネフィリムがその口から、巨大な火炎弾を吐き出す。

その火球が、彼らのいる岩に直撃する。

その気になれば、森一つ焼き尽くすほどの凄まじい爆炎と衝撃波が巻き散らされ、もはや生存はあり得ない―――

 

 

 

だが、奇跡を叩き起こすのが―――歌だ。

 

 

 

 

「「―――Seilien coffin (望み掴んだ力と誇り咲く)airget-lamh tron(笑顔/望まぬ力と寂しい笑顔)―――」」

 

 

その二重奏の歌が響き渡ると同時に―――黒煙が振り払われる。

そこにあるのは、球体に展開されるエネルギーフィールド。

 

シンフォギア装着時に引き起こされる、絶対防御フィールドだ。

 

「助かった・・・のか・・・」

「ああ、二人の歌のお陰でな」

見上げれば、シンフォギアの換装システムで服が取り払われ、手を繋ぎ合うマリアとセレナの二人がいた。

 

本来、シンフォギアを纏えるのは一つにつき一人。

 

しかし、元々破損していた事もあり、機能にエラーが起こり、本来なら起動しないはずだったそれが、超高出力のフォニックゲインに加え、さらに彼女たちの家族の絆によって、一生に一度の、システムにある誤作動(バグ)によって引き起こされた奇跡を引き起こした―――

 

 

それが、今引き起こされている、マリアとセレナのシンフォギアのダブルコネクトである。

 

 

「調がいる―――切歌がいる―――慧介がいる―――シンがいる―――セレナがいる―――そして、マムもついている――――」

「うん。それに、それだけじゃない。響さん―――翼さん―――クリスさん―――龍我さん―――戦兎先生―――そして、ここまで私を連れてきてくれた、二課の皆がいたから、私はここにいる―――」

「ええ、だから、皆がいるなら、これくらいの奇跡―――」

 

「「―――安いもの!!」」

 

その二人の思いに応えるべく、その場にいる全ての装者が歌う―――

 

 

それこそは――――『始まりの(バベル)』。

 

 

「―――託す魂よ 繋ぐ魂よ」

 

 

響が―――否、全てのシンフォギア装者が歌い出す。

 

 

 

「装着時のエネルギーをバリアフィールドに!?だがそんな芸当!いつまでも続くものではない!!!」

 

ウェルの支配するネフィリムが再度炎を吐き出す。

 

その様子を、見上げる、一人の男―――

「フざけルなぁァぁあ・・・・!!!」

悪魔風情が、太陽の如き輝きの中に立つ。それは、彼にとっては、到底許せるものではなかった。

憎悪を塗れさせた声で、その光景を憎々し気に見上げた。

 

 

 

火球がマリアとセレナの張る防御フィールドに叩きつけられる―――その寸前で、響が動く。

 

「セット!ハーモニクス!!」

 

七人の間で行き交う、七重奏の歌をその手に束ねる。

 

「S2CA!フォニックゲインを力に変えてぇぇえええ!!」

そして、その火球を殴り飛ばす。

その爆炎の中で、翼が調に手を差し出す。

「惹かれ合う音色に、理由なんていらない」

その手を見て、次に翼を見て、調は、戸惑い気味にその手を取る。

「アタシも、つける薬がないな」

クリスも、そう言って、切歌に手を差し出す。

「それはお互い様デスよ」

切歌はそう返し、差し出されたクリスの手を手に取る。

「調ちゃん!切歌ちゃん!」

響も、調と切歌と手を繋ぐ。

「ふっふっふ~、これほどのフォニックゲインがあれば・・・」

ビルドが、ラビットフルボトルとフェニックスフルボトルを取り出す。

「やっぱり!最っ高だ!」

見れば、ラビットフルボトルは青く、フェニックスフルボトルは夕焼け色に染まっていた。

「それは―――」

「フルボトルは歌によって変化する。その力は今までの比じゃねえぞ!」

そう言うビルドに、クライムとタスクは、自分たちの持つボトルを見る。

ちなみにクライムは、クライムウルフをドライバーから取り外してみている。

見れば、クライムのウルフフルボトルはその銀がさらに輝いており、大してタスクの虎フルボトルは桃色に変わっていた。

名付けるのなら、『アガートラームウルフソングボトル』と、『シュルシャガナタイガーソングボトル』。

「これが、歌の力か・・・」

「バル!」

ふと、取り外したクライムウルフがクライムに向かって叫ぶ。

「これを差せと言うのか?」

「ああ!こんな風にな」

クローズが、クロに赤く変化した『イチイバルドラゴンソングボトル』を装填する。

 

絶唱ゥ!!!』

 

すると、クロの装飾に赤だけでなく金色の装飾まで施される。

「なるほど・・・」

「あれ?それじゃあ俺は・・・」

「適当にそのドライバーにでも差してろ」

「俺だけなんか扱い雑ッ!?」

相当なショックを受けるタスクを傍らに、ビルドは敵を見据える。

「さあ、行こうぜ!」

そんな中で、調は響とビルドに問う。

「貴方たちの言ってる事が、偽善でないと信じたい。だから近くで私に見せて。貴方の言う『人助け』を。貴方の言う、『愛と平和』を、私たちに―――」

それに、響とビルドは頷く。

そして、ビルドの決め台詞が告げられる。

 

「さあ―――実験(ステージ)を始めようか」

 

光が、輝く―――

 

 

(繋いだ手だけが紡ぐもの―――)

 

 

 

 

「絶唱七人分・・・たかだか七人ぽっちで、すっかりその気かぁぁあ!?」

 

ネフィリムがレーザーの如く、マリアの張るバリアフィールドに叩きつける。

 

しかし、ウェルの見立ては間違いである。

 

響が束ねる絶唱――――ビルドたちの手に込められたボトルに込められた歌は――――

 

「七人じゃねえよ――――」

自然と、ビルドも感じていた。

それは、響と同じガングニールを使う、天羽奏の体を自らの一部としているが故なのかもしれない。

だから、響の束ねる絶唱の強さを、その重さを、その高鳴りを感じ取っていた。

 

「私が束ねるこの歌は―――――」

 

 

そう、響が束ねるこの歌は、マリアとセレナが繋いだ、世界の――――

 

 

「七十億の、絶唱――――――ッ!!!」

 

 

 

歌が響き渡る――――

 

天羽々斬兎(アメノハバキリウサギ)!』『ガングニールフェニックス!』

シンフォニックマッチ!!』

 

クロォーズイチイバルヘルトラヴァースッ!!』

 

AwakeningATONEMENT CRIME

 

ソングチャージボトルッ!!』

 

ビルドが二つのソングボトルを装填する。クローズが赤く染まったクローズドラゴンを装填する。クライムが、さらに銀色に輝くクライムウルフを装填する。タスクがソングボトルを装填する――――

 

ボルテックレバーを回し、ビルドが『ステージスナップライドビルダーZW』を展開し、クローズが四方上下の『トラヴァースライドビルダーI』を展開。そしてクライムが全てを闇を切り払うかのように白き純白のビルダー『イノセントライドビルダーMSA』を展開する。

 

そして、尋ねられる。

 

『Are You Ready?』

 

その答えは、もう既に決まっているようなものだった。

だからこそ、彼らは叫ぶのだ。

 

「「「「変身ッ!!」」」」

 

そして、彼らは飛び立つ――――

 

 

天に羽撃くダブルシンガー!』

ビルドツヴァイウィング!』

イェーイチョウスゲェーイ!!』

 

激唱(ゲキショウ)激強(ゲキツヨ)マッスルゥブァレットパーティ!』

クロォーズイチイバルヘルトラヴァァァアス!!』

『オラオラオラオラオラオラァァァァアア!!!』

 

Awakening The Decide

Stand Up ATONEMENT CRIME

『All Right』

 

潰れなァァァいッ!!!』

 

 

天に羽撃く、十一の光。

 

シンフォギアの限定された力を開放する『限定解除状態(エクスドライブモード)

 

翼と奏の絆の証であり、ビルドを天へと導く『ビルド・ツヴァイウィングフォーム』

 

クリスの過酷な過去を乗り越え、全てを振り払う『クローズイチイバルヘルトラヴァース』

 

白銀の装甲を身に纏い、純然たる輝きを放つ『アトーンメントクライム』

 

シュルシャガナソングボトルによってチャージフィニッシュが強化された必殺技状態『ソングチャージフィニッシュ』。

 

それぞれの光が大空に輝く。

「響き合う皆の歌がくれた―――」

全ての歌を束ねて今―――羽撃く。

 

 

『シンフォギアでぇぇぇぇえぇぇえぇぇぇぇええぇぇええええ!!!!』

 

 

その十一の光が、一気にネフィリムとリベンジに突っ込んでいく。

「うガあぁぁぁあああぁあぁぁぁあああぁぁぁぁあああ!!!」

リベンジが絶叫し、それに対抗するべく、その腕をこれまでになく巨大化させる。

しかし、相手は七十億の絶唱を束ねたシンフォギア装者と仮面ライダーたち。

その程度のあがきは、もはや無駄だった。

「お前は、ここで終わりだ!!」

 

シンフォニックフィニッシュ!!!』

 

トラヴァースフィニッシュ!!!』

 

イノセントフィニッシュッ!!!』

 

スクラップソングフィニッシュッ!!!』

 

全ての力を束ねる双翼の一撃が、全てを喰らい吹き飛ばす龍の一撃が、万物を斬り裂く純白の一撃が、決して折れない牙の一撃が、ライダー四人によるライダーキックがリベンジに炸裂し、シンフォギア装者たちの放つ光がネフィリムに直撃し――――そして、跡形もなく消し飛ばした――――




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「・・・おいおいおいおい嘘だろなんでこうなるんだよ!?」

消滅し、しかし再び復活するジェームズことリベンジ。

『キサマダケハカナラズジゴクニオクッテヤル』

ビルドを執拗に狙うリベンジ。

「誰がさせるか」

しかし、そんなリベンジから、ビルドを守るように彼らが立ちはだかる。

「私の恩師を、そう簡単に殺せると思わないで」

『オマエタチガワルイノダ』

「マリアぁぁああ!!」

「ここで決着を着けるぞジェームズ!!」


次回 『G・天翔ける大舟編』最終回


『ビヨンド 星が音楽となった…かの日』


「・・・・私は、貴方の、良き『母親』とは、言えませんでしたね・・・」

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