愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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緒「日本が誇るトップアーティストにしてシンフォギア『天羽々斬』奏者である風鳴翼は、戦いの最中絶唱を使い、意識不明の重体に陥ってしまう」
ク「なんでアタシがこんなところに・・・」
黒グニール「仕方がないでしょう。なんでも桐生戦兎と風鳴翼が出られないという事で代役として呼ばれちゃったんだから」
ク「待て。なんで無印では絶対に登場しないお前が出てんだ!?」
黒グニール「うろたえるな!」
ク「やかましい!」
緒「まあまあ二人とも落ち着いて。元敵同士、仲良くしましょうよ」
ク「そういうアンタは落ち着き過ぎだ!」
黒グニール「実言うと『今忙しいから代わりにお願い』って頼まれたのよ」
ク「忙しいからって絶対に出てきちゃいけない奴だすか普通!?」
響「まあまあ落ち着いて」
ク「そういうお前はなんでそんな落ち着いてんだよ!?」
響「え?だって本編じゃないし、これろくお―――」
ク「あーあー!分かった分かったから超重大シークレット発言はやめろー!」
万「大丈夫なのかこんなんで・・・」
緒「アハハ・・・まあそんなわけで」
黒グニール「どうなる第九話!」
ク「テメエが言ってんじゃねーよ!」


決意のプレリュード

リディアンのすぐ隣にある、総合病院。そこに、絶唱を使い、大幅なダメージを負った翼は搬送されていた。

 

 

 

「かろうじて一命は取り留めました。ですが、容態が安定するまでは絶対安静。予断の許されない状況です」

「よろしくお願いします」

引き連れた部下ともども、弦十郎は医師に頭を下げる。

「俺たちは、鎧の行方を追跡する。どんな手掛かりも見落とすな!」

そしてすぐさま行動に移る。その場で立ち止まっていては、何もできないからだ。

その一方で、響、万丈の二人は病院内に設立された休憩所にて待っていた。響の肩には、クローズドラゴンが乗っている。

「貴方がたが気に病む必要はありませんよ」

そこへ、緒川がやってくる。

「あ・・・」

「翼さんが自ら望み、歌ったのですから」

「緒川さん・・・」

自販機の飲み物を買いながら、緒川は続ける。

「響さんはご存知と思いますが、以前、翼さんはアーティストユニットを組んでいまして」

「ツヴァイウィング・・・ですよね・・・」

「そうだったのか」

この世界の事を何も知らない万丈にとっては、それは新鮮な情報だ。

「その時のパートナーが、天羽奏さん。今は貴方の胸に残る、ガングニールのシンフォギア装者でした」

 

二年前のあの日、奏は、ノイズによる被害を最小限に抑えるために、絶唱を使った。

元々、適合係数が低く、薬品『LiNKER』によって無理矢理使っていた状態で、彼女は、自らの全てを燃やしてシンフォギアの最大出力を解き放つ絶唱を使ったのだ。

そして、奏は跡形も残さず死んだ。

 

奏の殉職とツヴァイウィングの解散。

そうして一人となった翼は、奏がいなくなった事で出来た穴を埋めるべく、我武者羅に戦ってきた。

一人の少女が当たり前に経験する恋愛や遊びなど一切やらず、ただ敵を斬る剣として戦ってきた。

自分を殺して、奏を奪ったノイズを倒すために。

 

 

「そして今日、剣としての使命を果たすため、死ぬ事すら覚悟して絶唱を使いました」

緒川は、静かにそう言った。

「不器用ですよね。でもそれが、風鳴翼の生き方なんです」

「・・・」

万丈は、何も言わない。

だが、響は―――泣いていた。

「そんなの・・・酷過ぎます・・・」

「キュル・・・」

「そして私は・・・翼さんの事・・・・何にも知らずに・・・・一緒に戦いたいだなんて・・・奏さんの代わりになるだなんて・・・!」

あまりにも、無神経過ぎた。

そんな事を言った自分が、響は憎かった。

「・・・正直、良く分かんねえけどよ・・・」

ふと、万丈が話し出す。

「お前が、その、奏って奴の代わりになる必要はないんじゃないか?」

「僕も、貴方に奏さんの代わりになってもらいたいだなんて思ってません。そんな事、誰も望んでなんていません」

誰かの代わりになんて、誰も出来ない。それこそ、同じ人間が存在しない、この世界共通の法則だ。

傍にいてくれる人間がいなくなって、そこに別の人間が入っても、その空虚さが埋まらないのと同じように。

「ねえ響さん、龍我さん。僕からのお願いを聞いてもらえますか?」

「ん・・・?」

「なんだよ?」

響が涙をぬぐい、緒川の顔を見た。

「翼さんの事、嫌いにならないでください」

それは、緒川のささやかな願い。

「翼さんを、世界に独りぼっちになんてさせないでください」

その、穏やかで、懇願するような視線に、響は静かに答え、万丈は当たり前のように答える。

「はい」

「おう、任せろ」

そう返事をした時、ふと緒川はある事に気付く。

「そういえば、戦兎さんが見当たりませんけど・・・」

「ああ、アイツなら自室にこもってるぞ」

「え?なんでですか?」

万丈は、日の出の見える空に向かって呟く。

「・・・・もう誰も、あんな目には合わせない為、だってよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――落ちる、落ちていく。どこまでも、深淵の如く。

 

終わりの無い落下と浮遊感。逆さまに落ちていっているのが、風の流れでなんとなく分かる。

 

そして、この現実感の無い場所で、彼女は思う。

 

 

―――ああ、自分は、死ぬのか・・・?

 

 

そう思うと、ふと、最後に見た彼の顔を思い出す。

 

 

―――泣いてたな。

 

 

ほんの少しの涙を流して、彼は必至そうにこちらを見ていた。

 

まるで、兎のように怯えた目だった。

 

彼の名前にあるような。そんな顔だ。

 

 

 

ふと、その時、自分のすぐ傍を何かが通り過ぎる。

 

 

 

その気配は―――視界に映った赤髪は―――

 

 

 

気付けば、彼女は深く広い、遠くまで見えない水の中に入っていた。

 

そして、その中で、彼女を見つけた。

 

その彼女に、彼女は叫んだ。

 

 

―――片翼だけでも飛んで見せる!どこまでも飛んで見せる!

 

 

―――だから笑ってよ、奏・・・!

 

 

しかし、名を呼んだ彼女の顔に笑顔は無く、彼女は深い水の中を沈んでいく。

 

暗い、深海の中を、ただただ落ちていく。

 

 

―――どうして、どうして笑ってくれないの、奏・・・

 

 

彼女は、必死に叫ぶ。それでも目に映る彼女は遠のいていく。

 

どんどん沈んで離れていってしまう。

 

どれだけ水をかいても上がる事が出来ない。まるで何かに引きずられていくかのように。

 

 

―――いや、いや・・・!まだ、まだ飛んでない・・・私は、まだ・・・

 

 

どれだけ、必死にもがいても、沈んでいく。

 

真っ暗になっていく。やがて、伸ばしていた自分の手が見えなくなっていく。

 

 

―――怖い

 

 

体が冷たい、何も見えない、何も感じない―――それが、堪らなく怖い。

 

 

―――怖い、怖いよ・・・

 

 

体を丸めていないと、今にもこの不安と恐怖に押しつぶされてしまいそうだった。

 

かつて、奏が言った事を思い出す。

 

弱虫で、泣き虫だ、と。

 

確かに、その通りかもしれない。

 

自分は、一人になるだけで、こんなにも弱くなる。

 

ずっと、一人で戦ってきた筈なのに、今にも、泣きそうだ。

 

 

―――たすけて

 

 

もう耐え切れなくなって、その言葉を言った、その時――――頭に何かが当たった。

 

見上げてみれば、そこには―――赤い兎がいた。

 

 

―――うさ・・・ぎ・・・・?

 

 

その兎は、彼女がこちらに気付くと、その体を翼に摺り寄せる。

 

温かい――――

 

その温もりが、とても嬉しくて、とても安心して、心が安らいでいく。

 

 

赤い兎。どこか見覚えのある、小さな赤い兎。その体を抱きしめて、翼は、その意識を闇に投じていく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室の集中治療室にいる、翼の手には―――ラビットフルボトルが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――戦兎君はまだ出てこないのか?」

弦十郎の言葉に、万丈が答える。

「ああなったアイツは梃でも動かねえよ。特に、誰かを守るためだったらなおさらな」

腹筋をしながら、万丈は答える。

現在戦兎の部屋の扉には『出入禁止』と物凄く気合の入った文字で書かれた紙が張ってあり、それ以来戦兎はその部屋から出てきていない。

その最中で何度も爆発音が響いており、本当に大丈夫なのかという心配も出てきていた。

「ていうか、あの鎧のガキの事はなんかわかったのかよ?」

「まだ何も分かっていませんよ」

藤尭が答える。

「捜索は続けていますが、これと言って、手掛かりとなりそうなものは何も・・・」

「つまり、お手上げって事だな・・・」

プロの彼らで見つけられないのなら、彼らより頭が圧倒的に悪い万丈には探すなんてことさら無理な話だ。

「そういえば龍我さん、監視カメラにドラゴンが飛んでいく所を確認したのですが、大丈夫なんですか?」

「ああ?あー、もうアイツの勝手にさせようかな、って思ってよ・・・」

腹筋から腕立てに切り替えて、万丈はそう答える。

「そこまで自由に行動出来るなんて、戦兎君ってすごいのね」

「いや、前まではあんな事なかったんだけどな・・・」

「なかったってことは、あれは当たり前の事じゃないのか?」

「ああ。戦兎曰く、俺のお目付け役だとかなんとか言ってたけど、あんな風に感情豊かに飛び回ったり鳴いたりなんてしなかったぞ?」

「じゃあ、何かあったのか?」

「ああ、たぶんしんs・・・」

万丈は慌てて口を閉じる。

(あっぶねえ。そういや戦兎には新世界の事はしゃべるなって言われてたっけ)

「どうかしたのか?」

「い、いやなんでもねえよ・・・まあ、なんだ、戦兎も分かんねえらしい」

実際の所、戦兎は新世界創造の影響でどこかの機能がイカれて本当に動物らしくなったという見解らしい。

実際の所、どうなのかは分からないが。

「そうなのか?」

「ああ。科学はアイツの専門だからな。俺にはなんも分かんねえ」

 

否、分かる事は一つだけある。

 

(あいつ・・・なんか寂しそうな眼してたな・・・)

万丈は一人、あの鎧を纏っていた少女の事を思い出していた。

「あ、そういえば龍我君」

ふと、スクワットしながらあの少女の事を考えていた万丈に了子が声をかける。

「ん?なんだよ?」

「チャック開いてるわよ」

「へ?」

みれば、万丈のズボンのチャックは全開だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で―――

未来は響がいるであろう屋上に向かっていた。

最近の響は、よく一人になる事が多くなってきたから、そんな響を未来は探していた。

と、そこへ、

「キュールールルッルルッ!」

「ん?」

聞き覚えのある泣き声が聞こえたかと思い、見上げてみれば、そこからクローズドラゴンが降りてきていた。

「クロ・・・!?」

「キュル!」

ドラゴンは未来の周りを一回転すると、未来の差し出した手の上に乗り、一鳴きする。

「どうしたの?」

「キュルル!」

当然、言葉は伝わらないが、なんとなく分かる事はある。

 

ただ会いに来ただけなのだろう。

 

「しょうがないなぁ・・・でも、まずは響を探してからね」

「キュル!」

未来の言葉に、ドラゴンは了承したように鳴き、また飛んで今度は未来の側を浮遊する。

その様子に微笑みつつ、未来は響の元へ行く。

案の定、響はリディアンの屋上のベンチにいた。

その表情は、どこか沈んでいた。

「ひーびき」

そんな響に、未来は声をかける。

「未来・・・それにクロまで・・・」

「最近一人でいる事が多くなったんじゃない?」

「キュール!」

それは、未来から見ての指摘。そしてそれは的中していて、響は一人、この間の事について考えていた。

 

翼は入院し意識不明の重体、戦兎は自室に籠り爆発音の響く何かの実験をしている。

万丈は弦十郎の所で何か稽古をつけてもらっているようで、翼があんな風になってから、一層強く打ち込んでいる様だった。

 

それに対して、自分は何が出来るのか。

 

その事を考えていた。

「そうかな?そうでもないよ。私、一人じゃ何にもできないし・・・あほら、この学校にだって、未来が進学するから私も一緒にって決めた訳だし・・・あいや、なんていうか、ここって学費がびっくりするぐらい安いじゃない?だったら、お母さんとおばあちゃんには負担掛けずに済むかなーってあはははは・・・・」

よく一回目も噛まずに言えたと思える言い訳。その言い訳を遮って、響の隣に座った未来は、響の手を取る。

ドラゴンは、そんな未来の膝の上に休むように乗る。

「あ・・・」

その行為に、響はそれ以上何も言えなくなる。

「・・・やっぱり、未来には隠し事出来ないね・・・」

彼女の事を良く知る響だからこそ、未来のその行為の意味を理解する。

「だって響、無理してるんだもの」

「うん・・・」

しかし、いくら幼い事からの親友だとしても、言えない事はある。

「でもごめん、もう少し一人で考えさせて。これは、私が考えなきゃいけない事なんだ」

もちろん、二課から言われた機密の事もある。だけど、こればかりは自分の心の問題であり、他者に頼るような事ではない。

自分で、どうにかしなければならない。

「分かった」

そして、それを未来は了承する。

「ありがとう、未来・・・」

沈黙が流れる。

「キュルル・・・」

その沈黙に、ドラゴンが力なく鳴いてみせる。

その時、未来が立ち上がる。

「あのね、響」

そして、空を見上げながら、未来は響に言う。

「どんなに悩んで考えて、出した答えで一歩前進したとしても、響は響のままでいてね」

「私のまま・・・?」

「そ、変わってしまうんじゃなく、響のまま成長するんだったら、私も応援する。だって響の代わりはどこにもいないんだもの」

「キュル!」

未来の言葉に同意するようにドラゴンが鳴く。

「いなくなって欲しくない」

その言葉が、響の心に響く。

それでも、響は悩む。

「私・・・私のままでいていいのかな・・・?」

その言葉に、未来は迷いなく答える。

「響は響じゃなきゃ嫌だよ」

その言葉に、響は、この前、会議で言った言葉を思い出す。

 

『私にだって守りたいものがあるんです!だから・・・!』

 

あの時、続かなかった言葉。

その先の言葉。

響は立ち上がって、向こうに見える、翼の入院する病院の方を見た。

そして、その拳を、ぎゅっと握ってみる。

(私は、私のままで・・・)

―――強くなる。

思い出してみれば、戦兎も、自分のまま強くなるために、自分のスキルを十分に生かして、誰かを守れる力を手に入れようとしている。

それを思うと、響は、自然と気持ちが固まっていくのが分かった。

「ありがとう未来。私、私のまま歩いて行けそうな気がする」

その言葉に、未来は嬉しそうに頷く。

「そうだ」

そこで未来はある事を思い出す。

「こと座流星群見る?動画で撮っておいた」

「ほんと!?」

「キュル?」

響は目を輝かせ、ドラゴンは何のことか分からず首を傾げる。

そうして見せられた動画には―――何も映ってなかった。

「んん?なんにも見えないんだけ、ど・・・」

「うん・・・光量不足だって」

「ダメじゃん!?」

そんな言葉が出てしまう。だけど、自然と笑いがこみ上げてしまう。

「おっかしいなあ。涙が止まらないよ」

頬を伝う涙を拭い、響は笑う。

「今度こそは一緒に見よう」

「約束。次こそは約束だからね」

「キュルル!」

「あ、クロも一緒に見たい?」

「キュル!」

「しょうがないなぁ」

ドラゴンと楽しく話す未来を見て、響は一つの決心を固める。

 

私にだって、守りたいものがある。

 

守れるものといったら、小さな約束や、なんでもない日常だけなのかもしれない。

 

それでも、守りたいものを守れるように、私は、私のまま強くなりたい。

 

その為には――――

 

 

 

 

 

「たのもー!」

 

 

風鳴家の扉を叩いた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「朝からハード過ぎますよ」

弦十郎に弟子入りした響と、それに付き合う万丈。

「そうもいかないんだよね」

明かされる日本政府の現状

「名付けて、『天下の往来独り占め』作戦!」

決行される、完全聖遺物の輸送。

その最中で、かの天才が新たな力をもってやってくる。


次回『スパークリングした天才がやってくる!』


「さあ、実験を始めようか」


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