愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

49 / 99
切「仮面ライダービルドこと、桐生戦兎が創造した新世界。しかしそこはノイズが蔓延る世界だったのデス!しかし、ノイズの脅威はさり、平和が訪れるかと思いきや、地球外生命体キルバスが襲来!今、その最終決戦が行われようとしているのデス!」
調「ついに最終決戦・・・どうなるかな」
慧「なんか龍我さんも一海さんも幻徳さんも無双してたっていうし、マジにとんでもないよな・・・」
シ「ついでにいってシンフォギアもまともに通用しない奴だ。おそらく最後の切り札S2CAも通用しない可能性が・・・」
マ「いやいや待て待て待ちなさい!S2CAが効かないというのならどうやってアイツを倒すっていうのよ!?そもそもなんで地球外生命体まで出てくるってどうなってるの!?もうシンフォギアの世界観ぶち壊しじゃない!怖い怖いこの小説一体どこまでシンフォギアの世界観ぶち壊せば気が済むの!」
シ「世界観ってもう『仮面ライダービルド』『戦記絶唱シンフォギア』『クロスオーバー』『世界融合による新世界』の時点で色々壊れてるだろう」
マ「やめて現実見させないでー!」
切「と、という訳で、キルバスと大激突するクローズ編第五話をどうぞデス!」
調「ここで一つお知らせがあります。作者の学校での試験が近いために、来週の小説の投稿をお休みさせてもらいます。楽しみにしていただいている読者の方々には申し訳ありませんが、何とぞご理解のほどをよろしくお願いいたします。それともう一つ、バレンタインやクリスマスなどは、クローズ編が終わった後、『創造しない』と一緒に投稿いたしますので、楽しみにしてください。以上、広報役の月読調でした」


衝動インスパイア

グリス、ローグ、響、翼の四人が生み出された六体のスマッシュと鎬を削る。

 

「やぁああ!!」

響の連打が一体目のノイズの腹に叩き込まれ、すかさず飛び上がってその顔面を蹴り飛ばす。すかさず背後から襲い掛かってきたスマッシュの攻撃を飛び上がって躱し、肩に手を置いてそのまま頭上を通って背後に回ると同時にその背中に膝蹴りを叩き込む。

そして、それによって二体のスマッシュがもつれた所を左手のギアのアンカーを叩き起こし、腰のジェットで加速、そのまま拳を叩きつけて二体纏めて吹き飛ばす。

「うおりや!」

グリスはノイズの一体を掴むとプロレスのように地面に倒れ込む反動を利用してスマッシュの一体を投げ飛ばす。

「ウィィィイ!!」

そして突っ込んできたもう一体に対してラリアットをお見舞いする。

「ハァァア!!」

翼の斬撃が双方から襲い掛かってくるスマッシュを交互に打ち据える。

一方が交互に近付くように、決して同時攻撃させないようにその刀を振るう。

しかし長くは続かず、ついに二方向からの同時攻撃を許してしまうが、

「ハァァア!!」

翼は足のスラスターを噴射。それによって生み出された回転で襲い掛かってきたノイズを竜巻の如く弾き飛ばす。

「ふっ!」

一方、ローグは敵の攻撃を受け流すと同時に反撃を叩き込み、さらにもう一方からの攻撃にも対応、上手く受け流し、それでいて的確な反撃を繰り出していた。

そして、クローズとクリスは――――

 

「挨拶無用のガトリング!ゴミ箱行きへのデスパーリィー!!」

 

クリスが歌えば、クローズの体内にあるエボルトの遺伝子は活性化し、さらなる力を発揮する。

その法則に則って、クリスが後方で歌い、それによって強化されたクローズイチイバルでキルバスを抑え込もうと言う魂胆だ。

そして、その目論見は成功しているのだが――――

「ぐぅ!?」

キルバスはそれ以上だった。

クローズの繰り出す拳打、それをキルバスは躱し防ぎ、なおかつこちらを弄ぶかのように殴り返してくる。

「やっろぉ!」

すかさずクリスがボウガンをもって援護。

しかしキルバスはそれを躱して見せ、得意の機動性でキルバスが避けた先へ巻き起こされた土煙を突っ切って殴り掛かったが、いとも容易く躱される。

まだ、届かないのだ。

(もっとだ・・・もっと、声を張り上げろ・・・!!)

クリスは、歌を叫ぶように歌う。

(じゃないと、龍我が安心して戦えねえだろッ!!)

追尾性のある小型ミサイルを乱射し、キルバスに殺到させる――――

 

 

「そういえば!」

ふと戦いの中でグリスがローグに尋ねる。

「内海はどうした!?」

クローズチャージやタスクとは違い、ツインブレイカーを二つ同時に使えるグリスは、それをもってスマッシュを叩き伏せていた。

「内海って誰ですか!?」

「もしかして、仮面ライダーマッドローグの変身者か!?」

件の内海なる人物を知らない響と翼はそのように尋ねる。

彼らが言っているのは内海成彰。かつて難波重工の難波チルドレンの一人であり、仮面ライダーマッドローグの変身者の事だ。

「そうだ!あいつはエボルドライバーで変身していたから、人体実験をしてない」

ネビュラスチームガンで敵を撃ちつつ、ローグはそう答える。

「あンの眼鏡!」

「記憶を失われたままなんだろう!」

そう言い合う二人だが。

 

今頃、難波重工で楽しくやっている頃だろう。

 

「そっとしておいてやれ」

「同感だ」

「それでいいんですか!?」

「記憶を無理に呼び起こす必要はないからな」

そう結論付けて、四人はそれぞれの戦いに戻る。

 

 

「ハハハハ!!」

「うぐあ!?」

キルバスの攻撃をもろに受けて、地面を転がるクローズ。

「―――ッ!」

すかさずクリスがキルバスに向かってガトリングを掃射。

「無駄無駄無駄ァ!!」

そのガトリング砲の乱射を全て避け切り、クリスに接近したキルバスはそのままクリスを殴り飛ばす。

「づっ―――!?」

「クリス!このォ!!」

それを見たクローズがすかさずキルバスに向かって走り出す。

クリスは未だ歌を唄い続けている。

ブラストモービルを取り出し、シューターで射撃。躱される。

接近した所で後ろ回し蹴りを防がれるもすかさず一撃、二撃と拳を突き出す。

しかしそれは躱され、続く三撃目からの攻撃を防いできたキルバスは、最後の攻撃を躱すと同時にカウンターで膝蹴りを腹に叩き込む。

「がはっ!?」

それを喰らい、地面を転がるクローズ。

しかしすぐに立ち上がって、拳を地面に叩きつけつつ、キルバスに向かって突進、そのまま拳を叩きつけるも、掴まれて防がれる。

「そんなモンかァ?だったらこれで終わりだァ!!」

キルバスは、ビルドドライバーからカイゾクハッシャーを取り出すなり、それを掴んでいた拳を押し返して離すと同時に、クローズに振り下ろす。

だが、その振り下ろされた一撃は、クローズの体から突如として飛び出した赤い液状の何かによって防がれる。

「なッ!?」

それは徐々にクローズの体から溢れだし、やがて形を成して、その正体を現す。

「な、ン、だ、と・・・!?」

「―――久しぶりィ。・・・でもないかァ」

その正体は――――エボルト。

 

 

仮面ライダーエボル・フェーズ1だ。

 

 

キルバスに叩き込んで下がらせるエボルト。

「ぬぐあ!?」

驚いていたキルバスだが、すぐさま嬉しそうに笑い声を上げる。

「ハハハ!生きてたかァ・・・エボルトォォォオ!!」

 

 

 

 

それは昨晩の事。

 

 

 

龍我のエボルトの遺伝子を活性化させる装置を起動させて数分。

突如として龍我の体から、赤い液状の何かが溢れ出し、それが龍我の近くに着地、形を形成し、彼らにとって忌々しい姿、仮面ライダーエボルとなってエボルトは出現した。

「ん~っ!・・あ~・・・」

「エボルト・・・ッ!!」

かつての宿敵の姿を見て、戦兎は険しい表情でエボルトを睨みつける。

「よォ戦兎ォ。久しぶりだなァ」

「こいつが、エボルト・・・!」

翼とセレナが警戒心を露わに身構えている。

「お陰で完全復活だァ」

「お前を蘇らせたのはキルバスを倒すためだ」

「だろォなァ。けど、協力するかどうかは、オマエたち次第だァ」

そう言って、一同を指差すエボルト。

そんなエボルトを、彼らは睨みつける。

 

ただ一人を除いて。

 

「響・・・!?」

未来が驚きに声をあげるのもお構いなしに、響が、エボルトの前に立つ。

「ああ?」

しかもその表情に、敵対心はなかった。

「私、立花響、十六歳。誕生日は九月の十三日で、血液型はO型、好きな物はごはん&ごはんで、あと、彼氏いない歴は年齢と同じです!」

「・・・はァ?」

これにはエボルトも驚く他なかった。

何故ならあまりにも重い空気の中で明るい声で自己紹介をかましてくる奴がいるのだからそれはもう驚くほかない。

もちろん、エボルトを知っている者たちにとってはその対応はあまりにも予想外過ぎた。

「よろしくお願いします!」

そう言って、響はエボルトに手を差し出す。

「・・・コイツ、天性の馬鹿なのか?」

「それが立花だ。気持ちは分からなくもないが、大目に見てやってくれ」

一海の言葉に翼は仕方ないとでも言うようにとりあえず言っておく。

「・・・クク、ハハハハ!!」

エボルトは、そんな響を見て高笑いをする。

「戦兎たちから話は聞いてただろう?」

「はい。ですが今は味方です。少なくとも、強さについては信じてますので」

「クク、おい戦兎ォ。こいつ面白いなァ」

「ああ、頭が痛くなるほどにな・・・」

戦兎は頭を抱えていた。

地球を滅ぼす程の力をもった地球外生命体ですらも手を繋ごうとする響の度胸の凄まじさは、もはや呆れる程だ。

「いいだろう。今回はコイツの度胸に免じて協力してやる」

エボルトは、響を興味深そうに見ながらそう言った。

 

 

 

「裏切ったらただじゃおかねえぞ」

「信用ないねェ。楽しくやろうじゃねえかァ、相棒」

「相棒じゃねェ!!」

「んな事いってないで、さっさと行けよ!アタシがサポートするから!」

「おう、頼んだぜェ」

クローズ、エボルト、クリスの三人が並び立ち、新たにここに共同戦線が確立される。

「行くぞ!」

「よしっ!」

「ちょっせぇ!」

クリスの放つボウガンの乱射を合図に、クローズとエボルトがキルバスに突っ込んでいく。

 

 

 

 

その一方で、

「・・・皮肉だよねぇ・・・」

拠点としている戦兎の住居にて、紗羽がそう呟く。

「え?」

その言葉に、未来が反応する。

今、この家には、強化アイテム作成の為に戦兎とセレナ、ここで龍我たちの帰りを待つ美空と未来、そして由衣がいた。

「ああ、未来ちゃんは知らないんだっけ?」

「いえ、戦兎先生から大体の話は聞いてます。色々と大変だったそうで・・・」

「まあねえ・・・まさか、万丈とエボルトが一緒に戦うなんて・・・」

確かに皮肉である。敵同士だったものが今は手を取り合い・・・はしていないが協力して共通の敵を倒そうとしている。

人間、共通の敵を見つけたら争いをやめるという言葉はあながち間違いではないのかもしれない。

まあ、片方は地球外生命体、もう片方は人間と呼べるか怪しい存在だが。

「・・・アイツ、エボルトに両親を殺されたんだって」

そんな中で、由衣が口を挟む。

それに、皆、黙る。

「なのに手を組むなんて、結局アイツは自分の命が惜しいんだよ。自分が助かりたいから戦ってるだけ・・・」

「・・・そんな訳ないじゃん」

その言葉に、美空が言い返す。

「逆だよ。みんなを守りたいから戦ってるんだよ?愛と平和の為なら自分はどうなってもいい。それが万丈龍我なんだよ?」

「他の人たちだって、きっと同じです」

それに、未来が続く。

「自分の為なんかじゃない。知らない誰かの為に自分の命を懸けられる・・・そんな事、貴方の思うような人が出来ますか?少なくとも、響は、他の誰かの為に命懸けで戦ってる。私は、そう信じてる」

そう、未来が言い、由衣は、その瞳に迷いの色を見せる。

 

 

が、そんな空気をぶち壊すかのように電子レンジのような装置の扉が破裂音と共に勢いよく開く。

 

 

「出来た!」

それを見た戦兎は嬉々とした表情で立ち上がる。その頭の髪は、その一部がぴょこん、と跳ねていた。

「わあ!」

ついでにセレナも興奮気味に立ち上がる。

そうしてその電子レンジのような装置『ボトル生成器ライト版』の中に入っていた大型のボトルを取り出す。

「名付けて、『マッスルギャラクシーフルボトル』!ハハ!凄いでしょ?最っ高でしょ?天才でしょー!!」

「流石戦兎先生です!」

「でたーいつものー。そしてなんか増えてる~」

二人のハイテンションさに思わず頭を抱える美空だが、しかし何か懐かしむように、紗羽ともども笑みを零す。

そうして、『マッスルギャラクシーフルボトル』を手に取った戦兎は、由衣の前に立つと、それを差し出す。

「悪いけどこれ、万丈に届けてくれないかな?」

由衣は、それを、戸惑い気味に受け取った。

 

 

 

 

「ぐあぁあ!?」

「ぐぉおあ!?」

「あぁぁあ!?」

「うわぁあ!?」

まとめてスマッシュに吹っ飛ばされるグリス、ローグ、翼、響。

「どうなってんだ・・・!?」

「前のスマッシュとレベルが違う・・・!」

「私と雪音がこの間戦ったスマッシュとは段違いに強い・・・!」

「これは、一体・・・」

地面に倒れ伏して、その強さに驚愕する四人。

『とォぜんだァ!』

そんな中で、そのスマッシュたちからキルバスの声が聞こえてくる。

『コイツらはあくまでオレの擬態・・・オマエら人間が勝てる相手じゃないッ!!』

「だ、まれコラァァァアア!」

どうにか立ち上がって、四人は六体のスマッシュに突撃する。

しかし、その圧倒的強さに、どうにか奮戦するも敵わず、また弾き飛ばされて、四人とも変身解除させられる。

「ぐ・・・・あぁあ・・・!!」

「ぐぅ・・・くそ・・・!」

「あ・・う・・・!?」

「ふかく・・・!」

「お前ら!」

クリスが思わず叫ぶも、そこで自らの失態に気付く。

(しまった、歌を・・・!)

次の瞬間、突然パワーダウンしたクローズがキルバスに吹っ飛ばされる。

「ぐあぁああ!?」

「龍我!」

倒れ伏すクローズ。そのクローズを他所に、キルバスは今度はエボルトを猛攻。カイゾクハッシャーとドリルクラッシャーをそれぞれ両手でもち、激しく叩きのめす。

「ぬぐあ!?」

そうして倒れた所を踏みつけるキルバス。

「エボルトォ、忘れたかァ!?オマエは一度としてこの兄に勝った事がないという事をォ!!」

ドリルクラッシャーとカイゾクハッシャーの刃でエボルトの首を挟み込み、持ち上げるキルバス。

「ぬ・・・ぐぉ・・・」

「フハハハハ・・・!!」

そうして立ち上がらせた所で、すぐさまその刃をエボルトの腹に突き刺す。

「グハッ・・・ア・・・!?」

次の瞬間、切り裂き気味に引き抜かれ、エボルトは倒れる。

そんなエボルトを、キルバスは見下す。

「エボルト!・・・くっそぉぉぉおお!!!」

それを見たクローズは、すぐさま立ち上がり、キルバスに向かって殴り掛かる。

しかし、それはいとも容易く躱され、すかさず、激しい斬撃の嵐がクローズに殺到する。

それにクローズは成す術もなく滅多打ちにされていく。

「やめろぉぉおお!!」

すかさずクリスが小型ミサイル群を放つ。

 

MEGA DETH PRATY

 

「アァ?」

それを見たキルバスは、今滅多打ちにしていたクローズを掴んだかと思えば、それをなんとクリスが放った小型ミサイル群へと突き出し(ガードベントし)た。

「あ・・・!?」

そして小型ミサイルがクローズに殺到。

「ぐあぁぁああ!?」

数の暴力がクローズに叩き込まれ、それを諸に喰らったクローズはその場に膝を付き倒れ、そして変身を解除させられる。

「龍我ぁ!」

「う・・・が・・・」

「キュルー!」

やってしまったと後悔してももう遅い。

クリスは悲鳴のように名前を呼び、龍我はその場で痛みに苦しみ、クロは心配そうに龍我の側で鳴く。

「どうやらァ、勝負あったようだなァ?」

そう言って、両の手の武器を投げ捨てる。

しかし、そこへ何やら聞き覚えのある音が聞こえてきた。

「アァ?」

 

それは、紗羽の運転する車。

 

それがキルバスの作り出した地形の坂を駆け下り、龍我たちの元へ向かってきていた。

その中には、紗羽だけでなく、由衣の姿もあった。

しかし、その車に向かってスマッシュの一体が立ち塞がる。

「ッ!?」

紗羽が息を呑む。

次の瞬間、そのスマッシュが地面を殴り、そこから叩き起きた衝撃波が車に直撃、それを諸に喰らった車は衝撃と共に急停止する。

よほどの衝撃だったのか、車内の紗羽は気絶していた。

「うぅ・・・!?大丈夫!?ねえ!ねえ!」

気絶した紗羽をゆする由衣。しかし反応はない。

そんな中で、手の中のマッスルギャラクシーフルボトルが目に入る。

それを見て、由衣はすぐさま車を出る。

そしてすぐさま龍我の元へ向かおうとした所で、由衣の目の前に、車を止めたスマッシュが迫ってきていた。

「あ・・・」

それに、由衣は思わず、あの時の恐怖がフラッシュバックしてしまい、その体が震える。

「まずいっ・・・!」

思わずクリスがその銃口を向けようとしたが、その前を何かが通り過ぎる。

「だれか・・・助けて・・・」

逃げるように後ずさりながら、由衣は、助けを求める。

その後ろは車。退路は塞がれている。否、そもそも逃げ切れるかどうかが怪しい。

「だれか・・・」

そうして振り上げられる、スマッシュの拳。

それに、由衣は思わず目を瞑ってしまう。

振り下ろされる拳。だが、それが由衣に直撃する事はなかった。

間一髪の所で龍我が割り込み、ドラゴンフルボトルを握りしめた拳でそのスマッシュを殴り飛ばす。

「ハア・・・ハア・・・」

ボロボロの体でここまで走ってきたのだ。その息は、当然あがっていた。

「・・・良かった」

しかし、龍我は由衣の無事を思う。

「今度は間に合った・・・」

「・・・!」

その言葉に、由衣は目を見開く。

「龍我・・・」

そんな龍我に、クリスはその胸に手を当てる。

「嬉しいねェ!まだそんな力があるとはなァ!」

キルバスが、狂喜にそう叫ぶ。

「戦兎のアイテム・・・出来たのか?」

龍我が由衣に尋ねる。

「でも、その体じゃ・・・」

「いいから貸せ!」

龍我が怒鳴って、その手を由衣に向ける。

その手に、由衣はしばし戸惑った後に、そのアイテムを渡す。

それは、青色の、黒い装飾の施された大きなボトルだった。

「オイ、正気かよォ?今のオマエに勝算あるとは思えねえけどなァ」

「うるせえ!こうなったら・・・一か八かだ!」

そのボトルのシーディングキャップを開け、すかさず『ビルドアップスターターCZE』を押し、ビルドドライバーに装填する。

次の瞬間、

「ぐ、ぅあぁぁぁあああ!?」

激しい拒絶反応が起こり、その痛みに龍我は絶叫し、倒れる。

「龍我!?」

「万丈!」

倒れた拍子に、そのボトルが外れ落ち、倒れた龍我に由衣が駆け寄る。

「最後の悪足掻きは終わったようだなァ」

キルバスが、あのパネルから作った箱を取り出す。

そうして、龍我たちに近付いていく。

間違いなく、龍我をその箱に取り込むつもりだ。そうなれば、龍我の死は免れない。

それを、遠目に見ていたエボルトは―――

「ッ!?」

ふと、ついていた手のあたりの土が跳ね飛ぶ。

それは、銃撃。しかし、エボルトを狙ってはいたが当てるものじゃない。

エボルトは、そちらに視線を向けると、そこには、エボルトに銃口を向けるクリスの姿があった。

その眼差しは、真っ直ぐとエボルトに向いており、その眼差しから、エボルトはある意図を汲み取る。

「・・・あ、そう・・・じゃあ任せたァ」

そう言って、エボルトは視線を外す。

その言葉に、クリスは感謝するように笑う。

そして、龍我たちに迫るキルバスを睨むと、クリスはその手のギアを連射式の拳銃に変えると、一気にキルバスに走りながら連射する。

「あァ?」

「クリス!?」

そして、クリスはキルバスと龍我たちの間に立つと、その手のギアをすかさず大口径の狙撃銃(スナイパーライフル)へと変形させ、キルバスでも躱せない速度の距離と弾速でキルバスをぶっ飛ばす。

 

RED HOT BLAZE

 

「ぐおぁぁぁあ!?」

吹っ飛ばされたキルバスだが、すぐに態勢を立て直す。

「・・ククッハハ!そういやまだオマエがいたなァ!!」

キルバスは嬉々として声を挙げるが、そんなキルバスを無視して、クリスは、龍我の方を向いて、叫ぶ。

「龍我!」

そして、告白する。

 

「―――アタシ、龍我の事が好きッ!!」

 

「―――ハアッ!?」

突然の告白。

それに、龍我は驚きを隠せない。

それは当然、響、翼、一海、幻徳も一緒だった。

「龍我が香澄さんの事を忘れられないのは知ってる!だけど、それでもアタシは龍我が好き、大好きなんだ!」

「ナニゴチャゴチャ言ってやがる!」

キルバスがクリスに殴り掛かる。

それに気付いたクリスは振り向いた途端にその頬に拳を貰うが、どうにか踏み止まって、その手の拳銃を再び連射する。

それをキルバスは体を捻って躱し、そのまま回転して後ろ回し蹴りをクリスに叩きつけて蹴り飛ばす。

「ぐあッ!?」

蹴り飛ばされ、地面を滑り倒れるクリス。

そんなクリスにキルバスは追撃に踏みつけようとする。

だが、それをクリスは横に転がって躱し、下がりながら両手の銃を乱射する。

その最中で、クリスは思い出す。

 

 

 

 

 

エボルトが復活し、作戦会議が終わった後の事。

クリスと龍我は倉庫の外にいた。

「それで、話ってなんだよ?」

龍我が訪ねる。

「・・・なあ、龍我ってさ、本当にエボルトと協力する気なのか?」

クリスは、そう聞き返す。

「・・・ああ」

「なんでだ?」

頷いた龍我に、クリスはさらに質問を重ねる。

「だってエボルトは、龍我の両親を殺したんだぞ?それなのに、どうして協力するって言い切れるんだ?アタシには、分かんねえよ・・・」

クリスは、俯いて、そう言葉を言う。

そのクリスの言葉に、龍我はしばし頭を掻いて答える。

「守りてえからだよ」

「え・・・」

「どんな事したって、どんな手使ったって、守りたいものがある・・・結局、そんな単純な話だ」

「その為なら、自分の仇とでも手を組むのか?」

「まあ、お前からしたら信じられねえだろうけどさ。でも、過去の因縁を引きずって、大切なものが見えなくなってたら元も子もねえ。守りたいものも守れなくなる」

握りしめた自分の拳を見て、龍我は、そう語る。

やがて顔を上げて、いつものバカみたいに自信満々な笑顔をクリスに向けた。

「初めの頃は、本当に余裕なんてなかった。俺を信じてくれた誰かのために、俺が信じた誰かのためにって。だけど、今はそうじゃない。愛と平和の為に、知らない誰かの為に戦う。そんな俺を創ってくれた奴らの為に、そして、関係のない誰かを守るために俺は戦うんだ。もちろん、お前の事もな」

そんな、なんでもないとでも言うように、龍我は言ってのける。

(ああ、やっぱり・・・)

そして、クリスはその言葉にどこか自然と納得していた。

(龍我は、こんなにも真っ直ぐだ・・・)

馬鹿みたいに真っ直ぐで、ただ自分に正直なだけ。

守りたいという自分の想いに素直なだけなのだ。

自分には、もってないものを持っている。

(それが羨ましくて・・・そこがアタシは好きになったんだ)

ああ、やはり自分は―――

「・・・好き」

「ん?なんか言ったか?」

「ううん、なんでもない」

尋ねてくる龍我に、クリスは首を横に振る。

「龍我」

「ん?」

「アタシは龍我の為に歌う。龍我がキルバスに勝てるように、アタシは歌い続ける。今のアタシには、まだ『愛と平和』なんて本気で言えない、余裕もないけど、アタシはアタシが信じた奴の為に戦う事にする。いつか、パパとママが思い描いた平和を胸を張って言えるようになるまで、その為に、龍我の為に歌う」

クリスは、真っ直ぐに龍我を向いて、言い切る。

「だから、勝とう。龍我」

「ハッ、何言ってんだ。当たり前だろ」

龍我は、嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

そんな龍我に、クリスは自分の想いを曝け出す。

「アタシは、龍我に救われた!初めて、信じたみたいって思った!だって、こんなアタシに初めて全力でぶつかってきてくれたのは、龍我だったから!」

キルバスの猛攻をしのぎ、銃の引き金を引き絞って、ありったけの銃弾をキルバスに浴びせる。

だが、躱しきれずに顎にアッパーを貰い、倒れる。

倒れたクリスに追撃しようとするキルバスに、クリスはすかさず弩弓状にしたギアを向けて、巨大な矢を叩きつける。爆発が引きおこり、黒煙がキルバスを包む。

その黒煙の中からキルバスが手を伸ばしクリスの首を掴み、持ち上げて、その状態で顔面を殴り飛ばす。

「ぐあぁああ!?」

殴り飛ばされて、また地面に倒れるクリス。

「ぅ・・・ぐ・・・初めてだった・・・!!」

それでもなおクリスは、抗うために立ち上がる。その気持ちを、本心を伝える為に、叫ぶ。

「あんなに・・・真っ直ぐ・・・アタシを見てくれたのは!」

初めて会った時は、最悪だった。

互いに敵同士で、何も知らなくて。

今のようになるなんて思わなかった。

こうして、好きになるなんて思わなかった。

「パパとママの夢を・・・受け継ごうと思えた・・・!!」

フィーネとは違う『夢』を抱く、両親の想いにようやく気付けた。

キルバスの猛攻がさらにクリスを襲う。

「頑張ったなって・・・言ってくれた・・・・!!」

それをしのぐクリスの眼からは、涙が溢れていた。

「真っ直ぐに、誰かを信じられる事が羨ましかった・・・!」

キルバスの拳がクリスに叩きつけられる。

「だから、アタシは―――そんな龍我が好きになったんだァ!!」

吹っ飛ばされる事でわざと距離を取ったクリスが、自らのギアの全ての武装を展開。

ガトリングガン、大型ミサイル四基、小型ミサイル群――――

それを、一気にキルバスに向かって一斉に発射する。

 

MEGA DETH QUARTET

 

放たれる、銃火器の暴力。

それが、キルバスに次々に殺到していく。

その様を、龍我と由衣は呆然と見る。

「いいのかァそんな所で寝ててよォ」

気付けば、そんな二人の隣に、エボルトが立っていた。

「あの小娘は、オマエの為に自分の全てを賭して戦っている。オマエはそれを見ているだけかァ?」

「ッ・・・」

龍我は、思わず四つん這いのまま俯く。

そして、その手を、自分の胸に手を当てる。

「・・・()()()()()は偽りかァ?」

エボルトが見透かしたように龍我に告げる。

その言葉に、龍我は胸に当てた手を握りしめる。

 

この、胸を焼くような、彼女を心の底から求める想いは――――

 

突如として、キルバスがクリスの放つ兵器の暴力を突っ切って、そのギアを砕き散らす勢いでクリスを上空へ蹴っ飛ばす。

「か・・・っはぁ・・・・!?」

それを喰らったクリスのギアが砕け散り、クリスはその痛みに歯を食いしばる。

そしてそんなクリスに向かってキルバスは飛び上がり、止めと言わんばかりに、クリスの腹に強烈な蹴りを叩き込む。

「がっ――――」

 

その時、クリスの体の中で、決定的に致命的な何かが壊された。

 

龍我たちの目の前に叩き落とされたクリス。

「―――こふっ」

その口から血を吐き出し、ぐったりとするクリス。

「クリスッ!?」

「こりゃあまずい。おそらく内臓が体内で破裂したな」

エボルトが、そんな軽い口調で言ってのける。

その言葉に、龍我は息を呑む。

「あ・・か・・・りゅ・・・が・・・・」

クリスが、呼吸もまともに出来ない状態で、龍我の方を見る。

こちらを、ただ震える視線で見てくる龍我をみやり、クリスは、小さく微笑む。

「・・・立ち上がって・・・アタシは・・・そんな龍我が・・・大好きだから・・・・」

それを最後に、クリスは目を閉じ、事切れたかのように力尽きる。

それと同時に、クリスからイチイバルが解除される。

「クリスちゃん!」

「雪音ぇ!!」

思わず響と翼が叫ぶ。

「・・・」

クリスが力尽きた事に、由衣は言葉を失う。

「万丈ォ」

エボルトが、尋ねる。

「オマエは、自分が好きだと言ってくれた女一人守れない程弱かったかァ?」

エボルトは、続ける。

「人間は、こんなに弱かったのかァ?」

その言葉に、龍我は―――。

 

「―――ふざけんな」

 

その拳を握りしめて、答える。

「由衣も、クリスも、俺が救う・・・もう、悲しませないッ・・・!!」

その胸を握りしめて、その胸から溢れ出そうな想いを、拳に込めて。

「うぉぉぉおおぉおぉおおお!!」

 

彼女の想いに、答える為に――――龍我は、立ち上がる。

 

シーディングキャップを開け、ビルドアップスターターCZEを押す。

 

MACHOFEVER!!』

 

そして、起動した『マッスルギャラクシーフルボトル』をビルドドライバーに装填する。

 

マッスルギャラクシー!!』

 

壮大な待機音声が流れ出し、すかさず龍我がボルテックレバーを回し、ビルダーを展開する。

 

ブルアッ!』『チャオ!』『ブルアッ!』『チャオ!』

 

それを見たエボルトは、待っていたと言わんばかりにその体を粒子へと変え、龍我が展開したビルダーに新たなビルダーを自ら形成する。

 

『Are You Ready?』

 

そして尋ねられる、その言葉。

それは、龍我に掛けられた、覚悟の確認。

お前に彼女を救う事は出来るのかと。

 

お前に、彼女の想いを答える覚悟はあるのか、と。

 

その問いかけに、龍我は、覚悟の言葉をもって、叫ぶ。

 

 

「変身ッ!!」

 

 

それを、了承と取ったのか、ビルダーが龍我を挟み込む。

 

 

銀河無敵の筋肉ヤロォッ!!』

 

クローズエボルッ!!!』

 

パネェーイッ!!マジパネェーイッ!!!』

 

 

 

そこに現れたのは、青と白の装甲を纏った、一人の戦士。

 

 

 

「あれが・・・」

「仮面ライダー・・・クローズエボル・・・!」

 

 

龍我とエボルトが合体する事で誕生した、最強の戦士『仮面ライダークローズエボル』

 

 

その戦士が今、ここに誕生した。

クローズは、クリスに歩み寄ると、その額をそっと撫でる。

まるで、静かに眠っている。

「・・・・由衣」

そんなクリスを見ながら、クローズは由衣に頼む。

「クリスを頼んだ」

立ち上がったクローズは、キルバスの方へ歩き出す。

「コイツはァ良いィ!最高のエネルギーになりそうだァ!!」

キルバスが走り出す。

「・・・テメェは許さねえ」

クローズが、静かにそう呟き、突っ込んでくるキルバスと激突した――――




次回!『愛和創造シンフォギア・ビルド』は!?

激突するクローズエボルとキルバス。

「ならば、こっちも本気を出すまで!」

激しい戦いを繰り広げる両者。だがキルバスの方がまだ上で―――

「―――『愛と平和』を胸に生きる俺は―――誰にも負ける気がしねェ!!」

その戦いの行方は―――

次回最終回『雪の音のヴィクトリークローズ』


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。