響「さってなんか『私のゴルシウィークがぁぁぁああ!!!』とか叫んでましたけど大丈夫ですかね・・・」
調「慧くんを消した罪は重い・・・」
ク「ああ、アタシの龍我を消しやがって・・・」
魔王「いや、君たち本編だと割と酷い位置にいるからね?」
救世主「いきなり引っ張り出してきたかと思ったらここかよ。しかも俺たちは別世界の住人だろいい加減にしろ!」
切「ついに救世主まで現れたのデース・・・」
未「もうっ、そろそろ本編にあらすじ紹介に戻るよ!こほんっ。錬金術師キャロルとデイブレイク社との壮絶な戦いを経て、一時の平穏を謳歌していた風鳴翼。しかしある時、仮面ライダービルドである桐生戦兎だけでなく、世界の歴史そのものが変わっていた」
翼「その最中で現れた、『風鳴翼』を名乗る輩によって、真なる風鳴翼は、小日向未来と共に、S.O.N.G.に追われる身となってしまうのであった」
ク「なんか、ほんと、罪悪感すげぇな・・・」
調「・・・」
切「・・・」
響「・・・」
未「ああ、皆纏めて落ち込まないで!」
響「しかも例にもれずまたマリアさんいなくなってるし・・・」
切「最近、作者が『パニシング:グレイレイブン』なるソシャゲにハマってるって話を聞いたことがあるのデス」
ク「あの野郎ほんと中国ゲーム好きだな!?」
調「そのお陰で中国語を勉強し始めたみたい」
ク「もはや好き勝手じゃねえか!?」
魔王「まーなにはともあれ、シンフォギア・ビルド オリジン・ザ・天羽々斬第二話をどうぞ!」
救世主「ってお前が言うのかよ!?」
「まさか、神獣鏡が復活していたとはな・・・」
弦十郎が苦々し気に呟く。
その理由は、クリス、『風鳴翼』のすぐ傍で検出されたアウフヴァッヘン波形とクリスと『風鳴翼』の目撃証言からだった。
翼を庇うように現れた小日向未来。その未来が、謎の機械の竜を使って、シンフォギアを纏い、翼を連れ去った。
その後の足取りは一切わからない。
「きっと神獣鏡のステルス機能でしょうね・・・」
「あれか・・・」
クリスのロックオンを逃れた、神獣鏡のステルス能力。
おそらく、世界のどこを探しても、神獣鏡のステルス能力を超えるものはいないだろう。
あれはもはや、完璧に等しい力だ。
「未来・・・」
その中で、響は辛そうに俯いていた。
それもそうだろう。かつて親友を苦しめたものが、今再び親友の身に纏われているのだから。
「神獣鏡が相手だと、探し出すのは難しそうですね・・・」
「ああ。敵は完全ステルスを有し、探し出すのは至難を極めるだろう・・・」
どんな索敵技術にも引っかからないのだ。
見つけるのは至難の業だ。
―――それを向こうが理解していればの話、だが。
しばしの沈黙。
「どちらにしろやることは変わらねえよ」
その最中で、クリスが呟く。
「あの先輩の偽物をぶっ倒して、取り戻せばいいだけの話なんだからよ」
その言葉に、一同は頷く。
「・・・それはそうと、あの翼の偽物、一体どうやってシンフォギアを纏っていたのかしら?」
「それについては私もよくわかってはいない」
そのマリアの疑問に答えるのは『風鳴翼』だ。
「ただ分かるのは、この懐中時計を持っていたということだけだ」
翼は、ポケットからあの懐中時計を取り出して見せる。
「それは?」
「さあな。ただこれにはシンフォギアと同じ力が込められているらしい」
「少し解析してみる必要がありますね・・・翼さん、それを少し貸していただけないでしょうか?」
「ああ」
エルフナインが、その懐中時計を受け取る。
「出来そうか?」
「どうにか・・・ボクはこれの解析に専念しますので、翼さんの偽物のことは任せます」
そう言って、エルフナインは自分の研究室に戻っていく。
「よし、それじゃあ早速捜索に乗り出そう。響君、行けるな」
「はい」
響は、力強く答える。
「未来を取り戻す為なら、私、なんだってします!」
その瞳に、確かな想いをもって。
「翼さん」
未来が、ベンチに座る翼にミネラルウォーターとカロリーメイトを差し出す。
「ああ、ありがとう・・・」
丁度小腹が空いていたために助かった。
翼はそれを受け取り、すぐに胃の中に放り込む。
「ふう・・・しかし小日向、どうして私のことが・・・」
クロと戯れていた未来に、翼は尋ねる。
こう言ってはなんだが、今の翼は『偽物』だ。
本物に似せた『贋作』と言って差し支えないだろう。
その理由は分からないが。
「だって、翼さん、戦兎先生のことを覚えていたんですもの」
その答えに、翼はハッとなる。
「そうだ・・・戦兎、戦兎たちはどこにいる?」
「それが、どこにもいないんです」
「は・・・?」
その未来の答えに、翼は唖然とする。
「戦兎先生の家、クリスの家の隣、長崎の農場、総理大臣の名前・・・どこにもいなくて、何もかもが変わってた」
「どこにも・・・いなかった・・・?どういうことだ・・・!?」
翼は思わず未来に詰め寄る。
「分かりません。私がどうしてこのことを覚えているのか、そして、クロがここにいるのか、その理由が何も分からないんです。まるで、世界そのものが変わったかのように・・・」
「世界が・・・」
翼は立ち上がって、そこから夜の街を眺める。
「・・・・まさか」
その世界を見て、翼は一つの結論を導き出す。
「ここは、新世界ではないのか・・・!?」
「でも、それじゃあ、クロがここにいる理由が分からないんです」
「それも、そうだな・・・」
クロは、戦兎が創った仮面ライダークローズ専用の変身アイテムだったものであり、今は未来のシンフォギア『神獣鏡』を核とする『神獣鏡クローズドラゴン』及び『リンク・アニマル』である。
だがしかし、
「この世界では、リンク・アニマルの存在そのものがなくなっている・・・」
「それに、仮面ライダーもいなければ、セレナちゃんも死んでることになってる」
「本当に何が起きているんだ・・・」
何がなんだか分からない。
「まるで
だが、それを嘆いていても仕方がない。
「今は、どうにかしてこの身の潔白を証明しなければ・・・」
「その傷があると、難しそうですね・・・」
「そうだな・・・小日向はいいのか?立花と敵対することになるが・・・」
その問いかけに未来は悲し気に笑う。
「確かに、響と戦うのは嫌。だけど、それ以上に、取り戻さなくちゃいけないものがある・・・だから、私は響と戦います」
「小日向・・・」
翼を真っ直ぐと見据えるその瞳には、確かな覚悟があった。
どちらにしろ、今の翼に頼れるものは未来以外にいない。
「・・・分かった。手伝ってくれ、小日向」
「はい。戦闘は任せてください!」
そう元気よく答える未来。
「まずは寝床を探さなければな・・・」
「あ、そういえば・・・」
まずは、寝床から探すことにしたのであった。
翌日――――
どこかからかっぱらったバイクをクロの機械的性質で無理矢理起動して走らせる翼。
神獣鏡を使って移動しない理由は、未来の精神力に関わるからであり、ついで長時間の運用は肉体的疲労も大きいため、とりあえず公共交通機関を利用することにしたのだ。
念のため、多少の変装をしているとはいえ、いつ見つかるか分かったものではない。
「これからどこに行くんですか?」
「私の実家だ」
「え」
翼の答えに、未来は思わず素っ頓狂な声を漏らす。
「あ、あの、何故・・・」
「風鳴の家であれば、何かわかるかもしれないと思ってな」
実をいえば、もう一つの方へと行きたいのだが、あそこはあそこでとんでもない『化け物』がいる。
下手に乗り込んで仕留められたら元も子もない。
そんなこんなで、途中でバイクを乗り捨てて、とっかえひっかえしつつ移動。
そして、翼の家に到着した。
「また来ちゃった・・・」
「裏口から入ろう。誰かに見られると面倒だ」
「でも、こんな所に本当に手掛かりなんてあるんでしょうか?」
「倉がある。そこに何かあるかもしれない」
そんな訳で裏口から侵入する二人と一匹。
だが、裏口から倉の前まで来たのは良かったのだが。
「鍵がかかってますね・・・」
「分かってはいたことだが・・・」
がっちりと扉に南京錠がかけられていた。
「鍵の場所は分かりますか?」
「確か、お父様が持っていた筈だ。だが今お父様は公務中の筈・・・ならばどこかに保管されている筈だが・・・」
「その場所は分かりますか?」
「すまない。いつもお父様が開けているのを傍から見る事しか・・・」
「キュル!」
ガチャン
「「え?」」
何やら、鍵の開く音が聞こえ、そちらに視線を向けてみれば、そこには尻尾で南京錠を開けたクロの姿があった。
倉の中は、やはりというか埃っぽかった。
「誰か来る前に調べてしまわなければ・・・」
「でも、やっぱりものが多いですね・・・あと翼さんが散らかさないか心配です」
「それはどういう意味だ小日向!?」
とりあえず何かのはずみで散らからないように未来とクロが注意しながら倉を漁っていく。
しかし、何か手掛かりになりそうなものはどこにもなかった。
「ありませんねぇ・・・」
「うむ・・・」
そこで翼は考える。
あの『風鳴翼』が纏った天羽々斬。あれには確か、数字が刻まれていた筈だ。
確か、『2030』と。
(年月に換算すれば、2030年といった所だろうが・・・果たして、十五年前に一体何が・・・)
と、そこまで思考しかけて、
(十五年前・・・天羽々斬・・・!?)
そして、驚愕する。
(ま、まさか・・・)
「あれ?これは・・・」
ふと、未来が何かを見つける。
「何かを見つけたのか?」
「はい・・・これ、八紘さんでしょうか?」
そう言って差し出してきたのは一枚の写真だった。
「これは・・・確かにお父様だ。だが、これは一体・・・」
そこに映っているのは、若かりし頃の父八紘と、見知らぬ女性―――。
美しく、翼と同じ髪色の女性だ。
気品があり、そしてまた優雅な立ち振る舞い。
しかしその手は女性にしては固そうだと、翼は思った。
「もしかしたら、お母様かもしれないな」
「翼さんの、お母さんですか?」
「ああ。顔はもう覚えていないが、優しい母だったことは今でも覚えている。そうか。これはきっと、父と母の見合いの時の写真なのかもしれない」
母が死んで、八紘は母の写真など、母に関する全てのものを捨ててしまった。
だから、もう母のことを思い出すことはないだろうと思っていたが。
「ちゃんと、残していたんだな」
それを思うと、自然と心が温かくなる。
「お父様・・・」
「誰だ」
「「ッ!?」」
唐突に聞こえた声に、二人は思わず身構えるようにして振り返る。
そこにいるのは、着物を着た翼の父八紘だった。
「お、お父様・・・!?」
「翼か・・・」
八紘は驚いたかのように目を見開いたが、やがてスッと目を細めるように見つめる。
「・・・」
「・・・」
二人の間で、沈黙が過る。
(もし、ここで、お父様にも『偽物』と断定されてしまったら・・・)
果たして、自分は正気でいられるのだろうか。
正直、自分の心を繋ぎとめてくれているのは父親の存在があってこそだと、対峙して改めて思う。
しばしの沈黙。
先に動いたのは―――八紘だった。
翼と未来に向かって、歩き始めたのだ。
「翼さん・・・」
「まだ動くな」
未来にそう言う翼。
クロは、未来の肩で態勢を低くして八紘を睨みつけている。
そして、八紘が翼の前に立つと、片手を翼に差し出す。
「それを渡しなさい」
そして、それだけ、言ってみせた。
「・・・!」
その言葉に、翼は目を見開く。
だが、やがて辛そうに俯き、その手の写真を八紘に渡す。
八紘は、写真を確認すると、それを自分の服の中に仕舞い、背を向ける。
その確認する時に、写真の裏にあったのは、『風鳴八紘 隼綾女 2028』という文字だった。
そして、八紘が黙って扉の外へ出た時。
「・・・お前の母」
唐突に、何かを言い出す。
「―――風鳴綾女について調べなさい」
「え・・・」
それだけを言い残し、八紘は、どこかへ行ってしまう。
取り残された、翼と未来は顔を見合わせる。
「私の、母・・・?」
風鳴の屋敷を出て。
「翼さんのお母さんか・・・」
「正直、優しかったこと以外は、何も覚えていない。ただ、隼という名には聞き覚えがある」
「そうなんですか?」
「ああ。隼家は、昔は緒川家同様に風鳴の家に仕えていた家系と聞く。まさか、お母様がそこの家の出だったとは・・・」
バイクを押しながら、翼は感慨深そうにつぶやく。
「だった、ということは、何かあったんですか?」
「ああ・・・風鳴訃堂―――私のお爺様―――が、まだ若かりし頃、風鳴家当主となる以前に、何らかの理由で反旗を翻したということまでは聞いているのだが・・・」
「それ以上は分からないんですか?」
「ああ。もうとっくの昔に途絶えた血筋らしいからな。そうか、母はその血筋の人間だったのか。つまり私にも、その血が・・・」
そこまで言いかけて、翼はふと、憂いを含めた表情になる。
「・・・翼さん?」
未来が尋ねてみるも、翼は答えず―――
翼は、自分たちをつけている者がいると気付く。
「ッ!」
振り返れば、上手く目元を隠していてもこちらに視線を向けている者たちが多数―――
「小日向、走れ!」
「ッ!」
すぐさまバイクのエンジンをかける翼。しかし、どこからともなく飛んできた弾丸がバイクに突き刺さり、翼はすぐさま飛び退く。
そして、その直後にバイクは爆発する。
「そんな!」
「囲まれている!走れ小日向!」
走り出す二人。
(今のは、雪音の狙撃・・・!)
おそらく誘導の為の威嚇射撃。
さらには、緒川も動いているだろう。
彼が本気を出せば、自分たちに逃げの勝ち目はない。
それに、こちらも街中で騒ぎを起こす気はない。
そうして、追手を振り切るために―――おそらくは無駄だろうが―――走り続けて数分、翼たちは、人知れない廃工場に駆け込む。
そしてそこに―――彼女たちはいた。
「響・・・!」
人気のない廃工場―――そこに、響をはじめとし、マリアとクリス、『風鳴翼』を除いたシンフォギア装者全員が立っていた。
さらに背後に黒スーツの男たちがこちらに銃を向けて出口を塞ぐ。
「囲まれた・・・」
「よう、偽物」
「っ!」
出口の方から、三人の人影が入ってくる。
シンフォギアを纏った、マリア、クリス、そして、『風鳴翼』。
「貴様・・・」
「大人しく投降しろ」
翼のギアを身に纏う、翼に似た女は、その手の刀を翼に向ける。
「くっ・・・」
「翼さん、私が隙を作ります」
「小日向・・・!?」
未来が、翼にささやく。
「何を言って・・・」
「貴方がここで捕まったら、私が覚えてる意味がありません。それに、シンフォギアをもたない今の翼さんじゃ、足手纏いも良い所です」
それに翼は何も言えなくなる。
「安心してください。クロには最強のステルス機能がありますから。それで逃げおおせてみせます」
「小日向・・・」
心配する翼に未来は微笑み、背に隠し持ったクロのスタンバイスターターを押す。
『STANDBY!』
龍が現れる。
「ッ!させるかよ!」
クリスが、その手に拳銃を向ける。
「そんなもん、もう二度と着させてたまるか!」
そして放たれる銃弾は聖詠を歌おうとする未来を威嚇するつもりでその頬を掠めようとするが、掠り傷一つも許さないように、炎の龍が銃弾を消し飛ばす。
それにクリスが舌打ちする前に―――
「―――
聖詠が終わると同時に、未来のその身に、紫炎のギアが纏われる。
そしてその余波を威嚇と言わんばかりに巻き散らし、未来は叫ぶ。
「翼さん、行って!」
「く、すまない・・!」
走り出す翼。しかし、そこへ轟く二発の銃声。
「「ッ!?」」
途端に、翼どころか未来の動きすら固まる。
『影縫い』
「何・・・!?」
「これは、緒川さんの影縫い・・・!?」
翼が視線を向ける先に、彼はいた。
廃工場の影。そこに、闇に忍ぶ忍者はいた。
拳銃から放たれる弾丸による影の縫い付け。
それによってなされる時が止まったが如き、運動の停止。
それが、緒川流忍術『影縫い』
「くっ・・・」
所詮こちらは小娘二人、向こうは一大組織。
その道を行けば、包囲することは容易いということか。
「未来」
そんな中で、ギアを纏った響が、未来に話しかける。
「帰ろう。私たちの家に」
「響・・・」
今にも泣き出しそうな響の表情に、未来は心を締め付けられる。
だが、それでも―――譲れないものがある。
「ごめん、響・・・!」
突如として、未来のギアが発光する。
それに全員が一斉に警戒する。
「ッ!?未来!?」
「何をする気デスか!?」
そう切歌が叫んだ直後、未来のギアから二頭の炎の龍が飛び出す。
それが影を縫い付ける弾丸を喰らい取り、自由を取り戻した未来が円鏡を展開させるとたちまち無数の龍がその姿を現し飛び出す。
その龍に混じり、いくつもの光線が飛び交い、同時に展開された鏡に反射して、一斉に装者を襲う。
もちろん、黒スーツの男たちも同様にだが、わざと躱せるように操作している。
「翼さん、今のうちに!」
「くっ、分かった!」
すかさず緒川が銃弾を飛ばすがその弾丸は途中で竜の一匹に食べられてしまう。
「くっ」
すかさずもう一頭の龍が緒川に襲い掛かり、緒川はそれを躱す。
その混乱に乗じて、翼は駆け出す。
「待て!」
「あ、翼!?」
「行け!」
「ッ!?クリス!?」
クリスが拳銃を両手にマリアと翼に叫ぶ。
「先輩の偽物とは言えまだ何かあるはずだ。ここは二人の方がいい。あの子のことは任せろ」
「大丈夫なの?」
「あのバカがいりゃあどうにかなんだろ。さあ、早く」
閃光飛び交う戦地にて、クリスはマリアに言う。
その言葉に、マリアは不承不承とうなずく。
「分かった。ここは任せた!」
マリアが、すぐさま『風鳴翼』を追い、クリスは光線を撃ちまくる未来を見据える。
「おいたが過ぎるぞ!」
そして、その引き金を引いた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
未来を置いて、無様に逃げる翼。
(これでは、まさしく私の方が卑しい偽物ではないか・・・!)
力もなく、対抗する手段もなく、頼りの未来に辛い事を押し付けて、何が『防人』か。
そう思うと、不思議と涙が零れる。
(こんな、こんなことが、現実であってたまるものか・・・!)
その次の瞬間、翼のすぐ後ろで、何かが炸裂する。
「うわぁぁああ!!?」
吹き飛ばされ、地面を転がり、倒れ伏す翼。
「ぐぅ・・・ぅぅ・・・」
「観念したらどうだ?偽物」
顔を見上げる先には、刃の切っ先と、こちらを嘲笑うかのように見下してくる『風鳴翼』。
「き・・・さま・・・!」
「どうだ?かつての仲間に命を狙われる気分は」
その言葉に、翼は地面の砂利ごと拳を握り締める。
「翼!」
「っ!マリアか」
マリアがくれば、『風鳴翼』はその嘲笑を引っ込め、すました表情でマリアの方を見ていた。
「さあ、もう観念しなさい。貴方に勝ち目はないわ」
「マリア・・・」
「気安く名前を呼ばないでくれるかしら?」
「っ・・・」
冷たく返され、翼は、その拳をさらに握り締め、俯く。
(こんな、こんなことが・・・!!)
遠くで轟音が響く。
まだ、未来が戦ってくれているのだろう。
だが、それは同時に、ここには救援にこれないという事を意味している。
「こいつは私と同じ顔をしている、おそらく情に訴える気なのだろう」
「さんざん人を殺しておいて何様のつもりよ」
仲間だった筈だ。志を同じにした者同士だった筈だ。
それなのに、何故、こうも蔑まれなければならない。
(認めない・・・こんなこと、認められない・・・!!)
翼は、拳を握り締め―――その姿勢のまま思いっきり前に飛び出した。
だが、『風鳴翼』とマリアは軽く飛び退くことで翼の最後の一矢を躱す。
「悪あがきを・・・ッ!?」
顔をしかめる『風鳴翼』だったが、すぐさまその顔色を変える。
その理由は、影。
二人の影に、それは小さな小枝が突き刺さっていた。
「影縫い!?」
「うわぁあああ!!」
「ッ!?」
影縫いが決まったことを確認するや否や、翼は立ち上がって一目散に駆け出す。
だが、今翼が行った影縫いは苦し紛れも良い所の不完全なもの。
故に、シンフォギアという規格外の兵装を纏う彼女たちにとっては、それはただ体に軽めの重りをつけられた程度であり、
「ハアッ!」
「せいっ!」
簡単に外すことが可能だ。
「逃がさない!」
そして、マリアが蛇腹剣をもって翼を追撃。そして、翼のすぐ横の捨てられたセメント粉に直撃し、翼はその余波で吹っ飛ぶ。
「あぁぁああ!?」
それと同時に、舞い上がったセメントが、吹き飛んだ翼を隠す。
その煙の中で、翼は咳き込みながら、立ち上がろうとする。
「せめて、天羽々斬さえあれば・・・!」
戦う力さえ、あれば。
翼は、ただそれだけを願う。
何もかもを失い、空っぽのこの手に、ただ一つ、この理不尽に打ち勝つ力が欲しい、と。
その時だった。
翼の目の前に、謎の人影が立っているのに気が付いたのは。
「ッ!?」
翼は、思わず身構える。
しかし、その直後に、翼の目の前に、何かが落ちる。
「ッ!?」
それに視線を向ければ、それは、黒いバングルだった。
幅広であり、その中央に、六角形の宝石が埋め込まれたそれに、翼は不思議と引き込まれる。
そんな翼に、目の前に立つ、ローブの人物は語り掛ける。
「―――夢を忘れずに戦いなさい」
声音からして、女。
その声に、翼は、どこか懐かしさを感じる。
「その声は・・・」
「戦わなければ、貴方は一生『偽物』のままよ」
その声に、翼はもう一度そのバングルに目を落とす。
黒い、宝石の埋め込まれたバングル。
そのバングルに、翼は、シンフォギアに近い何かを感じ取った。
しかし、気付いた時には、目の前に立っていた筈の女性は消えていて、そのバングルだけが残されていた。
それが何を意味するのかは分からない。
だが、何もしないよりはマシだ。
翼がそのバングルを手に取ると同時に、空気中を舞っていたセメントが吹き飛ぶ。
「くっ」
それに顔をしかめつつも、翼は立ち上がる。
見れば、『風鳴翼』が大剣を振り抜いており、おそらくその剣圧で煙を吹き飛ばしたのだろう。
シンフォギアを纏う二人に、翼は冷や汗を流しつつも、そのバングルを右手首につける。
そのバングルに、マリアと『風鳴翼』はこぞって目を丸くする。
しかし、翼はそんなことお構いなしに、そのバングルを起動する。
そのバングルの宝石―――それを押すだけだった。
『Start Up. Resonance-type Kaiten special equipment』
その次の瞬間―――翼の全身に激痛が走る。
「ぐ、あぁぁああぁあああ!?」
「「ッ!?」」
その様子に二人は驚く。
翼の右手首のバングルが藍色に輝く、そこから、翼の全身を塗り潰すかの如き勢いで『黒』が翼の体に纏わりつく。
「な、んだ・・・これはァ・・・!?」
翼の体に激痛が走る。それに翼は歯を食いしばって耐え、その全身にその黒い何かに纏われていく―――
その光景は、二課本部でも――――
「対象から、エネルギー反応を検出!」
「これは・・・限りなくアウフヴァッヘンに近い波形パターンです!ですが、これは・・・!?」
その翼の変化をモニターしている二課本部にて、その光景を見ていた弦十郎は、呟く。
「・・・RN式回天特機装束『改』・・・だとっ・・・!?」
その表情を驚愕に染めながら、弦十郎は、翼が変わっていく姿を見届ける。
その全身が、黒色に塗り固められた瞬間、今度はバングルの宝石から、青いラインが翼の体の表面から少し離れた所で浮くように広がっていく。
そのラインが、翼の全身に伸びた時―――
「くっ・・・ぅ・・ぁ・・・ァァアア!!」
翼は、叫んだ。
「変身ッ!!」
その身に纏われる、漆黒の中に薄く光る青。
その腰から伸びるマントは風になびき、その腰には青鞘の刀――――
「それは・・・なんだ・・・」
『風鳴翼』が、顔色を変えて尋ねてくる。
それに、翼は、決して余裕じゃない表情で答える。
「・・・私が抗う為の力だ・・・!」
―――その名は『RN式回天特機装束改『天羽々斬』』。
シンフォギアの―――
廃工場の壁が吹き飛び、そこから調と切歌が飛び出す。
靴底をすり減らしながら、調と切歌は煙に逆巻く相手を見据える。
その煙から飛び出すのは、紫色の光線。
その光線を、調と切歌は左右に分かれて躱す。しかし二人の背後にあった鏡によって光線は反射、二人を追いかけるように突き進む。
「くっ、なんてしつこい・・・!」
「アタシたちをなんとしてでもここで食い止める気デスか!?」
四方八方、あらゆる方向から光線が飛んでくる。
しかし、避けられないものではなく、二人は巧みにその光線を躱し続けていた。
防御はしない。
その一方、廃工場の中では―――
クリスの銃弾が、未来の帯によって叩き落される。
すかさず反撃の閃光が迸るも、それをクリスはリフレクターで弾き飛ばす。聖遺物殺しの異名を持つとはいえ、クリスのリフレクターであるならば、削られはするも防げないことはない。
その攻撃が弾かれ、クリスに未来の視線が行っている隙に、響が背後から強襲する。
「未来―――ッ!!」
響が叫ぶ。
その拳を、握り締めて、親友にその拳を向けることを嘆きながら、その拳を突き出そうとする。
しかし、その前に未来の帯が響の首に巻き付き押し返し、そのまま投げ飛ばす。
空中で態勢を立て直し、着地してみせる響。
「大丈夫か!?」
「どうにか・・・!」
クリスの叫びにそう短く答え、響は未来の方を見る。
未来は、見るからに消耗していた。
それもそうだ。装者四人を相手に、ただの一人で拮抗させてみせているのはもはや奇跡に等しい。
さらに、他にいるS.O.N.G.の実働部隊の状況すらも把握して牽制している所から見て、相当な消耗を強いられているのは間違いない。
そして、そんなことを普通の高校生に出来る訳がない。それを可能にしているのは―――
「ダイレクトフィードバックシステムか・・・」
「未来・・・」
それを鑑みれば、未来が洗脳されているのは間違いない。
さらに装者としての素質が低い未来がシンフォギアを纏っているということは、大幅な負荷が体にかかっている筈。
であるならば、早くあのシンフォギアを解除させなければ―――
『響ちゃん』
そこで友里から連絡が入る。
『さっきからずっと、未来ちゃんのバイタルを見てるんだけど、適合係数が低い筈の未来ちゃんにしては、あまりにも適合係数が安定しているの』
「え?」
「そりゃ一体どういう意味だよ?」
『分からない。ただ言えるのは、今の未来ちゃんはシンフォギアを長時間扱えるということよ。LiNKERを使っているのかは分からないけど、とにかく今の未来ちゃんの適合係数は安定してるってことは頭に入れておいて』
響は未来を見る。
確かに、消耗はしていても、何かしら反動が入っている様子はない。
「あのドラゴンみてえなおもちゃにからくりでもあんのか?」
「分からない・・・だけど、私は未来を絶対に取り戻す」
そう言って、響は拳を解く。
そして、未来に語り掛ける。
「帰ろう。未来」
その問いかけに、未来は少し顔をしかめ、答える。
「帰れないよ。今の響の所には」
「どうして?」
「今の響たちは、あの翼さんを偽物だと思ってる。そんな響たちの元に、今は帰れない」
そう、未来は響に向かって真っすぐに言う。
「だから、私は今、響たちを倒して、翼さんを守る!」
そして返事待たずに響たちに鉄扇で殴りかかった。
大剣を叩きつけられ、吹き飛ぶ翼。
「ぐあぁあ!?」
そこに投棄させられていた鉄缶の山に落ち、翼は、痛みに悶える。
「ぐ・・・く・・・やはりシンフォギアとは、勝手が違うか・・・・それに、パワーも・・・」
地面に手を突きながら、立ち上がろうとする翼。
そんな翼に、マリアが短剣をもって斬りかかる。
「ッ!」
その一撃を防ぎ、そのパワーバランスをうまく利用して攻撃を逸らし、そしてその腹に斬撃を叩き込む。
「くぅっ!?」
「許せ・・・!」
そして、返す刀でマリアを斬り飛ばそうとする―――だがその寸前で三角形のバリアが翼の剣を阻み、すかさずマリアが飛び退くと同時に、『風鳴翼』の斬撃が翼を襲う。
「ッ!?」
斬撃が頬を掠め、浅く斬る。
すかさず蹴りが翼の腹に刺さり、思わず後ろに数歩下がった所で、無数の剣が頭上から降り注いだ。
『千ノ落涙』
「ぐあぁああぁぁああ!?」
そのまま吹き飛ばされ、壁を突き破って外に追い出される。
その外で、翼は倒れ伏す。
「ぐ・・・ぁ・・・」
やはり性能差が大きい。
この装備は、確かに対ノイズ用を想定して作られたものだろうが、おそらくはシンフォギアの前段階のもの。つまり、最新型であるシンフォギアと比較した場合、その性能差には大きな隔たりがあるのだ。
旧式が新型に勝てないのと同じである。
翼が突き破った穴から、『風鳴翼』とマリアが現れる。
そんな二人に、翼はダメージの多い体に鞭を打って立ち上がる。
その次の瞬間、翼の横、廃工場の壁が何かで爆ぜて煙が舞い上がる。
その煙と共に、吹き飛ぶように現れたのは、なんと未来。
「小日向・・・ッ!?」
一瞬、気を取られた隙に、『風鳴翼』の刃が振り下ろされる。
「ぐぅっ!?」
「他人よりも自分の心配をしたらどうだ・・・!?」
圧倒的パワー不足、それによってどんどん押し込まれていく。
その一方で、未来は――――
「ハア・・・はあ・・・はあ・・・」
想像以上の消耗で、視界が霞んで、体もまともに動かなくなっていた。
今は神獣鏡の補助によってどうにかなっているが、これ以上はもたない。
「未来、もうやめよう」
響が未来の前に立ってそう呼びかける。
「どうしてこんなことをするの?何が未来にそこまでさせるの!?」
そう必死に語り掛けてくる響に、未来はいつも通りの響であることに少し安心して、
「譲れないものが、あるから・・・だから、いくら響が相手でも、負けるわけにはいかないの!」
そう叫び、未来は鉄扇を収納する。
そして、右手を掲げ、どこからともなく現れたクローズドラゴン・ブレイズの炎をその炎を右腕に纏わせ、
「ハァァァアアァアア!!!」
そして、一気に解き放つ。
『殲滅』
『グルアァァアァアァアァアアアア!!』
全てを消し飛ばす、竜の咆哮が、響たちを襲う。
「響さん!」
唖然とする響を横から調が掻っ攫って龍の一撃を逃れ、
「あくまで戦うってんなら容赦はしねえ!」
クリスの小型ミサイル群が未来に襲い掛かる。
『MEGA DETH PARTY』
それが、一斉に未来の足元に炸裂する。
「きゃぁぁああぁあああ!?」
吹き飛び、宙を舞う未来。
そのまま地面に落ちる。
「く・・・ぅう・・・」
クリスのミサイルを喰らってもなお立ち上がろうとする未来。
「未来!」
響が、そんな未来に叫ぶ。
「小日向ァ!」
その直後に翼が叫ぶ。
そしてすかさず、目の前にいる『風鳴翼』を睨みつけ。
「どけぇぇええ!!」
「ッ!?」
(急に力が・・・)
突如として翼の纏う装束の青いラインが発光し、翼の剣が『風鳴翼』の剣を押し返し、そして、弾き飛ばす。
そして次の瞬間、翼がシンフォギアでもありえないような速さでその場を駆け抜け、一秒以下にして未来の元へ向かう。
「小日向、大丈夫か!?」
「翼さん・・・」
未来に呼びかける翼。
弱々しく答える未来に、翼は触れようとするが、直前に背中に強い衝撃を受けて吹き飛ばされる。
「ぐあぁあああ!?」
「翼さん!?」
そのまま吹き飛び、地面に倒れ伏す翼。
「ぐぁ・・・ぁ・・・・」
その直後に、翼に纏われていた黒い装束が消滅、元の私服に戻る。
「させねえよ」
それは容赦ないクリスの一発。
その銃弾が翼を捉え、吹き飛ばしたのだ。
「う・・・ぐあ・・・」
痛みで立ち上がることが出来ない翼。
「う・・・くぁ・・・」
未来はどうにかその翼に手を伸ばす。しかしそれでもダメージは大きい。
「未来・・・」
「くそっ、何があの子をそこまで・・・」
その様子に響は狼狽え、クリスは苦い顔をする。
「こ・・・ひなた・・・」
「翼さん・・・くっ」
未来は、激痛の走る体に鞭を打ち、立ち上がる。
「未来さん・・・!」
「まだ戦う気デスか!?」
息を上げ、じっと彼女たちを睨みつける未来。
その様子に、響は、思わず目を逸らし、しかしやがて、再び親友の方を向いて、その拳を握り締めた所で――――
『風鳴翼』が前に出る。
「翼さん・・・」
「・・・ここは私が引き受ける」
『風鳴翼』が、未来と対峙する。
「小日向、お前がその『偽物』に加担する理由は分からない・・・だが、それでも戦うというのなら、この剣をお前に向けなければならない」
そう、『風鳴翼』は刃を構えて未来に告げる。
その問いかけに、未来はすっと鉄扇を向ける。
答える余裕もない、せめてもの返事だった。
「・・・そうか」
その答えに『風鳴翼』は目を閉じ、そしてカッと見開いたかと思えば、その手の刀を大剣へと変形させ、振りかざす。
(あれは青ノ一閃・・・!?)
「だめだ・・・小日向・・・!」
僅かに青い燐光を巻き散らすそれを見て、翼は思わず立ち上がろうとするが、激痛で立ち上がることが出来ない。
「ハァァアアァアア!!」
振り下ろされる斬撃。
その一撃が、今、未来に振り下ろされる―――
しかし、未来にその一撃が直撃することはなかった。
突如として現れた、巨大な腕―――それが、『風鳴翼』の剣を受け止めていた。
「な・・・!?」
それは、見るも巨大なロボット。人型で金属質、その頭部には、翼が見たことある、巨大な懐中時計が付けられており、その胴体には、でかでかと『ロボ』と書かれていた。
「ええ!?」
「なにあれ・・・!?」
「ロボットデース!?」
「なんであんなでかでかと『ロボ』って書いてあんだ!?」
「そんなのあり・・・!?」
突如として現れた謎のロボ。
そのロボは、『風鳴翼』の一撃を弾くと、その胴体を開く。
そこから現れたのは――――一人の仮面の戦士だった。
その戦士は、全身を黒と銀の装甲に身を包み、その顔面には―――
「・・・か・め・ん・・・」
「らい・・・だー?」
「ってか、時計だよなあれ・・・」
額に小さく『カメン』そしてその下にピン(マゼンタだ)・・・・マゼンタ色で『ライダー』と書かれていた。しかもその仮面はまさしく時計を模しており、二方向に延びるアンテナはまさしく時針だった。
そしてその腰には、謎のベルトと、見覚えのある懐中時計―――
「・・・アナザーライダー・・・じゃ、ないよね・・・?」
そしてその男の声は、意外なほど若い男のものであり、少し戸惑った様子を見せるも、
「まあいっか」
と斬り捨ててその手に剣をもって『風鳴翼』に斬りかかる。
「ッ!?」
その斬撃に、翼は目を見開きながら対応する。
「翼さん!?」
「くっ、やっぱ敵か!」
その仮面男の剣戟は凄まじく、『風鳴翼』が大きく下がり続ける。
「翼!」
すかさずマリアがフォローに入る。
放たれる蛇腹剣が、仮面男に襲い掛かる。しかし、仮面男はその無軌道な蛇腹剣の連撃を巧に躱し―――
『ジュウ!』
刃の部分を収納させたかと思いきや、引き金を引いて高周波のエネルギー弾を数発放つ。
「っ!?」
その反撃にマリアは戸惑いつつも防ぎ切る。
その仮面男の背後から、再び『風鳴翼』が斬りかかるもすかさず仮面男はその手の銃を剣へと切り替えて、
『ケン!』
すかさず切り返す。
「翼さんとマリアが押されてる・・・!?」
「助けるのデス!」
すぐさま他の装者も応援に駆け付けようとするが、そんな彼女たちとの間に割り込むように、
『ターイムマッジーン!』
どしん、ともう一体のロボットが現れる。しかも今度は赤い上に『ロボ』の部分が何故か『ろぼ』とひらがなで書かれていた。
「えぇぇえ!?」
「もう一体、だとぉ!?」
突然の登場に驚く装者たち。
そして、そのロボットの中では―――
「こうも好き勝手にされてはたまらんからな」
一人の男が、画面に映る少女たちを見据え、
「悪く思うな」
そのレバーを思いっきり振り抜いた。
向けられるロボットの腕、その腕に取り付けられた機関砲が装者に襲い掛かる。
「くっそ!なんなんだよ一体!?」
「これじゃあマリアたちの所に行けないデス!」
放たれる機関砲の嵐。
それを四人は巧みに躱していく。
「調子に乗るなよ!」
すかさずクリスがガトリングガンでロボットをハチの巣にしようと弾丸をばら撒くが、まるで効いている様子がなく、むしろ逆に相手の機関砲がこちらに炸裂していた。
このままでは逆にやられる。
「だとしても!」
しかし、腰のブースターを点火して飛び込む響は、そのジェットナックルをロボットに思いっきり叩きつける。
それを、ロボットはどうにか腕で防ぎ、しかし大きく吹っ飛ばされ後退させられる。
「くっ!」
想像以上の固さに、響は歯噛みする。
その様子は、翼の目にも映っていた。
「何が起こっているんだ・・・」
「翼さん!」
倒れる翼に、未来が駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「ああ・・・」
「動かないでください」
「「ッ!?」」
声が聞こえ、そちらを振り向けた、そこにはこちらに向かって銃を向ける緒川の姿があった。
「緒川さん・・・」
「貴方がたの身柄は拘束させていただきます」
「緒川さん・・・!!」
その冷たい視線に、翼は泣きそうになる。
だが、緒川は何かの気配を感じ取ると、急に飛び退き、そこへ謎の布が飛んでくる。
その布から、また一人、男が現れる。
「何者・・・!?」
「悪いが、今彼女たちを渡すわけにはいかない」
マフラーとミリタリーグリーンのローブを纏った男だ。
そして、マリアと『風鳴翼』が激しく打ち合う仮面男は、二人の連携を巧みに躱し凌いでいた。
「何者なんだ!」
マリアが叫び、仮面男を弾き飛ばす。
その問いかけに、男は答える。
「俺は『仮面ライダージオウ』!最高最善の魔王だ!」
「ま、おう・・・!?」
その答えに思わず戸惑うマリア。
「っと、そんな長話してる暇はないんだよね・・・
仮面男――――ジオウがその名を呼ぶ。
すると、その場の時間が、全て停止する―――
「・・・え」
その光景を目の当たりにして、翼と未来は目を疑う。
その場にいる者たち全員―――いや、巨大ロボットとジオウなるもの、そしてマフラーの男を除いて、ほぼ全ての者たちの動きが完全に止まっていた。
飛び上がっていた切歌に関しては完全に空中で静止している。
「これは、一体・・・」
未来に肩をかしてもらい、立ち上がった翼は、今起きている光景に戸惑っていた。
「まあ驚くのも無理はない」
そんな二人に、黒マフラーの男が話しかけてくる。
「安心したまえ、私たちは君たちの味方だ」
そう言うと、男はある方向を見る。
そちらを見れば、ジオウと名乗った男がこちらに歩いてきており、やがてその姿が淡い光に包まれると、人間の少年に変わる。
年は、高校生ぐらいだろうか。
下手をすれば自分より年下かもしれないほど若い男だった。
「誰なんだ。お前は・・・」
その翼の問いかけに、少年は答える。
「俺は『常盤ソウゴ』。あんたが天羽々斬装者、風鳴翼だよね?」
なぜ、こちらの名前を知っているのか―――否、それ以前に・・・
「貴方も、仮面ライダーなんですか?」
未来が、そう尋ねてくる。
「そうだ」
その未来の問いかけに応えたのは、もう一つのロボットから降りてきた男だった。
「ただし、お前たちの知る仮面ライダーとは少し違うがな」
「魔王とも名乗っていた・・・それは一体・・・」
「ならば私が説明しよう」
そこでマフラーの男が割り込んでくる。
「この方こそ、全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者―――その名も『仮面ライダージオウ』、常盤ソウゴである」
「「・・・え?」」
そう言われて、さらに混乱するだけの二人。
「まあ普通は信じられないでしょうね」
そこへ白い衣装に身を包んだ少女も現れる。
「だが事実だ」
そして男がそれを肯定・・・もう訳が分からないことだらけである。
「・・・おほん、まあ何はともあれ、アナザーライダー・・・いや、アナザーシンフォギアか?とにかくそれが誕生している以上、タイムジャッカーが関係しているのは間違いないね」
「タイムジャッカー?」
聞き覚えの無いその言葉に首を傾げる。
「過去に遡って、時間を書き換える連中よ」
「あんたを探してたんだ。こんな歴史になったのは、過去のどこかでタイムジャッカーが介入した筈だ」
「それが、戦兎たちが消えた理由・・・」
つまり、過去の何かが変わり、戦兎たちが存在していたことそのものが消えた、ということなのだろうか。
「・・・心当たりないかな?」
ソウゴが、そう尋ねてくる。
「心当たり、と言われても・・・」
「すまない、特には・・・」
「うーん・・・じゃあ、あいつがアナザーライダー・・・いや、アナザーシンフォギア?シンフォギアの方でいっか。で、それに変身した時、何か数字みたいなもの見えなかった?」
「数字・・・あ!」
それを聞いて、翼は思い出す。
「2030・・・その時に、何かあったのかもしれない」
「2030年か・・・」
「タイムジャッカーが介入したのはその時間に違いない」
黒マフラーの男がそう呟く。
「正しい歴史に戻さないと・・・」
「だが、そんなのどうやって・・・」
「出来るよ」
ソウゴが答える。
「俺たちの力と、あんたの記憶があれば・・・信じてくれ。他に選択肢はないんだ」
そして、そうまっすぐに、ソウゴは頼む。
その眼差しに、翼は――――
「・・・・分かった」
その眼差しを信じて、頷いた。
「よし、それじゃあ行こう」
「ああ、その前に・・・他の者たちの名前を聞いていない」
そう言われて、あっとなる一同。
「それもそうだね。私はウォズ、我が魔王の臣下だ」
「明光院ゲイツだ」
「ツクヨミよ」
「あ、小日向未来です」
「よーっし、自己紹介が終わったところで、一旦ここを離れようか」
そして時は動き出す―――
「ッ!?」
「で、デェェエス!?」
「ああ、切ちゃーん!?」
突然、目の前からあの巨大ロボットどころか仮面男、さらには未来や翼の偽物まで消えて、動揺する一同。
「一体、何が・・・」
「分からない・・・」
マリアの疑問に『風鳴翼』はそう答える。
「だが、奴らを取り逃がしたことは確かなようだ」
そう忌々し気に呟き、翼は刀を納めた。
次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?
「本当に、過去の世界だ・・・」
ジオウ―――常盤ソウゴたちに連れられ、過去へと飛んだ翼たち。
「・・・例え、そうだとしても・・・」
過去の世界で出現したノイズ。
「その装備・・・どこで手に入れた?」
その最中で現れたのは―――
次回『望まぬリミューズ』
「・・・風鳴を、潰す為よ」
「たっだ~いま~」
「ぬおっ!?マリア?今日はえらく上機嫌だな・・・」
「ふっふふ~、まだ油断はできないけど、これで完全勝利に一歩近づいたわ~」
「そ、そうか、マリアが嬉しそうなら、いいんだ・・・うん」
翼はもはや、何も聞かなかった。