愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

90 / 99
翼「ついに私が主役の章が開幕したぞ!」
響「ちぇー、なぁんで翼さんが主人公になってるんですか~。原作の主人公は私なんですよ~」
翼「引っ込んでいろ旧主人公」
響「そんな古いもの扱いしないでください!」
魔王「まあまあ落ち着いて」
ク「おい待てェ!?なんでまだ出てきてねえお前が出てくるんだよ!?」
魔王「いいじゃんべつに。戦兎いないんだし、代わりに俺が出てもさ」
調「慧くんがいない慧くんがいない慧くんがいない慧くんがいない・・・オマエガケシタノカ?」
切「調ぇ!ステイデース!」
調「KILL!!」
魔王「と、いうわけで、愛和創造シンフォギア・ビルド オリジン・ザ・天羽々斬をどうぞ楽しんでいってください!」未来予知でひょひょいのひょい
ク「リュウガリュウガガガリュリュリュリュウガガガガ」
調「ケケケケケケイクンケイクンケイクククク」
切「ヒィィィ!!調の闇に当てられてクリス先輩までおかしくなったのデース!?」
翼「雪音ェ!正気に戻るんだぁ!!」
響「あれ?そういえばマリアさんは?」
未「なんでも女の戦いをしに行くって今回はパスしてるよ?」
響「またお腹の正の字が増えるのかなぁ・・・」
翼「ええい!何はともあれ新章『オリジン・ザ・天羽々斬』をご照覧あれ!」


オリジン・ザ・天羽々斬
始まりのリバーサル


―――それは、遥か遠い記憶。

 

 

「―――翼」

 

その声に、思わず顔を上げる。

 

「強く生きなさい。風鳴の家に生まれた以上、貴方は強く生きなければならない」

 

その言葉の意味を、まだ分からない。

 

「そうだ。貴方には何か夢はない?」

「ゆめ?」

 

はて、と首を傾げる。

 

「なんでもいいわ。貴方が、将来何になりたいのか。それか、どんなことをしたいか。それを言えばいいのよ」

「うーん・・・」

 

まだ、幼い頭を必死に動かして、真っ先に浮かんだことを言う。

 

「おうた!」

「え?」

「みんなにわたしのおうたをきかせたい!」

 

その答えに、果たして、貴方にはどんな風に映ったのだろうか。

 

「・・・ふっくく・・・」

「・・・?」

 

その時、何故笑われたのか分からなかった。

 

「ふふ、ごめんなさい。そっか、それが、翼の夢なのね」

 

頭を撫でてくる。それが、とても心地よくて、よく覚えている。

 

「じゃあ、今から私と歌おうか」

「うん!」

 

その時、貴方はなんと歌っただろうか。

 

 

―――風よ そよげよ 向こうまで

 

―――私の知らない場所へ飛んでおくれ

 

―――風よ 運べよ ここまで

 

―――私の知らないことを教えておくれ

 

―――風よ 貴方はどんな姿をしているの

 

―――貴方は一体、どんな『翼』をもっているの

 

―――どうか その姿を見せてくださいな

 

―――風よ 飛べよ どこまでも

 

―――貴方と共に、飛ぶ鳥のように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

S.O.N.G.シミュレーションルームにて。

 

「あら、翼。鼻歌なんて珍しいわね」

「む・・・」

マリアに指摘され、翼は気付く。だが誤魔化すことはしない。

「ああ、少し気分でな」

「さっきの鼻歌、私が知らないものでした。一体どんな歌なんですか?」

翼の大ファンと自称している響が尋ねてくる。

それに、翼は気恥ずかしそうに答える。

「死んだ母が良く聞かせてくれた歌だ」

「あ、すみません・・・」

しゅん、となる響。

「気にするな。歌詞は忘れてしまったが、大事な母との思い出だ」

「ふーん・・・先輩のママってどういう人なんだよ?」

一方水分補給をしていたクリスが、そう尋ねてくる。

「あの不器用パパさんと結婚するぐらいだもの。相当な女傑と私は見たわ」

「ハハ・・・正直言うと、私も良く覚えていないんだ」

その言葉に、その場にいた者たちが首を傾げる。

「私がまだ五才の時に他界してしまってな。お父様もあまりお母様の事を話そうとはしない。尋ねても適当にはぐらかされるか突っぱねられるかのどちらかで、お母様の方も、あまり家にいたりいなかったりで、そんなに接したこともないんだ」

「そうだったんですか・・・・」

「ああ。ただ、この歌と、優しかったことだけは覚えているんだ。それだけが、私が覚えているお母様のことだ」

それだけ語ると、翼はすっくと立ちあがる。

「さ、訓練に戻ろう。次は私と雪音で組むんだったな」

「足引っ張らないでくださいよ」

「誰にものを言っている?」

「私も負けません!」

「手加減はしないわよ」

「当然だ」

そう言い合い、翼は、ふと思う。

 

 

 

――――何か、足りない気がする、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――それは、ある日のことだった。

 

 

(この状況は―――なんだ?)

翼がまず一番に思ったことはそれだった。

理由は、自分の両手に何故か()()が掛けられている事だった。

「あ、あの、緒川さん」

「今は喋らないでください。貴方の身柄は、現在拘束されています」

「・・・・」

自身が最も信頼を寄せている筈のマネージャーですらこの態度。

いや、それ以前に、周囲の自分に対する態度が明らかにおかしい。

まるで、こちらを何かの容疑をかけられている容疑者の如き眼差しで、こちらを見ているのだ。

「・・・翼」

そんな中で、彼女の目の前に立つ弦十郎が、重い口を開くように尋ねる。

「何故、こうなっているか分かるか?」

その問いかけに、翼は。

「・・・まあ、自分が何故このような立場に立たされているのか程度には・・・」

そう答えるしかなかった。

 

 

 

ことの発端は、とある放火事件にあった。

 

場所は、とある極道が取り仕切っている企業。

そこで、何人ものヤクザが滅多切りにされた上で、建物ごと焼かれるという最悪の事件が起きたのだ。

すぐさま警察が出動し、その犯人を拘束しようとしたのだが、その時、警察が見たのだ、なんと『風鳴翼』だったのだ。

焼け残った監視カメラの映像にも、()()()()()()()()()()()がヤクザを斬殺する現場が残っていた。

様々な現象の結果、それが風鳴翼本人だとして、警察は翼に逮捕状をもってきた。

しかし翼には、S.O.N.G.の発令所にいたというアリバイがあり、翼本人が犯人だと断定はできず、さらにその時天羽々斬のアウフヴァッヘン波形を検知したとの報告もあり、とりあえず名目上は逮捕ということでこうして手錠をかけているのだ。

 

だがしかし、

「本当に翼にそっくりね」

止められた映像の先、嬉々としてヤクザを斬殺していく翼の姿があった。

「これが先輩の訳ねえだろ」

「無論だ。これが私であろう筈がない」

はっきりと否定してみせる翼。

だがしかし、である。

翼のシンフォギアである天羽々斬は、しっかりと()()()()()として首に下がっている。

肌身離さず持っているそれを、緒川ももちろん目撃している。

それでもこの映像が証拠として残っている以上、もはやどちらかが偽物という説が大きく出てくる。

「ドッペルゲンガー、デスかね?」

「世界には同じ顔の人間が三人いるって聞いたけど、これは・・・」

「検証の結果、翼さん本人と出ていますが・・・」

「まさか新たな錬金術師?」

そうとあれば、一体何が目的で翼に化けているのか。

「どちらにしろ、この『風鳴翼』そのものを騙り、悪事を働く輩を放ってはおけない」

ぐっと翼は拳を握り締める。

「真なる防人の刃で叩き伏せてくれる・・・ッ!!」

とにもかくにも、自分の姿を騙って悪事を働くこの不届きものを、翼は許してはおけなかった。

「うむ。相手が本当にシンフォギアを纏っているかどうかは分からんが、放っておくわけにもいかん。よって、全ての装者に出動命令だ。この翼に似た誰かを見つけ出し、捉えてくれ」

「「「了解!」」」

そうして、翼の偽物を探すことになった訳なのだが―――

 

 

 

 

 

 

「早々に見つかるものでもないか・・・」

そう呟き、翼ははあ、とため息を吐く。

「そう気を落とさないで」

同伴していたマリアが、自販機で買ってきたミネラルウォーターを渡す。

「これが落ち込まずにいられるものか。まさか私の偽物が大勢の人々を傷つけているなど・・・その上あまり見つからないとは」

「そうね。にわかに信じられないわ。まさか貴方に化けてその上シンフォギアまで纏うなんて」

ふと言われてみると確かに大事だ。

自分と同じ格好をして同じ天羽々斬を振るう。

これほど恐ろしいものがあるだろうか。

そう想い、すっと首に提げられたペンダントを握り締める。

「・・・ん?」

そこでふと、違和感を覚える。

(なんだ。何かが違う気がする・・・)

一体何が。

ペンダントが?自分の偽物が?それとも一体なんだ?

「うっ・・・」

不意にずきりと頭が痛み、抑える翼。

「翼?どうしたの?」

「いや、少し頭痛がしただけだ。もう大丈夫だ」

「そう?しっかりしなさいよね。もうすぐコンサートがあるんだから、体調管理はしっかりしなさいよ」

「無論だとも」

その時だった。

唐突に二人の通信機に、ノイズ発生の連絡が入ったのは。

 

 

 

 

現場はまさしく阿鼻叫喚だった。

全滅した筈のノイズが、目の前でスクランブル道路にいる人々に襲い掛かっているさまを、翼とマリアにありありと見せつけられていた。

「また『ギャラルホルン』のアラートなの!?」

「話はあとだ!殲滅するぞ!」

翼はすぐさま首のペンダントを取り出し、そして、聖詠を唄う。

 

「―――Seilien coffin airget-lamh tron(望み掴んだ力と誇り咲く笑顔)―――」

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)――」

 

聖詠、変換、還元、着装―――

 

翼が纏うのは蒼き衣と蛇を断つ刃。

 

マリアが纏うのは白銀の左腕。

 

今ここに、シンフォギア・天羽々斬とシンフォギア・アガートラームが顕現する。

 

戦場に歌が響く―――

 

 

「ハァァア!!」

振り下ろした刃が、ノイズを斬り捨てる。

(突然のノイズの復活、私の偽物、これらが無関係だとは思えん・・・!)

次々と襲い掛かるノイズを、己が刃をもって斬り捨てていく翼は、そのように考える。

全滅した筈のノイズ、それが今、自分の目の前で人々に襲い掛かっている。

だが、これらのノイズには、どうも違和感を感じてしまう。

この違和感の正体は一体何なのか―――。

 

その時、翼はノイズが蔓延る視界の中で、一人その中にたたずむ黒衣のフードを被った人物を見つけた。

 

(なっ・・・)

その存在に一瞬、思考が止まり、しかしその者の口元が、笑みを描くように歪むのを見て、そして、その口元から顔全体に意識を映した時、翼は、自分の目を疑った。

 

それは、紛う事無き、『風鳴翼』そのものだった。

 

『風鳴翼』が、路地裏に入っていく。

「ッ!待て!!」

「翼!?」

翼はマリアを置いて、『風鳴翼』を追いかけた。

シンフォギアの走力であれば、相手に追いつくことなど容易い。

ほぼ数秒でやや開けた場所に追い詰める。

「貴様か、私の名を騙り、悪事を働く輩は!」

刀を向け、翼は怒鳴る。

「・・・」

「なんとか言ったらどうだ?」

「・・・クク」

『風鳴翼』が、笑い声を漏らす。

「随分と余裕だな」

その声に、翼は自分の耳を疑う。

それは、収録した後、いつも聞く自分の声。

自分と他人とでは、自分の声は違って聞こえるというが、翼の場合、アーティストであるがゆえに、自分の人々に聞かれている声がどういうものなのかを知っている。

故に、翼は、『風鳴翼』の発した声に、驚愕する。

その声は、間違いなく自分の声と同じだったからだ。

しかし、翼はすぐに平静を取り戻し、改めて刀を構える。

「どういう意味だ・・・!?」

「そのままの意味だ『風鳴翼』。何も知らずに随分と余裕そうだ。いや、知らないからこそ余裕でいられるのか」

「何を訳の分からない事を言っている・・・貴様は何者だ!?」

そう尋ねれば、『風鳴翼』はローブをとってみせる。

そして、普段の翼からは考えられないような笑みで、答える。

「私はお前だ。『風鳴翼』」

「なに・・・?」

その顔は、まさしく翼そのもの。

見間違える筈もない。鏡でよく見る、自分自身だ。

「っ・・・貴様、その顔は・・・」

「驚いたか?だが、驚くのはまだ早い」

そう言って、『風鳴翼』が取り出したのは、一つの懐中時計のようなアイテムだった。

それの一番上にあるボタンを、『風鳴翼』は押す。

 

天羽々斬(アメノハバキリ)ィ…

 

「天羽々斬・・・!?」

その懐中時計が発した音声に、翼は驚愕し、その間に『風鳴翼』は、その懐中時計を胸に当てる。

するとどうだ?

黒い闇のようなものが『風鳴翼』を包み込んだ瞬間、そこから現れたのは、翼の天羽々斬の白い部分が黒に変わったかのような、そのインナーに『2030』の数字が刻まれたシンフォギアを纏う、『風鳴翼』の姿があった。

「なん・・・だと・・・」

「いざ、推して参る」

刃を抜き、翼に斬りかかる『風鳴翼』

「ッ!」

それに応じるように、返しの刃を振るう。

激しく打ち合う二人の翼――――

「この力、紛い物では―――」

「何を言う?これは正真正銘の天羽々斬だ!」

弾かれ、大きく上体を逸らす翼。

(何故だ・・・奴相手に、上手く戦えない・・・!?)

同じ天羽々斬だと言い張る『風鳴翼』の言葉とは裏腹に、翼の天羽々斬が、『風鳴翼』の天羽々斬の出力に力負けしていた。

「く、ぅあ・・・!?」

刀を弾き飛ばされる翼。

すぐさまもう一本の刀を抜こうとした瞬間、その手を叩かれ元となる柄を取りこぼす。

「ッ!?しま―――」

次の瞬間、『風鳴翼』の刃の峰が、翼の喉を打つ。

「がっ―――!?」

(喉が・・・)

思わず喉を抑えようとした時、『風鳴翼』の刃が、翼の討つ。

「終わりだ!()()!!」

「ッ!?」

斬撃が直撃し、吹き飛ばされる翼。

その時、翼のシンフォギアが解除され、ペンダントが落ちる。

一方の翼は壁に叩きつけられ、ずるずると座り込む。

「く・・ぁ・・・」

(そんな、バカな・・・)

敗北―――その事実が、翼にかなりのショックを与える。

喉を叩かれて痛みで流す涙に霞む視界。その先で見たのは、落としたギアペンダントを拾う『風鳴翼』の手。

(天羽々斬が・・・!)

それと同時に、自らのギアを解除し、その手にあの懐中時計を握りしめる『風鳴翼』。

「これで、私が『本物』となりお前が『偽物』となる」

一体なにを、と言おうとする前に、『風鳴翼』は、続けて信じられない事をしてみせる。

 

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)――」

 

 

「・・・ば、か、な」

霞む声で、翼は、目の前で起きている現象に、目を見張った。

それは、先ほどの白と黒とが反転したギアではなかった。

本来であれば、翼しか身に纏う事の出来ない筈の、正真正銘の天羽々斬のシンフォギア。

それを、『風鳴翼』は纏ったのだ。

(なぜ、奴がシンフォギアを・・・!?)

「何故、と思っているだろう?」

『風鳴翼』は翼を嘲笑う。

「それは、私が正真正銘の『風鳴翼』だからだ」

(なにをいって・・・!?)

そこへ、駆け込んでくるものがいた。

「先輩!」

(雪音!?)

イチイバルを纏ったクリスだ。

「な、先輩が二人・・・!?」

「来たか雪音!」

その時、『風鳴翼』が驚くクリスの方を向いた。

 

―――先ほどの笑みはすっこめて、まるで本物の『風鳴翼』であるかのように振舞って。

 

「ど、どっちが本物・・・」

「案ずるな雪音、私が偽物如きに敗れる筈がないだろう」

「く・・・ぁ・・・」

喉を潰されて上手くしゃべることが出来ない。

だが、翼はとにかく目で訴えかける。

 

どうか、自分が本物であると、気付いてくれ、と。

 

「ッ・・・」

クリスは迷う。

「ゆき・・・ぐ、げほっ、ごほっ!?」

喉が痛くて、上手く喋れない。

(だが、雪音なら気付いてくれるはずだ・・・!)

出会いに問題はあれど、共に戦い続けてきた仲だ。

きっと、自分の事もわかってくれる。

 

―――その時は、そう思っていた。

 

二人を見比べるクリス。

ギアを纏っている翼と、傷だらけで地面に座り込む翼。

その二人の間で視線を巡らせて、クリスは、意を決したかのように、その手に拳銃を握って、二人に歩み寄る。

緊張が、空気を張り詰めさせる。

クリスが一歩、踏み出す時に聞こえる足音が聞こえる度に、緊張はどんどん高まっていくように感じた。

そして、クリスが拳銃を向けた相手は――――

 

「お前が偽物だな」

「・・・・・・え」

 

 

―――()()()()()()()()()翼の方だった。

 

(ゆき・・・ね・・・何故・・・・!?)

信じられない、とでもいうかのように、翼は冷めた視線でこちらを見下すクリスを見上げた。

「上手く先輩に化けたんだろうけど、少し甘かったな。先輩の首にそんな古傷はねえよ」

それを聞いて、翼は思わず瞠目した。

(なに・・・を・・・ッ!?)

思わず、翼は偶然近くにあった、鏡の破片を覗き込んだ。

 

確かに、火箸で叩かれたような傷が首にあった。

 

(何故・・・!?)

自分には、こんな傷はなかった筈だ。なのに何故、こんな傷が―――

そして翼は思い出す。

 

―――確かに『風鳴翼』は、自分を本物だといった。

 

翼は『風鳴翼』の方を見る。

その表情が、僅かにこちらを嘲るようになるのを見逃さず、そして、先ほど彼女が言っていた言葉の意味を思い出す。

(まさか、私と奴の『存在』自体が入れ替わって・・・)

じゃきん、と金属が擦れる音を聞いた。

見上げる先には、赤色の銃口が、その口を向けていた。

「先輩の名をとことん汚してくれたんだ・・・それなりのツケは支払ってもらうぞ」

違う、私じゃない。偽物はお前の後ろにいる―――そう叫びたかった。

だけど、そう叫べばもっと自分の立場を危うくするようで、何よりも決定的な証拠が自分の顔に刻まれているのだから、言い逃れも出来ない。

(全て奴の掌の上・・・このまま、私は奴に屈してしまうのか・・・!)

このまま、自分は、自分の偽物に居場所を奪われてしまうのか。

我慢、出来る筈がない。だけど今の自分にはこの状況を覆せるほどの力がない。

 

今の翼に、今の状況をどうにかする力などなかった。

 

体はボロボロ、ギアはなく、仲間からは完全に偽物と断定されてしまった。

「本部、偽物を見つけた。すぐに他の奴らを急行させてくれ」

クリスが本部に連絡する。

いよいよをもって危険になってくる。

(隙を見て、ここから・・・)

そう画策する翼。

今クリスは本部との通信に気を取られている。今なら、隙をついてここから逃げ出すことが―――

(・・・あれ・・・?)

足に、上手く力が入らない。

立ち上がろうとしても、足が上手く動かない。

まるで、立ち上がることを拒否しているかのように、ぐったりとしていた。

(な、何故・・・!?)

「そういうわけだ」

「ッ!?」

クリスを見上げる。

「覚悟しろよ偽物野郎」

その言葉で、察する。

(ああ、そうか・・・)

クリスなら、きっとわかってくれる。

その期待が、裏切られたことによって、翼は、逃げる気力を失ってしまったのだ。

信頼していた筈の仲間から、裏切られる感覚―――されど相手は裏切っているなんて露程も思っていないだろう。

何故なら、自分は『偽物』で、向こうが『本物』なのだから。

(なんだ・・・これは・・・)

遠くから、駆け足の音が聞こえてくる。それも複数。

きっと、ノイズを殲滅した装者たちが、ここに集まってきているのだろう。

そうなれば、もう打つ手はなくなる――――。

(これが、私の終着点なのか・・・)

偽物として、惨めに死んでいく―――それが、自分の最後だとでもいうのか。

(そんなの、あんまりじゃないか・・・)

人々を守るために戦い続けて、多くの失いながら戦い続けて、その見返りが、これなのか。

これが、自分の人生の結末なのか。

 

あんまりだ。

 

あまりにも、あんまりだ。

そう思うと、自然と涙が溢れ出てくる。

止めようと思っても、涙は後から溢れてくる。

これから先、自分が何をされるのかを思うと、やはり涙は、溢れてくる。

一体、どこで間違えたというのか。

私は、ただ、自分の夢を叶えたかっただけなのに――――

 

 

―――そう、諦めた時だった。

 

 

「キュールルールルールルールルッ!」

 

「え」

「は」

()()()()()()()鳴き声が聞こえた。

閉じた目を開いた先、そこに、それはいた。

紫色の塗装をほどこされた、四角いボディを持つ、竜のような機械―――

 

それを見た時、唐突に翼の脳内に、ある光景がフラッシュバックする。

 

 

―――この正義のヒーローが逃げるなんて、ありえないだろ

 

 

―――さあ、実験を始めようか

 

 

―――すごいでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?

 

 

―――ありがとうな。そう言ってくれて嬉しかったぜ

 

 

―――翼ぁぁぁあああ!!!飛べぇぇぇええぇえええええ!!!

 

 

 

 

 

―――天っ才物理学者の――――

 

 

 

 

 

「―――戦兎は、どこ・・・?」

 

 

 

唐突に、突然に、あまりにも呆気なく、全てを思い出した。

(そうだ、私は・・・なぜ、忘れていたんだ・・・)

愛しいあの人のことを。いつでも諦めなかった彼のことを。いつも自分たちを引っ張ってくれた、あの、ヒーローのことを。

 

 

桐生戦兎(仮面ライダービルド)の存在を、何故忘れていた―――?

 

 

「戦兎・・・?そいつは―――」

クリスが何かを尋ねる寸前で―――

「―――クロッ!!!」

唐突にここにいる筈のない人物の声が響く。

その声に、その場にいる者たち全てに、一瞬の意識の空白が出来る。

その空白の中で―――彼女は、()()()()にとって、完全予想外の行動に出る。

 

『STANDBY!』

 

その時、その機械の竜から、紫色の炎によって形を成した竜が飛び出し、それが翼に銃口を向けるクリスに襲い掛かる。

「うお!?」

「これは・・・!?」

思わず飛び退るクリスと『風鳴翼』。

そして、距離を取ったクリスと『風鳴翼』と、翼の間に、一人の少女が割り込む。

その少女に、クリスは目を見開く。

「お、お前は・・・!?」

その正体に、クリスは思わず狼狽する。

紫色の炎の竜を従え、そこに立つのは――――

「・・・小日向」

『風鳴翼』が、その名を呼んだ。

そこに立っていたのは、なんと小日向未来だったのだ。

未来は、キッとクリスを睨みつけていた。

「お前・・・!?」

「・・・ごめん、クリス」

両手首を交差させるように手を突き出し、次にそのまま左肩あたりにその交差点をもっていった後に、大きく体を捻るように右腰に右拳を引く。

 

「―――Rei shen shou jing rei zizzl(鏡に映る、光も闇も何もかも)―――」

 

聖詠と共に紡がれる行動。その聖詠を言い終わると同時に、未来は天に向かって拳を突き出し、空から竜を迎え入れる。

炎によって衣服が燃え吹き飛び、代わりに、紫色のインナーが未来の体を纏い、そして深い紫色の装甲が彼女の身を鎧う。

竜の意匠が施された、そのギアの名は―――

「・・・神獣鏡(シェンショウジン)

 

―――失われた筈の第七号聖遺物『神獣鏡』が、竜と共に現れる。

 

その出現、クリスと『風鳴翼』は、驚くほかなかった。

「なんで、お前・・・またそんなもん纏ってんだよ!?」

信じられないかのように、クリスは叫ぶ。

「ごめん、クリス。でも、今ここで翼さんを渡すわけにはいかない!クロ!」

 

『Yes sir!』

 

次の瞬間、神獣鏡の帯が翼を掴む。そして次の瞬間、未来の姿が翼ごとその場から消える。

「消えた・・・!?」

その光景に、クリスは目を疑い、一方の『風鳴翼』もまた驚いていた。

「・・・・未来?」

そして、その光景を見ていたのは、なにも彼女たちだけではない。

駆けつけた他の装者もまた、小日向未来というイレギュラーの存在に、目を疑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

東京の街の上空。

 

神獣鏡の超ステルスによって、空も堂々と飛べる未来は、翼を伴ったまま飛ぶ。

その最中で、翼は、今日起きたことを思い出す。

 

本物の『風鳴翼』となった謎の少女。

 

突如現れたクロと、神獣鏡を纏う未来。

 

そして、姿を見せない、戦兎と、『仮面ライダー』たち。

 

 

「一体、何が起きているというのだ・・・」

 

その問いかけに、答える者はいない―――

 

 

 

 

 

 

―――そんな、見えない筈の二人を、高層ビルの屋上から眺める女が、一人いた。

 

 

 

 

 

 

 

これは、微かな記憶を辿る物語―――

 

 

母と娘、二人の夢の物語―――

 

 

 

決して、交わらない筈の者たちが交わる―――

 

 

 

 

 

 

これこそが、シンフォギア『天羽々斬』誕生秘話である。

 

 

 

 

 

 

『愛和創造シンフォギア・ビルド―――オリジン・ザ・天羽々斬』

 

 

―――ここに開幕。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「まさか、神獣鏡が復活していたとはな・・・」

未来の登場により暗雲が差すS.O.N.G.

「そうだ・・戦兎、戦兎たちはどこにいる?」

戦兎たち仮面ライダー消えた世界で、二人の装者は手掛かりを探す。

「誰だ」

その最中へ向かった風鳴邸で、父八紘と邂逅する。

「おいたが過ぎるぞ!」

しかし、再びS.O.N.G.が翼を狙う。

「せめて、天羽々斬さえあれば・・・!」

絶体絶命の中、翼は、突如現れた人物から、あるものを与えられる。
それは―――


次回『奪われたメモリーズ』


「・・・アナザーライダー・・・じゃ、ないよね・・・?」








マ「・・・」
翼「む、マリア、帰ったか。随分とふらふらしているが・・・って何故脱ぎだす!?」
マ「翼、私のお腹の正の字っていくつ?」
翼「え・・・ふ、二つと二画だが・・・」(前より増えてる・・・)
マ「そう・・・これで三十七戦十一勝十二敗十四引き分け・・・二連勝、未だなし・・・」

そのまま、扉の向こうに消える。

翼「・・・何の話をしているんだ・・・?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。