了「私よ♪」
戦「なんて事してくれてんすか・・・」
了「いいじゃない。どうせ本編でいっぱい活躍するんだから」
万「おいこら今回は俺の活躍回だろ!?なのになんで俺の名前が出てこねえんだよ!?」
戦「うるっさいよこっちはそんなに暇じゃないんだからさ。えーっと、本当の台本は・・・」
了「ああ、それならさっき翼ちゃんがシュレッダーのようにみじん切りにしてたわよ」
戦「なんだと!?」
万「なんか変な事書いてたんじゃねえの?」
戦「いやアイツが恥ずかしがるようなこと書いた覚えはないんだが・・・」
了「まあそれはともかく、はい、響ちゃん」
響「あ、はい!ではどうなる第五話!」
ちなみに翼が台本をみじん切りにした理由。
翼「いや、少しコーヒーを零してしまってな・・・」
証・拠・隠・滅!
仮面ライダークローズ。
その出現が確認されたと同時に、戦兎は弦十郎に言う。
「風鳴!俺は出るぞ!」
「分かった。翼も行ってくれ!」
「・・・分かりました」
翼は、モニターに映る新たなガングニール奏者を見る、というよりは睨みつけており、返事を返すと同時に走り出す。
「あそこまでは距離がある。バイクで行くぞ」
「分かった!」
二課から出て、二人は翼がバイクを置いている場所に行く。
「後ろに乗れ」
「いや、その必要はない」
「はあ・・・?」
翼が戦兎の返事に首を傾げていると、戦兎はライオンフルボトルを取り出すなり、それをビルドフォンのスロットに差す。
「見よ!俺の発・明・品!」
『Build Change!』
そしてビルドフォンを投げれば、一瞬にしてバイクへと変化する。
「・・・・」
それを見て、翼は唖然とするしかなかった。
(いや・・・いくらなんでも質量保存の法則を超えてるだろ・・・)
「よし!行くぞ!」
「あ、ああ・・・」
そうして二人はバイクを駆り、すぐさまノイズが出現した現場に向かった。
そして、まさにその現場では、新たな仮面ライダー『クローズ』が爆誕していた。
「龍我さん・・・その姿は・・・」
その姿に、響は驚きを隠せない。
そんな響に、万丈は―――クローズは高らかに名乗る。
「仮面ライダー。仮面ライダークローズだ」
「仮面・・・ライダー・・・」
「かっこいい!」
女の子が、クローズを見て、そう呟く。
「へへっ、そうだろ?」
その女の子の純粋な言葉に嬉しさがこみ上げつつ、クローズはノイズたちと対峙する。
「響、そいつを頼むぜ」
「わ、分かりました―――」
その時、響は、口から自然と、歌を歌っていた。
「―――絶対に離さない、この繋いだ手は」
すると、どういう訳か響の体から力が湧き上がってくる。
―――そうだ。なんか良くわからないけど、確かなのは、私がこの子を助けなきゃいけない事だよね・・・
それだけが、響の中の唯一の確信。
「行くぜぇ!」
クローズがノイズの集団に突っ込む。
(龍我さん!?)
その行為に、響は目をむく。何故触れば炭素の塊と化してしまう危険性のあるノイズに自ら突っ込むのか理解できないからだ。
だが、そんな心配は杞憂であり、
「オラァ!」
クローズの拳がノイズの一体にめり込んだ瞬間、蒼炎が迸り、ノイズだけが炭素の塊となって消えた。
(倒した・・・!?)
「はっ!なんだこの程度か?だったら負ける気がしねぇ!」
クローズが次々とノイズを蹴散らしていく。
(すごい・・・)
しかし、だからと言って響たちの方にノイズが来ない訳ではない。
「―――ッ!」
女の子を抱き抱え、響はノイズから後ずさる。
「オラァ!」
「龍我さん!」
「逃げろ!」
そこへクローズが割り込んでノイズを蹴散らす。
その格闘能力は、素人の響から見てもすさまじく、洗練されていた。
何か格闘技をやっていなければ出来ない動きだ。
そして響は、クローズの言葉に従い、上った高台の上から踊り出る。
「う―――わぁあぁああ!?」
だが、想像以上に高く飛んだらしく、慌てる響。
身体能力が、想像を超えて強化されている。
その事実が、響をますます混乱させる。
(なんか変な格好になっちゃうし、龍我さんはなんか変なのに変身しちゃうし、訳分かんないよぉ!)
そのまま一気に落下していくが、
(でも!)
すぐさま切り替えて態勢を立て直し、両足で地面に着地する。
コンクリートの地面を踏み砕き、響は己の身体能力が大幅に強化されている事を改めて実感する。
それでもなお、響は歌を紡ぐ。
見上げれば、先ほどまで響達がいた高台から大量のノイズが落ちてくる。
それをタイミングを見て横に飛び、地面を跳ねながらも躱す。
「お前らの相手は俺だろうが!」
『BEAT CROSS-ZER!』
ドライバーからクローズ専用武器である『ビートクローザー』を取り出し、クローズはノイズの集団に向かって振り下ろす。
着地と同時に剣の射線上にいたノイズは一刀両断され、地面を踏み砕いて着地したクローズはビートクローザーの柄部分のレバーを引っ張る。
『ヒッパレー!』
そしてすぐさまグリップ部分のトリガーを引く。
『スマッシュヒット!』
「ウオリャァァァアア!!」
一気に薙ぎ払い、クローズの周囲にいたノイズが全て消滅する。
「すごい・・・!」
その威力に、響は感嘆する。
だが、そこへひときわ大きな足音が聞こえる。
「でかっ!?」
巨大な強襲型ノイズだ。
そのノイズが、クローズ―――ではなく響の方へ拳を振り下ろしてくる。
「え!?うわわわわわ!?」
響は、その拳から逃れる度に後ろに飛ぶ。
だが、また飛び過ぎる。
「うわぁぁああ!?」
その飛び具合に慣れず、そのまま建物に激突。落ちそうになるところを建物の壁に設置されていたパイプを掴む事で落ちるのを防ぐ。
「危なかったぁ・・・!?」
だが、安心するそんな響の元へ、もう一体の強襲型ノイズが襲い掛かる。
「くっ!」
やっと慣れてきた身体能力で、その拳を躱し、響はどうにか着地する。
しかしまだまだノイズは響と少女を狙って襲い掛かってくる。
そのうち、一匹のカエル型ノイズが、響に襲い掛かる。
「―――ッ!」
だが、それでも響の口からは自然と歌が流れ出て、しつこいノイズにほんのちょっと怒りを込めて、拳を握って―――
そのノイズをぶん殴った。
するとどうだ。響に殴られたノイズは、響に殴られた所から一気に炭化し、消滅する。
(え?私がやっつけたの?)
「テメェら・・・」
ふと、クローズの何やら怒りに震えた声が聞こえたかと思うと。
「お前らの相手は俺だろうがァ!!」
ボルテックレバーを思いっきり回し、クローズは、己の必殺技を発動する。
『Ready Go!』
するとどこからともなく『クローズドラゴン・ブレイズ』という名の龍が現れる。
それが、飛び上がったクローズの動きをブーストするかのように炎を吐き出し、その炎に乗ったクローズは、目の前の巨大ノイズに向かって、ボレーキックを放つ。
『ドラゴニックフィニッシュ!』
その一撃は、まるで竜の爪の如く。一体のみならず、その後ろの二体目すらも穿って殲滅する。
その威力の凄まじさに、響は唖然とするほかなかった。
「すごぉい・・・ん?」
ふと後ろから何かのエンジンが聞こえてきた。
『Are You Ready?』
「変身!」
「――――Imyuteus amenohabakiri tron――」
『レスキュー剣山!ファイヤーヘッジホッグ!イェイ・・・!』
光が迸り、変な叫び声が聞こえたかと思えば、迫ってきたバイクから何かが躍り出る。
「ん?誰だ?」
響の側に降り立った二つの影。
「あ・・・!?」
一人は、風鳴翼。日本が誇るトップアーティストにして歌手。その翼が、今、自分と似たような青い装束を身に纏ってそこに立っていた。
そしてもう一人は、クローズと同じ、全身を装甲に身を包んだ男。
ただ違うとすれば、その装甲は赤と白の二つだという事。
ふと、翼の方から声を掛けられる。
「呆けない、死ぬわよ」
「え?」
「貴方はここでその子を守ってなさい」
駆け出す翼。
「やれやれ、もう少し丸まった言い方は出来ねえのかアイツは・・・」
一方の赤と白の装甲の男はそう呟く。
「あ、あの・・・」
そんな男に、響はおずおずと声を掛けようとする。
そんな響に男は気付き、快く名乗る。
「ビルド」
「え?」
「仮面ライダービルドだ。よろしくな」
「あ、はい。よろしくお願いします・・・」
そこでクローズの怒鳴り声が聞こえる。
「お前!?生きてたんなら言えよ!?」
「うるっさいな。こっちもこっちで大変だったんだからしょうがないでしょうが」
ノイズが襲い掛かってくるも、男―――ビルドの左腕に取り付けられたウインチ型武装『マルチデリュージガン』から放出された高圧の水を喰らい一気に吹き飛ぶ。
吹き飛んだ所でビルドは右手のグローブの棘を伸ばし、その棘でノイズを一気に串刺しにしていく。
「龍我さんの知り合い・・・?」
何やらクローズを知っている風のビルドの言動に響は首を傾げる。
「まあそんな所だ!」
そこへノイズを殴りつつクローズが戻ってくる。
「あいつは味方だから安心しろ!」
「分かりました!龍我さんがそういうなら・・・」
そう話している間にも、翼とビルドは瞬く間にノイズを殲滅していく。
ウインチから放たれるのは水だけではなく、炎も噴出し、ノイズを一気に焼き尽くしていく。
一方の翼は刀を変形させて大剣とし、それを用いて『蒼ノ一閃』で巨大な強襲型ノイズを叩き切り、続く小型ノイズの集団は『千ノ落涙』による殲滅攻撃で一気に片付けていく。
「俺も負けてらんねぇ!」
さらにクローズすらも飛び出し、ビートクローザーによる斬撃だけでなく、徒手格闘による炎を纏った一撃一撃でノイズを打ち倒していく。
「すごぉい・・・ビルドさんも龍我さんも凄いけど・・・やっぱり翼さんは・・・」
「あ・・・!」
降ろした女の子で、響は後ろを見る。
そこには、まだいたのか強襲型ノイズが今、響たちに襲い掛かろうとしていた。
だが―――突如として天から巨大な剣が落下し、それが強襲型ノイズを貫く。
『天ノ逆鱗』
その巨大な剣の上に、翼が一人、佇んでいた。
その様子を、響は呆然と見上げ、そんな彼女を、翼は見定めるように見下ろしていた。
「終わったな」
そこへビルドがやってくる。
「怪我はないか?」
「え?あ、はい。大丈夫です」
「お前も、どこか痛い所はないか?」
「ううん、だいじょうぶ。おねえちゃんがまもってくれたから」
「そっか、良かったな」
そう言ってビルドは女の子の頭を撫でる。
立ち上がるビルド。そこへ、クローズがビルドに詰め寄る。
「せぇ~ん~とぉ~」
「うお!?なんだよ!?」
「なんだよじゃねえよ!お前いままでどこにいたんだよ!?こちとら一週間飲まず食わずで危うく死にかけたんだぞ!?」
「知らないよそんな事!?ていうかどうやったら死にかけるんだよ!?お前力あるんだからバイトすりゃあ良かっただろ!?」
「バイト・・・あ!」
「何、その手があったか!みたいな顔してんだ!?いつにも増して馬鹿の度合いがあがってんじゃないのか!?」
「馬鹿って言うな!せめて筋肉付けろ筋肉を!」
何やら言い争っているビルドとクローズ。
その中で、響は気になる言葉を聞いた。
「せんと・・・?」
どこかで聞いたことのある名前だ。
聞き間違いか、などと思っていると、
「まあいい。話はあとで聞くから、今は大人しくしていろ」
そう言って、ビルドはクローズのものと同じビルドドライバーから二つのボトルを抜き取る。
そして装甲が粒子となって消え、その中から現れたのは―――
「え・・・えぇぇええぇぇええ!?」
「ん?」
「戦兎先生ぃ!?」
―――リディアン物理教師の桐生戦兎だった。
その後、自衛隊が駆け付けてバリケードを設置したり炭化したノイズを回収したりと
その最中で、戦兎は改めて万丈と対峙していた。
「んで?お前いつからここに来てたんだよ?」
「それはこっちのセリフだ・・・なあ、ここは本当に新世界なのか?」
「ああ、氷室首相や幻さんの名前や、かずみんが経営してると思われる農場に、『nascita』もネット上のマップに出てた。ついでに難波重工の名前もあった。ただ違うのは、この世界にはスカイウォールがない事と、ノイズという世界共通の災厄、そして、シンフォギアっていう対抗手段があるだけだ」
「マジか・・・」
それを聞いて項垂れる万丈。だが、ふと思い出して、万丈は戦兎に尋ねる。
「エボルトはいないんだよな?」
「ああ、いないよ。そして俺たちが戦ってた事も、スカイウォールがあった事も、誰も覚えていない。もちろん俺たちの事もな」
「マジか・・・」
「ついでに言うとお前、この世界じゃ結構名の通った格闘家だぞ?まあ世界に名を馳せるようじゃないけどな」
「マジかよ!?」
「黒髪だけど」
「黒髪!?俺は茶髪だ!」
「こっちの万丈はだよ!」
馬鹿さ加減は相変わらずである。
「ていうか万丈、これは一体どういう事だよ?」
「ん?ああ、それは俺にも分からん」
戦兎が指摘しているのは、クローズドラゴンの事だ。
「どうやったらこんな普通の動物みたいになるんだよ!?」
「知るか作ったのはお前だろ!?」
そこには万丈を側を暇そうに飛び回っているクローズドラゴンの姿があった。しかもご丁寧にあくびまでかましている。
明らかに機械の範疇を超えた行動だ。まるで本物の動物だ。
「俺こんな機能付けたか?なんでこんなどこにでもいる動物っぽい動きをするようになったんだ・・・新世界を作った影響で、何か問題でも・・・」
「キュル!?キュルッキュイーン!」
「ああこら暴れんな!?ていうかなんで暴れるんだこいつ!?」
危うく分解されそうになった所をまるで嫌がるように暴れるクローズドラゴン。
「戦兎さん」
「ん?ああ緒川か」
「キュルイ!」
そこへ、一人の好青年がやってくる。
二課のエージェントである緒川慎次である。
その緒川が割り込んできた事で出来た戦兎の隙をついてクローズドラゴンは脱出、すぐさま響の元へ飛んで行った。
「誰だこいつ?」
「ああ、この人は・・・」
向こうで響の可愛らしい悲鳴が聞こえたが気にしない。
「緒川慎次。戦兎さんのサポートをしている『特異災害対策機動部二課』の者です」
「そのとくいなんちゃらがなんなのかは知らねえが、まあいい奴って事はなんとなくわかったわ」
「ありがとうございます・・・しかし、まさか格闘家の万丈龍我さんが戦兎さんのお仲間だとは思いもよりませんでした」
この世界では、万丈龍我はそれなりに名の通った格闘家だ。
そして、その万丈とこの万丈は同一人物。
おそらく、エボルトの遺伝子を持っているがゆえに、戦兎と同じく『存在してはいけない人間』としてこの世界に生き残ってしまったのだろう。
よって、この世界には、二人の万丈が存在している事になる。
「しかし、髪を染めたんですか?」
「え?あー、それは・・・」
「緒川、こいつは別人だ。名前は同じだけど別人だ」
「そうなのですか・・・」
戦兎が万丈の事について誤魔化そうとするが、何故か緒川はそれほど驚いた様子ではなく、
「
「「―――!?」」
話を、聞かれていた。
その事実が、思わず万丈を身構えさせるが、そんな万丈の肩を戦兎が掴む。
「落ち着け」
「でもよ・・・」
「俺がなんとかする」
戦兎は、どうにか万丈を留まらせ、緒川に近付く。そして、緒川のすぐ傍で立ち止まると、緒川に一つ、耳打ちした。
「頼む。その事は二課には内緒にしておいてくれ。余計な混乱は招きたくない」
「新世界・・・その言葉が何を意味をするのか分かりませんが、貴方がたが悪い人間ではない事は分かっています。幸い、この事を聞いているのは僕だけです。ですが、隠し事は関心しませんね」
「ああ、分かっている。だけど黙っていてくれ。いつか、必ず話すから」
「・・・ええ、いつか、必ずですよ」
緒川は、そう言い残して戦兎たちから離れていく。
「・・・なんとかなったのか?」
「ああ。・・・万丈」
戦兎は、万丈に新世界の事は黙っておくようにと伝える。
「まあお前の判断なら」
「頼んだぞ」
「おう」
「桐生」
ふと、そこへ翼がやってくる。
「そこにいるのが、お前の仲間なのか?」
「ああ。万丈龍我。馬鹿だけど、頼りになるぜ」
「馬鹿っていうな。筋肉をつけろ筋肉を」
いつもの論点がずれた言い合いに、それを知らない翼はそこじゃないだろうと呆れる。
「まあいい。とりあえず来てくれ」
翼に言われて、戦兎と万丈は翼についていく。
向かう先、そこには、未だ変身したままの響がいた。
そんな響が、ココアを飲んで温まっていると、突然、その変身が解除される。
どうやら気を抜くと解けるようだ。
だが、それに驚いた響は態勢を崩し、ココアを落としてしまう。
そのまま制服姿に戻って、後ろに倒れようとした時、翼が響を抱える。
「あ、ありがとうございま・・・・」
慌てて振り返って、お礼をいようとして顔を上げると、おそらく翼だった事に気が付いて改めて頭を下げる。
「ありがとうございます!」
しかし翼は一度彼女に背を向けて距離を取ろうとする。
「あ、あの!」
だが、そんな翼に、響は声をかけて。
「翼さんに助けられたのは、これで二回目なんです!」
「二回目?」
その言葉に、翼は立ち止まる。
「にひひ」
一方の響は片手をピースサインにして嬉しそうに笑っていた。
「二回目・・・?」
「どういうこった?」
「キュル?」
一方、訳の分からない二人は首を傾げるばかり。
「ママ!」
だが、そこで、あの女の子の声が聞こえ、見てみると、そこには母親に抱かれる女の子の姿があった。
どうやら、無事に会えたようだ。
その様子に、戦兎はいつものようにくしゃっと笑い、万丈も思わず笑みを浮かべる。もちろん、響も同じだった。
だが、その傍にいたスーツの女性―――戦兎にとっては一度見た顔だが―――が、機密事項に関する書類を差し出していた。
その様子に、万丈は唖然としつつ、響は翼に帰るという事を伝える。
「じゃあ私もそろそろ・・・・」
―――が、目の前にはスーツの集団が横一列に並んでおり、翼はその後ろに控えていた。
完全に取り囲まれている。
「貴方がたをこのまま帰す訳にはいきません」
「悪いな、万丈」
「え?どういう事だよ?」
戦兎が万丈から離れる。
「ええ!?なんでですか!?」
「特異災害対策機動部二課まで、同行していただきます」
そして、問答無用でかなり頑丈な手錠を掛けられる響と万丈。
「え・・・あ、あの・・・・」
「キュイーン!?」
「おい!?なんだよこれ!?」
「すみませんね。貴方がたの身柄を拘束させてもらいます」
その傍らにはいつの間にか緒川が立っており、戦兎は片手で謝罪のジェスチャーをしていた。
「安心しろ。俺もやられたから」
「はあ!?」
「なぁぁぁんでぇぇぇえぇえええ!?」
そして問答無用で車に乗せられ、連れていかれた。
そうして着いたのは、お馴染みのリディアンだった。
「どうしてリディアンに・・・?」
響はどこに連れていかれるのか心配で、一番話しかけられそうだった戦兎に声を掛けられる。
「まあ付いてくれば分かる」
「そんなぁ・・・」
「おい戦兎、一体どういう事なんだよ?」
「だから大人しくついてきなさいって。それぐらい出来るだろ」
そうしてリディアンの中央棟の中にあるエレベーターに乗って―――
「どぉぉぉぉぁぁぁぁあぁああぁぁぁああああ!?」
「ぎゃぁぁあああぁあぁああぁぁぁあああぁあ!?」
エレベーター(という名の絶叫マシン)に乗せられて―――
「ようこそ!人類守護の砦!特異災害対策機動部二課へ!」
そして『熱烈歓迎!立花響様・万丈龍我様』という横断幕と共に、歓迎会が開かれたのだった。
「で、どういう事なんだよ戦兎?」
戦兎の自室にて(自室にしてはかなり広い)万丈は戦兎に尋ねていた。
「言ったろ。俺は今は学校の先生なの。そんでもってここ特異災害対策機動部二課、略して
カイゾクハッシャーを修理しながら、戦兎は万丈の質問に答える。
「なんか知らねえが戸籍まで作ってもらってよ。この、とっきぶつ?だっけか?一体どう言った組織なんだよ?」
「簡単に言えば、ノイズっていう化け物から人々を守るための正義の組織って所」
「へえ・・・んで、お前は一週間ここで働いていたと・・・」
「そうだが」
「俺に内緒で・・・上手いもんも毎日食ってたんだろォなぁ・・・」
「ああ・・・ん?万丈?」
「テメェ一人だけずりぃぞゴラァ!」
「うぉぉ!?ちょ、まて!今はんだ使ってるから掴み掛かんな!火傷するから!」
「知るかぁ!こっちは今の今までホームレス生活だったんだぞぉ!」
「それは悪かったって!あ、やめろ、ドラゴンフルボトル使って殴るのはやめろ!頼むからアーッ!」
―――やけに部屋の中が騒がしい。
翼は、戦兎の部屋の前に立っていた。
(桐生は、仲間は死んだといっていた・・・おそらく、万丈は生き残った方の仲間・・・だけど・・・)
あの時、万丈の姿を見た時の戦兎は、震えていた。
まるで、死んだ人間の幽霊に出会ったかのような反応だった。
死んだ筈の相棒が、目の前にいるかのような反応だった。
(私とは・・・違う・・・)
自分は奏を失ったのに。何故、彼の相棒は生きているのか。
それが、どうしても納得がいかない。
一体、何を隠しているというのか。
(お前は何を隠しているんだ・・・桐生・・・)
一人という寂しさが、今更ながらに込み上げてくる。
そして、もう一つ―――
(あれは・・・あのシンフォギアは・・・奏の・・・)
立花響が纏っていたシンフォギア。
あれは、間違いなく、天羽奏の使っていた『ガングニール』だ。
ガングニール。またの名をグングニル。
北欧神話における主神『オーディン』が使っていたとされる聖遺物。
絶対貫通にして必中。投げれば必ず当たるという伝説を持つ、神の槍。
そして―――死んだ奏が使っていたものだ。
それを、あんな、戦いを知らない人間の手に渡っている。
(あれは・・・奏のガングニールだ・・・!)
大切な友にして片翼を失った後悔と戦いへの執着。
だからこそ、納得できない。
だからこそ、理解してしまう。
(私は・・・一人だ・・・)
次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!
二課に招かれ、シンフォギアの説明を受ける響と万丈。
「なるほど。わからん」
「私も分かりません」
明かされる響のシンフォギアの正体。
「奏ちゃんの置き土産ね」
響が抱く決意。
「私の力で、誰かを守れるんですよね?」
葛藤する翼。
「ああいうタイプはどんだけ言っても止まらねえと思うからな」
そして出現するノイズ。その戦いの最中で―――
次回『ミスマッチな二人』
「貴方と私、戦いましょうか」
「え?」