緒「お気に入りのモンスターはジャンク・ウォーリアーのようです。なんでもスクラップ・フィストという必殺技の名前が気に入ったようで」
藤「いやいや少し待ってください。それよりもあらすじ紹介しましょうよ!」
友「天才物理学者である桐生戦兎を含めた仮面ライダーたちは、スカイウォールの惨劇を引き起こしたエボルトと戦い、そして二つの世界を融合させることで新世界を創造したのでした」
藤「友里さんは流れるように説明したなぁ・・・」
緒「その世界で、シンフォギア装者たちと出会い、二課の一員となり、ルナアタック、フロンティア事変、キルバス事件を乗り越え、そして彼らは新たな敵と対峙することになります」
弦「その名も、錬金術師!」
藤「歌、科学、錬金術、三つの技術が交錯する時、物語は動き出す!」
友「そういうわけで、シンフォギア・ビルドGX第四話をどうぞ」
「させないデスよ!」
その声が聞こえてきたのは、龍我の真上からだった。
見上げてみれば、そこにはどういうわけかどこかの横断幕を体に巻いてマントの如く纏っている切歌の姿があった。
「切歌!?なんでそんなもん巻いてんだ!?」
「ずこっ・・・そ、そんな事はどうでもいいんデスよ!」
龍我の言葉に言い返しつつ、切歌はその横断幕を脱ぎ捨てると、その胸からペンダントを取り出す。
言わずもがな、彼女のシンフォギア『イガリマ』のペンダントだ。
「まさか・・・!?」
その行為に、龍我は切歌が何をしようとしているのか悟る。
「―――
その身に漆黒ではなく純白となった緑のギアを纏い、その手に鎌を持つ切歌。
歌と共に纏われるその力。それはまさしく、切歌のシンフォギア『イガリマ』の起動を意味していた。
「―――危険信号点滅 地獄極楽どっちがイイDeath?」
ギアを纏い、超人並みの身体能力を手に入れた切歌は、ノイズを殲滅すべく、その手の鎌の刃を複製、それを鎌の振りの勢いによって投擲する。
『切・呪りeッTぉ』
放たれる刃は瞬く間にノイズどもを斬り裂いていく。
しかし―――
「――――ッ!?」
LiNKERを使わないでのギアの装着は、やはり第二種適合者にとっては相当な負荷となるようだ。
実際、切歌の体を、果てしない激痛が走っている。
「あのバカ・・・!」
龍我は思わず加勢に入ろうとする。しかし、
「貴様はここで死ね!」
先ほどのローブの男が再び遅しかかる。
「しまっ―――」
次の瞬間、男の突き立てた爪が、何か、固いものに直撃する。
「ッ!?」
それに思わず目を見開く男。
爪を突き立てたのは、何者かの胸部装甲。
その何者かの正体を見るために顔を上げた先にあったのは―――青い複眼と鰐に食われるが如き意匠の仮面―――
「幻さん!」
どういうわけか龍我の元に、政府長官、氷室幻徳こと仮面ライダーローグがそこに立っていた。
「なん・・・」
「ふんっ!」
「ぬぐあ!?」
ローグに殴り飛ばされる男。
「雪音クリスの安全を確保しろ。離脱は装者に任せる」
「お、おう!」
ローグの言葉に龍我はうなずき、すぐさまクリスの元へ走る龍我。
一方の切歌は、肩のブースターを蒸かして高速回転、ノイズを一気に薙ぎ払っていく。
『災輪・TぃN渦ぁBェル』
さらにローグはノイズを近づけさせないようにネビュラスチームガンを使って遠中距離からノイズを片付けていた。
「派手にやってくれる」
その様子にレイアはそう呟く。
「クリス!それとエルフナインつったっけ?大丈夫か!?」
一方龍我がクリスとエルフナインの元へ駆け寄る。
「あ、はい・・・」
どこか力なく答えるエルフナイン。
「龍我さん、これを!」
その最中で切歌が龍我に先ほどの横断幕を渡す。
「すまねえ!」
それをクリスの体にくるむ。
これで人目に彼女の裸体がさらされる事はない。だが、その間に他のノイズが彼らに迫ろうとしていた。
「ッ!?」
思わず龍我が応戦しようとしたところで、どこからか丸鋸が飛んできてそのノイズたちを鏖殺。
その丸鋸を扱うのは、龍我の知る中でもただ一人。
「調!」
調がフィギュアスケーターの如き動きで、その黒から白へと変わったギアを操り、頭部のヘッドギアから大量の丸鋸を射出する。
『α式 百輪廻』
放たれる丸鋸は瞬く間にノイズを殲滅していく。
「女神・・・ザババ・・・」
エルフナインが、そう呟き、倒れかける。
そこへ調が掛けてくる。
「龍我さん!私の後ろに!」
「え!?」
「クリスさんは切ちゃんが!」
「おう分かった!」
切り替えの速さは流石か。
「派手な立ち回りは陽動・・・?」
その最中で切歌がクリスを回収。
「陽動にまた陽動・・・」
レイアが傍観している中で、調は包囲網を突破すべく禁月輪を発動。その巨大な車輪の刃で一気にノイズを切り倒していく。
だが、突如として調の体に激痛が走る。
「うぐっ!?」
「調!?」
そのせいで禁月輪が解除される。
「やっぱLiNKERがねえと上手くギア扱えねえんだろ!?」
「くぅ・・・」
龍我の言葉に、調は何も言い返す事が出来ない。
実際、まだS.O.N.Gが二課だったころに激突した頃の出力を調たちは出せていない。
「ぼさっとするな!」
「うおあ!?」
そこへローグがノイズを蹴散らしながら走ってきて、調の後ろにいた龍我を担ぐと二人を追い越してライダーの走力を使って走る。
「調!」
「分かってる」
また、街路灯の上を飛ぶ切歌にそう答え、調は足のギアを使って滑るように走り出す。
そうして、彼らはレイアから逃げる。
「・・・予定にない闖入者。指示をください」
それを見て、レイアは自らの主人に指示を請う。
『追跡の必要はない。帰投を命ずる』
自らのマスターがそう告げる故に、レイアはそれに従う。
「さて・・・無様だな」
そう、レイアはローグに吹き飛ばされた男を見る。
「だが戦力は測れた」
その言葉に男は意に介さずそう答える。
「次は逃がさん。確実に殺してくれる」
先ほどとは打って変わって冷静な声音。どうやら、レイアの侮辱の言葉は効いていないようだ。
「ならいい。奴ら仮面ライダーは、我々の計画の障害となりかねないからな。最も、そちらは勝手に協力しているといった方が正しいが」
「承知している。だがこれは我らの悲願。世界を破滅させることこそが我らが御方の望み・・・」
その手に、あの小瓶を取り出し地面に投げ砕く。
「機会があればまた会おう」
そうして、男はその場から消え、また、レイアも同じような小瓶を足元で投げ砕き、その場から消えた――――
「勝!」
視線の先で、キャッスルハザードスマッシュがノイズの攻撃を正面から受ける。
その身に備えられた盾『グランドランパート』を構え、それによってノイズの一撃を諸に受けてしまう。
スマッシュとは、人間がネビュラガスを体内に注入され、特殊な細胞分裂を人為的に引き起こされる事によって生み出される怪物。
即ち、スマッシュである彼らは『生身』だから、攻撃を諸に受ければ、その体は『分解』され、消滅してしまう――――
「・・・・・あれ?」
―――ことはなかった。
「・・・・は?」
キャッスルの盾は、確かにノイズの一撃を受けた。
しかし、ノイズの手、白い棘のような何かは、キャッスルの盾を分解する事なく、ただかんかんと叩いているだけだった。
「あ、アカチャン?大丈夫・・・」
と、オウルがキャッスルの安否を確認しようとした直前―――
背後からノイズに叩かれてしまう。
「あだ!?」
だが、
「・・・・あれ?」
分解しない。むしろ無傷。消滅なんてもっての他だった。
「ああ?どういうことぬぐあ!?」
そして最後のスタッグ。ノイズからの回転タックルを喰らい、地面に倒れ伏す。
しかし、やはりその体は分解されなかった。
「どういう事だ・・・うおっと!?」
一海が茫然とし、しかし横から襲い掛かってきていたノイズの攻撃をどうにか躱す。
しかし、これで一つ分かった事がある。
三羽ガラスの彼らに、ノイズの分解は通用しない。
「「「・・・・」」」
それを理解した彼らは、しばしその場で顔を見合わせ棒立ちになったかと思えば・・・
「ひゃっはぁぁぁああ!!!」
「攻撃が効かないと分かれば怖いもんなんてねえぜぇぇええ!!」
「オラオラ全員斬り裂いてやるよぉぉぉお!!!」
目が一瞬、キラーン☆と光ったかと思えばあとは獲物を見つけた猛獣の如く、ノイズを蹂躙し始めた。
まさしく祭り、狂戦士である。
「あいつら・・・」
その様子に、一海はから笑いするしかなかった。
そして、それは同じ場所でも―――
「・・・ん?」
ノイズの攻撃が腕に直撃したビルド。しかし、分解されるかに思われた自分の装甲は―――分解されなかった。
「・・・・は?」
そんな声を出したのは意外な、いや、予想通り、あの女の方だった。
「・・・あれ?分解されないんだけど・・・」
そして、それはなぜかタスクも同じだった。
胸にノイズの攻撃が掠めた筈なのに、分解は起きていなかった。
「ど、どういう事・・・!?」
その様子にあからさまに女が動揺する。
そんな中でビルドは自分の手を見る。
(ハザードトリガーを使っているからか?いや、それならなんで慧介の変身は解除されない?スクラッシュドライバーだからか・・・いや、それだと一海の変身が解除された理由の説明がつかない・・・一体何が原因なんだ?)
視界の先では、いくらノイズの攻撃を受けても変身が解除されないタスクの姿があった。
「あー、戦兎先生」
「ん?なんだ?」
「とりあえず、こいつらの攻撃で変身は解除されないって事は証明されたので・・・やっちゃっていいですかね?」
タスクがそう尋ねてくる。
それにビルドは、仕方なくうなずく。
「ああ、いいぞ」
次の瞬間、
「うおっしゃぁあぁぁああ!!テメエら全員ボッコボコにしてやるぜぇぇええ!!」
何かストレスが溜まってたのだろうか。何かが爆発したタスクが一気にノイズの蹂躙を始める。
「やれやれ・・・さて、どうする?形勢は逆転したぜ?」
ビルドは不敵に女に尋ねる。
「く・・・」
「さあ、大人しくお縄につけ!」
ビルドが飛ぶ。ほぼ瞬きするほどの時間しかない中で、ビルドが女との距離を詰め、その体に拳を叩きつけようとする。
「フラガラッハ!」
しかし、そこへフラガラッハが飛来。ビルドを死角から刺し貫こうと襲い掛かる―――だが、
「遅い!」
「ッ!?」
一瞬にしてビルドが女の背後に移動。スピードに特化した形態が故の特性だ。
「しまっ―――」
「オラァ!」
フラガラッハは空振り、その代償として女は背中にビルドの拳を受け、吹き飛ぶ。
「くっ」
しかし、何故かそれほどのダメージになっていない。そのまま女性は吹き飛ばされる勢いで電柱の上に着地する。
「これは完全に想定外・・・すぐに報告しなければ・・・!」
懐から赤い小瓶を取り出し、それを足元で割る。
「ッ!?」
「今回はこれで引きますが、次会った時が、あなたの最後と知りなさい!」
女はそう捨て台詞を吐いて、その場から消える。
「これで、ラストォ!」
その直後に、タスクが最後の一体を片付け、ノイズの殲滅は終わった。
(なんだったんだ・・・あの女・・・)
そして、戦兎はこの一連の事件に、どうしようもない違和感を抱いていた。
日が昇る。
その光を受けながら、ローグたちは道路を走る。
その最中で、調がふと止まった。
それに、他の二人も止まる。
「どうした?」
ローグが調に尋ねる。
「に、逃げ切れたのか?」
それに口を挟むように、ローグに担がれている龍我が尋ねる。
「一応はな。このままS.O.N.Gが指定した合流地点にまで移動する。それまで我慢していろ」
「ああ、クロの奴がいてくれたら良かったのにな・・・」
龍我ががっくりしているのを他所に、切歌は調の傍に降りて、自らを苛む痛みに耐えながら、今回の事を実感していた。
「LiNKERがなくたって、あんな奴に負けるもんかデス!」
「切ちゃん・・・」
その言葉に、調はそう呟く。
「分かってるデス!」
しかしそれはただの意地っ張り。現実はそう、甘くはない。
「私たち、どこまで行けばいいのかな・・・?」
「・・・・行けるとこまで、デス」
「でもそれじゃあ、あのころと変わらないよ?」
思い出されるのは、F.I.Sの施設にいた頃の記憶。
「確かお前たちがいたところは、F.I.Sの擁護施設とは名ばかりの研究所だったな」
「そこは、壁も天井も真っ白な世界だった」
ギアのバックファイアからくる痛みに耐えながら、彼らは移動を続ける。
「そこで出会ったシンフォギアは、昨日までの嫌な事を、全部ぶっ飛ばしてくれる、特別な力だと思っていたデスよ・・・」
そうして繰り返される訓練の日々。
毎日が辛くとも、その日常に、シンやマリアにセレナ、そして慧介がいたからこそ、その辛い日々を乗り越えられてきた。
「聖遺物が引き起こした災厄から、人類を守るには、聖遺物の力で対抗するしかない・・・」
「そう考えるマムを、手伝いたいと思った訳デスが・・・」
出来たのは、ただ流されるままに戦う事だけ。
自分の意志で戦っていたのは、仮面ライダーだったシンと慧介だけ。
シンは、マリアを助ける為に自ら危険を承知で飛び込み、慧介は暴走を克服した時に、自らの意志で調を二課に預け、そして龍我と一騎打ちをした。
それに比べて、自分たちはどうだっただろうか。
「状況に流されるままに力を振るっても、何も変えられない現実だけを思い知らされた・・・」
「マムやマリアのやりたい事だけじゃない。アタシたちはアタシたちのやりたい事を見つけられなかったから、あんな風になってしまったデス」
そんな二人の懺悔にも似た話に、ローグと龍我は黙って聞いていた。
「目的もなく、行ける所まで行ったところに、望んだゴールがある保証なんてない。我武者羅なだけではダメなんだ・・・」
「っ!もしかして、アタシたちを出動させなかったのは、そういう事デスか?」
「・・・目的を」
そこで、ローグが口を挟む。
それに、二人は思わずローグの方を見る。
「・・・目的を見失えば、そこにあるのはただの虚空」
その言葉に、二人は自然と重みを感じていた。
「だが、一度吹っ切れる事が出来れば、必ず立ち上がる事ができる筈だ」
その言葉を、二人は黙って受け止め、
「う・・・ぐ・・・」
「あ!」
切歌の腕の中のクリスがうめき声をあげる。
「よかった・・・」
「おい、クリス、大丈夫か!?」
調が安堵し、龍我はローグに担がれたまま呼びかける。
「大丈夫デスか?」
「大丈夫なものかよ!」
切歌が呼びかけると、返ってきたのはまさかの怒声だった。
その表情は、まるで悔しそうに歪んでいた。
(守れなきゃいけない後輩に守られて、大丈夫な訳ないだろ!)
その様子に、龍我は心配そうにクリスを見ていた。
ロンドンにて。
「完全敗北・・・いえ、状況はもっと悪いかもしれません」
S.O.N.Gとの通信で、翼はそう答える。その翼の手には、ひび割れた天羽々斬のペンダント。
そして衣装は、先ほどの少女から貰った衣服を身に着けている。
「ギアの解除に伴って、身に着けた衣服が元に戻っていないのは、コンバーターの損壊による機能不全とみて、間違いないでしょう。その上、シンが使っていたウルフフルボトルの成分も、変身解除の際の回収機能が働かず、中身は消滅しています」
「まさか、翼のシンフォギアも・・・」
マリアの言葉に、翼は顔を逸らす。
「・・・絶刀・天羽々斬が、
「・・・」
マリアは、シンの方を見る。
そこには、こちらに背を向けて、一枚の紙を見つめるシンの姿があった。
それは、今はもう去った、あのエリザとかいう女狐(マリアの見解)から貰った紙だ。
『クリスちゃんのイチイバルと、翼ちゃんの天羽々斬の破損、龍我君のドラゴンスクラッシュゼリーと一海さんのロボットスクラッシュゼリー、戦兎君のライオンとコミック、シンさんのウルフの成分の消失・・・』
『戦兎がいるから、正直それほどの損害でもないと思うけど、また破壊されれば意味がない・・・』
その一方、S.O.N.G本部にて。
「響君の回収はどうなっている?」
源十郎がそう尋ねれば、
『もう平気です』
『んな訳ねーだろあほ』
『あだ』
別の無線から、響と一海の声が聞こえてくる。
『あはは・・・ごめんなさい。私がきちんとキャロルちゃんと話ができていれば・・・』
『話だぁ?お前殺されかけたのに何言ってやがる?』
『だって、キャロルちゃん、あの時・・・』
『戦場でその心構えは命取りだ・・・とまあ御託はともかく、その心意気だけはまあ認めてやる。だがな、襲い掛かられたならまず応じろ。じゃねえと、話どころじゃねえぞ』
『・・・はい』
「・・・話を」
一海と響の会話に耳を傾け、弦十郎は、そう呟くのだった。
その一方、ロンドンでは。
どこからともかく見覚えのある黒い車が数台やってきて、マリアたちを取り囲む。
そして、降りてきた国連のエージェントたちが三人を―――主にマリアとシンに向かって拳銃を向ける。
「状況報告は聞いている。だが、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、シン・トルスタヤ。君たちの行動制限は解除されていない」
それを聞いてマリアは、翼から通信機を取り上げると、それを耳にあてがう。
「風鳴司令。S.O.N.Gへの転属を希望します」
「マリア・・・」
「ギアを持たない私ですが、この状況に、偶像のままではいられません」
マリアは、確固たる決意をもって、そう告げた―――
それから数日後―――
上空を飛ぶ特別チャーター機の中にて、シンは、あの襲撃の日の事を思い出していた。
「ジャック、会いたかった・・・」
抱き着いてくるエリザ。
それにシンは、戸惑いを隠せない。
「な、なぁぁぁああぁあああ!?」
背後でマリアの絶叫が聞こえ、その事に思わず背筋が凍りそうになる。
「あ、え、エリザ、いきなりなんだ・・・!?」
「ああ、ジャックがいる・・・ここにいてくれている・・・」
「と、とりあえず離れろ、今はこうしている場合では・・・」
「もう少しこのままでいさせて」
「何故だ・・・!?」
何故だ。あの頃はかなりつんけんとしていた筈なのに、なんだこの変わりようは。
いや、あの頃から七年も経っているのだから変わるのは当然といえば当然なのか。
マリアに負けず劣らずの柔らかいものがシンの体に当てられ(ただそれでシンの精神にどのような影響を及ぼすという訳でもないのだが)ているのだが、とにかく今は一旦離れなければ話ができない。
そう思い、エリザを引き離そうとエリザの体に手を当てようとしたその時だった。
「いつまでひっついてるのよ!」
マリアが間に入ってエリザとシンを引きはがす。
「マリア!?」
「貴方一体なんなの!?助けてくれた事には感謝するけど、突然出てきてシンに抱き着くなんてどういうつもり!?」
「何よアイドル大統領」
「うぐ」
「私がジャックに抱き着いて何か問題でもあるわけ?」
「大有りよ!人のマネージャーに色気使うなんて貴方常識っていうものがないんじゃないの!?」
「色気?私はただジャックに抱き着いてただけですけど?」
「その体でシンを誘惑しようたってそうはいかないわ!ハニートラップがシンに通用するとは思わない事ね!」
「そんなもの、十年も一緒にいた私が知らない訳ないでしょ?あ!あなたはたったの七年だったわね。ごめんね~私の方が長くて~」
「うぐ・・・た、たかが十年で調子乗らないでくれる?こっちはこれでも『家族』としてその七年過ごしてきたんだから」
「それだったら私とだって同じ釜の飯を食べてきたわ。たかだか七年を流されるがままに生きてきた貴方とは格が違うのよ」
「流されるままですって!?こっちだってそれなりに自分で決めて戦ってきたわよ!ていうか何貴方、そこまで食いついてきてもしかしてやきもち焼いてるわけ?」
「なっ!?たかだか歌を唄うだけのアイドルの分際で・・・」
「ぽっと出の女なんかに負けるほどやわじゃないのよ」
「何よ!?」
「やる気!?」
「お、落ち着けお前たち・・・」
「シンは黙ってて!」
「ジャックは黙ってて!」
シンの制止に怒鳴り返され意気消沈するシン。
「何よジャックって!?」
「彼の名前よ。知らないの?」
「彼はシンよ!」
「何言ってんのよ!」
止まらないマリアとエリザの口論。
「どうすればいいんだ・・・」
「あー、ごめんね~うちのエリザちゃんが」
ふとそこで声をかけてきたのは翼に服を渡してくれた少女だった。
「あ、私は『アルフォンス・ヒードマン』。みんなからアルって呼ばれてる。ちなみに年齢は三十二」
意外に高かった。
「これはどういうことだ?」
「彼女はうちの会社で働いててね~。君たち『
「なるほどな・・・」
「さてさて、それはともかく本題に入ろうか」
何やらヒートアップして放送事故レベルの言葉まで飛び交ってる二人の口喧嘩。
「はいはいそこまで、エリザちゃん、本来の目的を忘れないで」
「・・・そうだったわね。この女狐とこんな言い争いをしている暇はなかったわね」
「女狐はあんたでしょ」
「なんですって?」
「やるの?」
「はいはいガン飛ばさない。翼ちゃん怖がってるでしょーが」
気付けば二人の剣幕にいつの間にか起きていた翼がすっかり怖がっていた。
「ま、まりあ?なにがあったというんだ・・・?」
「ああごめんなさい翼。ただこの女狐が突っかかってきただけだから」
「女狐はあんたでしょ」
「なんですって?」
「やるの?」
「やめろお前たち」
「「へゔっ」」
いい加減イライラしてきたシンからの拳骨が二人の頭頂部に叩き込まれる。
「それで、一体何が目的なんだ?」
「いたた・・・っと、そうだったわね」
頭を抑えつつ、シンの疑問にエリザは答える。
「ジャック、私はあなたを勧誘しに来たの」
「勧誘だと?」
「そう。ジャック、あなたのいるべき場所は、ここじゃない」
エリザは、真剣な眼差しでシンを見つめていた。
「私の所属するのは
「俺の望む戦場・・・だと・・・?」
「ええ。ジャック、貴方の本性はどこまでいっても『人殺し』のそれ。その本性からは決して逃れられないもの。だから、貴方はそこにいるべきじゃない」
「俺は・・・」
エリザの言葉に、シンは戸惑いを見せる。
だが、そんなシンとエリザの間に、マリアが入る。
「・・・シンは、そんな人じゃない」
「マリア・・・」
射貫くような視線をエリザに向けるマリア。しかしエリザは、その視線にため息を零し、マリアに向かって、鋭い言葉を言う。
「怖いのね」
「なんですって?」
「ジャックの本性を見たことがないからそう言えるのよ」
そう言って、エリザは歩き出す。そして、シンの前に立つと、一枚の紙を彼に差し出した。
「私と社の連絡先よ」
「ちなみに、君の端末情報はこっちで既に入手済みだから、こっちからも連絡をかけられるよ」
アルフォンスがそう口を挟む。
「・・・・」
「今は答えを出さなくていいわ。だけど、これまでの自分を思い出しながら考えて頂戴」
踵を返すエリザ。
「いずれ、その時がきたら、返事を聞くわ」
その言葉を最後に、彼女らは行ってしまった。
シンの手には、いまだエリザから貰った、彼女の連絡先と、彼女の所属する『ストレイ社』の連絡先が記載されたメモが握られていた。
(俺は・・・決して・・・)
その紙を握り締め、シンは、己の中にあるとある衝動をぐっと抑えつけた。
「―――それで?何かわかったのかよ」
S.O.N.G本部の潜水艦の中にて、龍我が開口一番にそう言った。
「落ち着け馬鹿」
「馬鹿っていうな」
「とにかく落ち着け筋肉バカ」
戦兎と幻徳に宥められ、不満げに口を閉じる龍我。
そこには、帰国した翼、マリア、シンも含めて、全てのシンフォギア装者と仮面ライダーが集結していた。
ただ、調と切歌はこの間の無理なギア装着によって、意外にも体への負担が大きかったらしく、しばしの病院生活を強いられていたのだが。
「シンフォギア装者と仮面ライダーが勢ぞろい・・・とは、言い難いのかもしれないな」
そう弦十郎がつぶやくと同時に、モニターに二つの画像が表示される。
「これは?」
「新型ノイズに破壊された、天羽々斬とイチイバルです」
それは、確かにギアペンダントの画像。そこに、『SERIOUS DAMAGE』―――『深刻な損傷』と確かに表示されていた。
「コアとなる聖遺物の欠片は無事・・・だが、エネルギーをプロテクターとして固着させる機能がダメになってて、実質シンフォギアとしては使用不可になってる」
戦兎が、その画像を見ながらそう説明する。
S.O.N.Gにおける聖遺物及びシンフォギアの状態管理、そしてS.O.N.G.の持つ技術は、全て戦兎が管理しているからだ。実質、この組織の櫻井了子に代わる技術主任といった所だろう。
「セレナのギアと同じ・・・」
マリアが、そう呟く。
「もちろん直るんだよな?」
「直すだけ、ならいいんですけどね」
クリスの言葉に、傍らのセレナがそう答える。
「セレナ・・・というかマリアのアガートラームを修復する際に色々と試行錯誤したおかげで、了子さんの作ったシンフォギアシステムについて色々分かったから、次同じようなギアの破損があってもすぐに修復できるようにはなっといたが、問題はそこじゃないんだよな」
戦兎が頭を掻きむしる。
「あの分解攻撃か」
一海の言葉に、戦兎はうなずく。
あの分解攻撃をどうにかしない限り、ギアは何度だって破壊される。
「じゃあどうするんデスか?」
「一応対策は考えてある。シンフォギアに施されるバリアコーティングをいじって、あいつらの持つ分解能力を無効化できれば、どうにかできない事はない」
「だったら、それで・・・」
「だけど、それだけじゃあのオートスコアラーとかいう奴には敵わねえだろ?」
事実、奴らの力は常人を凌駕していた。否、凌駕とかいうレベルじゃない。
あれは間違いなく怪物の域に達している。
「何か、シンフォギアの力をブーストする機能が必要だ。それこそ・・・ハザードトリガーみたいな強化アイテムみたいなものを」
ハザードトリガー、という部分を重く言う戦兎。
その言葉に、装者たちは何も言えず、しかしシンだけは戦兎に疑問をぶつけた。
「問題はそれだけではない。俺たち仮面ライダーの装甲も、奴らに分解された。その上、ボトルの成分も消滅してしまって使えない。その点の対策はどうなっている?」
その言葉に、戦兎はすぐに答える。
「一応、ボトルの成分はジーニアスから抽出すれば元に戻る。それに、ライダーシステムの方の強化案もある。どうやら、ハザード由来の変身なら、奴らの分解能力を免れる事ができるみたいだ」
そう言って、戦兎はハザードトリガーを出してみせる。
「ハザード由来?」
慧介が首をかしげてそう尋ねる。
「そう。一海の話じゃ、ハザードスマッシュは奴らの攻撃で分解されなかった。その上、俺のラビットラビットも、奴らの攻撃を受けても分解されなかったんだ。そこに通ずる共通点は、ハザードトリガーを使った変身かどうかだ」
「それじゃあ、現状戦えんのは戦兎と三羽ガラスだけじゃねえか」
「そこで、こいつだ」
龍我の言葉に、戦兎はスクラッシュドライバーを取り出して見せる。
「あ、それ俺のスクラッシュドライバー!?」
そう、それは慧介のスクラッシュドライバーなのだ。
「これは、ジェームズ博士が俺の作ったスクラッシュドライバーを調べて作ったものだうおあ!?」
次の瞬間、どこからともなく定規が飛んできて、戦兎の手にあったスクラッシュドライバーに直撃しそうになる。それをギリギリのところで避けた戦兎だったが、その定規は戦兎の後ろにあった弦十郎の席に直撃、鉄の板に思いっきり突き刺さる。
「・・・」
それにぞっとしながら、その定規を投げた張本人の方を見る。
そこには、黒いオーラを発しながら荒い呼吸をしている調の姿があった。
「・・・なんで、そんな、ものをぉ・・・」
「おおおお落ち着け調!」
「調落ち着くデス!」
次弾(えんぴつ)を投げようとする調を羽交い絞めにする慧介とその前に立って止めようとする切歌でどうにか事なきを得る。
が、その最中で、
「あ」
慧介の手が滑って袖から手が入り、ブラを通り越して生の調の胸を―――
「ひゃぁぁあ!!」
「うごあ!?」
思わぬ調のヘッドバッドが炸裂。それを顎に喰らった慧介はしばらく床でもだえる事に。
「・・・うぉっほん。続けるぞ。んで、ジェームズ博士・・・待て、調、悪かったこの名前は出さないだからそのカッターをしまえ今すぐ!・・・ふう、で、このスクラッシュドライバーだが、どういうわけかこのスクラッシュドライバーで変身した場合はあのノイズの攻撃を受けても変身が解除されなかったんだ」
「それは一体どういう事なのだ?」
翼の問いかけに、戦兎は答える。
「どうやら、スーツを構成する際の成分構成が違うらしい。この成分構成を他のドライバーでも再現できれば、おそらくあのノイズとまともに戦える筈だ」
さすれば、何の問題もなく奴らと対峙できることだろう。
「ただ、それまでにかなりの時間がかかる。まともにギアを直せるのは俺だけだし、ライダーシステムに関して深く理解してるのも俺だけだ。だから、ギアの修復とライダーシステムの強化にかなりの時間がかかると思う。ついで、このドライバーの検査もしたいから、しばらく慧介も変身できなくなる」
「現状、戦えるのは響君とセレナ君、そして龍我君と幻徳長官だけか・・・」
響のガングニールは健在とし、セレナのアガートラームは既に戦兎が修復している。
それに加えて、クローズドラゴンによる変身が可能な龍我、クロコダイルクラックボトルを有する幻徳も一応戦えない事はない。
「ま、ボトルの成分はすぐに戻せる。ただドライバーがなくて変身できなくなるのが慧介だけで、一海もシンも戦えない事はないぞ」
「そうか」
「助かる」
その言葉に、一海とシンは安堵を覚える。
「そんな事ないデスよ!」
ふとそこで切歌が声をあげる。
「私たちだって・・・」
「何馬鹿な事言ってんだよ」
が、その言葉を遮るかのように戦兎がそう言いだす。
「別にふざけてるわけじゃ・・・」
「LiNKERで適合係数の不足値を補わないシンフォギアの運用が、どれほど体の負荷になっているのか・・・」
「君たちに合わせて調整したLiNKERがない以上、無理を強いる事はできないよ」
調と切歌のメディカルチェックの結果、その容体は想像以上に深刻なものだった。
体の各部に軽度重度別れども、その結果が示すのは、明らかに危険域に近いものだ。
いくら第二種適合者。かつての翼の相棒だった奏よりは高い適合係数を持つとはいえ、その装着は、あまりにも危険だ。
「どこまでも私たちは、役に立たないお子様なのね・・・」
「メディカルチェックの結果が思った以上によくないのは知っているデスよ・・・それでも・・・!」
悔しそうに、切歌は顔を歪める。
そんな二人に、慧介はどう声をかけていいのかわからず、俯いてしまう。
「こんな事で仲間を失うのは、二度とごめんだからな」
「その気持ちだけで十分だ」
しかし、二人は納得した様子を見せなかった。
「ま、とりあえず現状の戦力の確認は済んだところで」
戦兎は、一つ提案を出した。
「ちょいと保護したエルフナインってやつのところに行こうぜ。そいつなら、何か知ってるかもしれねえからな」
その戦兎の言葉には、どこか、確信めいた自信があった。
ク「うにゃぁぁぁあああ!!」
翼「ぬお!?どうした雪音!?」
ク「龍我に裸見られたぁあああ!」
翼「今更か!?」
切「はっ!ということは、調のギアも分解されれば、慧介とのラッキースケベが成立してその分の不幸がアタシに降りかかる!?」
翼「一体どういう理論なのだ・・・」
マ「チィッ!私もギアをもっていればシンに裸を見られて合法的にあんなことやこんなこと・・・!」
エ「そうはいかないわこの女狐!」
マ「何よ女狐は貴方の方でしょ!?」
エ「ヤル気!?」
マ「上等よベッドに来なさい!」
翼「まてなぜそこで表ではなくベッドだ!?」
マリエリ「何ってレズバ―――」
ク「うぉぉぉぉぉぉおおおぉおおお!!次回!『銀色のフェアリー』!」
セ「次回は私が変身しますよ!」
ク「誰かこいつらを片付け箱に畳めぇぇええ!!」