愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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作「始めに言っておこう・・・我・慢・で・き・な・か・っ・た!!」
シ「まああのシンフォギアRadioを見ればな」
作「あやひー(クリス役)や井口さん(未来役)のトークも面白かったけど、それよりも衝撃的なのは新イベントの情報・・・だよ。まず初めに言っておこう

  誰あれ?

 え?何?何あのクリス?完全にお嬢様なんだけど、面影全然ないんだけど。ていうか未来と話が合うって何?なんのご褒美?ついに公式つばクリ出てくるの?そんな最高な事あっていいのか―――」
マ「切歌」
切「ちょっと落ち着くデスよ!」
作「あべし」頭に魂斬撃の一撃
調「作者の見苦しい場面を見せつけてしまい、申し訳ありませんでした」
慧「それと言っておきますが、作者はまだ学生でスマホすらもっておりません。こうしてパソコンは持ってる訳ですが、そのあたりは何卒ご容赦いただけると幸いです」
シ「それと、前回語弊があったわけだが、クローズ編においてあらすじ紹介と前書きは俺たちが担当する事となった」
調「私たちの出番が一切ないから当然の処置」
マ「というわけで、天才物理学者にして仮面ライダービルドである桐生戦兎が創造した新世界にて、桐生戦兎含め、相棒の万丈龍我やシンフォギア装者である風鳴翼たちは、日常を謳歌していた」
シ「だが、そんな彼らの日常に、今新たな強大な敵が現れようとしていた」
切「その敵とは一体・・・!」
慧「そういえば平行世界の翼さんとクリスさんはどこぞの聖遺物を専門に奪う組織のおたずねものらしいよ?」
調「慧くん話ズラさないで・・・まあそんなわけで、クローズ編第二話を見なさい。滅多にない週二回目の投稿だからありがたく読みなさい」
作「ちょっと待って!確かに調子のったけどそんな高圧的に要求しないでこっちのハードルがあがる!」
マ「まあ平行世界の全く性格の違う翼とクリスには確かに興味はあるわね」
シ「別にこの話で平行世界の話を書いてもいいんだぞ?」
作「そんな暇があればいいんだけどね!さあ見てない奴は一応Youtubeとかにあるから見てみろ!絶対に自分と同じ感想抱くと思うから!」
シ「まあ確かにな。というわけで、本編をどうぞ」

作「・・・・やっぱあれ見て我慢できるつばクリ勢はいないだろう。だから叫ぶ。


Fooooooooooooooooooooooooo!!!

調「切ちゃん」
切「うるさいのデス!」
作「あべし二回目!」背中にイガリマァ…!
作(霊)『それでこの我が消えると思ったかぁあ!!』
フィ『いい加減にしなさい』
奏『そうだぞ』
作(霊)『え?あ、ちょ、離せ死人、あ、あ、あぁぁあああ!!』
シ「・・・というわけで今度こそ本編どうぞ」


蘇るオールドワールド

「―――火星で見つかったパンドラボックスが引き起こしたスカイウォールの惨劇から十年。地球外生命体エボルトの暗躍によって、日本は三つに分かれ、混沌を極める。仮面ライダービルドであり、天才物理学者の桐生戦兎は、その他大勢のライダーと力を合わせて地球殲滅を目論むエボルトの野望を阻止する・・・そして、もう一つの地球と融合して、皆を救済する新世界を創るのだった」

「おい、その他大勢のライダーってなんだよ?もっとちゃんと説明しろよ!」

「じゃあ筋肉馬鹿の万丈龍我とアイドルオタクの猿渡一海と文字ティー大好き氷室幻徳と力を合わせてぇ・・・」

「ちょっと待てよ!筋肉馬鹿はねえだろ?」

「うるっさいな!だったら自分で考えなさいよ。・・・こんな万丈でも主役になれる『仮面ライダークローズ』をどうぞ」

 

 

 

その言葉で締めくくり、戦兎は録音機のスイッチを押す。

それで録音が終わり、戦兎は溜息をついて椅子にずしっとよりかかる。

「いいか?俺は筋肉馬鹿じゃねえ『プロテインの貴公子』―――バサッ!―――万丈龍我だ!」

そう言って天井を指差し、決めポーズを取る龍我。が、すでに録音は終わっているため、その声は記録されていない。

「「・・・はあ?」」

何故か被るその言葉。

「・・・ってかもう録音止めてるし」

「ふざけんなよ。俺が主役じゃねえのかよ!?」

「そんなの嘘に決まってるでしょうが。とにかく、これで俺たちの記憶にまつわる記録は全て取り終えた」

そう言って、戦兎が視線を落とす先には、『Kamen Rider BUILD』と書かれた書類が置かれていた。

これは、旧世界における、彼らの記録。―――というか台本である。

桐生戦兎、仮面ライダービルドとしてのその戦いの全てを記した資料と、それにまつわる音声データを録音していたのだ。

発案は、もちろん戦兎。

そして今、その録音が全て終わったのだ。

「はぁー、やっとかよ・・・美空やエボルトまで登場させやがって。声のそっくりさん探すの大変だったんだぞ」

ちなみに、これは装者やセレナには内緒であり、これを知っているのは、声優探しを手伝ってくれた緒川(マネージャーとしての能力を買って)や二課の僅かな職員だけである(なお藤尭含む)。

ただ狙ってやったのか知らないが、二課の女性陣は誰も知らない(無論友里も)。

「しょうがないだろ?本人たちは記憶を失ってんだから」

「なんで皆忘れちまったのかなぁ・・・・」

そうぼやく龍我。

この新世界において、旧世界――――スカイウォールやパンドラボックスにまつわる記憶は世界中の人々から一切消えている。

もちろん、響たちシンフォギア装者も同様だ。

覚えているのは、世界の創造主にして、エボルトがいなければ存在しなかった戦兎と、エボルトの遺伝子を持つ龍我だけ。

「またその話か・・・何度も言ってるだろう。新世界に作った際にパンドラボックスにまつわる記憶は全て失ってるんだ。だから皆は、スカイウォールがあった事も、エボルトに地球を滅ぼされそうになった事も、仮面ライダーの存在すら覚えていない」

まあ、マリアがフィーネとして決起した時にビルドの姿がばっちり映ってしまい、それに対する情報操作にかなりの労力をしいて、『謎の仮面の戦士』として都市伝説に仕立て上げられてしまっている訳だが。

「もちろん、俺たちの事も・・・」

「新世界を創るために死ぬはずだった俺たちは、本来ならこの世界に存在しちゃいけない・・・だろ?」

その言葉に、龍我はそう返した。

そうして、しばし沈黙がよぎる。

「・・・・」

「・・・ま、分かってんならそれでいいさ」

そう言って戦兎は立ち上がる。

「さぁて!そんなわけで改めて俺が開発した発・明・品を見ろ!」

そう言っていつものハイテンションで戦兎は机の上に置いてある、まだ塗装もしていない何かの装置を手に取る。よく見ると蜘蛛に見えない事もない。

「なんだそりゃ?」

「これはな、クローズドラゴンよりも高性能な変身アイテム・・・蜘蛛型ペットロボだ!」

「相変わらずだなそのネーミングセンス・・・」

「馬鹿のお前に言われたくないよ」

「馬鹿って言うな馬鹿って。ていうか、この間クライムウルフ作ったばっかじゃねえか。また余計なもん作ったのかよ」

「余計とは失礼な。これもまた立派な戦力増強の為の新発明なんだぞ」

クライムウルフとは、仮面ライダークライムことシン・トルスタヤ専用の変身アイテムである狼型自立稼働型変身アイテムである。

「まあいいや。俺はもう行くからな」

「ん?おう。ってか、お前もたまには仕事しろよな」

「災害救助の仕事があるからいいじゃねえかよ」

そう言って、龍我は戦兎の住む倉庫から出ていく。

「・・・はあ、まだ引きずってんのかねえあの事」

なんだか暗い雰囲気を醸し出しながら部屋を出ていく龍我を見て、そう呟く戦兎。

それは数日前のクリスとのデートの時の事だ。

あの最悪なタイミングで、元恋人である香澄に遭遇するとは、誰が予想できただろうか。いや、誰も予想できるわけがない。

これではクリスが可哀そうである。

「本当、あの馬鹿には困ったもんだな・・・」

と、そうぼやいた時だった。

 

何やら、耳障りな音が聞こえる。

 

何かと思って周囲を探してみると、ふと壁に立てかけてあるパンドラパネルが怪しく青白い光を放っていた。

一体何かと注視していると、そのパネルから、何かが溢れ出す。

 

「―――コレがァ、パンドラボックスの力で創った、新世界かァ~・・・!」

 

次の瞬間―――その何かが、パンドラパネルから溢れだした―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・」

盛大に溜息をついて、噴水の縁に腰をかける龍我。

その目の前では、フリーマーケットが広げられており、多くの人々が展示され売られている商品をうつりうつり見ていた。

そんな様子を眺めながら、龍我は先日の事を思い出す。

(なんか・・・クリスに悪い事をしたな・・・)

そう思うのは、先日のデートの事。

あの遊園地で香澄を見つけ、そして、この世界での自分を見てしまった事。

そして、今の香澄が幸せそうだったこと。

その隣に、自分がいない事。

 

そして、我を忘れてクリスを置き去りにしてしまった事―――

 

(なんであんなタイミングで出てくるんだよ・・・)

香澄の事もそうだが、あの時は、何よりもクリスとの時間を大切にするべきだった。

あの気分を、一瞬にしてぶち壊された気分―――

(・・・あれ。俺なんでクリスの事を・・・・)

そこで、唐突に自分の気持ちの違和感に気付く龍我。

そんな時だった。

「キュールルールルールルールル!」

「ん?」

空を見上げてみれば、そこにはどういう訳かクロが龍我の真上を旋回していた。

その様子に、龍我は思わずふっと笑ってしまう。

「なんだ。今日は未来の所じゃねえのか」

「キュル!」

そう鳴くと、クロは龍我の肩に乗ってあくびをする。

「相変わらずマイペースな奴め」

そう言って、龍我はフリーマーケットの様子を見る。

(ほんと、クリスに悪い事をしたな・・・)

そう思っていた時の事だった。

 

龍我の前に、一人の女性が立つ。

 

「・・・・ん?」

見上げてみれば、そこには茶髪の背中の肩甲骨あたりにまで髪を伸ばした一人の女性がいた。

「・・・誰だお前?」

まっすぐにこちらを見てくるので、龍我を思わずそう返してしまう。

そう問いかけてみると、龍我は女性の視線が龍我ではなく肩のクロに向いている事に気付く。

「・・・そのロボット」

「ん?ああ、こいつか?ちょいと知り合いが作ったものでさ―――」

龍我が返事をしようとした時、その女性は、肩にかけていたバックから一冊のメモ帳を取り出し、あるページを見せる。

 

そこに描かれていたのは――――仮面ライダークローズだった。

 

「―――ッ!?」

「これがなんだか分かる?」

その女性は、真っ直ぐに龍我を見ていた。

 

 

 

 

「はあ・・・」

その一方で、特に当てもなく一人街中を歩くクリス。

(この気持ちを自覚した所で、今がどうにかなるわけじゃないんだよなあ・・・)

先日のデートで気付いてしまった自分の恋心。

自分より遥かに年上な相手に対して、抱いてしまったこの気持ち。

(忘れる・・・なんて事も出来るんだろうけど、そう簡単に忘れられる訳ないんだよなぁ・・・)

そう、この『恋』という気持ち。一番厄介な所は一度自覚したら二度と忘れられないという所だ。

忘れられない相手。忘れる事の出来ない相手。自分のものにしたい相手。そんな独占欲にも似た感情によって引き起こされるその気持ちは、本当に厄介なものだ。

しかし―――

(龍我はまだ、香澄って人の事を忘れられないんだよな・・・)

龍我の失った恋人。この世界じゃ、別に自分と幸せな人生を送っている、最愛の人。

(龍我が最愛と言った人。そんな人の代わりに、アタシはなれるのかな・・・)

そんな心配が、クリスの胸を満たしていた。

故に学業にも集中できない。

ここ最近、授業の内容が右から左に流れていくような感じだ。

こんな状態ではいけない。気持ちを切り替えなければ。

(・・・なんて思えれば良かったんだけどな)

これが、恋煩い、というものなのだろうか。

「ママが言った通りだな・・・」

そうぼやいた時、ふと噴水広場の前を通ったクリスの眼に、龍我と、その目の前に立つ女性の姿が目に映った。

「誰だ・・・?」

その姿に、クリスは思わず目を見開いた―――

 

 

 

尋ねられた龍我は、どう答えようかと考える。

「知ってるなら教えて、探してるの!」

女性は、そう言ってせがむように龍我に尋ねる。

どう答えようか。否、それ以前に、何故この女はその事を覚えているのか。

「・・・アンタ、誰だ?」

龍我は、そう尋ねる他なかった。

その問いかけに、女は目を伏せる。

「・・・分からない」

女の返答は、それだった。

「学校の教師らしいけど・・・記憶がなくて・・・」

(セレナと同じ、記憶喪失って奴か・・・?)

そう龍我が思った矢先、龍我の携帯に着信が入る。

それを取り出して画面を見れば、『桐生戦兎』の文字が。

「戦兎か?今俺たちを知って―――」

すぐさま通話を繋げて戦兎に、目の前の女の事を報告しようとしたら、通話に出た戦兎の声はかなり切羽詰まっていた。

『逃げろ万丈!』

「は?」

『白いパンドラパネルから見たことも無い地球外生命体が現れた・・・!』

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る――――

 

 

白いパンドラパネル、そこから溢れ出た青い液体が、戦兎の体に直撃する。

「うぐっ!?」

それが、体中を駆け巡るような気持ち悪い感覚と共に戦兎の体を徘徊。そしてすぐさま戦兎の体から出て、着地した場所で人型を形成した。

その姿は―――桐生戦兎とそっくりだった。

「・・・ッ!?」

そんな特性をもっている存在なんて、戦兎は一人―――否、一つしか知らない。

 

ブラッド族―――星狩りの一族であり、地球上に存在しない宇宙から来た地球外生命体。

 

別の生物への擬態が可能であり、ブラックホールを使い、エネルギーに還元された星のエネルギーを喰らう事で、その力を強大にしていく存在―――

それが、ブラッド族。

それと同じ存在が、戦兎の目の前に立っていた。

「―――オマエの記憶をコピーさせてもらったァ」

戦兎もどきが喋り出す。

「・・・何者だ?」

戦兎は、警戒しきった視線で戦兎もどきを睨む。

その戦兎もどきが、盛大な仕草で振り返って自らの名を告げる。

「オレは『キルバス』!エボルトとは昵懇(じっこん)の仲でねェ。アイツがオレから奪った『パンドラボックス』を取り返しに来たァ!」

(パンドラボックスっ・・・!!)

それを聞いた戦兎はすぐさま走り出し、引き出しに隠しておいたビルドドライバーをすぐさまひっつかむ。

そしてそれを腰に装着しようとした時、突如として戦兎の体に何かが突き刺さる。

「がっ・・・!?」

それは、何かのチューブ。戦兎もどき―――キルバスの指先から伸ばされた、いわゆる触手。

その触手から、戦兎の体の中に何かが注入されていき、それが抜かれると同時に、戦兎はその場に倒れ込んでしまう。

「ァ――ぐ・・ぁぁ・・・!!」

全身を苛む激痛。体を焼くような痛み。

忘れもしない。この痛みは―――地球には存在しない毒による激痛。

間違いない、この存在は―――

「う・・・ぅう・・・」

どうにか足掻こうとするが、その時倒した机の上に乗っかっていたテレビのリモコンのスイッチが入り、テレビが付く。

そこには、下着を着ず、真っ赤なワインレッドのスーツに身を包んで踊る男の姿があった。

「ん?」

それを見たキルバスは、それを興味深そうに眺めると、一瞬にして戦兎の姿からその男の姿へと変えてしまう。

「この方がクールだァ」

そう、キメキメのポーズで言うキルバス。

そうして、床で苦しむ戦兎が落としたビルドドライバーとパンドラパネル。そして、蜘蛛型ペットロボを拾い、キルバスは高らかに言い放つ。

「さァ、エボルトをォ―――狩るかァ!!」

そう叫び、キルバスはさっさとそこから出ていく。

「う・・・ぐ・・・」

その間に、戦兎はどうにか体を引きずり、机の上に這い上がる。

その上にある、『ジーニアスフルボトル』を掴み―――そこで力尽きてしまい、床に倒れてしまう。

(ちく・・・しょぉ・・・)

毒が回るスピードが早い。それが証拠にどんどん体表が変色していっているのがわかる。

セレナが自分が死ぬまでに帰ってくることに賭けようにも、今はマリアたちの留置所に言っていてその可能性は絶望的。

このままいけば、おそらく数分で自分は死に至るだろう。

こんな呆気なく死ぬのか。こんなにも、呆気なく。

(ばん・・・じょ・・・つば・・・さ・・・・)

激痛で薄れゆく意識。

激痛で感覚が、どんどん遠のいていく。

このままでは、いずれ、本当に死――――

 

そんな時、何者かに抱き起される感覚を覚えた。

 

そしてすぐさま思いっきり体を揺すられ、顔に何か、雫のようなものが落ちてきている事に気付き、僅かに暗闇に沈んでいた意識が覚醒する。

そうして、目を開けた先にいたのは―――

「戦兎・・・戦兎ぉ・・・!!」

「つば・・・さ・・・?」

そこには、どういう訳か涙を流しながら必死にこちらに呼びかけている翼の姿があった。

「なん・・・」

「しっかりしろ戦兎!死ぬな!頼むから死なないでくれ!」

必死に呼びかける翼の眼からは止めどなく涙が溢れ出ていた。

そんな中で、戦兎は、自分の手の中にジーニアスフルボトルがある事を確認。

僅かに唇を動かし、翼に、ジーニアスを自分に差すように促す。

もはやほんのわずかな声も出ない状態。

これで伝わらなければ詰みだ。

しかし、戦兎の期待通り、翼は戦兎の手に握られたジーニアスフルボトルを掴むと、それを戦兎の体に押し当てる。

「く・・・ぅ・・・ぁ・・・・」

すると、戦兎の体から激痛が一気に引いていく。

ジーニアスの持つ万能浄化装置が効いている証拠だ。

そうして、変色していた肌が元の色に戻り、戦兎の顔に生気が戻っていく様に、翼は恐る恐る尋ねる。

「戦兎・・・?」

「く・・・ぁ・・・ああ、もう大丈夫だ」

どうにか自分の力で起き上がれるようになった戦兎は、体を起こす。

「よかったぁ・・・!」

その様子に、翼は顔を歪め、子供のように戦兎に縋りながら泣き出した。

 

 

 

 

 

そして現在―――

「キルバス・・・?」

龍我は、戦兎から告げられた敵の名を反芻する。

『今、翼に頼んで二課にそいつの居場所を割り出してもらってる。だから早く逃げろ。いいな?』

「あ、ああ・・・」

どうやら本当のようだ。

戦兎の忠告を聞き入れつつ、龍我はしばし考える。

しかし、そんな時、向こう側が何やら騒がしい気がした。

そちらに視線を向けてみれば、割れる人混みの中、その割れた場所を堂々を歩く、下着を着ず、真っ赤なワインレッドのスーツを着込み、同じ色の帽子を被る男がいた。

その男が、帽子を投げ捨てるような仕草で、周囲の注目を搔き集めていた。

その様子に、龍我は思わず感心してしまう。

「ダンサーの、柿崎悟志・・・」

そんな中で、女性がそんな名前を呟く。

だが、そんな二人の眼に、柿崎が掲げた手が怪しく光り出すのが見えた。

そして、柿崎は次の瞬間、それを龍我に向かって放つ。

「うおッ!?」

それに驚いて身を翻してギリギリで躱すも、手首の腕時計と携帯が壊れ、衝撃を受けて地面に倒れる。

その様子は、遠くにいたクリスにも見えていた。

「龍我!?」

すぐさま、龍我の元へ駆けつけようと走り出す。

一方の龍我のいる広場では、その場にいた人々が皆一斉に逃げ出していた。

当然、龍我を謎の能力をもって攻撃した柿崎という男に恐怖しているからだ。

「探したぞォ・・・エボルトォォォオ!!!」

そう叫んだ柿崎の手には―――ビルドドライバー。

「それはッ・・・!?」

それを腰に装着した柿崎は、そのドライバーのフルボトルスロットにラビットフルボトルとタンクフルボトルを装填する。

 

ラビット!タンク!

 

ベストマッチ!』

 

そうしてボルテックレバーを回し、展開されたビルダーと、掛け声と共に、お決まりの言葉を言う。

 

Are You Ready?

 

「変身ゥ」

 

創り上げられた二つの装甲が、柿崎を挟みこむ。

 

鋼のムーンサルトラビットタンク!イェーイ!』

 

そうして現れたのは――――仮面ライダービルドだった。

 

 

 

 

「―――噴水広場にて、暴動事件発生!」

一方の二課では、当然その事は知れ渡っている。

「例のキルバスのという輩の仕業かもしれん!早急に事態の把握、そして全ての装者を現場に急行させろ!」

弦十郎がそう指示を飛ばす中、藤尭が声を挙げる。

「現場の監視カメラの映像、出ます!」

そうして映し出されたものは――――

「ビルド・・・だとォ!?」

龍我を襲う、ビルドの姿だった。

 

 

 

柿崎が、ビルドに変身した。

その事実は、龍我に大きな衝撃を与えていた。

「なんで、テメェがビルドに!?」

しかし、その問いに答える事なく、龍我はビルドに殴り飛ばされる。

「フン!エボルトォ、()()()に、いるんだろォ!?」

一方のビルドは龍我に向かってそう言う。

当然龍我には何が何だか分からない。

「テメェ・・・!」

「龍我!」

「ッ!?クリス!?」

立ち上がる龍我に、クリスが駆け寄る。

「大丈夫か!?」

「ああ・・・」

「なんでビルドに・・・」

「俺が知るかよ・・・でもやるぞ!」

「ああ!」

「キュル!!」

龍我がクロを掴み取り、その背中のスロットにドラゴンフルボトルを装填。

 

Wake UP!』

 

CROSS-Z DRAGON!』

 

すぐさまボルテックレバーを回しビルダーを展開。隣のクリスはシンフォギアを起動するための聖詠を唄う。

 

『Are You Ready?』

 

「―――Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)―――」

 

「変身!」

 

『Wake UP Burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

龍我は仮面ライダークローズに、クリスはイチイバルをその身に纏い、すぐさまビルドに殴りかかる。

 

その瞬間を、女は目を見開いていた。

「あれは・・・」

その時、女の脳裏に、ある光景がフラッシュバックする。

 

たった今、龍我が変身したクローズが、何かと戦う姿を。

 

そして、その戦士に、助けを求めた、自分の姿を―――

 

 

クローズが殴り掛かる。しかし、ビルドはそれをいとも容易くいなし、クリスからの援護射撃すら躱してクローズを圧倒する。

「どうしたァ、エボルトォ!!」

「ぐあ!?」

戦兎のビルドとは比べ物にならない程の強さを発揮する、柿崎のビルド。

「何故姿を露わさないィ!?」

クローズの攻撃を躱し、逆に戦兎の変身するビルドからは考えられないほどの威力の打撃がクローズを襲う。

その最中で投げ飛ばされれ、ビルドは倒したクローズを踏みつける。

「その姿で龍我を踏んでんじゃねえよ!!」

すかさずクリスがその手のボウガンをガトリングガンに変形。引き金を引く。

 

BILLION MAIDEN

 

ガトリングによる乱射がビルドを襲う。

「おおっとォ!」

しかし、ビルドはそれを躱して見せる。

「中々やるじゃねえかァ!それが『シンフォギア』って奴かァ!」

「シンフォギアの事も知ってんのかよ・・・!?」

そのビルドの言葉に、クリスは冷や汗をかく。

そんな中で、クローズが立ち上がる。

「何言ってんだ・・・エボルトはもういねえよ!」

そう言って、クローズは再度ビルドに殴り掛かる。しかし、振り下ろした拳を受け止められ、しかし再度殴り掛かっても躱され、なおかつ、背後を取られ、後ろから締め上げられる。

「ぐぅっ!?」

「龍我!」

「だったら、オレが呼び覚ましてやるよォ!!」

そういうと、クローズを前にどつき、隙が出来た所に強烈なドロップキックを叩き込む。

「ぐあぁぁああ!?」

「龍我ぁ!」

想像以上の威力なのか、かなりの距離を吹っ飛ぶクローズ。

そのまま近場の駐車場まで吹っ飛ばされ、そこで変身解除に追い込まれる龍我。

「ぐ・・あぁ・・・」

龍我の敗北。その苦しみようを見たクリスの頭に血が昇る。

「よくも龍我を―――」

「折角だ」

だが、構えたガトリングガンを蹴り上げられ、その腹に一撃を入れられる。

「げほっ―――」

「お前もくたばってろォ!」

そのまま龍我の方へ殴り飛ばされる。

「あぁあ!?」

龍我の元まで殴り飛ばされ、クリスもシンフォギアを解除される。

「クリス!」

「うぅ・・・なんて強さだよ・・・」

ダメージに地面に倒れ伏す二人。

そんな二人を見下し、ビルドはスロットからボトルを抜いて、変身を解除する。

そうして変身を解除した柿崎が取り出したのは、白いパンドラパネル。

そのまま倒れ伏す龍我に近付き、そのすぐ傍にパネルを置き、龍我の手首をつかむ。

「ぐぁ・・・何すんだ・・・!」

抵抗しようとその手を反対の手で掴み返すが、すぐさまその手を()()()()()()()()()、痛みで思わず悶絶する。

「龍我!」

クリスが叫ぶ。

「パンドラボックスのォ・・・復活だァァァア!!」

そして、柿崎はそう叫び、掴んだ龍我の手と、もう一方の手をパネルの上で重ね合わせる。

「ぐあぁぁああ!?」

その時、凄まじい激痛が龍我を襲う。

その様子を、あの女が遠目で見ており、クリスも、そんな龍我の様子を目を見開いてみる事しか出来ない。

そうして、激痛に苛まれる龍我を茫然と見ているクリスが目にしたものは――――パンドラパネルの下から、正方形の箱が形成されていく様だった。

「パンドラパネルが・・・」

そうして完成したのは、龍我がこの世界で最も見たくなかったもの。

 

―――今はもう存在しない筈の、パンドラボックスだった。

 

「どうなってんだ・・・!?」

そう呟いた瞬間、パンドラパネルから凄まじい衝撃波が迸り、光が波紋のように広がっていく。

それを受けた女は、自分の中で何かが変わる感覚を覚え、その場に倒れ伏す。

 

 

 

その光は、世界中に広がっていった。

 

 

 

その時、コーヒー豆の店からコーヒー豆の入った紙袋を抱えて出ていった美空は、突如吹き付けた突風に顔をしかめる。

しかし、その脳裏に、唐突にある光景が次々とフラッシュバックしていった。

その現象に、美空は困惑し――――そして、何か、決定的な何かを思い出した。

 

 

 

 

それと同時に、龍我の脳裏に、見覚えのある光景がフラッシュバックする。

見覚えのある宿敵の姿、崩壊する文明、破壊される星――――

「―――ハァッ!?」

次の瞬間、我に返り、まるで今更呼吸を思い出したかのように激しく呼吸をする。

「今のは・・・!?」

「箱は完成した。後は中身だァ・・・」

呆然とする龍我を他所に、柿崎はそう言って立ち上がり、龍我を指差し、こう言う。

「貴様の命で、パンドラボックスは力を取り戻すゥ!!」

「なん・・・だと・・・!?」

 

雨が、降り出す―――

 

「ククク・・・」

柿崎が、再び変身する。

 

レスキュー剣山ファイヤーヘッジホッグ!イェイ・・・!』

 

ビルド・ファイヤーヘッジホッグフォームに変身した柿崎は、龍我に近付くとその体を掴み上げて持ち上げる。

「龍我ぁ!」

クリスは、思わず龍我の名を呼ぶ。

(ダメだ、このままじゃ、龍我が・・・!)

考えたくもない最悪の事態。

それを予測してしまい、クリスはどうにか立ち上がろうとする。

だが、先ほどの一撃が効いているのか、立ち上がる事が出来ない。

その間にも、ビルドは龍我を掴み上げ、その右拳―――直撃すれば伸縮自在の棘が体中を貫く一撃が、龍我に叩き込まれる。

「・・・あァ?」

だが、直撃した筈の拳に、ビルドは違和感を覚える。

その拳は―――龍我によって防がれていた。

手を交差させて、その拳の手首を抑える事で、直撃を防いでいた。

だが、そんなビルドの攻撃を防いだ龍我に、クリスは、得体の知れない気持ち悪さを覚える。

「・・・龍我?」

思わず、その名を呼ぶが、すぐさま違うとクリスは思った。

何か、雰囲気があまりにも違い過ぎる――――

龍我が、ビルドの拳を弾き、その胴に拳を叩き込んで、一気に下がらせる。

「うお!?」

驚くビルド。しかしその声は、どこか嬉しそうだった。

そうして、雨に打たれる中、そこに立つ龍我の体から―――何か、液状の何かが溢れ出す。

それは龍我の体から抜け出ると、形を成し、人型へと姿を変える。

 

血の色の装甲、水色のバイザーとコブラの意匠―――。

 

忘れもしない。その姿を。

龍我は、その姿を知っていた。知らない訳がなかった。

 

―――ブラッドスターク、否―――

 

「エボルト・・・!?」

彼らの最大の宿敵―――エボルトが、そこにいた。

「やっと現れたかァ。会いたかったぞォ!!!」

ビルドが、エボルトに襲い掛かる。

その攻撃をいなすエボルト。龍我とクリスが一緒になっても敵わなかったビルドの攻撃を、ブラッドスタークのエボルトは見事に捌き切っていた。

そして、その言葉に、エボルトは―――

「―――オレは、会いたくなかったよ」

そうして反撃に出るエボルト。拳を横に躱され、回し蹴りを放つも下に躱され、そこへ左腕のマルチデリュージガンからの放水を受けて一気に距離を取らされる。

そして、すかさず高水圧の放水を、エボルトは障壁をもって防ぐ。

「ぬ・・・ぐぅ・・・ハアッ!」

そして、その障壁をもって衝撃波を放ち、放水を押し返す。

「ぬお!?」

そうして出来た隙に、エボルトはビルドに向かって走り出し、その胸に拳を一撃決める。

そのまま吹き飛ばされたビルドを前に、エボルトは周囲を見渡し、パンドラボックスを見つけるとそれを拾い上げる。

「何がどうなってんだよ!?」

女を抱え上げる龍我がそう叫ぶ。そのすぐ傍にはどうにか立ち上がったクリスもいる。

「話は後だ。ズラかるぞ!」

そう言って、エボルトは三人を掴むと、一気に高速移動してその場を離脱した。

そうしてエボルトを見失った柿崎―――否、キルバスは、笑いながらボトルを抜き、変身を解除する。

「ナニをしても無駄だァ。オマエはオレから逃げられなァい」

そうして取り出した戦兎が作った蜘蛛型ペットロボ。

それが、一瞬にして赤と黒の塗装をされたかのように変色した。

それに、キルバスはそっとキスを落とした――――




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

龍我たちと連絡がつかない事態に苛立ちを募らせる戦兎。

「引き続き捜索は続けるそうだが・・・」

その一方、件の龍我たちは、エボルトと対峙していた。

「ここは、万丈が旧世界で入れられてた刑務所だ」

警戒心をあらわにする二人。

「この地下に、キルバス攻略の鍵がある」

しかし、そんな事を意に介さず、そんな中で、一緒に連れてきてしまった女性が目覚める。

「アンタが、仮面ライダーだったんだね」

その女『馬渕由衣』から語られる、クローズの過去。

「今の話・・・本当なのか・・・?」

それを聞いた、クリスの反応は―――


その一方で、政府官邸を訪れた戦兎と翼、響、弦十郎たちは、そこで待つ、戦兎の仲間たちと出会う―――

「久しぶりだな。全部思い出したよ」


次回『因縁のバイゴーンデイズ』



リディアンこそこそ噂話
翼は実は切羽詰まると戦兎の事を思わず『桐生』ではなく『戦兎』と名前で無意識に読んでしまう事がある。

翼「・・・はあ!?」
ク「気付いてなかったのかよ?」
翼「あ、いや、別にそんなことは・・・でたらめいうなぁ!」
マ「目をぐるぐるさせても説得力ないわよ?」

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